【南瓜の煮物をアナタと一緒に】番外編〜共鳴〜 後日談 ゲンマとは、木の葉病院にやってきて、受付を済ませると、診察室の前で順番を待っていた。 「ゲンマさん、お仕事忙しいでしょう? いいの? 付き添ってもらっちゃって」 「気になって仕事にならねぇよ。忍びは任務優先だけどな、今はオマエのことの方が大事だよ」 真摯な瞳で言い放つゲンマに、はぽっと赤くなる。 目を泳がせ、えぇと、と繋ぐ言葉を探す。 「・・・それにしても、不思議な夢だったなぁ。間違いなく現在の私なのに、今はもう無い不知火のお屋敷があったり、ちっちゃいゲンマ君とか・・・」 「そういや、今まで訊かなかったけど、って生まれは木の葉か?」 くわえている千本を上下させながら、ゲンマは尋ねた。 「え? ううん。火の国で生まれたの。小さい頃、木の葉に移住してきたんだけど、物心つくかつかないかって頃だったから、火の国にいたことは覚えてないんだけど」 「九尾の事件前までは、郊外で農園営んでたっつったよな? 火の国にいた頃もそうじゃねぇか?」 「あ、うん。そう言ってた。それがどうしたの?」 「や、オレの夢に出てきたちっこいがな、お絵かきでカボチャ畑描いてたから。好きな食いモン訊いたら、“あぼちゃのにもも”って謎の言葉発してよ」 新種の桃かと思ったぜ、とゲンマは苦笑する。 「あ〜、私、小さい頃、カボチャジュースが好きな変わった子だったんだって。九尾の事件のショックで嗜好とかすっかり忘れてたけど、今の八百屋で働くようになってゲンマさんに出会って、またカボチャが好きになったんだよね」 えへへ、とは微笑む。 「あの八百屋に卸してた農園はオマエのトコだろう? いつも良い食材を仕入れていると思ってたんだけどよ」 「そう。その縁で、雇ってもらったのもあるんだ。ってアレ? 言ったっけ? 夢でミニゲンマ君には言ったけど」 「ん? アレ? オマエから訊いたような気がするんだけど・・・ん? 何か当たり前のように今そう思ったんだけど」 顎に手を当て、ゲンマは眉を寄せて考え込む。 「ん〜、言ってたかもね・・・何か夢が妙にリアルでごっちゃだよ」 「オレも何かこんがらがってる。夢なのに現実でもあって・・・」 ふと小児科の診察室の前で、小さな子供が親に叱られていたのが耳に入ってきた。 それを聞いていて、思わずはぷっと笑う。 「どうした?」 「あのね、私って、小さい頃って、ホント変わった子だったみたいなの。大きくなったら閻魔様のお嫁さんになる、って言ってて、お迎えが来るのを待ってたんだって。で、両親が、そんなことになったら大変だ、ってアレコレ策を講じて忘れさせようとして、結果木の葉に移住したの。他にも、大きくなったら忍者になるって言ってて、そっちに気持ちが移るように、って意味もあったみたい」 くすくす、とは苦笑する。 ゲンマはそれを聞いて、呆気にとられたように目を見開く。 「ちょっと待て・・・いやでもな・・・何がどうなってんだ?」 「? どしたの、ゲンマさん」 「や、あのな・・・それ、閻魔様じゃなくて、多分オレじゃねぇかなって・・・」 「え? どうゆうこと?」 はきょとんとして、ゲンマを見つめた。 「オレの夢に出てきたちっこいがな、“ゲンマ”って言えなくて、“えんましゃん”って言ってたんだよ。で、おおきくなったらえんましゃんのおよめしゃんになる、って言っててな」 忍者になりたいとも言ってた、とゲンマは言い放つ。 「え・・・それって・・・え、待って、どうゆうこと?」 も頭がこんがらがってきた。 2人はそれぞれ、お互いが見た夢を説明し合った。 そして、奥深くの記憶を辿っていく。 「確かにオレ、エルナが生まれる前に会った女とカボチャの煮物の研究してた覚えがあるし、大きくなったら一緒になるのはコイツだ、って思ってて、忍びとしていっぱしになった頃会いに行ったら、その八百屋はまだ今の夫婦2人だけで、若い女はいなかったんだ」 「それいくつの時?」 「15で特別上忍になって、正式に不知火の執務を請け負うようになった頃かな。結婚にゃまだ早ぇけど、ちゃんと約束しておこう、って思って」 15でいっぱしなんて、今から思えば思い上がりも甚だしいけどな、と苦笑する。 「私が八百屋で雇ってもらったのは九尾の事件の後、両親を失って独りになってアカデミーに入って、でも卒業出来なくて、って頃だから、ゲンマさんが15の頃って、私まだ7歳だよ。アカデミーに入る頃」 「ってちょっと待て、頭ン中余計こんがらがってきた。つまり、何だ? お互いに見た夢そっくり、過去の記憶に共通してるってか?」 「子供の頃、アルファベットのQだけがやけに好きだったみたいで、それが懐かしくて買ったんだよね、あのチビT・・・」 「・・・お互いがそれぞれの子供の頃の相手と会って交流した夢って、やっぱコレの予兆だってコトなのかね」 そ、とゲンマはの腹部に手を添える。 「そうかもね。ちっちゃいコと長く一緒に過ごしたコトって、他にはないし」 柔らかい笑みで、はゲンマの節くれ立った大きな手に自分の手を添えた。 柔らかな空気がゆっくりと流れていく。 「・・・私、あのちっちゃいゲンマ君みたいな、腕白でガキ大将な男のコが欲しいな」 「何言ってんだ、一姫二太郎っていうだろう? 最初はやっぱ、あのちっこいみたいに、おしゃまでお利口な女のコだよ」 「えー、男のコがいい!」 「女だって」 お互い顔を見合わせ、ぷっと吹き出す。 「なんてな。健康に生まれてくれれば、どっちでも可愛いさ」 「だよね」 その時、カルテを抱えた看護師が診察室から顔を出した。 「次の方〜! 不知火さん、中へどうぞ」 「あ、は〜い!」 FIN. 1年以上振りの更新がこんな超ショートで申し訳なく・・・(汗) |