【南瓜の煮物をアナタと一緒に】番外編 〜誕生日〜 季節はすっかり夏で、火の国と言うだけあって、朝から暑かった。 木の葉の里では、中忍選抜試験のまっただ中だった。 ゲンマも毎日忙しそうだったが、必ずに会いに来た。 も、ゲンマに会いたくて、遅くまで起きていた。 ゲンマは、仕事を持ち帰っている時以外は、の家に泊まっている。 少しでも一緒にいたくて、夜中にちょっとお喋りして、キスをして、家に戻るか、泊まる。 初めて結ばれた夜から大分経つが、ゲンマは、の身体を気遣い、しょっちゅう求めないようにしていた。 本音を言えば、毎晩でも抱きたい。 でも、性欲より、の身体の方が、大事だった。 「ん・・・暑・・・」 射し込む朝日の暑さで、は目覚めた。 ゲンマがの豊かな膨らみの間に顔を埋めて、シッカリと抱きしめて眠っていた。 子供のようにあどけない寝顔が愛しくて、は微笑む。 が、脚に固いモノが当たって、顔を赤らめる。 男の朝の生理現象と分かっていても、未だ慣れずにいた。 「ん・・・?」 ゲンマがもぞ、と動いた。 ゆっくりと目を開ける。 虚ろな淡い栗色の瞳が、を捉えていた。 「お、おはよう、ゲンマさん」 「あぁ・・・もう朝か・・・おはよう、」 ゲンマはもぞもぞ動いて、ちゅ、との唇を塞いだ。 啄むように、求める。 「ん・・・っ」 が応えていると、ゲンマは唇を割って舌を侵入させ、濃厚に求めだした。 ハッキリ覚醒していないゲンマは、半分夢の中で、を欲した。 身体を撫で回し、愛撫していく。 「モウアサダゾ、オキロ! モウアサダゾ、オキ・・・」 最近買った目覚まし時計。 声を吹き込むことが出来、はゲンマの声を入れてもらっていた。 は慌てて止めた。 1人で寝ている時は、暫く聞いているのだが。 「・・・慣れねぇな、自分の声で起こされんの」 もそっと上体を起こし、落ちてくる前髪を煩そうに掻き上げる。 ふとに視線を戻し、再び唇を塞ぐ。 続きとばかりに、求めだした。 はまた押し倒され、ゲンマの求愛に応えていた。 「・・・モウアサダゾ、オキロ! モウアサダゾ、オキロ! モウア・・・」 「ったく! 何で5分後にまた鳴るんだ、これは! 邪魔すんな!」 恨めしそうに、止める。 かなりあられもない状態まで脱がされていて、は真っ赤になって着衣を正した。 「幸せな微睡みの時間を、何で自分の声で邪魔されなきゃならねぇんだよ・・・ったく」 「ゴ、ゴメンナサイ・・・;」 「なんつって、もう起きないとっつ〜時間にセットしてんだから、悪ィのはオレの方だけどよ」 ゲンマはぎゅっとを抱きしめ、ちゅ、と唇に触れ、パジャマを脱いで忍服に着替えた。 も慌てて着替える。 洗顔を済ませて朝食を作っている間、ゲンマはストレッチをしていた。 汗を流して身体を動かしているゲンマに、は思わず見惚れた。 「ゲンマさん、朝食出来たけど・・・」 「あぁ、今行く」 が差し出したタオルで汗を拭き、食卓につく。 夏バテ解消メニューとでも言うのか、暑い夏にピッタリの食事を用意するに、ゲンマはその気遣いを嬉しく思う。 「ゲンマさん、毎日忙しそうだけど、倒れない?」 「ん〜、いつものことだからな、大丈夫だよ。オマエが居てくれるお陰で、頑張る気持ちも違ってくるしな。と一緒に寝ると、ぐっすり眠れて疲れも取れるし、アレってどういう原理なんだろうな?」 ゲンマの言葉に、はほんわかした。 「お役に立ててるんなら嬉しいなv でも、いくら忍びだから大丈夫って言っても、少しは休まないと・・・」 いつか壊れちゃうよ、と心配する。 「オレが忙しくなるのは、これからだからなぁ。休んでる余裕はねぇし・・・は次の休みはいつだ?」 「えっと、17日。明後日かな」 「17?」 ゲンマは目を見開いた。 「? どうしたの?」 「ん〜・・・じゃあ、オレも休み取るか・・・でも、修行もしてぇし・・・どうすっかな・・・」 「ゲンマさん、忙しいんだから、何処かにデートとか、考えなくていいよ。休み取るんなら、ゆっくり休んだ方が・・・」 「いや、出来ればオマエとデートしたい。でも、里が戒厳令出てるからな・・・」 う〜む、とゲンマは逡巡していた。 は、先達ての中忍試験の第2の試験とやらで大蛇丸という忍びが来て、里に戒厳令が敷かれたというのは、ゲンマから聞かされていた。 大蛇丸という忍びがどういう人なのかは分からなかったが、木の葉にとっての脅威と言うことだけは分かって、それ故にゲンマが忙しく、里もピリピリしているのは、気付いていた。 「あ、じゃあ、ゲンマさんが修行しているトコ見たい。邪魔にならないトコで、見学させて」 「ん〜、やっぱ今の時期にデートは不謹慎か・・・。でも、そんなんで良いのか? んなモン見て楽しいか?」 「だって、忍びの顔の時のゲンマさんって、いつもとはまた違った感じで、カッコイイなぁって思って。邪魔になるようだったらいいけど」 食事を済ませ、は洗い物に立った。 「里がこんな状況じゃなかったら、いくら中忍試験でオレらが忙しいとはいえ、1日くらい簡単に休めたんだけどな。でも、折角が17日に休みなんだし、そういう時は一緒に過ごしたいしな」 「え? 17日って何かあるの?」 はきょとんとして、洗い物の手を止めた。 「あ〜・・・。毎年この時期は忙しくて、あんまり買い物行かなかったからな・・・教えてなかったな。17日は、オレの誕生日なんだ」 「え〜〜〜っ!!! もっと早く教えてよ! 誕生日プレゼントとか、色々考えて用意するのに!」 「や、今更いっこ年取ったって、この年で誕生日祝いなんてのは・・・」 「クリスマスとバレンタインに次いで、大事な行事じゃない!」 「ん〜だから、まぁ、一緒に過ごせればいいなぁ、とか思うくれ〜で・・・」 「かぼちゃ料理、フルコース作るよ!」 「はは、誕生日にかぼちゃ漬けになるのは、ガキの頃からの運命だな」 「レパートリー増やしたんだよv 今日仕事行ったら、かぼちゃ買い占めなきゃ!」 「・・・そこまではいいって・・・」 一旦自宅に戻る為に、ゲンマは早めに出て行く。 ちゅ、とキスを交わし、駆けていった。 は幸せの余韻に浸りながら、まだ時間があったので、誕生日プレゼントは何がいいだろう、と思案した。 「ん〜、はたけさんは修行とかで行方不明って言うし、アンコさんもやっぱり特別上忍だから忙しそうだし、誰かに相談したかったのに、どうしようかなぁ」 仕事帰り、は暗い夜道をぽてぽて歩いていた。 「こういうこと相談できる人・・・う〜、私って知り合い少ない・・・」 見知っている忍びは、殆どが今忙しい。 それでなくても、こういう状況下で、恋愛ごとの相談は、気が引けた。 「リホクさんに訊くのも・・・変、だよね・・・」 どうしよ、と帰宅して鞄を置き、ドレッサーの鏡に映る自分を見つめた。 ふと、小物入れの中に混ざっていた、丸められた紙が目に付く。 「コレ・・・オボロさんが出てくる紙って、また使えるのかなぁ」 試しに開いてみよう、と紙を開いた。 煙に巻かれ、橙色の鳥が現れた。 「わ、出た!」 「オイコラ。幽霊みて〜な言い方すんな」 羽ばたくオボロは、ドレッサーに留まった。 「ゴメンナサ〜イ。だって、また使えるのか分かんなかったから・・・」 「破らなきゃ、いつでも使える。また丸めておけば、口寄せの術式が浮かび上がって、開く時にまたオレが出てくる」 「へ〜」 「ゲンマの誕生日の相談だろ? オレでよけりゃ、アドバイスくれ〜できるぜ」 「あ、うん。誕生日プレゼントって、何がいいかな。ゲンマさんが喜んでくれそうなのって、何だろ」 「そりゃ〜オメ〜、“その身一つ”だろ。決まってんじゃん」 「え? ソノミヒトツ? 何?」 「生娘か、オマエは。だから、自分に真っ赤なリボン掛けて、“私がプレゼントv 食べてv”って、これっきゃねぇだろ! うん!」 オボロは自分で自分に納得していた。 「えぇぇぇっ?! そ、そんな恥ずかしいこと・・・」 は真っ赤になって、しどろもどろになる。 「アイツはモノに頓着しねぇし、いつも、と一緒にいられればそれでいい、って言ってるじゃねぇか。2人っきりで甘い時間を過ごすのが、何よりじゃねぇの?」 「う〜ん、それはそうなんだけど・・・」 「じゃあ、あのキモチワリー目覚まし時計のバージョンは?」 「気持ち悪いって言わないでよ! もう。それは一緒に買ったから、ゲンマさんも家で使ってると思うんだけど・・・使ってないの?」 「さぁ。朝アイツんトコにはいねぇし、知らん」 さっむいバカップルだな、とオボロは吐き捨てる。 「だからよ、かぼちゃのフルコース、手料理でもてなすんだろ? それと自分をプレゼントで、充分じゃん」 「自分をプレゼントは恥ずかしいよ〜〜〜」 「今更恥ずかしがるなっつの。予約されてる癖に、全然受け身卒業できてねぇじゃん」 「う・・・」 「食事でおもてなし、ベッドの上でもおもてなし、ってな」 「ベ、ベッドの上で?!」 「オマエ、まだまな板の上のコイ状態か? あ〜、マグロっつ〜んだっけ? オマエからサービスしたことねぇだろ?」 覗いてねぇから安心しろ、とオボロは尋ねた。 「サ、サービスって・・・」 「前戯で、いつもゲンマからされるままだろ? 不公平じゃねぇ? ゲンマにもオマエからしてやらねぇと」 「え、ど、どういう・・・」 「フェラだよ。本番の前にも、ゲンマのことを気持ち良くさせてやらねぇとな」 「フェ・・・ッ」 は真っ赤になって、パニクった。 「ででで出来ないよ! ははは、恥ずかし・・・っ」 「受け身を卒業すんだろうが。お付き合いってのは、対等で公平であるべきだろ? 一方的にゲンマから愛されるだけで、それに胡座掻いてんじゃねぇ。ゲンマはそれで充分なんだろうが、オマエの方からもアピールすりゃ、喜ぶと思うんだけどな」 「そ、そっか・・・」 「そうなってようやく、絆はもっと深まるモンだぜ。今の幸せに胡座掻くな。もっと自分を出せ。自分の為、ゲンマの為に、色々な面で努力して、初めて掴めるモンだ、本当の幸せってのは」 そう言い残して、オボロは消えた。 思慮に耽って、夜も更けていった。 誕生日前日、は抱えきれない程の食材を持ち帰り、ゲンマの家に置いてきて、泊まるつもりで、必要な荷物を全て用意し、ゲンマの家に戻った。 明日休みを取る為に、ゲンマは今日は遅いだろう。 取り敢えずの今夜の夕食を作り、先に食べると、明日のフルコースの下準備に取り掛かった。 かぼちゃを漉して冷スープを作り、冷蔵庫で冷やす。 パンプキンパイを作って、焼くだけにした。 下ごしらえで、冷蔵庫はいっぱいになった。 「後は明日でいっか・・・」 浴室に湯を張りに行き、家から持ってきたネグリジェとレースの下着を手に、入浴する。 「ゲンマさんのシャンプーって髪の毛さらさらになるよね。私もコレに変えようかな・・・」 ボディソープもすべすべになるし、と頭と身体を洗い、湯船に浸かる。 「自分から・・・なんて・・・どう言えばいいんだろ・・・」 真っ赤になって、埋もれていく。 確かに、いつもゲンマにされるがままだ。 自分からは、抱きつくことしかできない。 でも、どうすればいいのか、分からない。 「〜〜〜っ、ぶっつけ本番! なるようになる!」 覚悟を決めて、風呂から上がった。 ゲンマは何とか仕事を片付け、帰路に就き、の家に向かった。 「結構遅くなっちまったな・・・」 アパート前に降り立つと、怪訝に思う。 「暗ぇな。もう寝たか? いつも起きてんのに・・・」 別にいいけど、と合い鍵で中に入った。 ワンルームのアパート、ベッドにもはいない。 「オレん家か?」 食卓の上に置き手紙があった。 “ゲンマさんへ。ゲンマさんのお家で待ってます。” 「がオレん家泊まるの久し振りだよな、そう言えば・・・」 鍵を掛け、すぐ近くの自宅に戻った。 はゲンマを待ちながら、木の葉の歴史書を読んでいた。 里が脅威にさらされていると言うことで、ピンと来ない一般人のは、少しでも勉強しておこうと思った。 また九尾の事件みたいな惨事になるのだろうか。 あの時、両親を失った。 ゲンマを失うことになったら。 考えたくなくて、は蹲った。 「どうした? 。具合でも悪いのか?」 戻ってきたゲンマが、心配そうに、を伺う。 「あ・・・ゲンマさん、お帰りなさい。ううん。九尾の事件のこと、思い出しちゃって・・・」 ゲンマが戻ったことに気付き、顔を上げ、微笑もうとする。 「もし・・・ゲンマさんがって考えたら・・・怖くて・・・」 瞳を潤ませ、ゲンマにしがみつく。 「・・・大丈夫だ。オレはオマエを残して何処かに行ったりはしねぇよ。しわくちゃの爺さん婆さんになるまで一緒にいるって決めてんだからよ」 安心させるように柔らかく呟き、ちゅ、と唇に触れる。 が落ち着いてくるまで、ゲンマはを胸の内に抱きしめ、包み込んだ。 重なる鼓動の音が、心地好い。 そして再び、ちゅ、と唇を塞ぐ。 「しかし部屋中、スゲェかぼちゃの匂いだな。明日の下ごしらえか?」 「あ、うん。ゲンマさん、夕飯まだでしょ? 温めるから」 落ち着いたは立ち上がって、台所に向かった。 ベストを脱いで額当てを解いたゲンマは、の後ろ姿が愛おしくて、そっと背後から抱きしめた。 「? ゲンマさ・・・?」 首筋に顔を埋め、耳朶を優しくはみ、優しく舌を這わせた。 「ちょ、ちょっ、ゲンマさ・・・っ;」 愛しそうに愛撫を繰り返しながら、の身体を優しく撫で回す。 「ぁ・・・っ!」 節くれ立ったゲンマの大きな手が、の豊かな膨らみをそっと揉みしだいた。 ビクン、とは反応する。 の豊かな胸は、ゲンマの手でも覆いきれず、何とか包み込むように、ゲンマは両脇から揉みしだく。 片方の手が降下していき、撫で回しながら、下着の中に忍び込もうとする。 「ゲンマさ・・・っ、お味噌汁沸騰しちゃ・・・」 ゲンマからの求愛で身体がすっかり熱くなっているは、ボ〜ッとしてきて、溶けそうだった。 「・・・駄目だ・・・っ、オマエが食いてぇ・・・」 下着を半分脱がせて、繁みに手を伸ばそうとした時、味噌汁の鍋が煮立ってグラグラしたので、一旦求愛を止めて火を止めた。 ゲンマは椅子に腰掛けると、を振り向かせ、脚の間に抱き寄せた。 そして唇を塞ぐ。 舌を侵入させると、も恥ずかしそうに、応えてきた。 が少しずつ自分から応えようとしているのが嬉しくて、益々興奮していくゲンマは、理性が飛びかかっていた。 身体をまさぐり、ネグリジェを脱がしていく。 濃厚に口づけを交わしながら、下着のストラップを肩から外し、背中のホックを器用に外す。 名残惜しそうに唇から離れると、迫力ある豊かな膨らみが眼前に迫り、ゲンマはそっとサクランボのように愛らしいピンクの突起を口に含んだ。 「ぁん・・・っ、ぁ・・・っ」 はゲンマの首に手を回し、しがみついて身を捩る。 ゲンマはもう、しか見えなかった。 もゲンマに埋め尽くされていた。 全て脱がそうと、最後の下着に手を掛ける。 果ててしまったをベッドに寝かせ、ゲンマは夕飯を食べた。 の料理は大層美味いが、の身体以上に甘美なモノはなかった。 「ったく・・・今夜は我慢する筈だったのに・・・うっかり我を忘れちまった」 とうに日付は変わっている。 もう誕生日プレゼント貰っちまった、と思いながら洗い物に立つ。 冷蔵庫を開けたら、下ごしらえ中の食材でいっぱいだった。 野菜入れの中もかぼちゃがゴロゴロ。 「ホントに買い占めてきたみてぇだな」 未だかつて感じたことがない程の幸せを噛み締めて、ゲンマはを抱き締めて眠った。 「モウアサダヨ、オキテv モウアサダヨ、オキテv モウアサダヨ、オキ」 はビクッとして、咄嗟に目覚まし時計を止めた。 「ゲンマさん、ちゃんと使ってるんだ・・・確かに、自分の声で起こされるのって変・・・」 照れ混じりに、の胸の谷間に顔を埋めているゲンマの寝顔を見た。 「・・・いつも思うんだけど、窒息しないのかなぁ・・・」 ゲンマはいつも、気持ちよさそうに眠っている。 「はたけさんが、自然と気持ち良くなろうとするでしょって言ってたけど、コレっていわゆる“ぱふぱふ”でしょ? 男の夢とかって・・・よく分かんないけど」 ふと、自分が全裸と言うことに、改めて気付く。 昨夜ゲンマに求められたのを思い出した。 台所でのスタンディングセックスなんて、思い返すだけで恥ずかしさがよみがえる。 でも、自分しか見ていないゲンマが嬉しくて、ほんわかと余韻に浸る。 が、自分からのサービスというのが、出来なかった。 次は思い切って・・・、とはドキドキしながら決意した。 「・・・モウアサダヨ、オキテv モウアサダヨ、オキテv モウアサダ・・・・」 はビクッとして、時計を止めた。 「・・・ホントに心臓に悪い・・・」 「ん〜・・・」 眠そうなゲンマが、もぞもぞ動く。 「ゲンマさん?」 「・・・生の声で起きてぇ」 「え? あ、じゃあ、もう朝だよ、起きてv」 の甘い声が発せられると、ふぃっと、ゲンマは唇をかすめ取った。 「おはよう、。やっぱ生が一番だな」 悠然と微笑み、の頬を手で覆う。 「えぇっ、生?!」 は途端に真っ赤になる。 ハッとゲンマは気付いた。 「違う、そっちじゃねぇ! 録音より生の声の方がって意味で・・・っ」 慌てるゲンマは、ぼそっと、そりゃ生の方が良いけど、と小さく呟き、それが聞こえたは更に赤くなる。 ベッドの上でお互い全裸で、妙に照れ合った。 「ゲ、ゲンマさん、アレ・・・したのはご飯食べる前だよね? 何でゲンマさんも裸なの? 私は果てちゃって寝たけど・・・」 枕を抱きしめて身体を隠し、赤らめた顔で尋ねる。 「ん〜・・・オレは元々、寝る時は裸なんだ。オマエが抵抗あると思ったから、着てたけどな。でもま、オマエも裸だったし、つい・・・」 窓から射し込む陽射しが暑くて、我に返るとゲンマは忍服を身に付けた。 ゲンマが洗面所に向かったのを見て、も着替える。 「ゲンマさん、私が作るよ」 顔を洗って髪を結ぶと、はエプロンを手に台所にやってきた。 「そうか?」 「ゲンマさんのお誕生日だもん。お殿様になっててv」 「じゃ〜オマエはお姫様だな」 調理に取り掛かるを、背後から抱きしめた。 「ちょ・・・、お殿様になっていいけど、昨夜みたいのは駄目・・・っ。まだ余韻が残って・・・っ」 下腹部がじゅんと熱くなって、思考が溶けそうだった。 「わり。どうも歯止めが利かねぇ」 は手早く作って、食卓に並べた。 早い割には、昨日のうちに下準備していたようで、誕生日らしい、華やかな朝食だった。 食卓について、食べ始める。 「あ、あの、ゲンマさん・・・」 「ん?」 「ゲンマさん、いつも、私の身体を気遣ってくれて、我慢・・・してるでしょ? その・・・もちょっと、なら・・・大丈夫だから・・・その・・・」 は真っ赤になって、しどろもどろで伝えた。 ゲンマは思わず目を見開く。 俯いているが真っ赤なのが、ありありと分かった。 愛しくて、微笑む。 「いつも言ってるだろ、余計な気ィ遣うなって。んなコト言ったら、オレマジで歯止め利かなくなるからよ。毎晩だって、毎朝だって、欲しくなっちまう。オレはオマエの全てを好きなんだ。身体だけが目的みてぇになるのは、そんな自分が嫌だから、今まで通りで構わねぇ」 はボンッと真っ赤になる。 「で、でも・・・」 「男は消耗品だが、女はそうじゃねぇ。無理はさせたくねぇんだよ」 な、と柔らかく諭すと、食べ終わって立ち上がった。 が食器を洗っている間に、ゲンマはベストを着て、額当てを巻いた。 も出る用意をすると、ゲンマは千本をくわえ、玄関で靴に足を通す。 ふと、を見る。 いつもはゴムで結んでいるだけのポニーテールに、赤いリボンが結ばれていた。 誕生日仕様とかか、とゲンマは思った。 「さて、何処で修行すっかな・・・あんま危険なトコは無理だし・・・」 適当な場所を決め、ゲンマはを抱えた。 「やっぱ川の傍がいいか」 適度に安全そうな川べりの林で、離れて座っているに見守られながら、ゲンマは修行に精を出した。 一心不乱な瞳、真摯な顔が、をドキドキさせる。 普段見れないような、ゲンマの本来の姿、忍び。 頑張っている男の人って素敵だな、と思う。 自分には立ち入れない領域だけど、そこがまた、憧れた。 だいぶ時が過ぎた。 ずっと眺めていても、は飽きなかった。 ゲンマが立ち振る舞うのを見る度に、惚れ直していた。 ふと太陽を見上げると、ゲンマはの元にやってきた。 「お疲れ様v」 タオルを差し出し、受け取ったゲンマは汗を拭く。 「修行なんて見ててもつまんねぇだろ」 「ううん! スッゴイカッコ良くて、ドキドキしちゃったv 動きが速すぎて見えなかったりだったけど、それがまたカッコ良くて」 ニッコリと興奮気味に応える。 「大分経ったな。昼飯どうする? 戻るか?」 「え、でも、ゲンマさん、今日は1日修行でしょ? 戻るの時間勿体ないよ。川でお魚とって焼いて食べるとか・・・」 「そんなんでいいのか? オレは慣れてるけど、オマエは・・・」 「夜のお誕生日パーティーでご馳走作るから、いっぱいはいらないし。お腹空かせとかないと、全部食べられないよ」 「ん〜じゃ、2〜3匹とるか・・・」 ゲンマは川の流れを見ながら、魚を探した。 「この辺ならいそ・・・」 「って〜っ!」 ゲンマは何かにぶつかった。 ふと見たら、ナルトだった。 「悪ィ、よそ見してた」 「? 兄ちゃんも昼飯の魚探し?」 「あぁ・・・って、オマエ、何でこんなトコに・・・」 「エロ仙人ってば〜! ちっとは手伝ってくれってばよ〜!」 「魚くらい、1人でとれないんかのォ」 自来也が反対側の岸で呆れていた。 「あぁ、そう言えば修行を替わったって、エビスが・・・」 ペコ、と取り敢えず頭を下げた。 「何だ、ゲンマ。オマエさん、こんなトコで、特別上忍は忙しいんじゃないかのォ」 「は、いえ、今日はちょっと・・・」 「ゲンマさん、お魚いた?」 とてとてとが砂利の上を追い掛けてきた。 向こう岸に自来也を見掛け、見知らぬ人物だったが、会釈した。 「ほ、そういうことかのォ。堅物ゲンマに春が来たと聞いとるぞ」 自来也の好みにストライクなを見て、鼻の下を伸ばす。 マズイ人物に会った、とゲンマは小さく息を吐く。 「ゲンマさん、どちら様?」 「・・・手っ取り早く言えば、イチャパラの原作者だ」 「え、あの映画の?!」 「イチャパラを知っとるのか。名は何という?」 「あ、あの、です。ゲンマさんとお付き合いさせて頂いてます。小説の方は読んだこと無いんですけど、はたけさんがよく読んでらっしゃってて、私は、ゲンマさんと映画観ました」 頬を染め、再びペコ、と頭を下げる。 「木の葉の歴史書読んだんですけど、伝説の三忍っていう方ですよね? 確か、自来也様・・・」 「こんな若いおなごにも知られとるんかのォ!」 「昼飯とりますよ。オイ、オマエ、よく見とけ。こうやってとるんだよ」 ナルトを見遣り、川に向かって強く石を投げ、巧い具合に魚が跳び上がり、クナイで刺して岸に上げた。 「うは〜、大量だってばよ。スゲェな、兄ちゃん」 ゲンマの火遁で火を起こして魚を焼き、はふはふと食べた。 「とれたては美味しいねv こういうサバイバルって楽しい。って、そういうのが任務の皆さんには失礼ですよね、一般人の私が・・・」 「何、構わんのォ。は何をしとるんかのォ?」 「あ、ゲンマさんのお家の近くの、南商店街の八百屋で働いています。今日はお休みで、ゲンマさんがお誕生日なので、ゲンマさんも無理に休んで下さったんです。この近くで修行してて」 「ゲンマ、誕生日なんかのォ。今夜はめくるめくイチャパラな世界だのォ」 下卑た笑みで、魚を食べた。 「下世話な言い方せんで下さいよ」 「それなのに修行とは、色気がないのォ。恋人達にとって、互いの誕生日は、クリスマスやバレンタインに次いで大切な行事だのォ。これだから堅物はイカンのォ。もっと甘い時間を・・・」 「あ、いえ、私が、修行してるトコが見たいって言ったんです。里が大変な状態だって言うし、そんな時期にお休みして下さっただけで、嬉しいです。一緒にいられますから」 ニコ、とは微笑む。 ゲンマも心が温かくなる。 「じゃ、私は修行に戻ります。失礼」 の肩を抱き、ゲンマは一礼して、戻っていった。 陽が大分傾いてきて、空も朱に染まってきていた。 修行を切り上げて中心部まで戻ってきて、商店街を歩く。 「ゲンマさん、お祝いするからには、やっぱりお酒も必要だよね。買っていこうよ」 ゲンマの腕にしがみついて、先の方の酒屋を指す。 「オマエは飲み過ぎんなよ。潰れられちゃ困る」 店に入って、物色した。 「最近はちゃんと加減も覚えてきてるでしょ? 大丈夫だよ〜。地下のワインセラー覗いてみようよ。ゲンマさんと火の国のレストランで最初に呑んだの、美味しかったし」 地下に降りて、目当てのワインを探す。 「あん時はあんまり呑まなかったから大丈夫だったんだ。家にいるって開放感で呑んだら、すぐに酔いが回るぞ」 これだな、とゲンマは手に取り、レジに向かう。 「ゴ、ゴメンナサイ・・・考えてみれば、高いよね・・・」 「構わねぇよ、これくれ〜。オマエだって食材山程買っただろうが」 「桁が違うよ〜」 「気にすんなって。どうせ呑むなら美味い方が良い」 ゲンマのアパートに戻り、は調理に取り掛かった。 「手伝うぜ」 「大丈夫〜。大体は昨日やってあるから。出来れば、綺麗に飾り付けてお出迎えしたいから、呼ぶまでお部屋にいて」 「そうか? じゃ、本読んでるか・・・」 寝室のソファに座ってゲンマは小説を読み耽った。 調理の音が、わくわくさせる。 久し振りの華やかな誕生日。 愛しい女と過ごせることが、幸せだった。 も、どんどん出来上がっていく料理が、幸せにさせた。 こんな日は久し振り。 ゲンマと過ごせる時間はいつだって幸せだが、今日はとびきりだった。 台所が静かになったのでふと顔を上げると、コンコン、とノックされた。 は顔を出さない。 小説を閉じて立ち上がり、ドアを開ける。 「お誕生日おめでと〜っv」 パァン、と派手にクラッカーが鳴った。 華やかな食卓と笑顔のが出迎えてくれる。 「スゲェな・・・」 思わず顔がほころぶ。 食卓につき、ワインで乾杯する。 「どんどん食べてねv」 互いの子供の頃の誕生日を話しながら、楽しく時間は過ぎていく。 ワインはとびきり美味しくて、ほろ酔い加減の心地好さが、幸せだった。 かぼちゃ料理のフルコースも、飽きることなく、どれも美味しい。 食卓は綺麗に平らげられた。 「パンプキンパイ、ちょっと大きいから、残った分はアカデミーの皆さんにも食べてもらって。手料理食べたいって言われてたから」 「他のヤツになんてやる必要ねぇよ。オマエの料理は全部オレのモンだ」 ゲンマは頬張って、ムグムグ呟く。 「も〜。食べ過ぎでお腹壊しちゃうよ! 残りは私が直接持っていく!」 残りのパイを取り上げ、はしまった。 でも、ゲンマの我が儘が、嬉しかった。 「ワインまだあるね。全部呑んじゃおうよ」 「オマエは飲み過ぎんなよ」 「分かってます〜」 呑みながら、ゲンマはワインの知識を披露する。 うんちくもソムリエ顔負けで、は改めて惚れ直す。 「最後に呑んだデザートワインも美味しかったよね。やっぱり高いの?」 「これとそう変わらねぇくれ〜だよ。今度ワインの美味しい店に行くか。火の国まで出なくても、木の葉にだって、名店はあるぜ」 「へ〜、通しか知らない、みたいな?」 「まぁ、そうだな」 はだいぶ酔いが回ってきていたが、まだ正気は保っていた。 「ん〜、美味しかったv ふわふわして気持ちイ〜v」 「おい、潰れんなよ。洗い物はオレがやるから、オマエは・・・」 「駄目〜。ゲンマさんは今日はお殿様なのv 私がする〜!」 「いいから。オマエは風呂入れてこい。その間に済ませとく」 ほらほら、と背中を押して浴室に促す。 湯を張ると、はとてとて戻ってきた。 ほろ酔い状態で、虚ろな目でゲンマの元へ行く。 ぴた、と背中に抱きついた。 「ゲンマさん・・・ダ〜イスキv」 豊かな膨らみが押し付けられて、ゲンマは鼓動が跳ね、下腹部が熱くなる。 「ゲンマさん、誕生日プレゼント・・・」 「充分貰ったよ。料理美味かったし、1日一緒に過ごせたし・・・」 洗い物を済ませて手を拭き、振り返る。 抱きついて上目遣いのが、潤む瞳でゲンマを見つめていた。 「貰って下さい・・・」 ゲンマは何のことか、咄嗟に分からなかった。 ゲンマに抱きついているだけだ。 「・・・?」 「・・・プレゼントはね、昔から、赤いリボン結ぶものなの。赤って綺麗だよね。燃えさかる感じで・・・」 そこへ来て、ようやくゲンマは気付く。 “”自身がプレゼントなのだ、と。 朝から、そうアピールしていたのに、気付かなかった。 かぁっとゲンマは顔を赤らめた。 も真っ赤な顔で、ゲンマを見上げていた。 互いの鼓動が聞こえてくる。 ドキドキしながらゲンマはリボンを解いた。 はらりと髪が落ちる。 をぎゅっと抱きしめ、深く口づけた。 時が止まったかのように、長いキス。 離れがたくて、一旦離れても、再び深く交わす。 名残惜しそうに、見つめ合う。 「・・・風呂、入ってくるな。待ってろ、すぐ上がるから」 の元を離れようとしたら、に服の袖を掴まれた。 「?」 「・・・たしも・・・私も、入って・・・いい?」 上目遣いに潤む瞳に、ゲンマは鼓動が跳ねた。 真っ赤なは、酔って正気ではない訳ではなく、酒の勢いもあるのだろうが、勇気を振り絞っているのだ、と気付く。 連れ立って脱衣所に行き、全て脱ぎ捨て、浴室に入る。 雨の日の抱擁が思い出された。 今日は、その時とは、違う。 顔と頭を互いに洗い、シャワーで流す。 「洗いっこね」 はスポンジにボディソープを泡立たせ、ゲンマの身体を擦った。 丁寧に洗っていくので、艶めかしいの姿に、ゲンマは下腹部を抑えきれない。 中心部までやられてはもう我慢が効かない、とスポンジを取り上げる。 自分で洗うと、スポンジを濯ぎ、再び泡立たせる。 湯を弾く玉のような肌を、丁寧に洗っていく。 時折ピクン、と反応する。 も感じているのだと思うと、益々思考が怪しくなってきた。 「ぁ・・・っ」 甘い声が漏れ、ゲンマはだいぶ限界だった。 「ゲンマさんの手って・・・気持ちいいよねv」 ふにゃ、とは微笑む。 酔っているは、いつもより大胆だった。 ゲンマの泡まみれの手が胸を這い、繁みを這うと、甘く喘いで身を捩る。 これ以上はヤバイ、とシャワーを捻り、洗い流す。 泡を流しながら、豊かな胸をまさぐり、揉みしだく。 「ん・・・っ、ぁ・・・っ」 タイルの上でおねだりポーズのが、余りにも扇情的で、ゲンマの理性は殆ど飛んでいた。 抱え上げて湯船に浸かると、はゲンマの首に手を回し、しがみついてくる。 ちゅ、との方から唇を塞いできた。 何度も角度を変えて求め合い、ゲンマが舌を割り込ませると、もそれに応えて、絡ませてくる。 官能的なキスで、この世にたった2人しかいないような、そんな感覚にさえ陥った。 浴室で一汗流し、2人は一層深く結びついた。 身体を拭いて髪を乾かすと、全裸のまま、ゲンマはを抱き抱え、寝室に向かう。 ベッドに下ろすと、唇を重ねる。 そのまま押し倒していき、愛撫していく。 たわわに揺れる豊かな胸を揉みしだく。 愛しくてたまらないを、包み込むように求めた。 もそれに応える。 その夜、2人はいつまでも愛し合った。 余韻に浸りながら、を抱きしめる。 「最高の誕生日だ。幸せすぎて、罰が当たりそうだぜ」 胸に抱くの頭を撫で、呟いた。 「オボロさんが言ってた通りだね・・・幸せは自分で掴むんだって。自分から努力して掴むモノだって。今・・・凄く幸せ・・・こんな気持ち、初めてだよ・・・」 「オマエのことは、オレが守る。絶対危険な目には遭わさない。何よりも、オマエを失いたくないから・・・」 「ゲンマさん、大好き。ゲンマさんこそ、危険な目に遭わないでね・・・」 この先に待ち受ける脅威を、その凄惨さを、まだ知らずにいる。 だが、覚悟している2人の絆は、一層深くなっていた。 2人を分かつものは、存在し得なかった。 いつまでも、一緒にいたい・・・。 降り注ぐ月光に、2人は願って、微睡みに身を委ねた。 END. |