【自覚−ゲンマVer.−】 木の葉の最大の脅威、大蛇丸が来襲した。 サスケが狙われている。 そのことにより、カカシが修行の為に家を空けると言い出した。 出たら、当分帰ってこないという。 それ自体はどうと言うことではなかったが、問題は、カカシの最愛の人・がカカシの家から出られなくなると言うことだった。 は、首のチョーカーにカカシのチャクラを練り込んでもらわないと、外に出ることが出来ない。 印の効力は24時間。 その不思議を研究院で調べてもらっているが、謎は解明されないままだった。 に働いているその障壁の問題は、伝説の三忍の1人、自来也の考えで何とか暫定的にクリアした。 カカシは修行に出て、も24時間以上、外に出られるようになった。 最初は単純に外にずっと出られることを喜んでいただったが、カカシと離れた初めての夜、は気付いた。 “独り”が、とてつもなく寂しいことに。 昼休み、アカデミーのテラスでゲンマと昼食を摂るは、気丈に振る舞ってはいたが、時折、寂しそうな表情を見せた。 夕方にゲンマの家に行って夕食を作るは、ぽつりと洩らした。 「茄子のお味噌汁作りたいな・・・」 カカシの好物。 は嬉しいことがある時、よく作るという。 作りたいのなら作ればいいのに、と思うが、ハタと気が付く。 寂しさが増すだけなのだと。 食べて欲しい、その人がいない。 会いたくても、会いに行けない。 は、寂しそうだった。 寂しさを紛らわせようと、ゲンマはに修行を付けた。 数日を見ていたゲンマは、これ以上を放ってはおけない、と、自分の家の泊まるよう、誘った。 出来る限り、を自分の目が届くところに置きたかった。 は障壁から半分解放されているのだ。 カカシの家にとどまっている理由はない。 ゲンマの家にだって泊まれる。 寂しさに付け込んだ悪党の気分だったが、がぱぁっと嬉しそうな顔をしたので、自分で勝手に打ち消した。 これでいいんだ、と。 「ゲ〜ンマさんv 来ったよ〜v」 夕食後、大荷物ではゲンマの家に戻ってきた。 「おいおい、何なんだ、その大荷物は」 引っ越しか、民族大移動だな、とゲンマは眉を寄せる。 「え〜? 服とか、着替えだけだよ? 他はゲンマさんの家にもあるでしょ?」 「服っつったって、かなり多くねぇか? 布きれ少ねぇ服しか着ねぇくせに」 「一杯買ってもらってるから、一杯あるんだモン。ゲンマさんが買ってくれてる服が、かさが多いんだよ〜」 「ハイハイ、悪かったな。・・・何だ? ソレ・・・」 ゲンマは、が大事そうに抱えてるモノを見て、顔をしかめた。 「あっ、えへへ。カカシせんせぇだよv」 赤ん坊大の、カカシにそっくりな人形。 は満面の笑顔で、ゲンマに自慢そうに見せた。 「何だってそんなモン・・・」 「だって、コレがないと眠れないモン」 ぷぅ、とは人形を抱き締めて頬を膨らませた。 「ガキか、オマエは」 高楊枝で、ゲンマは吐き捨てる。 「カカシせんせぇの温もりがないと眠れないの!」 『家でまで見張られてんのかよ・・・ったく・・・』 息を吐きながら、むに、とゲンマはカカシ人形の頬を抓った。 遠くでカカシが、「いてっ」と言ったとか、言わないとか。 「ま、いいや。、荷物オレの部屋に置いてこい。修行に行くから、着替えて来いよ」 「ハ〜イv」 が部屋に消えるのを見届けると、ゲンマも椅子に掛けていたベストを着直し、額当てを巻いて準備した。 近くの演習場に来て、夜が更けるまで修行を付ける。 もっぱら、基本体術の応用だった。 基礎体力の向上をメインに、ゲンマは修行メニューを組み立てた。 は数多くの術をカカシから習っているので、体術を強化すれば、より強く術を発揮できる。 忍びとしての基礎が特にきちんと出来ているゲンマは、教え上手と言うこともあり、の上達は、とても早かった。 「ゲンマさんって教え方上手いよね。飲み込みやすいモン」 クナイや手裏剣、千本を拾い集め、は微笑んだ。 「バ〜カ。オマエの覚えが早いんだよ」 「そろそろ千本ピュッてやるコツを・・・」 「ダ〜メ〜だ。まだ早ぇ」 「ちぇ。ケチ〜」 こっそりはゲンマの使っていた千本をくわえ、飛ばしてみた。 「ありゃ。ダメだ」 ゲンマのように真っ直ぐ強く遠くまでは飛ばせず、すぐ近くに放物線を描いて落ちた。 「コラ。口周りに筋力のねぇオマエにはまだ無理だっつっただろうが」 コツン、とゲンマはの頭部を小突いた。 「あ、えへへ。見つかっちゃった」 ペロ、と舌を出してはにかむ。 「片付けも済んだことだし、帰るぞ。大分遅くなっちまったからな」 「ハ〜イv」 ゲンマは大分速度は遅くしているつもりだったが、が自分に付いてこれるので、もう少しレベルアップしても大丈夫だな、と思った。 「ゲンマさんトコのお風呂ってカカシせんせぇのトコと同じ感じだったよね。沸かしてくるよ」 には以前部屋掃除をしてもらったことがあったので、ゲンマの家の構造は知っていた。 家まで戻ってくると、は浴室に消えた。 ゲンマは部屋に行き、ベストを脱いでハンガーに掛け、額当てを外して机に置いた。 振り返ってベッドを見て顔をしかめる。 カカシ人形が鎮座ましましていたからだ。 「ったく・・・勘弁してくれ」 吐き捨てると、ゲンマは人形を机の上に背を向けて置いた。 息を吐き、ソファに腰掛ける。 「ゲンマさ〜ん、もうすぐお風呂沸くからね〜」 忍者服姿のがゲンマの部屋に入ってくる。 人形が移動していることを不思議に思いながらも、の興味は机の上の、別のモノに行っていた。 「あぁ」 ゲンマが背を向けていたので、そっと手に取る。 木の葉の、額当て。 『巻いてみたい・・・いいかな・・・』 ゲンマを伺い見ながら、こそっと巻こうとする。 その時。 「コラ。何してる」 の背後に立ったゲンマが、の手の中の額当てを奪い取っていた。 「あ〜ん」 が手を伸ばすので、獲られないように高く上に上げた。 「ちょっとだけ巻かせて〜」 ぴょんぴょんとは飛び跳ねる。 が背が高く手足が長いと言っても、ゲンマに敵う訳もなく、どうやっても届かない。 「ダメだ。正式に忍びになれるまで我慢しろ」 「ちょっとぐらいいいでしょ〜?」 「ダ〜メ〜だ」 「ゲンマさんってケチ〜」 ぷぅ、とは膨れた。 「何言ってんだ。コレはオレのだ。木の葉の忍びとして一人前だと認められた証だ。半人前のオマエに貸すことは出来ねぇよ」 「ちぇ」 「分かったか?」 「は〜い」 渋々諦めると、は人形をこちらに向け、幸せそうに撫で、風呂の湯加減を見に行った。 ゲンマは即座に向きを変える。 「ゲンマさん、お風呂いつでも入れるよv」 人形が目に入ったは、アレ? と首を傾げる。 ゲンマは知らんぷりして、着替えを持って浴室に向かおうとした。 「ね〜ゲンマさん、一緒に入ってもいい?」 つんつん、と袖を引っ張って請う。 「あぁ? 何言ってやがる。風呂くれ〜1人で入れ」 「何でぇ? カカシせんせぇもずっとダメって言ってたしさ〜、何でダメなの? 背中流しっこしようよ」 ぴと、とゲンマに抱きついて上目遣いにゲンマを見上げる。 「カカシせんせぇは照れてるからダメって言うんだってゲンマさん言ってたよね。ゲンマさんも照れてるってコト? 何で?」 「馬鹿言ってんじゃねぇ。ガキじゃねぇんだから、テメェのことはテメェでやれって言ってんだ。何か? 1人で風呂も入れねぇ程お子様か? は」 ゲンマの鋭い眼光が、を見つめ返した。 「違うモン!」 「じゃ〜おとなしく待ってろ」 やんわりとを引き剥がすと、ゲンマは浴室に向かった。 『コリャ毎日格闘が続きそうだな・・・』 ゲンマは湯船に浸かり、ふぅ、と大きく息を吐いた。 「、空いたぜ。入ってこい」 金茶色の細い髪から水滴が滴り落ちる。 うるさそうに掻き上げると、後ろに飛び散った。 「ハ〜イ。ゲンマさん、背中流してくれる?」 着替えを用意して待っていたは、再びぴと、とゲンマに絡み付いた。 「馬鹿言ってんじゃねぇっつっただろ。1人で入ってこい」 ホレホレ、とゲンマはを押し出す。 「ちぇ」 仕方なしには浴室に向かった。 「あ。シャンプーとボディソープ、持ってこなかったよ。ゲンマさんの使っていいかなぁ」 ゲンマさ〜ん! とは浴室から大声を張り上げた。 「何だ、騒々しい」 ガラ、と浴室の扉が開く。 全裸のが風呂椅子に座ってシャワーを浴びていた。 ゲンマは顔色一つ変えず、何事か尋ねた。 「あのね、シャンプーとボディソープ忘れたの。ゲンマさんの使ってもいい?」 「何だ、そんなことか。勝手に使え」 ったく、とゲンマは吐き捨てて扉を閉める。 「ありがと〜v 良かったv」 「ったく・・・何食ってりゃあんなに発育するんだろうな・・・?」 見るところはしっかり見ていたゲンマだった。 が風呂に入っている間、ゲンマは髪も乾かさず、ソファで小説を読んでいた。 カカシのイチャパラと違って、歴史小説だったが。 大分読み進めた頃、も戻ってくる。 「アレ? ゲンマさん、まだ髪乾かしてないの? 夏だからって、風邪引くよ?」 とてとて、と歩いてきてベッドに腰掛ける。 はゲンマが買い与えた、ベビードールさながらのセクシーなネグリジェを身につけていた。 髪を纏めていたタオルを解き、パサリと落ちる。 腰まで届く長い黒髪は、腰掛けるベッドにまで届いた。 「オマエみてぇに長くねぇし、すぐ乾くよ」 「ダメだよ〜。待ってて、私すぐ乾かすから」 洗面所から持ってきたドライヤーで、は手早く乾かしていった。 髪を梳く仕草が、色っぽかった。 チラリと垣間見つつ、ゲンマは小説を読み耽る。 「ハイ、ゲンマさんv」 乾かし終えて、ドライヤーをゲンマに差し出す。 「いいっつってるだろ」 「じゃあ、私が乾かす〜!」 立ち上がって、ゲンマの元まで歩み寄った。 「ったく・・・勝手にしろ」 吐き捨てるゲンマだったが、の髪を梳く指の柔らかさが、心地好かった。 思わず、浸ってしまう。 小説の内容も頭に入ってこなかった。 仕方なしに、ゲンマは小説を閉じた。 「終わり〜♪ 湯冷ましの水分補給した? ゲンマさん」 「いや」 ハッと我に返った。 「じゃあ、適当に持ってくるねv」 はタオルを洗濯機に投げ込んでセットし、ドライヤーを洗面所に戻すと、コップを2つ、清涼飲料水を入れて持ってきた。 クィ、と飲みながら、再び小説を開くゲンマ。 はベッドに腰掛け、こくこくと飲んでいる。 「ゲンマさんの飲み方ってお酒呑んでるみたい」 様になってる、とは微笑む。 「あ? オレは里一の酒豪らしいからな。癖だろ」 「聞いてるよ〜。お酒に関しては、誰もゲンマさんに勝てないって。酔っぱらったこと無いってホント?」 「あぁ・・・ねぇな、確かに。酔うってどういうコトか教えて欲しいくれぇだ」 酒で勝ったからってどうだって訳でもねぇからどうでもいいが、とゲンマは飲み干す。 も飲み干し、洗う為にゲンマから受け取って台所に向かった。 「酔っぱらったゲンマさん見たいな〜。ご機嫌になったりするのかなぁ」 カカシせんせぇみたいに、とは背後からゲンマに抱きつく。 「オマエも酔わねぇんだろ? そのうち飲みにでも行くか」 豊かな膨らみが押しつけられても、ゲンマは顔色一つ変えない。 「わ〜い♪ 飲み比べしよ〜♪」 「酔わねぇモン同士で飲み比べしたってつまんねぇだろ。普通に飲み食いさせろ」 「そっか〜。ゲンマさんに勝ったら額当てさせてって言おうと思ったのに〜」 「ダメだっつってるだろうが。忍者になるまで待てねぇのか。せっかちだな」 「ゲンマさんは勝ったらどうしたい?」 「え・・・」 ゲンマは一瞬、言葉を詰まらせた。 「・・・そうだな。かぼちゃのフルコースでも作ってくれ」 「ゲンマさんらし〜」 けらけら笑っていると、ゲンマの膝の上が空いているのに気が付き、はするりとゲンマの膝の上に滑り込み、座った。 「抱っこv」 「・・・おい。邪魔だろうが。どけ」 「いいじゃな〜いv だって此処のソファ、1人掛けなんだもん。隣に座れないし〜」 ぴと、とゲンマの首に絡み付く。 「あち〜んだよ。離れろ」 べりっとを引き剥がすと、抱き抱えたまま立ち上がり、ベッドの上に下ろした。 「ちぇ。スキンシップは大切だって本に書いてあったのに〜」 「どうせ、“初めての育児”、とか言うんだろ」 「え? うん。よく分かったね〜。流石ゲンマさん、物知り〜」 はぁ、とゲンマは気だるげに息を吐いた。 は時計を見遣った。 大分遅い時間だった。 「ゲンマさん、寝ないの?」 「あぁ、もうすぐ読み終わるから。先に寝てろ」 ゲンマは夢中で小説を読み耽っている。 ように傍からは見えた。 胸の中を渦巻くものは、ゲンマにしか知り得ない。 「じゃあ私も本読んでよっと」 荷物からイチャパラを取り出しては読み耽る。 「別にオレに付き合わなくたっていいんだぜ」 「家主より先に寝れないよ〜」 「ほぅ。オマエにそんな気遣いが出来るとはな。しょうがねぇな、寝るか」 ゲンマは小説を閉じ、灯りを消した。 もベッドを降りてイチャパラをしまう。 その間にゲンマはベッドに潜り込んだ。 は当たり前のように、ゲンマのいるベッドの中に入ってきた。 が、もれなくコブ付きで。 「・・・おい、何だそれは」 カカシ人形持参のに、ゲンマは眉を寄せる。 「え、だって、コレがないと眠れないし・・・」 もぞもぞ、と布団の中に入り込み、ゲンマを見上げる。 「カカシ上忍のチャクラだったら、その首飾りで充分だろ? 人形はなくてもいいだろうが。ガキじゃあるまいし」 「あ〜うん、そうだけど〜、やっぱり心配だし〜」 「オマエ、いつもオレの傍でもよく寝てるだろ? オレじゃ役不足か?」 ていうか邪魔だ、と心の中でこっそり思う。 「そっか。そうだよね。じゃあ、此処にいてもらお〜。オヤスミ、カカシせんせぇv」 枕元に人形を座らせると、はゲンマにしがみついた。 くっついている部分が火照って熱い。 「あち〜からくっつくなっつってるだろうが」 「ヤだ〜。ゲンマさんも胸板厚〜い、気持ちイ〜v」 ごろにゃん、とは聞く耳を持たない。 「ったく・・・ガキだな、オマエは」 5歳児の子守してる気分だ、と息を吐く。 別の思いが去来してることなど、は気が付かない。 「えへ。あ、ゲンマさんは何時に起きるの?」 「6時だ」 「じゃあ私、5時半くらいでいいかぁ」 「別に6時で構わねぇよ。カカシ上忍みてぇにどっか行く訳じゃねぇしな」 「そぉ? じゃ、オヤスミナサ〜イv」 「あぁ」 ぴと、とはゲンマに抱きついて既に寝息を立てている。 にゲンマが言っている“暑い”は“熱い”だったが、それは知られてはならない。 この思いは、秘めるもの。 『カカシ上忍の苦労が身にしみて分かった気がするぜ・・・』 を相手にしていると、平常心がいくつあっても足りない。 今日ゲンマはいくつ消費したことやら。 『ま、いいや・・・寝よ』 を腕の中に取り込んで、ハタと気が付く。 枕元のカカシ人形。 『ったく・・・寝てる時まで監視されてたまるか』 心の中で吐き捨てながら、ゲンマは人形を一段上の台に置き、背を向けさせた。 朝。 射し込む陽光の暑さで、ゲンマは目が覚める。 間もなく目覚まし時計も鳴る頃だ。 とは、あられもない状態で絡み合って眠っていた。 気持ちよさそうに寝息を立てているを見て、目覚ましのスイッチを止めて優しく抱き締める。 それ以上の気持ちをぐっと堪えて、の頭を撫でた。 「ん・・・ぅん・・・」 が覚醒してきた。 むにむに、と目を擦る。 「おはよ〜、ゲンマさん・・・」 「あぁ、おはよう」 ぴと、と強くしがみつく。 「もちょっと・・・」 「じゃあ、朝飯はオレが作るぜ」 その言葉に、は覚醒してガバッと起きた。 「私が作る!」 「そうか。寝惚けて火傷すんなよ」 ニヤニヤ笑いながら、がネグリジェを脱ぎ捨てるのを眺めていた。 「ダイジョブだよ〜」 ごそごそ、とはバッグの中の衣服を漁る。 最近のお気に入りの、チュニックのミニスカワンピを着た。 朝からあち〜な、とゲンマも上体を起こした。 はらりと落ちてくる前髪を、うるさそうに掻き上げる。 陽光に照らされて、ゲンマの髪は眩しかった。 枕元の台の上の千本にも陽が当たり、キラリと反射する。 じっとがゲンマを見つめている。 「? 何だ? 」 「男の人って必ず朝はおっきくなるってゆ〜けど、ゲンマさんはなってないね? 誰もがそうって訳じゃないんだ?」 の視線はゲンマの股間に集中している。 「人を不能みてぇに言うな。修行を積めば正常を保つことだって出来るんだよ」 「ふ〜ん。よく分かんないけど。ご飯作るねv すぐ出来るから待ってて〜」 『ったく・・・が起きる前に戻しておいて良かったぜ』 より寝坊は出来ねぇな、とゲンマは息を大きく吐いた。 が朝食を作っている間、ゲンマはストレッチなど、簡単な運動をしていた。 鍛錬は、日頃からの日課だった。 身体を鍛えれば、心も強くなる。 靄靄を吹き飛ばす為、力を入れて励んだ。 そして平常心を取り戻す。 「ゲンマさ〜ん、出来たよ〜v」 の作る食事には、必ずかぼちゃ料理が一品あった。 今朝もある。 ゲンマは無類のかぼちゃ好きなので、嬉しかった。 「おぅ、悪ィな。今行く」 滴る汗をタオルで拭き、食卓に着く。 「いっただっきま〜すv」 ゲンマも手を合わせ、静かに食べ始めた。 モリモリと美味しそうに食べているゲンマを見て、は嬉しそうに食べ続けた。 「あのね、ゲンマさん。私、水着買いたいんだけど」 「水着? 何でまた」 確かに今は夏だが、とゲンマは味噌汁を啜りながらを見遣った。 「ガマ仙人さんがね、遊びに来るなら水着着ろって。私持ってないから、ゲンマさん可愛いの選んで」 「あぁ・・・成程ね。ったく・・・ま、いいけどな。今日の仕事はさして急ぎでもねぇし、付き合ってやるよ」 「わ〜いv ありがと〜v」 ゲンマは仕事が始まるまでの間、小一時間程林で朝修行を毎日しているというので、もそれに付き合った。 基本忍術をいくつも繰り返しているのを見て、も真似た。 屋内執務がメインのゲンマは、こういう時間くらいしか修行が出来ない、と言っていた。 昼休み、昼食を摂った後、ゲンマはを連れて商店街に来ていた。 「何処にすっかな・・・」 ゲンマは水着の種類が豊富な店に入った。 いらっしゃいませ、と元気のいい店員達が声を上げる。 近くにいた店員を呼び止めると、この女性に似合う物を何点か見せてくれ、と頼んだ。 をまじまじと見つめると、嬉しそうに店員は店内を駆け回った。 数点持ってきて、試着室に案内される。 勿論、全てビキニだった。 きわどいセクシーな物もある。 あの人を喜ばせるだけだな、とゲンマは思ったが、が一番気に入ったのが、そのきわどい水着だった。 「珍しいな、オマエから気に入るなんて。いつも、オレにまず意見訊くくせに」 「ゲンマさんでしょ、優柔不断直せって言ったの」 ニコ、と微笑むのビキニ姿が眩しい。 「どぉ? これでいいかな?」 「おい。自分でそれに決めたんじゃないのか」 「だって〜、一応ゲンマさんにも決めてもらった方が・・・」 「何だ? オレが違うのがいいっつったら、それにするのか?」 直ってねぇじゃねぇか、と眉を寄せて吐き捨てる。 「ん〜・・・ううん。これにする!」 「よし。それでいい」 脱いで会計に向かって、は財布を出した。 「オレが買ってやるって」 「え〜、結構高いよ?」 「気にすんな」 「えへ。ありがと〜v」 るんるん気分で、は水着の包みを前につきだして、鼻歌交じりに歩いていた。 「カカシせんせぇが帰ってきたら一緒に水遊びしたいな〜v コレ喜んでくれるといいなぁv」 「カカシ上忍が好きそうなのだから、喜んでくれるだろ」 「やっぱり? コレにして良かったv」 ぴと、と嬉しそうにはゲンマに絡み付く。 『ったく・・・どうして他の男の話を嬉しそうにしながら、オレにしがみつくかねぇ・・・』 困ったモンだ、とゲンマは息を吐いた。 「ね〜、ゲンマさんも一緒に遊びに行こうよ〜。今日のお仕事急ぎじゃないんでしょ? 来て来てv」 甘えるような声で、はゲンマの腕を引っ張る。 「ん〜? あぁ・・・まぁ、挨拶くれぇしとくか・・・。顔出しには行ってやるよ」 「ガマ仙人さ〜ん。来たよ〜v」 ゲンマと連れだって、は水べりに来ていた。 「おぉ〜、、待っとったぞ」 ゲンマは取り敢えず、ペコリと頭を下げた。 「ゲンマも一緒か。不知火の任務は暇なんかのォ」 「が来いって言うから来ただけですよ。の保護者代わりとしては、お世話になるなら一応ご挨拶をと思いまして」 「から聞いとるのォ。兄代わりをしとるそうだのォ」 「えぇ、まぁ」 「ホントにそれだけかのォ」 げへへ、と下卑た笑みを浮かべる自来也。 「どういう意味です?」 分かっていて、聞き返した。 「それ以上の目で見とるんじゃないのか? ゲンマ」 「そんなことありませんよ」 鉄面皮で、しれっと言い放つ。 「そうかのォ」 きょとん、としては2人のやりとりを眺めていた。 「ガマ仙人さん、私、水着に着替えますねv」 「おぉ〜、そうかそうか、どんな水着かのォ」 「えへ。可愛いの買ってきましたv」 「それは楽しみだのォ」 おもむろにはワンピースを脱ごうとする。 自来也が喜んだのは言うまでもない。 「コラ。オマエは羞恥心を持て。木陰で着替えろ」 コン、とゲンマは眉を寄せての頭を小突いた。 「え〜そぉ?」 「ワシは構わんのォ」 「何言ってるんです。変なこと吹き込まないで下さいよ」 「さて、ワシは知らんのォ」 を木陰に追いやると、少し離れたところで、ナルトが身悶えてるのが目に付いた。 「・・・何やってるんです? アイツは」 「ナルトか? 口寄せを会得させとるんだのォ」 「へぇ。アイツ基礎がなってませんから、苦労してるんじゃないですか」 「その通り! 才能無いんだのォ。上手く九尾の力を操れるようになればのォ」 「そんなこと出来るんですか?」 「ま、暫くは悪戦苦闘させとくのォ。他人に教えられるより、自分で気が付き身に付ける方がいいからのォ」 「本戦が楽しみですね」 「そう言えばゲンマ、本戦の審判だったのォ」 「はぁ」 「ナルトは強くなる。しっかりと見届けるんだのォ」 ニヤリ、と自来也は不敵な笑みを浮かべた。 「そ・・・」 「ゲンマさ〜ん、紐結べないよ〜! 手伝って〜!」 少し離れた木陰から、助けを請うの声。 「ホレホレ、愛しのが呼んどるぞ」 全く、オマエがおらんかったら着替えシーンを覗けたものを、と言いつつにやける自来也。 「変な言い方せんで下さい」 ったく、とゲンマはの元に向かう。 「紐結んで〜。上手くできないよ〜」 「ったく。あのな、テメェ1人で着れる水着にしろ」 しょうがねぇな、とゲンマはあられもない姿のの水着の紐を結んでやった。 「だって可愛いの着たかったんだも〜ん」 よし結べた、とゲンマはポン、との頭に触れる。 「どぉ? ちゃんと着れてる?」 くるん、とが振り返る。 弾けるように、豊満な膨らみがたわわに揺れた。 「あぁ。似合ってるよ」 真っ白な布地に、花のアップリケがいくつも付いた、ハイレグの紐のビキニ。 にとてもよく似合っている。 カカシ上忍なら見惚れて固まっていただろうな、とゲンマは思った。 くるくる、と簡単に髪の毛を纏めてアップに上げると、は川べりに向かった。 「ガマ仙人さ〜ん、ど〜ぉ〜?」 「おぉ〜〜!! いいのォ、いいのォ! ぴちぴちだのォ!」 は楽しそうに、水の中に入った。 「水冷たくて気持ちいい〜v」 きゃっきゃっと水と戯れるは、誰から見ても眩しかった。 「今のウチだけだのォ」 「何がです」 大蛇丸の来襲に備えて、楽しんでいられるのは、という意味か、とゲンマは神妙な顔になる。 「オマエさんがカカシからを奪えるチャンスだのォ」 にへら、と自来也はしまりのない顔で笑う。 この人を少しでも信じたのが馬鹿だった、とゲンマは頭を抱えて大きく息を吐いた。 「ったく・・・あのですね、何度言ったら分かるんです。はカカシ上忍しか見ていませんよ。オレはただの兄貴分です。変なこと言わんで下さいよ」 「そうかのォ? まだ付け入る隙はあるんだのォ」 の性格を見抜かれてる、とゲンマは戦々恐々とした。 「じゃ、オレは帰りますんで。仕事中なんで。を宜しくお願いします」 「おぅ、任されたのォ」 「! オレは仕事に戻るぜ!」 「え〜っ、もう? 遊んでいこうよ〜」 「今度な」 膨れているを尻目に、ゲンマはその場から消えた。 「ん? 誰かいたのかってば?」 ナルトは、オタマジャクシと格闘していた。 「水遊びは楽しかったか、」 水面歩行を練習しながら、水の上で対戦形式で修行をした後、ゲンマはに尋ねた。 「うんv ガマ仙人さんも何か喜んでいたみたいだし、楽しかったv 色んな所のお話しして下さったよ」 「あちこち放浪してるからな。それだけか?」 「ん? 色々、ためになること教えてくれたよv」 「どんな?」 「内緒って言われた」 何を吹き込まれたやら、と息を吐いて家に戻った。 「ね〜ゲンマさん、一緒にお風呂入ろうよ〜」 風呂が沸くのを待っている間、はずっとゲンマにべったりだった。 ゲンマが何度引き剥がしても、すぐにまたくっついてくる。 「ガキじゃねぇんだから1人で入れっつっただろうが。いい加減にしろ」 このお子様め、とゲンマは吐き捨てる。 「お子様じゃないから一緒に入るんでしょ〜。ゲンマさんと背中流しっこしたい〜」 ぶ〜ぶ〜とは膨れてゲンマの服を引っ張る。 「意味分かって言ってんのか? 。一緒に風呂に入るのはカカシ上忍だけにしとけ」 「だって・・・カカシせんせぇには会えないし・・・」 うりゅ、とは瞳を潤ませる。 「〜〜〜っ、しょうがねぇな、分かったよ」 「わ〜い♪」 一変して笑顔になったは、嬉しそうにゲンマの首に絡み付いた。 全裸の男と女が、浴室に2人きり。 髪と顔は洗い終えた。 ゲンマは、心頭滅却すれば・・・などと言いながら、冷水を被った。 「ゲンマさん、全身洗いっこしようねv」 そう言っては風呂椅子に座るゲンマの背中を擦り始めた。 「いらねぇよ。背中だけで充分だ」 「え〜っ、何でぇ? ゲンマさんも照れてるの? いいじゃな〜い」 「ガキじゃねぇんだ、自分のことは自分で出来る」 貸せ、とからスポンジを奪い取る。 「ちぇ。私は全身やってくれる?」 「ふざけんな。テメェでやれ」 ぐずるにスポンジを渡し、自分で洗わせる。 「あっ、しゃわしゃわ、私する〜!」 ゲンマがシャワーで泡を洗い流しだしたのを見て、は目を輝かせてノズルを奪い取った。 「ゴシゴシ〜♪」 鼻歌交じりに、丁寧に洗い流していく。 の柔らかな指が心地好い。 「コラ・・・ッ、返せっつってんだっ」 「いいじゃな〜い♪」 これ以上されてたまるか、とゲンマは強引に奪い返した。 「あ〜ん」 「あ〜んじゃねぇ。ったく・・・」 はゲンマが洗い流してくれるのを待っていたので、仕方なしにシャワーを浴びせる。 お湯が玉のように弾いて流れる。 「ほい、終わり」 ゲンマは素っ気なく、湯船に浸かった。 「え〜い!」 は勢いよく飛び込む。 「オイコラ。ガキみてぇなことすんじゃねぇ」 湯船に浸かると、はゲンマにぴとっと絡み付いた。 触れる柔肌が心地好い。 「離れろ、バカ」 「ヤだ〜」 湯の温度が高いことも相まって、のぼせそうだった。 は下を見遣る。 「ゲンマさんって、いつ見てもおっきくならないね。何で?」 股間をまじまじと見つめ、清らかな瞳は問うてくる。 「だから人を不能呼ばわりすんな。精神集中させてれば抑え込めるんだよ」 「おっきくさせてみて? 見てみた〜い」 「ふざけんな」 興味を逸らそうと、ゲンマはを腕の中に取り込んで抱き締めた。 『ったく・・・酷い拷問だぜ・・・』 ベッドに寝転がり、ゲンマは深く息を吐く。 『もしかしてこれから毎日コレなのか・・・? 参ったぜ、ったく・・・』 隣では、月明かりの中イチャパラを読んでいる。 月光に照らされたは、大層美しかった。 『ま、しょうがねぇか・・・』 「ね〜ゲンマさん」 「ん?」 「アイノイトナミっていうの、どうやったら上手くやれるか教えて」 「はぁ?」 「この間カカシせんせぇと上手くやれたか自信ないし、ゲンマさん教えてくれるって言ったでしょ? ゲンマさんって教え方上手いし。夜の修行って言うの教えて」 「夜の修行?」 「ガマ仙人さんがそう言ってたよ。手取り足取り腰取り教えてもらえって」 『ったくあの人は・・・』 はぁ、とゲンマは顔をしかめる。 「ふざけんな。そういうのはカカシ上忍とやることだ。オレじゃねぇ」 そう、“オレ”じゃない。 「ゲンマさんとじゃダメなの?」 「そうだ。もう寝ろ」 からイチャパラを取り上げて枕元に置くと、布団を被せた。 がカカシ人形を大事そうに撫でてこちらに向けたので、が寝入ったのを見計らって背を向けさせたのは言うまでもない。 『荒療治も必要かな・・・』 の寝顔を暫く眺めた後、ゲンマは抱きつくを抱き締め、眠りに落ちた。 との格闘は、その後も毎日続いた。 風呂で請われ、ベッドで請われ、所構わず時も構わず、暇さえあれば絡み付いてくる。 伝え聞いて分かってはいたつもりだったが、カカシの苦労が身に染みて一層分かった。 これが、が自分の物だというのなら、一向に構わないのに。 いくらでも応えてやれるのに。 自分は兄代わりでしかない。 それなのにの慕い方は度を超している。 に分からせる必要があるな、とゲンマは改めて思った。 今日はと飲みに来ていた。 以前約束しながら、お流れになっていたのをに指摘された為だ。 里一の酒豪は、酔うことを知らない。 付き合う相手も、酔わない。 その為ペースが分からなくなり、いつもより多く、強い物を浴びていた。 心地好さが、いつもより強い。 酔っているのかどうかは分からなかったが、こういう気分も悪くない、とゲンマは更に酒を浴びた。 気も大きくなっている。 日頃の鬱憤も溜まっている。 今日こそは吐き出してに思い知らせてやらねば。 ゲンマはそう決意し、お開きにした。 大分夜も更けている。 もう真夜中だ。 と一緒に風呂に入って、部屋で水分補給する。 飲み足りない気がしたゲンマは、台所から酒瓶を取り出した。 「ゲンマさん、飲み過ぎだよ〜。身体壊すよ?」 もう寝よ? とは酒瓶を取り上げる。 「大丈夫だよ。酔ってねぇから」 「酔ってなくてもダメ!」 グラスも取り上げ、片付ける。 思考ははっきりしている。 しかし、少しだけ気が大きくなっていた。 「・・・」 「ん? ナ〜ニ?」 ごろにゃん、とはゲンマにしがみつく。 ゲンマはの両肩を掴んでベッドに腰掛けさせると、唇を塞いだ。 「んっ・・・?!」 は驚いて、目を見開いている。 啄むように、ゲンマはの唇を強引に貪った。 ふっくらと、柔らかく赤いの瑞々しい唇。 とても甘美だ。 の唇を割って、ゲンマは舌を侵入させた。 乱暴に口腔内を蹂躙する。 「んっ、んん〜〜!」 舌を絡め取り、唇を貪り続ける。 は、何事か事態を把握できていなかった。 まだダメか、とゲンマはをベッドに押し倒した。 唇から離れて息を深く吸い込むと、ゲンマは顔をの首筋に埋めた。 耳朶から耳の裏、首筋を這うように愛撫する。 噛み付くように上下する。 痕が付くように強く吸い付く。 「ゲ、ゲンマさん・・・?」 それでもは事態が飲み込めないでいる。 ゲンマにされるがままになっていた。 止まらなくなってきたゲンマは、の豊かな膨らみを手でまさぐった。 豊満なそれを、強く揉みしだく。 「や・・・っ、痛・・・っ」 指の痕が残るのではないかという程、ゲンマは強く揉みしだいた。 愛撫を繰り返しながら、突起を摘む。 ビクリとは身体を震わせた。 涙目ではゲンマの背中に爪を立てた。 ゲンマは、ネグリジェを捲り上げ、豊満な膨らみをあらわにさせた。 ぷるんと音でも立てそうに揺れている。 ゲンマは突起を口に含み、軽く甘噛みした。 再びは身体を震わせる。 そこまで来てようやく、は何をされているのかが分かった。 ゲンマが怖かった。 「や・・・やめ・・・っ」 「オマエがしてくれって言ったんだろ? これまでの分、責任持てよな」 「や・・・ヤだ・・・っ」 「やなこった」 ゲンマは意地悪く、突起を舌で転がし、揉みしだきながら、下着の紐を解いた。 「・・・ヤだっ!」 ありったけの力を込めて、はゲンマを押し返した。 「ゲンマさんのバカッ!!」 ボロボロと涙を零しながら、は人形を手に掴むと家を飛び出していった。 「あのバカ・・・あんな格好で外に出やがって・・・」 チィ、と舌打ちすると、ゲンマは頭を掻いて、落ちてくる前髪を掻き上げ、ベッドに腰掛けた。 台所に行って水を一杯飲み干すと、ゲンマはの後を追った。 行き先は分かっていた。 カカシの家。 家の前に降り立つと、そっとドアを開けた。 不法侵入じゃねぇからな、などと呟きながら、寝室に向かう。 ドアを開けると、カカシ人形を抱き締めたがえぐえぐと泣きじゃくっていた。 「・・・」 そっと肩に手を触れる。 ピクリと反応したが、顔を伏せたまま手で払った。 構わずにゲンマはの両肩を掴んで、前にしゃがみ込んだ。 「・・・分かっただろ、。あぁいうことは、カカシ上忍とだから、嬉しくて、幸せなんだよ。オレとやることじゃねぇんだ。分かったな?」 ゲンマが柔らかく諭すと、こくり、とは頷いた。 がゆっくりと顔を上げたので、手で顔を覆い、指で涙を拭き取ってやった。 「自分の気持ち、分かっただろ? 本当に好きなのはカカシ上忍だけで、オレのことは、違う好きだって」 は視線を下に落とす。 「、オマエが今何をすべきか、分かっただろ? どうしたいのか」 「・・・うん」 「じゃあ、行ってこい」 は立ち上がると、そのまま外に出て行こうとした。 「ちょっと待て。着替えてから行け」 「え・・・?」 ゲンマはのネグリジェを脱がせ、全裸になると、収納ケースを漁り、下着を着け直させ、ミニスカートのワンピースを被せた。 「わぷ」 「さ、行け」 は飛び出していった。 ゲンマは黙って後ろ姿を見送る。 「ったく・・・損な役回りだぜ」 大きく息を吐くと、ゲンマは残されたカカシ人形に、ボス、と拳を入れた。 居間でゲンマはソファに腰掛け、適当にその辺にあった書物を読んでいた。 外はまだ薄暗い。 夜明けまで、まだ時間がある。 は夜明けまで帰ってこないだろう、と思っていたら、玄関で物音がした。 「何だ・・・? もう帰ってきたのか・・・? てっきり朝まで一緒にいるかと・・・」 ゲンマが振り返ると、が居間にやってきた。 「あれ・・・ゲンマさん、いたの?」 「鍵も掛けずに放っていけないだろうが」 「そか・・・ゴメンね?」 はつかつかとゲンマの傍まで歩み寄り、強い意志でゲンマを見据えた。 「ゲンマさん」 「ん?」 「私、ゲンマさんのこと好きだよ。でも、カカシせんせぇの方がずっとずっと好きなの。ゲンマさんのことは、カカシせんせぇとは違う好きなの。だから、あ〜ゆ〜ことはヤだ」 きっぱりと言い切るに、ゲンマはふっと柔らかく笑った。 「分かってるよ。やっと自分の気持ちに気が付いたな。オマエを試すような真似をして、悪かった」 の腕を引っ張り、優しく抱き締める。 先程のような怖さは微塵も感じなかったので、はゲンマの服にしがみついた。 抱き締めるゲンマの優しさが、温かく伝わってきた。 「さ、家に帰ろう」 手を繋いで、2人は夜明け前の空を駆けていった。 「ね〜ゲンマさん、お風呂入ろv」 「っだ〜! オマエ、分かったんじゃねぇのか?!」 「え〜、それとこれは別でしょ〜?」 「また襲うぞコラ」 「ゲンマさん、気失いたい?」 「オレを脅す気かテメェ」 「ね〜、ゲンマさんってば〜」 ゲンマの苦悩は、まだまだ続きそうである。 END. ヒロインは、やっと自分の気持ちが分かりました。 |