【出会いはいつも運命の気まぐれ】 第四章







 朝靄の煙る中、清らかな陽光が部屋に射し込んでいた。

 は心地好い微睡みに身を委ね、少しずつ覚醒してきていた。

「ん・・・ぅん・・・」

 むにゅむにゅ、と目を擦り、うっすらと目を開ける。

「眠い〜・・・もう朝か〜・・・もちょっと寝てたいよ〜」

 は虚ろな視界に何も映らなかったので、1人で寝ていると思っていた。

「・・・アレ? ゲンマさんが泊まりに来てたんじゃないっけ? もう起きたのかな・・・」

 もぞもぞ、と動いて枕元の時計を見ようとした時、金縛りに遭ったように、何かにきつく抱きしめられているのに気付いた。

「?」

 まだハッキリと覚醒していない頭で、視線を落とす。

 金茶の頭が目に飛び込んできた。

「ゲンマさんいた・・・気持ち良かったのはゲンマさんがぎゅってしてたからか・・・」

 ゲンマはの豊かな胸の間に頭を埋め、をシッカリと抱きしめ、絡み合っていた。

 は時計を手に取って見たら、もう少しで6時だった。

「うっかり目覚ましかけてなかったけど、ちゃんと時間に起きられたよ〜。慣れてきたのかな・・・」

 えへへ、とは時計を置いて、ゲンマの頭を抱きしめた。

「ん・・・」

 ゲンマも覚醒してきたらしく、もぞもぞと動き出した。

「ゲンマさ〜ん、もうすぐ6時だよ〜」

 そっと頭上で囁く。

 まだ夢の中から抜けきれないゲンマは、もぞもぞとの身体を撫で回し、求愛した。

「アレ?」

 は何かおかしい気がした。

 ゲンマが触れている感触が、いつもより直接的だった。

 生々しい感触で、温かい。

 ん〜? とは自分とゲンマの身体を見て、触れてみた。

 何も身に付けていない。

 ネグリジェも、パジャマも、下着も。

「何で私もゲンマさんも裸なの? 今は冬だから、暑い〜って脱ぐ訳ないよね。何で?」

 うにゅ? とは考え込んだ。

 まだ覚醒しきらないゲンマは、を求め続けた。

 豊かな膨らみに舌を這わせ、サクランボのような突起を口に含み、身体を撫で回し、尻をまさぐる。

「ゃん・・・くすぐったい。ゲンマさ〜ん、起きてよ〜っ」

 むに、とゲンマの頬を抓った。

「ん・・・?」

 ゆっくりとゲンマは目蓋を開けていった。

 迫力あるの豊かな胸が目に飛び込む。

「おはよ〜、ゲンマさんv もうすぐ6時だよ」

「ん・・・ねみぃ・・・」

 ぼ〜っと虚ろな目でを見ながら、僅かに上体を起こし、落ちてくる前髪を煩そうに掻き上げた。

「よく眠れなかったの? だいじょぶ?」

「ん〜、睡眠少ねぇのはいつものことだ・・・」

「ね〜、ゲンマさん。何で何も着ないで寝てたの? 私ゲンマさんが来てちょっとして眠くなって寝ちゃったから、何も覚えてないの。何かしたの?」

 あぁ・・・とゲンマは昨夜小細工したことを思い出し、を見つめた。

「・・・覚えてねぇのかよ?」

「え? 何を?」

「昨夜、あんなに愛し合っただろうが。オレのこと欲しがって・・・覚えてないから無しにしてくれはナシだぜ」

 ちゅ、とゲンマはの唇を塞ぎ、の上に覆い被さった。

「愛し合ったって何? 何をしたの?」

「オマエの分かる言葉で言えば、“仲良し”だ」

 唇から頬へ、首筋へ、ゲンマは舌を這わせた。

「え〜っ! ダメだよ! 仲良しはカカシせんせぇとしかしちゃいけないんだよ! ゲンマさん、いっつも、覚えてなかったら言うなって言ってたのに、何で言うの〜? 私覚えてないよ〜。どんなことしたの〜?」

 ぷく、と膨れてはゲンマを引き剥がそうと、力を込めた。

「・・・思い出させてやろうか?」

「え? どやって?」

 ぴた、と手が止まる。

「昨夜やったことを、今からもう一度やるんだよ。オマエも覚えてないのはイヤだろ? 思い出させてやるよ」

「え〜、ダメ〜! カカシせんせぇ以外とはしちゃダメなの〜! 怒られちゃうよ〜」

「怒られるからダメなのか? オマエの意見はねぇのか? オマエはしたくねぇのか?」

「え〜・・・んと〜・・・」

「昨夜はあんなに悦んでたじゃねぇか。もっと、もっと、って。お陰でこっちは睡眠不足だってのに」

「ん〜・・・仲良しはカカシせんせぇとしたいコトだし〜、ゲンマさんとがイヤとかじゃなくて〜、ん〜・・・」

 は真剣に悩んでいた。

「・・・冗談だよ」

 ふぅ、と小さく息を吐く。

「え?」

「別に何もしてねぇよ。“仲良し”はしてねぇから、安心しろ。ちゃんと言ってただろ? 自分でシッカリ自立してきたと思うまで、仲良しは我慢しろって。それをオレが破る訳ねぇだろうが」

 そう言いながら、ちゅ、と唇を塞ぐ。

「も〜。ゲンマさん嘘ついちゃダメでしょ! 意地悪〜!」

 ぷく、とは膨れる。

「オマエがいつもいつも、いつ寝たか分からねぇような、寝る前の記憶がねぇような寝方するから、戒めだよ。こういうコトされたくなかったら、睡眠も自己管理しろ」

「ん〜、分かった〜」

 そういえばいつもぽてっと寝ちゃってるなぁ、と思い出す。

「でもそれでわざわざ脱がせたの?」

「・・・オマエホントに覚えてねぇのか?」

「え? ナニナニ? まだあるの? 何したの?」

「オマエが言ったんだぜ? まだ実戦経験が少ねぇから、もっと色んなシチュエーション教えてくれって。それなのに途中で寝やがって。此処が自宅でプライベートでやってるんじゃなくて本当の訓練だったら、懲罰モンだぞ」

「え、実技訓練してたの? 途中で寝ちゃったの? 気持ち良かったのかなぁ・・・って、それじゃダメなんだっけ。自我を忘れちゃダメだよね。ゴメンナサイ」

「ま、疲れてただけだろ。ずっと任務で、休む間無かったしな」

 ぽんぽん、と頭に優しく触れる。

「時間ある? おさらいして」

 ゲンマはのこういうピュアな性格を利用した。

 自分から言わせるように、仕向けていた。

 の就く任務は、確かに色事の任務が多いが、最初の駆け引きだけで、実際に行為に及ぶことはない。

 相手が仕掛けに乗ってきたら、あらかじめ仕掛けておいた幻術によって、そういう風に行為をしているように思わせているのだ。

 を血にまみれた任務に就かせたくないと言いながら、その裏で身体を代償にするのでは、本末転倒だ。

 はその教わった通りの駆け引きの流れと幻術に長けていた。

 最初から、幻術のスペシャリストだった故、天然の性格も踏まえ、魅惑的な容姿と実力から、綱手はを諜報部隊に入れたのだ。

 だから、別に脱がせたりはともかく実際に行為に及ぶ必要はないのだが、そのように幻術を見せる為に、知っておく必要はあったので、ゲンマは其処につけ込んでいた。

 他の諜報部隊のくの一から、実際に身体を代償にしている者もいることをは聞いていたので、何ら疑問に思っていないのだった。

「じゃ、基本からな」

 姑息な手を使わないと、を自分には振り向かせられない。

 カカシしか見ていないを、自分を見るように出来ない。

 そんな自分を許せない反面、プライド以上に、例え姑息と罵られようと、なりふり構わずに、が欲しかった。

 ゲンマはに覆い被さり、口づけを交わす。

 愛撫しながら、胸を揉みしだく。

「ぁ・・・ん・・・っ」

「もっと甘い声出せ。喘いで見せろ。相手を自分の虜にさせるんだ」

 細かく指導しながら、ゲンマはの身体を堪能した。

 とても甘美で、どんどんに溺れていく。

「オハヨー、オハヨー、ゲンマジャマ、カエレ」

「ったく・・・いちいち癇に障る九官鳥だな。焼き鳥にするぞ」

 上体を起こしたゲンマは、机の上の九官鳥を睨み付けた。

「ギャー、オーボー、オーボー」

「あのな、忍鳥使いを舐めんなよ? 九官鳥如きが、オレに何が出来るってんだ」

「ゲンマさん、鳥さん使いが同じ鳥さんを如きとか言っちゃダメだよ」

「あ〜ハイハイ」

 ゲンマは壁により掛かり、後ろ頭を掻きながら息を吐いた。

 の目はゲンマの股間に釘付けだった。

「ゲンマさん、そんなにおっきくさせて、珍しいね。いつもは抑え込めるとか言ってなかった?」

 ゲンマはもはや隠す気など無かった。

「ん〜、男は朝はいつも大変なんだよ。今まではオマエの教育上マズイと思って抑えてただけだ」

 カカシだっていつもそうだったんだろ? と呟く。

「出すモノ出さないとしんどいんでしょ? どうすれば楽になれるの?」

「ん〜、マスターベーションかオマエに処理してもらうかだな」

 人から、とか女から、と言わずにに、と言ったのは、勿論わざとだった。

「自分でやるか人にやってもらうかってコト? どうすればいい?」

 ひょこひょこ、とは四つん這いで近付いていく。

 ぺと、とゲンマの目の前でおねだりポーズで座り込んだ。

 全裸のが陽光に照らされて、艶めかしさに、ゲンマは喉を鳴らしそうになる。

「イチャパラ読んで映画観てるんなら、やり方知ってるだろ? カカシにもやったことあんだろうが」

「あ、そっか。分かった〜」

 は座り直し、ゲンマ自身を手で包み込んだ。

 愛しい女の手が自身を包み込んでいるという事実に、ゲンマは益々固く大きく主張していった。

 ほんの少し動いただけで、ゲンマの中心部はドクンと脈打った。

 下腹部の熱さで、溶けてしまいそうな錯覚に陥る。

「カカシせんせぇよりおっきいね。入るかなぁ」

 あ〜ん、とはくわえ込もうと屈む。

 その時。

「なっ、何をしてるの〜〜〜ッ!!!」

 窓の外で、怒髪天を突くカカシが物凄い形相で軒下にぶら下がっていた。

 げ、とゲンマは舌打ちする。

 カカシは解錠の術で室内に入ってきた。

 そう、ベッドの上で全裸の2人、まさにの手がゲンマ自身をすっぽり包み込み、口にくわえ込もうとしている所だった。

「あ、カカシせんせぇv 昨日は楽しかったねv どうしたの? この時間は慰霊碑に行ってるんじゃ・・・」

 ゲンマ自身を手で包み込んだまま、は上体を起こした。

に会って、ちゃんと言いたいことがあったんだよ。任務に行く前にと思って・・・それなのに、一体何をしてるの!!」

「え〜? ゲンマさんの、朝の処理をって」

 カカシに引き剥がされる前に、ゲンマはを腕の中に抱き込んだ。

「ダメって言ったでしょ! がすることじゃないの! 何で朝一緒のベッドにいて、しかも裸で、イケナイコトしてるんだよ!」

「でもゲンマさんは私がすることだって・・・」

は外泊はしないけどオレが来る分には構わないから、って、呼ばれたから、愛し合ってたんですよ。に請われてね」

 あさっての方を向いたまま、しれっと呟く。

「ななっ、なななっ・・・」

 カカシはわなわなと震えた。

「だいじょぶだよ〜、カカシせんせぇ。ゲンマさんはちゃんと自分の言いつけ守ってるよ〜。仲良しはしてないよ」

「その状態の何処がそれを言うの!」

「仲良し以外にも、性行為の方法はありますからね」

 敢えてカカシの方を見ず、独り言のように呟いた。

っ! いつまでそんなモノ握ってるの! 離して!」

 はゲンマ自身を掴んだままだった。

「でもまだ終わってないから、ちょっと待ってて」

 そう言っては手をしごいた。

 快楽に溺れそうになるのを、ゲンマは必死で堪えた。

「ダメって言ってるでしょ! 離して!」

「手で擦るのと口でやるの、どっちがいい?」

「ん〜、両方」

っ! ゲンマ君っ!」

「うるさいなぁ、待っててって言ったでしょ〜」

 も〜、と困ったようにはカカシを見遣る。

「ソレ離さないと、もうデートしないよ!」

「え、それはヤだ〜」

 仕方なく、は手を離した。

 が、まだゲンマの腕の中で、シッカリと抱きしめられている。

 ゲンマはこれ見よがしに、を抱き上げて、胡座を掻く自分の上に脚を開いて座らせた。

 きゅ、とは手を回して、ゲンマにしがみつく。

 かなりあられもない状態だ。

「離れてって言ったでしょ! 、こっちに来て!」

「カカシせんせぇ、鉄分不足してるの? ヒステリー起こしちゃ、ぷっつんしちゃうよ。ほうれん草とか食べてる?」

 ゲンマにしがみついたまま、は膨れる。

はオレとお付き合いしてるんでしょ?! ゲンマ君はお兄ちゃんで上司でしょ? そういうコトしちゃダメって・・・」

「訓練してただけだよな?」

「うん」

 これ見よがしに、ゲンマは、腕の中のを撫で、ちゅ、と唇に触れた。

 ん、とも応えている。

 啄むように、濃厚にキスをした。

「※☆●〒△φ@■◎&#$ε▼◇・・・ッ!!」

 カカシはもはや言葉にならない。

「あ、もうこんな時間。遅刻しちゃうよ、ゲンマさん。朝ご飯作らなきゃ。カカシせんせぇは食べた?」

「っ、、こっちに来なさいって何度も・・・」

 抱擁が弛んだ隙に、カカシはの腕を引っ張ってゲンマから引き剥がした。

「あ〜ん」

はオレのトコにいなさい!」

 きゅ、との頭部を抱き込んだ。

 も〜、とは膨れつつ、カカシに抱きついた。

「ちょっ、変なモノ触った手で抱きつかないで・・・」

 ぎゅう、とはお構いなしに抱きついた。

「ん?」

 はその時、何かに気が付いた。

 突然ニコニコして、嬉しそうにカカシに抱きついている。

 カカシは訳が分からずに靄靄してを腕の中に取り込んでいたが、ゲンマはその意味を理解して、影で舌打ちした。

「ね〜、カカシせんせぇv」

 ご機嫌な顔では目を瞑って、顎を突き出した。

「え?」

「んv」

 キスのおねだりだ、とすぐに分かったが、カカシは躊躇する。

、顔洗ってきて。キスはその後でいくらでもするから」

「え〜、汚くないよ! 昨日ちゃんと洗って寝たよ!」

 ぷく、とは膨れて目を開ける。

「ゲンマ君と間接キスはイヤだ!」

、いつまでそうしているつもりだ。目の保養にはいいが、風邪引くぞ」

 ゲンマはいつの間にか忍服を着て、脚絆を巻いていた。

「あっ、そうだ、時間! すぐ朝ご飯作るね!」

 はパッとカカシから離れ、下着を身につけ、ぱぱぱと忍び装束を着ていった。

「今どうやって着たの? エライ複雑な着方しなかった?」

「そぉ? 今度写輪眼で見てみれば? そうすれば脱がせるよv」

 ニッコリ微笑んで、洗面所に向かう。

「そうか、その手があったか・・・」

「言っときますけど、何もしてないんで、ご心配なく」

 カカシの目の前を擦れ違いざま、ゲンマはぼそっと呟いた。

 に続いてゲンマも洗面所に行く。

「アレの何処が何もしてないうちに入るの! 充分してるじゃん!」

 カカシの絶叫もゲンマはスルーする。

 はとてとてと台所に戻ってきて、支度を始める。

「全くもう・・・、手伝おうか?」

「だいじょぶ〜。カカシせんせぇ、はたけ君にご飯とお水あげてきて〜」

「了解」

 カカシが寝室で九官鳥に餌を与えていると、ゲンマがドアの所で寄り掛かって、眺めていた。

「・・・鳥使いに九官鳥を監視役なんて、もっと他に手はなかったんですか。オレがその気になったら、どうにでも出来ますよ、その鳥くらい」

「鳥使いだから、殺せないでしょ」

 緊迫した空気の中、鶏肉も食べない癖に、と吐き捨てる。

「殺すなんて言ってませんよ。オレの味方に出来るってコトです」

 ひょこ、とが覗いてきた。

「何かこの部屋寒い? ビリビリしてるみたい。窓ちゃんと閉まってるよねぇ? ご飯出来たから食べようよ」

 昨日のうちに下ごしらえしてるのもあったから、結構豪華に出来たよ、とご飯と味噌汁をよそっていく。

 正方形の食卓に、とカカシが向かい合い、間にゲンマが座った。

「いただきま〜すv」

 はご機嫌で食べ始めた。

 カカシとゲンマと3人で一緒にご飯を食べるのが、の望む幸せの形の一つだった。

 黙々と食べるゲンマ、居心地悪そうなカカシ、3人で居られることが、は嬉しくて、微笑む。

「ね〜、ゲンマさん」

 食べながら、とゲンマは任務の話をしだした。

 相変わらず、2人の会話はとても自然で、カカシは新婚家庭に邪魔している気分で、面白くない。

 自分の方が間男の気分だ。

「・・・ねぇ」

 何とか割り込もうとするカカシ。

はまだ忍び成り立てでしょ? 里の状態がこうだって言うのは分かるけど、それにしてもがっちり任務しすぎじゃない? 最近はだいぶゆとりが出てきてるんだから、任務の合間に演習やったり、自分の時間をもっと持ったり出来る筈だよ。何でそんなに任務入ってるの?」

 疲れちゃうよ、とカカシは言い放つ。

、カカシ上忍に言ってねぇのか?」

「あ〜、うん。だってまだ分かんないし」

「え? 何?」

「あのね、来月の中忍試験に出るから」

「中忍試験? そっか、そんな時期か・・・」

「綱手様もアケビせんせぇも、出られるようなら出ろって仰ってるから。ゲンマさんの前で試合するのが楽しみv」

 ニコ、とは微笑む。

「あのな、オレは審判だっつの」

 そしてまた2人は次の中忍試験の話題で盛り上がった。

 カカシはふと気付いたことがあった。

 ゲンマが、一度も自分の方を見ないことに。

 常に人の目をシッカリ見ながら話すゲンマが、目を合わせずに話すのが嫌いなゲンマが、一度として、カカシの目を見ないのだ。

 今日、何度も会話を交わしているのに。

 余程後ろめたいことがあるのだ、カカシはそう思った。

 ゲンマはの方を見ていた。

 カカシはゲンマをじとっと見据えていた。

 その時、はカカシをじ〜っと見つめていた。

「・・・何か、三角形だねv」

「ぶっ。三角関係?!」

 がそんな言葉を知ってるとは思わなかった、と、カカシは味噌汁を吹き出しそうになった。

 今正に、この3人の関係がそうだ。

「え? 何? 視線を辿ると、今三角になってるなぁ、って思ったんだけど」

「あ、何だ、そういうこと・・・」

「ねぇ、カカシせんせぇ。私に言いたい事って何?」

「えっ」

 此処へ来てから、テンション上がりまくりで、色んな思いが飛び交いすぎて、当初の目的が吹っ飛びかけていた。

「え〜と、その・・・」

 ホントは2人きりで言いたい。

 ゲンマが居たら、言いたくない。

 昨日、言えなかったこと。

 そう思いながら目を泳がせていると、カカシは視線が止まった。

 の左手の薬指。

、指輪は?! 昨日あげたでしょ?」

「え?」

「何でしてないの? ちゃんとしてよ」

 指輪って何のことだ、とゲンマは眉を寄せる。

「あぁ、昨日の? カカシせんせぇに貰った大切なモノだから、無くすといけないから、カ〜君に預かってもらってるの」

「え〜、ちゃんとしてよ〜」

「だって、任務にはしていけないモン」

「う・・・」

「ね、話って何?」

「ま、また今度改めて言うよ・・・」

「? 急ぎの用だからわざわざ来たんじゃないの?」

「えと・・・;」

、もう出る時間だぞ。サッサと片付けよう」

 カカシが何を言いに来たのか、指輪とやらでゲンマは理解した。

 プロポーズするつもりで来たのだ、と。

 カカシが言う前にもう少しを丸め込んでおく必要があるな、とゲンマは思案した。

 手早く食器を洗って、食卓を片付けて拭くと、は額当てを取ってきて巻いていった。

 色んな巻き方がある中、これまでゲンマしかしていないこの巻き方、に似合うので、カカシはちょっと面白くない。

 誰も兄妹だからなどとは思わないだろう。

 カップルと思う筈だ。

 揃って玄関を出て、鍵を掛ける。

 ゲンマはに振り返って、ちゅ、と唇に触れた。

「じゃな、。任務気を付けて、頑張ってこい」

 ゲンマは手を振りながら、隣の自分の部屋に入っていく。

「うんv いってきますv」

 ニコニコと、は手を振った。

 カカシの心がザワザワしているのは当然である。

 いつも朝はこうなのか、と。

「ねぇ、カカシせんせぇv いってきますのチューしてv」

 ん、とは目を閉じてカカシに請う。

「・・・だから顔洗ってきてって・・・」

「む〜。汚くないよ! さっき洗ったでしょ!」

「だからゲンマ君と間接キスはイヤだって・・・」

 ワザと先にしていったな、とカカシは面白くない。

「ねv」

 はカカシの胸に縋り、再び請うた。

「もう、だからね、そうそう人前でキスするのは・・・」

「ゲンマさんはいつもいっぱいしてくれるのに、何でカカシせんせぇしてくれないの?」

 ぷく、とは口を尖らせる。

「あのね、外国人じゃないんだから、そんなに挨拶みたいにホイホイできないよ」

 ゲンマはことあるごとにしているらしい、というのは、今日見ただけで充分に分かった。

「私外国人だモン」

「屁理屈言わないでよ。今は木の葉の人間でしょ」

「カカシせんせぇがチューしてくれなきゃ、任務行けないよ〜!」

は忙しすぎるから、ちょっと休んだっていいじゃない」

「ヤだっ。中忍試験出るの!」

 ねv と催促する。

「だから・・・」

「も〜」

 は背伸びして、おもむろにカカシの口布を下げ、首に抱きついて引き寄せ、唇を重ねた。

 カカシが目を見開いたまま硬直している中、はディープキスをしていた。

 そして、ぎゅう、と抱きつく。

「よし! じゃ、いってきま〜すv」

 ニッコリ笑って拳を握ると、満足したようには駆けていった。

 呆然としている所へ、支度を調えたゲンマが出てくる。

「・・・気を抜いたらかっさらっていきますから。オレ、本気で奪う気でいますんで」

 じゃ、とゲンマはカカシの目を射抜くように見据え、スッと消える。

「なっ・・・」

 カカシは暫く立ち尽くし、当然のように集合に遅刻した。















 は相変わらず任務に飛び交っていた。

 里にいる間は大抵ゲンマと過ごし、カカシとはなかなか逢えずにいたが、毎日が充実しているは、何とか頑張っているようだった。

 中忍試験出場条件の8任務をクリアしたは、中忍試験を控え、数日の休暇を貰っていた。

 折角だから、部屋をもっと可愛くしよう、と買い物に出た。

「お花も飾ろうっと。でも任務に出ると枯れちゃうよね・・・観葉植物にするかな・・・いのちゃん家に行って、いいの見立ててもらお〜」

 は山中花店に向かった。

「ゴメンクダサ〜イ」

 ひょこ、と店内を覗く。

「あれ、さんじゃない。里に戻ってきて忍びになったってのはサクラから聞いてたけど、久し振りね」

 店番をしていたいのが顔を出した。

「うん。いのちゃんコンニチワv お部屋に観葉植物飾りたいんだ。見立ててくれる?」

「ん〜いいけど、どういう部屋なの? 独り暮らししてるんだっけ?」

「ゲンマさんには、メルヘンランドって言われてるけど」

「ゲンマ? あぁ、中忍試験の本戦の審判の人ね。楊枝だか千本だかくわえてたカッコイイ人でしょ。メルヘンランドって、可愛い系? さん、今時間ある? お部屋見に行きたいな」

「うん、いいよ。お休み貰えたから。今まで殺風景なお部屋にしかいたことないから、思いっ切り可愛くしたいの」

「どうせなら、サクラも交えて、女同士の秘密話しようよ。この時間なら、修行も終わってる筈だから。まだ陽も高いし、お料理も教えて」

「うん。嬉しいなv ずっと任務ばっかりだったから、ゆっくり出来るの久し振りだよ」

「母さ〜ん、ちょっと出掛けてくる〜!」

 取り敢えず火影邸に行ってみよう、といのとは出て行った。







 火影邸前までやってくると、丁度サクラが出てきた所だった。

「いの、さん。どうしたの?」

「ふふん。お待ちかねの、女同士の秘密話タ〜イム! 時間あるでしょ?」

 さんのお家に行くの、といのは続けた。

「へぇ。やったぁ。色々訊きたいことあるのよね」

「お料理は、何作る? どういうの作りたいの?」

「ん〜、お袋の味っぽいのかな。家庭的な感じの」

「男の人が喜んでくれそうな感じのよね」

「じゃあ、いつも作ってる感じでいいかなぁ。何にしようか・・・」

「最初はなるべく簡単なのね。イキナリ難しいのは無理よ」

「じゃ、商店街歩きながら考えようか」

 の行きつけの商店街に向かい、色々話しながら、買い物をしてアパートまで来た。

「へ〜、カカシ先生のトコからは結構あるのね。だから先生嘆いてるんだ」

 階段を上りながら、サクラはカカシの家の方向を見た。

「此処がゲンマさんのトコで、隣の一番奥が、私のお部屋だよ」

 鍵を開け、入って〜、と中を促す。

「結構広くない? 独り暮らし向きじゃないでしょ」

「うん。ファミリー向けだよ。だからお部屋余ってるの。一応、メインの寝室以外は、娯楽部屋と、仕事部屋と、服置き場にしてるんだけど」

 食材を食卓に置き、冷蔵物は冷蔵庫にしまった。

「台所広いね。使い勝手良さそう」

「お部屋見てもいい?」

「どうぞ〜」

 は寝室のドアを開け、2人を招き入れた。

「うっわぁ〜、ファンシーショップみたい!」

 カカシ先生のトコにいた時と全然違う、とサクラは見渡した。

「確かにメルヘンランドって言葉がしっくり来るわね。さんに似合ってて可愛い」

 2つの写真立てが目に留まる。

「カカシ先生とのツーショットとゲンマさんとのツーショットね。カカシ先生ってば、しまりのない顔〜。ゲンマさんって、改めて見るとカッコイイ人よね」

「九官鳥だ。さんって忍鳥が口寄せなんだっけ? その鳥・・・じゃないよね?」

「それは普通の九官鳥だよ。はたけ君って言うの」

 可愛いでしょ、とニッコリ微笑む。

「はたけ君って・・・」

「カカシせんせぇから貰ったの」

「うっわ、自分の名前つける? 普通」

「はたけ君、サクラちゃんといのちゃんだよ。ご挨拶してv」

「サクラモチ、イノブタ、プクプク、コロコロ」

「なっによ、この鳥! 教えてない言葉喋るの?! むかつく〜! 明らかにあの先生の鳥って感じよね!」

「あ〜、何か悪い言葉ばかり喋るんだよねぇ。私には可愛いこと言ってくれるのにな〜」

「カカシ先生の仕込みね、絶対!」

「でも、カカシせんせぇにも変なコト言うよ。あ、適当に座ってて。お茶入れてくるよ」

 は寝室を出て行った。

 2人は中央のテーブルを囲んで床のカーペットの上に腰を下ろした。

「あ、やっぱりいたわね、カカシ先生の人形。何で外見てるの?」

 サクラは人形を手に取り、腹にボスボス拳を入れた。

「何コレ〜。そっくり。ストレス解消に良いわね!」

 いのも面白がって、パンチを食らわせていた。

「あ〜、カ〜君いじめちゃダメ〜」

 お茶のお盆を持ってきたは、テーブルに置くと、取り上げて抱きしめ、座った。

「この香り、ホソのアップルティ? 流石良いモノ使ってるわね〜」

「今日行った商店街のもちょっと南にね、紅茶の専門店があるの。色々あって、楽しいよ」

 順にカップに注ぎ、勧めた。

「へ〜、今度行ってみようっと」

 紅茶の香りを楽しみ、口に含む。

「美味し〜。ねぇ、さん、カカシ先生とは今どういう感じなの?」

「どういうって? 変わらないよ」

「らぶらぶしてるの?」

「ん〜、任務が忙しくて、あんまり会えてないの。たまにちょこっと会えるんだけど、長い時間は、この前デートできただけで、ちょっと淋しい。もっと会いたいな。でも自立したいから、我慢してるの」

さんって、まだ忍び成り立てでしょ? 何かぎっちり任務ばっかりみたいだけど、そんなに忙しいの? その諜報部隊って」

「ん〜、特殊部隊では一番忙しいトコみたいだけど、早くノルマクリアしなくちゃだったから、普通より暇無く入れてたの」

「ノルマ? 何の?」

「来月の中忍試験に出る為に、8コ任務クリアしなくちゃだったの。昨日やっとクリアして、ちょっと長いお休み貰ったんだ」

「あ〜、冬の中忍試験か。もうそんな時期なんだ。他里の忍びはまだ余り見ないけど、何処でやるの? 今度は砂?」

「ううん。砂の里はまだ風影様が決まってないから、色々大変みたいで、木の葉でやるみたいだよ。来週くらいには、色んな里から来ると思うよ」

 参加証貰えるの来週だし、と紅茶を含む。

「サクラちゃんといのちゃんも出るんでしょ?」

「私は今回はパス。修行に専念したいから。もうちょっと、医療忍者っぽくなってからね」

 自分のスタイルを確立したい、とサクラは言う。

「私は出るわよ。サクラモチよりサッサと中忍になるからぁ」

 これでも私も毎日修行してるから、といのはふふんと笑う。

「ふ〜んだ。イノブタなんてすぐに追い越すわよ!」

「でも、チームとかどうするのかしら。スリーマンセルじゃないと参加できないんでしょ? ウチはシカマルが中忍になったから、チョウジと2人だけだし」

「私のトコも、後の2人は随分前に中忍になった人達だよ」

 でも私の方がちょっと年上なんだけど、と続ける。

「そうよね。何もチーム全てが下忍のスリーマンセルとは限らないのに、そういうチームの人って、どうやって参加できるの?」

「届け出の前に、受験者でスリーマンセルに割り振るみたいだよ。試験限りのチーム組むらしいの」

「それでチームワークとか上手く行くのぉ?」

「上に行く程、決まったチームじゃなくて、任務内容によってメンツが変わるって言うから、それくらいで上手く行かないような程度なら、中忍にはなれないって」

「そっか、そうよね」

「私、さんと一緒にやってみたいな。もう上忍レベルの能力持ってるって言うじゃない? 色々教わりたいわ」

さんなら、駆け足で上まで行けそうよね」

「私はね〜、それに望みを懸けてるんだ〜。早く上に行って、カカシせんせぇとの任務が出来る可能性を高くしたくって」

「カカシ先生は任務よりイチャイチャしたいみたいだけどね〜」

「アスマ先生から聞いてるわよ。カカシ先生、さんとイチャイチャできなくて、いっつも絡み酒でうんざりしてるって」

 男は女に惚れるとダメになる良い例だって、呆れてたわよ、と続ける。

さん、あんなカカシ先生の何処が良いの? 遅刻ばっかりだし、いつもやる気なさそうな感じだし、変な本ばっかり読んでるし。戦ってる時は、そりゃ頼りになるとは思うけど、普段の先生って、どうもね〜」

「え〜? カッコイイじゃな〜いv 最近はちょっと色々煩くて、何かイヤだったりするけど、でもやっぱり、一緒にいると嬉しくなって、ぎゅってされるとドキドキして、心がほんわかして、やっぱり嬉しいしv」

「見た目から怪しいじゃない。胡散臭そう〜って感じ。何処がカッコイイと思えるの?」

「え〜、カカシせんせぇのね、左側から見た横顔とか、カッコイイでしょ?」

 きゃv とは人形で示す。

「は? 左側? 向かい合って左じゃなくて、先生の左側ってコト?」

「それって、顔全然見えないじゃない。何処が良いの?」

「だって〜、綺麗なラインだし、あの隠された下はどうなってるのかなぁ、とか、ドキドキしてくるでしょ?」

 きゃきゃv とは嬉しそうにハートマークを飛ばす。

「どうなってるのかなぁって、さん知ってるでしょ?」

「隠されてるとドキドキするんだよv」

 の感性はよく分からない、と2人は息を吐く。

「お部屋可愛くできたら、またカカシせんせぇとデートしたいなv 中忍試験前だから、修行デートが良いなぁ」

 カカシのイチャイチャの夢は遠そうだな、と2人は思った。

 それから暫く、突っ込み、突っ込まれ、最近の事情を洗いざらい訊き出した。

「ゲンマって人と三角関係ってのは聞いてたけど、かなり深い三角じゃない。カカシ先生が煩いのが分かる気がするわ」

 カカシとゲンマとの三角関係。

 それは結構里でも有名らしく、気にするようにしたら、結構話題を耳にした。

 の話していたことによると、ゲンマはのピュアな性格を利用して、積極的に求めている、と。

 それがカカシは気に入らなくて、に言い聞かせてもは理解せず、はねつけるので、カカシは余計に煩く規制し、カカシを大好きで優しいも少々嫌がっている。

 が自覚しない限り、この三角関係はどんどん泥沼になりそうだ。

さんはカカシ先生とゲンマさんのどっちがより大切なの?」

「え〜? う〜ん・・・どっちも同じくらい大切だよ」

「カカシ先生じゃないの?」

「カカシ先生と付き合ってるんなら、カカシ先生って言うべきじゃないの?」

「え〜でも〜、ゲンマさんも大切なお兄ちゃんだし、お仕事教えてくれる隊長さんだし、やっぱりどっちもだよ」

「師匠が言うには、その違いが分かっているのは、師匠や自来也様と、ゲンマさんだって仰ってたけど・・・」

「ゲンマさんって、分かっててアピールしてるの? よっぽど好きなのね〜」

さん、さんから見て、カカシ先生とゲンマさんの違いって、何?」

「え? 髪の色?」

「そういう見た目じゃないわよ。心が感じるものよ」

「う〜ん・・・カカシせんせぇの方が、一緒にいる時やぎゅってされた時、ドキドキして嬉しいのが強いかな」

 それならはカカシを選んでいるのも同然だ、と理解した。

「つまり、カカシ先生はそれが分からずにハラハラして、ゲンマさんは分かっているから、姑息な手を使ってでも振り向かせようとしてるのね」

「姑息って何? ゲンマさんがどうかしたの?」

 はこれまでのサクラといのの会話を殆ど理解していなかった。

「ゲンマさんにも会ってみたいわね」

「もうすぐ帰ってくるよ〜。暗くなったし、お料理教室しよ」

「「お願いしま〜す」」

 が決めた献立は、基本的な味付けの仕方を覚えるもの、肉じゃがなどとサラダと、味噌汁だった。

 台所で、3人エプロン姿で立つ。

 は教えるだけで、2人に実際にやらせた。

「まずはだし汁を煮立てるね。それからこんにゃくは先に下茹でね。その間に野菜切って。食べやすい大きさにね。大きめでいいよ。切ったらジャガイモは水にさらして」

 まな板と包丁を2枚・2本使い、食材を刻んでいく。

「そしたらダシを取った煮干しとかは取り出して。調味料入れるよ」

「どれくらい入れるの?」

「砂糖大さじ2杯、醤油大さじ4杯、みりん大さじ4杯ってトコかな」

「ど、どれくらい?」

「目分量でいいよ」

「分かんないわよ〜」

「じゃ、見てて」

 は砂糖ポットからスプーンでざくっと砂糖をすくって入れ、醤油とみりんを、ボトルから直接、4回ずつ注いで見せた。

「お、おおざっぱすぎて分かんない〜」

「じゃ、最初は計量スプーン買って、それでやるといいよ。慣れてきたら目分量でね。かき混ぜて菜箸で舐めてみて、何が足りないかみるの。もうちょっとしょっぱい方が良いな〜って思ったら醤油を足して、甘みが欲しいな〜って時はみりんか砂糖を足して、食べる時の味に近くするんだよ。丁度良いな、っていうのを、舌で覚えてね」

 は舐めてみて、ちょっと足りないな、と思って、2人にその味を舐めさせて、足りない調味料を足して丁度良くなった味を、覚えさせた。

「私の味付けはこんな感じだよ。慣れたら好みで変えていってね」

「な、成程」

「じゃ、まず牛肉だけ入れて、色が変わるまで煮たら取り出してね」

 サクラといのは鍋を覗き込んで牛肉をかき混ぜて煮た。

「そしたら、野菜とこんにゃく入れて、軟らかくなるまで煮るの。ジャガイモやにんじんが菜箸でスッと刺せるようになったら、お肉を戻してもうひと煮して、出来上がりだよ」

 煮込んでいる間、次の調理に取り掛かる。

「同時進行は難しいよ〜」

「時間は有効活用しなくちゃ。出来るだけ短時間で作れるようにならないとね」

 最後に味噌汁の味噌の量でまた2人は目分量に悩み、具を煮ている鍋のだし汁の量と味噌の量を覚え、味見をして、感覚を覚えさせた。

「よっし、出来上がり〜。結構美味くできたと思うよ」

「でも、殆どさんの味付けだったよね・・・」

「最初はまだね。徐々に覚えることだよ」

 は食器棚から必要分の食器を取り出した。

「ん〜、ゲンマさん帰ってきてるかなぁ。居たら呼んでこようっと」

 ちょっと待ってて〜、とは出て行った。

 丁度帰ってきてベスト類を脱いでいたゲンマが居たので、は呼んだ。

 ゲンマを連れて、戻ってくる。

 当たり前のようにベットリ腕を組んでやってきたので、それがお似合いで、カカシが嫌がっているのが分かった。

「「お、お邪魔してま〜す」」

「何だ何だ、お料理教室の毒味させようってか?」

 千本を上下させながら、顔をしかめる。

「だいじょぶだよ〜。すぐ並べるから、座って。サクラちゃんといのちゃん、美味しそうに盛るのも大事だからね。丁寧によそってね」

 おっかなびっくり、そっと盛っていく。

「じゃ、食べよ〜。下ごしらえの時の調味料の味と、出来上がったものの味を比べて、感覚を覚えてね」

 いただきます、と揃って食べる。

「あ、美味しい・・・」

「何かカンドー・・・」

「ま、殆どの味だな」

「それ言っちゃダメ〜」

「ちゃんと作ったのは初めてか? が手伝ったんだろうが、ちゃんと美味いぜ。場数踏んで、自分の味を見つけろよ。慣れると、味付けってのは面白いモンだぜ」

 ゲンマから及第点が出て、2人は嬉しくなった。

「でもまだまだよね。さん、またコーチしてね」

「うん。いつでもいいよ。私が教えられることなら」

「ま、は任務のノルマクリアしたし、中忍試験が終われば、今までみたいな忙しさは無くなって、もう少しゆとりが出来る。働きづめじゃ、くたばっちまうからな。は間違いなく中忍になるだろうから、そうすりゃ、里にいる時間の方が多くなる。女同士の何とやらってのも、いくらでも出来るぜ」

「どうして里にいる時間が多くなるの? 任務で出ないの?」

「任務が入れば出るけどな。は、オレの執務の後継者になるんだ。不知火家特有の執務のな。中忍になったら、学ぶことになる。かつてオレもそうだった。オレの執務は重要機密だから、教えなきゃならねぇことが山程でな。ある程度、任務に出るより優先される」

「へぇ・・・不知火家って、昔結構有名だったって言うわよね。ゲンマさんって、諜報部隊の隊長さんなんでしょ? さんが執務の後継者って、ゆくゆくはさんが諜報部隊のトップになるってコトなんですか?」

「というより、特別上忍全てのトップだ」

「ゲンマさんは特別上忍で一番偉いんだよ〜」

「偉いってんじゃねぇよ。ま、とにかく、特別上忍を取り仕切る立場になるってコトだ」

「へ〜、さんは、巫女さんみたいな感じの象徴の方が似合いそうだって思ってたけど、どんな風な未来になるのか、ピンと来ないわ」

「でもまずは中忍試験に合格しなくっちゃね。カカシせんせぇに修行つけてもらいたいなv」

「修行なんてオレが見てやるよ」

「え〜? 特別上忍って、これから忙しいでしょ? 夏も毎日午前様だったじゃない」

「オレが忙しくなるのは、本戦の前だ。当分通常通りだよ。まだオレは関われねぇからな」

「あ〜、そっか」

「関われないって?」

「そう言えば、本戦が始まるまで、私ゲンマさんのこと知らなかったわ。第三の試合の予選の時に関係者がズラリ居たのに、ゲンマさんいませんでしたよね?」

「本戦で公平に見る為に、関われないんだって」

「え? どういう意味?」

「あぁ、オレは本戦の審判だからな。大名方や、お偉いさんも多く観に来るから、主役のガキ共に限らず、オレの方も含めて、下手なモノは見せられねぇからな。前もって受験者を見ていたら、特別な思い入れしちまうとマズイし、本戦までオレはノータッチなんだ」

「へ〜、何か大変なお立場なんですね」

「だから、サクラちゃん達の試合も観てないんだって」

「話は後から色々聞いてるけどな」

「あ! 私もまだ観てないよ! ゲンマさんももう観てもいいよね? アンコさんから借りてくるから、今度一緒に観ようよ」

「あぁ。構わねぇよ」

 食べ終わって、は食後の茶を煎れた。

「洗い物までがお料理だからね、お願いね」

「は〜い。サクラ、半分ずつ洗うのと拭くのやろ」

「うん。じゃ、私先に洗う」

 サクラといのは立ち上がって、流しに立った。

 はゲンマの背後から首に絡み付き、仲睦まじく中忍試験の話をしていて、サクラといのは、洗い物をしつつも、後ろが気になって仕方なかった。

 次はどうなるだろう、と殆ど後ろに意識が行っていた。

 本当にとても自然で、仲の良いカップルと言って、間違いではなかった。

 兄妹としての雰囲気ではない。

 ゲンマはを自分の前に引き寄せ、抱き上げて、膝の上に座らせた。

 はゲンマの首に手を回し、いちゃついているようにしか見えない。

 ゲンマの会話の誘導は、見事としか言いようがなかった。

 とても自然に、違和感なく、疑問すら持たせず、素直に受け入れさせている。

 事情を分かっているから、カカシから目を背けさせ、自分に向けさせようとしているのが分かったのだが。

 その巧みさに、ただただ感心した。

 を自分に振り向かせようと必死なのだろうが、それにしては巧すぎる。

 それが不知火ゲンマという男の、諜報部隊の隊長、特別上忍のトップという、実力、奥深さを物語っていた。

「洗い物終わっ・・・」

 手を拭いて振り返ると、軽くフレンチキスをしていたので、思わず背を向けた。

「あ、終わった? ありがと〜」

 ゲンマは見られているのが分かって、わざとしていた。

 はいつものことなので、気にもしていない。

「じゃ、オレは一旦戻るぜ。まだ話の続きがあるんだろ?」

 ゲンマはを下ろして、千本をくわえ直した。

 一旦と言うことは、また後で来ると言うこと。

 つまり・・・と2人は赤くなる。

「いえ、帰ります! 余り遅くなるとマズイし」

「そぉ? 試験まで暫く時間あるから、またいつでもお話しようねv」

「あ、そうだ。さん、ナルトが会いたがっていたわよ。もうちょっとしたら、修行の旅に出るから、見せたいモノがあるって」

「あ、そっか! 螺旋丸見せてくれるんだっけ。あ〜っ、ガマ仙人さんと一緒に行くんだよね? 早く会いに行って、パンフレットにサイン入れて貰わなきゃ!」

「パンフレット?」

「映画のだよ〜。すっごく面白かったの」

「あ〜、あれ・・・」

「赤い方の続刊まだ買ってないから、それも買ってサイン入れてもらお〜v」

「面白いの? あれ」

「すっごく面白いよ! 何度読んでも良いんだよ〜」

 明日赤いの買いに行こう、とニコニコ話した。

「じゃ、私達は此処で。さん、良い感じのがあったら、用意しておくから、また店に来て」

「あ、ありがと〜、いのちゃん。よろしくね」

 玄関を出た2人を見送って、は鼻歌交じりに浴室に湯を張りにいった。








 一方、帰路を歩くサクラといの。

「ねぇ、さんは、どっちとくっつく方が良いと思う?」

「ん〜、さんは、カカシ先生しか見てないんでしょ? ゲンマさんはあくまでお兄ちゃんとして頼ってるだけみたいだし。まぁ、あれはちょっと兄妹っていうには限度が過ぎてるけど」

さんの天然でピュアな性格が、関係をややこしくしてるのよね。こればかりは誰が言っても理解出来なそうだし・・・」

「っていうか、周りが、どっちか片方に肩入れできないから、3人一緒を望むさんに、突っ込めないんだと思う。誰か、ビシッとカカシ先生だけの味方でもいれば、変わってくると思うんだけどね」

「・・・何か、どっちも可哀相だよね。カカシ先生は全然良い思いさせてもらえてないし、ゲンマさんは、さんがカカシ先生を見てるから自分の方を向いてくれないし」

「極端にいうと、心はカカシ先生、身体はゲンマさんって感じ?」

「どっちもやるせないわね、それ」

 夜空の月を見上げ、2人は深く息を吐いた。







「じゃ、オレも一旦戻るぜ。風呂済ませたら、また来る」

「え〜、ガスとお湯が勿体ないよ。ウチで入ればいいじゃない」

「それじゃ何の為に独り暮らししてるんだよ。自立ってのは、1人で生きていく術を身に付けるんだろ? なしくずしに入り浸りじゃ、いつまで経っても一人前にゃなれねぇぞ」

「ん〜、でもそれじゃ、一緒にも寝ちゃダメなんだよね?」

 ゲンマは、しまった、と墓穴を掘った。

「訓練で来るだけだ。ちゃんと戻る」

 そう言いつつ、戻るつもりはないのだが。

 お互いに自宅で風呂を済ませ、明日の朝食の仕込みをしたり、洗濯物をたたんで、汚れ物を洗濯機に投げ込んでセットしたり、色々やっているうちに、すっかり夜が更けた。

 がベッドの上で火の国レジャーガイドを見ていると、ゲンマがやってきた。

 ゲンマはの手から本を取り上げて置き、口づけしながら、ベッドに押し倒す。

 くまなく愛撫して、を求めた。

 これは任務の訓練だ、と思いこんでいるは、素直にゲンマを受け入れた。

 自我を失わないようにと思いつつも、心地好さには浸って、喘いで、身悶えた。

 ゲンマの求愛に、頭の中は真っ白で、訓練ということを忘れかかっていた。

 それを見て、ゲンマは当然益々のめり込んでいく。

 一線を越えそうになる。

 でも、もしその線を越えた時、に突き放される言葉を言われたら。

 それが怖くて、先に進めない。

「? ゲンマさ・・・?」

「・・・オマエ、まだまだだな。意識があるうちに、目覚ましセットして寝ろ」

 ゲンマは上体を起こして、立ち上がろうとする。

「帰っちゃうの?」

「・・・トイレ借りるぜ」

 暫く立つと、ゲンマは戻ってきて、ベッドに潜り込んだ。

 まだ身体が余韻に浸っているは、ほけっとして、気に留めずにいた。

「試験まで、修行も大切だが、ゆっくり休めよ」

「うん」

 ちゅ、と唇に触れ、を抱きしめた。

『何とかして・・・カカシのプロポーズ受けさせねぇようにしねぇとな・・・』

 どうすればもっと自分を見てくれるか、ゲンマはあれこれ考えながら、目を瞑る。

『明日はカカシせんせぇに会えるかなぁ・・・またデートしたいな・・・早くカカシせんせぇに会いたい・・・カカシせんせぇの夢が見れますように・・・v』

 愛しい女を抱きしめて、ゲンマは眠る。

 ゲンマに大切に扱われて深く愛されながら抱きしめられているは、頭の中はカカシでいっぱいだった。

 ゲンマに抱きしめられて心地好さを覚えつつも、カカシで頭の中を埋め尽くして、は寝入った。