【休息】







さ〜ん、さんの担当のお客さんが来たわよ〜♪」

 ここはお茶屋、いわゆる団子を出すお茶処である。

「も〜、団子屋で担当も何もないでしょ〜!」

 うら若い少女は店の奥で頬を染める。

 肩まで届く美しい黒髪、零れ落ちそうな大きな漆黒の瞳。

「だってぇ、あの人ってさんじゃないと注文聞かないじゃない」

 そう言って指し示される人物は、銀髪の忍び。

 額当てと口布で顔の大部分が覆い隠され、表情は殆ど分からない、一見怪しい人。

 でも、里の若い娘達には、憧れている人が多いらしい。

 はたけカカシセンセ、木の葉の上忍。

ちゃ〜ん、まだぁ?」

 のほほんと、間延びした声でカカシは奥に手を振る。

「も〜、私じゃなくてもいいでしょ〜」

「ヤだ。ちゃんじゃないとv いつものね♪」

 カカシは毎日のように、この団子屋にお茶をしに来ていた。

 つい最近付き合い始めた、恋人・に会う為に。

「ハイ、カカシセンセ。お待たせ」

 注文は、決まって餡抜き団子と、渋めのお茶。

「やぁ、やっぱりちゃんの作ってくれる団子は美味いなぁ」

「や〜ね〜、作ってるのは私じゃないよ〜。職人さん! 私は運んでるだけよ〜」

ちゃんが運んでくれるから格別に美味しいんだねv」

「も〜、カカシセンセってば、うまいんだからぁ!」

 そこだけ花でも咲いたように、桃色の空気が漂っていた。

「ねぇ、ちゃん。もうすぐ19の誕生日だろ? 何かお祝いするよ。プレゼント何がいいか決めといて。オレその日は休みだから、デートしよ?」

「え〜、いいの〜? カカシセンセ、今年から下忍の指導始めたんでしょ? サクラちゃん達。私サクラちゃん家と近所だからよく話すけど、任務忙しいんじゃないの〜?」

「ダイジョ〜ブ。ちゃんの大切な日だもん。一緒にいたいよ」

「ホント〜? 嬉しいv」

「ウチ帰ったら、欲しいもの考えておいてね。何でもプレゼントしちゃうよ。オレにリボン掛けてもいいけどv」

「や〜だぁ〜。カカシセンセってばぁ! も〜」

 付き合い始めてまだ日は浅いのに、イチャイチャバカップルとして、このお茶屋通りでは有名だった。

 の仕事が終わるまでカカシは何杯もお茶をお代わりし、を家まで送る為に、待っていた。

 カカシと連れ立って歩くは、いつも決まって、カカシの忍服の袖を掴んで歩いていた。

「あ〜らあら。相変わらずお熱いこと。カカシ先生、さんはまだ未成年なんだから、変なことしちゃダメよ?」

 サクラの家の前で、バッタリサクラに会い、いつも言われている。

「分かってるって。狼さんには、なりません♪」

 本音は別にあるんだけど、これはまだ内緒ね。

「手も繋がないのねぇ、照れてるのかしら」

 サクラは2人を見送ると、呟いた。

「カカシセンセ、寄ってく? お茶出すよ〜」

 のアパートまで来て、くるりと振り返る。

「ハハ、流石に水っ腹だよ。狼さんにはならないって言った手前、約束は守らないとね」

「狼さんって、何するの?」

 はちょっと、天然で鈍いところがあった。

 そこがまた可愛くて、カカシはメロメロなのである。

ちゃんが大人になったら分かるよ。そうだちゃん、折角だから、誕生日、旅行に行かない?」

「え? 旅行?」

「うん。待ってる間考えてたんだけど、流石にそんなに長くは休めないから、一泊くらいで。火の国の名所とか回ってみない?」

 海でもいいけど、とカカシはニッコリ微笑む。

「いいの?」

「勿論。ちゃんと長く一緒にいたいからね。今度日程考えてくるよ」

「わ〜、楽しそ〜♪ 私、この里から出たことないの〜」

「だろ? オレは任務がてら、地理には詳しいからね。何処でも案内できるよ。名所巡って、名物食べて、温泉入って・・・どう?」

「うん! 行きたい!」

「よっし。じゃあ、また明日ね〜♪」















「ゲンマ君いる〜?」

 翌日、カカシは任務の報告書を出した後、アカデミーのゲンマの執務室にやって来ていた。

「何です、カカシ上忍」

「や〜、相談事。今度ちゃんと旅行に行くことになってさ〜。どういう行程が若い女のコが楽しめるか、考えてるんだけどなかなかまとまらなくてね。火の国は広いしさ。そこでゲンマ君のアドバイスでも仰ごうかなって」

 元々、カカシとを引き合わせたのはゲンマだった。

 甘い物が苦手な男の人でも気軽に立ち寄れるように、との勤める団子屋は近所のゲンマにアドバイスを依頼しており、かぼちゃ餡などの野菜の甘みを使ったものや、砂糖控えめや、餡無しなどを提唱した。

 アカデミーの卒業同期であるゲンマとカカシは、仲が良かった為、同じく甘い物が苦手なカカシにも協力を仰いだところ、カカシとは恋に落ちたのだった。

「あぁ・・・もうすぐ誕生日でしたね。そういうことなら、協力しましょうか」

「あれ、ゲンマ君、ちゃんが誕生日近いの知ってるの?」

「一昨日通りかかったら、店員同士でそんな話してましたからね。で? カカシ上忍は、とは何処まで進展させるつもりでいるんです? その旅行で」

 高楊枝で、ゲンマは椅子を軋ませた。

「えっ」

「何です、そういう目的で計画立てたんでしょう?」

「え・・・いや、まぁ、そうなんだけど・・・その・・・;」

 カカシは照れて頭を掻いた。

「言っときますが、はまだ未成年だってことを忘れてないでしょうね?」

「も、勿論分かってるよ。変なことするつもりはないって! まだ! その・・・手ぐらい、繋げたらいいな、とか・・・」

 真っ赤になって、カカシはゴニョゴニョと呟く。

「はぁ? まだ手も繋いでないんですか? じゃあ、キスもまだなんですか?」

「キキキ、キス?!」

「カマトトぶらんで下さい、いい年こいて。随分仲良さげなのに、何をそんなまだモタモタしてるんですか」

「だ、だってちゃんは、ちょっと天然入ってるだろ? いい雰囲気に持っていっても、その、分かってなくて・・・」

「成程。じゃ、お子様レベルに合わせて、行程考えましょうか」















 ゲンマの考えてくれた行程表を元に、旅行当日がやってきた。

「ね〜、カカシセンセ。何処まで行くの?」

「南に向けて、神社仏閣を巡って、温泉に入って、明日は海水浴なんてのはどぉ?」

 里の門に向かって歩きながら、カカシはニッコリ微笑んだ。

「わぁ、楽しそう! 嬉しいな〜♪」

 の荷物もカカシが持って門の所までくると、馬が一頭、繋がれていた。

「さ、ちゃん。道中長いから、この馬に乗って?」

「え〜いいの〜?」

「女のコの足じゃ、歩くのちょっと大変だからね。籠も考えたけど、ちゃんと2人っきりの方がいいし。オレが契約してるのは忍犬だから、犬じゃ乗れないからね。だから馬を頼んだんだ」

 をヒョイと抱き上げると、カカシは馬にまたがらせた。

「カカシセンセの忍犬も一緒に行こうよ〜」

「そぉ? じゃ、パックンでも呼ぶか・・・」

 2人きりがいいけど、ちゃんの要望だし、とカカシはクナイで指先を切り、口寄せでパックンを呼び出した。

「きゃ〜v 可愛い〜〜vv」

「何じゃ、カカシ」

「これから、ちゃんと旅行なんだ♪ パックン、悪いけど旅のお供に付いてきてくれない?」

「危険でも伴うのか?」

「ん? そんなことはないけどね。ちゃんが、オレの忍犬見たいって言うから」

「相変わらず甘いのぅ・・・」

 2人と1匹の珍道中は、こうして始まった。









 パックンは馬の上、つまりに抱かれていた。

 カカシは羨ましく思いつつ、道中の景色や建物を説明した。

 は目を輝かせて楽しんでいる。

 それだけで、旅行に来て良かった、とカカシは思った。

 5時間程経った頃、丁度お昼時になった。

「お腹空いたね。最初の目的地はもうすぐなんだけど、先にお昼にしよっか」

 待ってて、買ってくる、とカカシは店に駆け込む。

 その時、地元民らしき数人の男達がの元へフラフラとやってきた。

「へ〜っ、いい女じゃ〜ん! この辺じゃそう見かけねぇ上玉だな。馬なんか乗って、お姫様かっての。なぁ、オレらと一緒に遊ばない?」

「え? 私〜、連れがいるんですけど〜」

「連れってこの犬かぁ? ダッセ〜! 不細工な犬なんか放っといて、いいトコ行こうぜ、案内してやるよ」

 男は下卑た笑いを浮かべながら、の腕を掴んだ。

「え・・・や!」

「やめんか!」

「何だ?! この犬喋ったぜ!」

「お待たせ〜♪ ・・・って、何だ?!」

 買ってきた物をパックンに向かって投げ渡すと、カカシは殺気を漲らせ、クナイを1人の男の首筋に突きつけた。

「ひぃ・・・っ;」

「オレの連れに、何か用かな?」

「なな、何でもないです! すいませんでしたぁ〜っ!!」

 血相を変えて、男達は一目散に逃げていった。

「全くもう、何の為にパックンいるの。あんなヤツら、追い払ってよね」

「何を申すか。拙者は戦闘向きではない、追尾専門だぞ」

「ま、いっか。ちゃんは無事だったし。怪我してないよね?」

「うん。ちょっと掴まれたトコ痛いけど」

「えぇっ、大丈夫? 湿布でも貼る?」

「ううん。そんなに酷くないから」

「そぉ? じゃ、お昼食べようか。この辺の名物買ってきたんだ。パックンサンキュ〜。こっちはパックンの分ね? で、こっちがオレ達の」

「達?」

「半分こv 一つの物を分け合って食べたかったんだv」

「子供みたいだな、カカシ」

「い〜の。ハイ、ちゃん、ア〜ンv」

「ア〜ンv」

 パク、とはカカシの指ごとかぶりつく。

 カカシはドキドキしながら、次を勧めた。

「カカシセンセも口布下ろして?」

「こう?」

「うん。ハイ、ア〜ンv」

「そっか。ア〜ンv」

 の指を舐めちゃった。

 も指を舐めている。

 かか、間接キス?!

「全く、よぅやるわい。拙者はお邪魔なようだから、一旦帰るぞ」

 パックンはイチャつき振りに呆れ果て、ポン、と消えた。

「え〜っ、そんなぁ」

「いいじゃない、2人っきりを楽しもうよ」

 プク、と膨れるを宥めながら、2人は最初の目的地の寺に着いた。

「わぁ、広〜い、大き〜い!」

 は目を輝かせ、仏閣を見て回った。

 煙を浴びたり、お参りしたり。

 一個だけ買った名物の大きな饅頭を半分こして食べたり。

 里の外で見るは生き生きと輝いていて、カカシは眩しくてドキドキする。

ちゃん、此処って、面白いものがあるんだよ」

「え? ナ〜ニ〜?」

 カカシは勇気を出して、の腰に手を回した。

 は自然に、カカシのベストを掴んだ。

 ドキドキしているのはカカシだけなのか、は純粋に目を輝かせている。

「あのね、お階段巡りって言うんだけど」

「どうゆうの?」

「御神体の真下に通路があってね、真っ暗闇なんだけど、そこを歩いて、御神体と繋がっている錠を手探りで触わることが出来たら、物凄い御利益があるんだって」

「へ〜っ。面白そ〜。行こ〜、カカシセンセv」

 カカシはを伴って、向かった。

 名所だけあって、大勢の出入りがある。

「さ、入ってみよう。ホントに凄い真っ暗だから、気を付けてね」

「わぁ〜、ホントに真っ暗〜」

 はキョロキョロするが、何も見えない。

「ホントに真っ暗だね〜。手を顔に近付けても見えないよ〜」

「ハハ、でしょ? 転んだら危ないからゆっくり歩こうね。前の人にぶつかっちゃうから」

「きゃ」

「あ、すいません、遅くて。全然見えないもんで」

 行ってる傍からは前の人とぶつかってしまった。

「いえいえ、こちらこそ早足になってしまってすみません。ゆっくりど〜ぞ」

 代わりにカカシが謝る。

「すいませ〜ん」

「も少しゆっくり行こ? ちゃん」

 ペースを落とそう、と呟く。

「でも〜、全然見えなくて怖いよ〜・・・あ」

 その時、カカシはの手をしっかりと握った。

「オレと手を繋いでれば大丈夫だよ。安心していいから」

 どさくさに紛れてキスでもしたかったが、カカシはグッと堪えた。

『よっし! 手は握れた!』

 空いてる方の手で、カカシはグッとガッツポーズをする。

 しかも、暗さで足元が覚束ないが、きゅっと腕にしがみついてきた。

 カカシは願っても無い展開に、心を躍らせる。

ちゃんって・・・思ってた以上に胸おっきいんだ・・・』

 着痩せするんだ、とカカシは益々鼓動が高鳴る。

『うぅ・・・キスしたいなぁ・・・ダメかなぁ・・・』

 カカシは悶々としながら、ゆっくり歩いていく。

 前の方で、触れない〜、などという声が聞こえた。

「そろっと錠があるね。ちゃん、手を伸ばしてごらん?」

「え〜、どこ〜? 暗くて見えな〜い」

 手探りで錠を探すが、には触れなかった。

「何度でもトライしてごらん」

「ダメだよぉ〜、触れな〜い。カカシセンセは〜?」

ちゃん、手貸して?」

 カカシは一旦離したの手を取り、前に伸ばした。

「・・・あっ! 何か触った! 今のが錠?」

「そだよ〜。良かったね、御利益があるよ」

「カカシセンセ、何で分かったの?」

「オレ一応忍びだし、夜目は利くんだ」

「え〜、それで御利益? ズルじゃない〜?」

「何でよ。ライト照らしてる訳じゃないからい〜のい〜のv ね?」

「そっか。嬉しいv ありがと〜、カカシセンセv」

 暗闇での天使のような笑顔が見れなくて残念だ、とカカシは思う。

「さ、出ようか」

 が当たり前のようにカカシの腕にしがみついてくれたので、カカシは天にも昇る想いだった。





 その後も何ヶ所か名所を巡り、名物を食し、夕方には宿泊予定の大きなホテルに着いた。

「旅館じゃないんだ〜。温泉あるの? ここ」

「あるって聞いてるけど。身体に良い成分の温泉があるってゲンマ君言ってたから。それに、木の葉の里の人間用にプライベートビーチがあって、海で泳ぐことも出来るんだよ、此処のホテル」

「へ〜っ。楽しみ〜♪」

「チェックインしてくるね」

 ベルボーイが荷物を持って部屋に案内してくれた。

「では、ごゆっくりお寛ぎくださいませ」

「へ〜。奥が和風なんだぁ」

中に入って、カカシはギョッとする。

 ベッドが、ツインではなく、ダブル一つだったからだ。

「なな、何で?! オレ、ゲンマ君にちゃんとツインで頼んだのに・・・っ」

 カカシは焦ってベルボーイに伝えた。

「申し訳ありません、本日ツインは満室でして、空きは無いんです」

「そんな・・・っ」

「ご夫婦様ならよろしいのでは?」

「ごふっ。オレ達はそ・・・」

「いいじゃな〜い。ベッド広いモン。ゆったり眠れるよ? カカシセンセ」

 わ〜い、とはベッドのスプリングを楽しんでいる。

「でで、でも・・・」

「どうされますか?」

「いいですよv ここでv」

「そうですか。有り難う御座います。御夕食は、どちらで召し上がられますか? 展望レストランにいたしますか? こちらにご用意いたしますか? ご予約ではレストランになっておりますが」

「じゃあそれでお願いしますv」

「それでは、7時にお越し下さいませ」

 ベルボーイは帰っていった。

「参ったなぁ・・・」

「寝心地良さそうだよ? このベッド」

「いや、その・・・ちゃん、オレと一緒でいいの?」

 カカシは鼓動を逸らせながら、に問うた。

「え? カカシセンセ、私と一緒じゃ嫌ってこと?」

 きょろん、と大きな瞳ではカカシを見つめ返した。

「えっ、嫌とかじゃなくて、男と女が一つベッドじゃまずいでしょ」

「変なの〜。私達って他人なの?」

「じゃあ、ちゃんはいいんだね?」

「うんv いいよv」

 カカシは今から心臓がバクバク高鳴っていた。







 夕食を展望レストランで摂り、綺麗な夜景を見ながらムードに浸って大人な楽しみをした。

ちゃん、お誕生日おめでとう。ハイ、これ。プレゼント」

 アクセサリーがいいって言うから勝手に決めちゃったよ、とカカシは包みを差し出す。

「わぁv 有り難う御座います〜v どんなんだろ♪ 開けていいですか?」

「どうぞ。気に入ってもらえるといいけど」

 中身は、ダイヤモンドのあしらわれたネックレスだった。

「わぁ、素敵〜v でも何か高そう〜。いいの〜? こんな高価そうな物〜」

「女のコは誕生日には一日お姫様になれるんだよ、野暮なこと言わないの」

「えへ。嬉しいv」

 そう言って早速は着けてみた。

「どぉ? 似合う〜?」

「あぁ、綺麗だよ。とても良く似合ってる。良かった」

「あ〜ぁ、何で私まだ未成年なんだろ〜。カカシセンセとお酒呑みたかった〜」

 ジュースじゃムード台無し〜、とは膨れる。

「いいじゃない。また来年来よう?」

「えへ、そだねv」

「じゃ、の誕生日に、も一度乾杯」

 カツン、とジュースとワインで乾杯する。

 レストラン用に正装しているが、カカシには眩しくて仕方がない。

 カカシも忍服は脱いで正装姿だったのだが、上着の中には武器携帯をしているので、どうにも浸りきれないでいた。

「温泉も楽しみだな〜」

「じゃ、そろそろ行こうか」





 浴衣に着替えて大浴場にそれぞれ向かった。

 脱衣所で脱ぎ捨てて、タオルを巻いて浴場に出てカカシは驚愕した。

 もそこにいたからだ。

「っ、ちゃん、何で・・・っ」

「あれ〜? カカシセンセ、看板見なかったぁ? 混浴って」

「うっそ・・・」

「一緒に入ろ〜♪」

 はカカシの腕を引っ張って、湯に漬かる。

 たちまちほんのりピンクに染まっていくの白い滑らかな素肌を、カカシは正視できない。

 寺で感じたとおり、は本当に着痩せタイプだった。

 豊満な胸にくびれたウエスト、理想的な体型だった。

『最近の女のコって発育いいんだな・・・』

 カカシは所在なげに目を泳がせつつも、チラチラとを盗み見た。

『綺麗だ・・・』

 水滴の滴る姿が、何とも色っぽい。

 が隣でしがみついているので、下腹部の昂りを見られないように、不自然な態勢を取る。

「気持ちいいねv 木の葉でもよく友達とかと温泉街行くけど、此処の温泉もいいねv」

「あ、あぁ、そだね。湯治とかでたまに使うけど、いい休息になるよ」

「カカシセンセ、忙しいし任務大変でしょ? それなのに私の誕生日の為に貴重なお休み使ってくれて、感謝してるv ゆっくり疲れ取って今日は休んでねv」

 ニコ、と微笑むの笑顔が眩しかった。

「う、うん」

 果たして気が休まるやら。

 寝る時のことを考えると、カカシは頭を抱えた。





「あ〜ぁ、何で私未成年なんだろ」

 部屋に戻ってきて、冷蔵庫から飲み物を取り出しながら、は再び膨れた。

「どしたの。そんなに生き急がなくてもいいじゃない」

 麦酒を呑みながら、カカシは和室に座って尋ねる。

「だってぇ、本来なら、この辺でバーに行ってカクテルでも・・・って流れでしょ〜? 折角の旅行なのに、私が未成年なせいで、カカシセンセが楽しめないじゃな〜い」

 オレンジジュースを飲みながら、は益々膨れる。

「ハハ、オレはちゃんと一緒なら、何処でだって構わないよ。此処で2人っきりの方が嬉しい」

「そぉ?! 良かったぁ〜」

 笑顔に戻り、も和室に行く。

 はジュース、カカシは酒をあおりながら、暫く歓談していた。

「カカシセンセ、お酒強いね〜」

 夕食の時から結構呑んでるのに、とは感嘆する。

「ま、結構呑むからね。木の葉では、ゲンマ君の次に強いよ」

 ゲンマ君が里一の酒豪、とグビとあおる。

「へ〜、ゲンマさんってそんなにすごいんだぁ」

「・・・ねぇ、ちゃん」

「ん?」

「ずっと言おうと思ってたんだけど。オレのこと、センセって呼ぶのどうして?」

「え〜? 親しくなる前から、サクラちゃんによくカカシセンセのこと聞かされてたから、カカシセンセはカカシセンセだよ」

「でもな〜・・・」

「嫌なの?」

「や、嫌って訳じゃないけど、もっと親密になりたいなぁ、って」

「何て呼べばいい〜?」

「何でもいいよ。ちゃんの呼びやすいので」

「じゃぁ、やっぱりカカシセンセだな〜。カカシさん、って他人行儀な気がするし〜」

「う〜む・・・そうか・・・」

 ま、いっか、とカカシは息を吐く。

 あふ、とが一つ欠伸をした。

「ね〜カカシセンセ? 明日もあるんだし、もう寝よ?」

「えっ」

 カカシの鼓動はドクンと跳ね上がる。

「オ、オレこっちの和室で横になるよ」

「え〜? ダメだよぉ。疲れ取れないでしょ? 一杯歩いたんだし〜。ほらぁ、ベッドに来て?」

 上目使いに、はカカシの腕を引っ張る。

「う・・・」

 の甘えてくる上目使いに、カカシは滅法弱かった。

 もはや言うなりになって、ベッドに入る。

「オヤスミナサ〜イv」

 は隣のカカシの腕にしがみついて、すぐに寝息を立てだした。

 愛らしい寝顔で、スヤスヤと気持ちよさそうだ。

 無論、カカシがそんな状態で眠れる訳がない。





 カカシは悶々と下腹部を疼かせながら、一睡も出来ずに朝を迎えた。

 陽光が射し込むのを感じて、朦朧とした意識で、思考も覚束ない。

 いつの間にか眠りに落ちていた。

 気が付くと、はカカシにしっかり抱きついていた。

 カカシも無意識に、を抱き締めていた。

 だが、すぐにセットされていた目覚まし時計が鳴り、起きることになる。

「ん・・・ぅ〜ん・・・」

 もぞもぞと、はカカシの腕の中で動く。

 ハッと目を覚ましたカカシは、あられもない態勢に、心臓が飛び出そうに驚いた。

「ごご、ごめん・・・!」

「ん? おはよ〜、カカシセンセv」

「お、おはよ・・・」

「気持ち良かったの、カカシセンセの腕かぁ〜v ぐっすり眠れた〜v」

 陽光に照らされるの笑顔が美しく、柔らかな膨らみを抱いて、カカシは朝から元気だった。

 一部が。

「今日はもう帰るだけだっけ〜?」

ちゃんが良かったら、プライベートビーチかプールで泳いでいってもいいんだよ。プールも結構豪華らしいし。どぉ?」

「海かプールかぁ〜。泳ぎたいな〜。カカシセンセも泳ぐ?」

「う〜ん・・・あんまり眠れなかったから、ちょっとだけなら」

「え〜、眠れなかったの? どして〜?」

「だって、ちゃんが腕の中にいて、何もできずに悶々としてたら眠れる訳無いでしょ」

 カカシは頬を染めて、アロハシャツとハーフパンツに着替えた。

「何で? 私、何かいけないコトしたの?」

「好きな女のコと一緒にいて何もするなって方が男には酷なんだよ」

「ふ〜ん・・・良く分かんないけど、男の人って大変ってこと?」

「そ。会員制のプールにしようか。オレちょっと一眠りしたいし、プールサイドにいるから」





 朝食を摂り、2人はプールに向かった。

 の白いビキニ姿が眩しかった。

 ウォータースライダーや流れるプールでは楽しむ。

 躍動して揺れるたわわな膨らみが目に焼き付いて離れない。

 カカシは眠るどころではなかった。

 こんなに可愛いを前に眠るなんて勿体ない。

 オレは忍び、一晩寝ないくらいは平気だ、と、カカシも混ざろうと思った。

「カカシセンセ、冷たいもの買ってくるよv ジェラートv」

 カカシの元までやってきたは、そう言って財布を持って売店に向かった。

 買い物をしているを見ていたら、何やら胡散臭い連中がに声を掛けていた。

 またタチの悪いナンパか、と面白くないカカシはズカズカと駆けていった。

「ね〜、さっきから1人で遊んでるじゃん? オレらと遊ぼうよ〜」

「彼氏と一緒なんです〜! 付いてこないで〜!」

 ぷん、とは相手にしない。

 当然、男達は面白くない。

「どうせロクな男じゃねぇんだろ? オレらの方がいい男だって」

「誰がだって?」

 ず〜ん、と仁王立ちして凄味を利かせるカカシ。

 ホントに仁王のように険しい形相で男達を睨む。

 傍にいた女性達が、カカシを見てきゃあきゃあと騒いでいた。

「す、すみませんでしたぁ〜〜〜;;」

 敵わねぇ、と男達は退散する。

「全くもう・・・」

「カカシセンセ、カッコイ〜v」

 ハイ、ジェラートv とは気にも掛けずに微笑んでカカシに差し出す。

「一緒に順番こに食べよ?」

 ハイ、ア〜ンv とはカカシに迫る。

 口を開けてペロリと舐めると、眼前にの豊かな谷間が迫って、鼓動が跳ね上がった。

「美味しい?」

「う、うん」

 カカシには味など感じる余裕がなかった。

「あ、ホントだ。美味し〜v」

 ハイ、またア〜ン、とは差し出す。

 そうして交互に食べていった。

「あ、カカシセンセ、アイス頬っぺに付いてるよ」

「ん? どこ?」

 ペロ、とカカシは口の周りを舐める。

「取れてないよ〜。待ってて?」

「え・・・」

 たわわな果実がカカシの眼前に迫り、覆い被さる。

 ドキドキしていると、はカカシに顔を近付け、ペロ、とカカシの口角を舐めた。

「な・・・っ;」

「えへ、取れたv」

 ニコ、と微笑む

 カカシは舞い上がって頭が真っ白だった。

「ね〜カカシセンセ?」

「ん?」

 平静を務めようと、カカシは印を結ぶ。

 は、瞳を閉じて顔を突き出し、ん、と口を閉じていた。

「え・・・」

 途端にカカシの鼓動は再び逸る。

『OK?キスオッケーって事? 誘ってるの?!』

 カカシはドキドキしながら、に覆い被さっていく。

 軽く触れるだけの、短いキス。

 それだけでカカシは真っ赤に照れた。

「アイスの味だねv」

 目を開けたは、そう言ってニコッと微笑んだ。

「カカシセンセもちょっとプール入ろ? 流れるプール、面白いよ♪」

「あ、うん・・・」

 カカシはアロハを脱ぎ、プールに向かった。

 はカカシにしがみつく。

「カカシセンセ? しっかり掴んでてね〜」

 え〜い、とプールに飛び込む。

 カカシはを抱き締めたまま、流れに身を任せた。

 ふくよかな膨らみと滑らかな素肌と絡み合い、カカシは大きくなっている下腹部をに悟られないよう、を横に抱いた。

「わ〜い、楽し〜v」

 の笑顔が眩しい。

 リゾートの魔力かな、とカカシは照れた。

「喉乾いたね〜。上がってジュース飲も?」

 トロピカルジュース〜♪ とはカカシと1つのジュースを2つのストローで飲み合った。

「楽しいねv カカシセンセ、ホントありがと〜v 最高の誕生日だよ〜」

「喜んでもらえて良かったよ。来年も再来年も、ずっとずっとこうしてちゃんの誕生日祝いたいな」

「ホント? 嬉し〜v 今度はカカシセンセの誕生日だねv」

 お互い満足し、木の葉に向けて帰路に着いた。









「ね〜カカシセンセ? カカシセンセは誕生日プレゼント何がいい? 9月でしょ?」

「ん〜、ちゃんがくれるなら何だってv」

「え〜、悩むな〜。私にリボンv とかでもいい?」

「えっ。そ、そりゃそれが一番嬉しいけど・・・」

 は果たして意味を分かっているのか?

「お団子ばっかりじゃなくて、私の手料理も食べてねv」

「うんv」







 このイチャイチャバカップルは、これからようやく、本当のカップルらしくなっていくだろう。

 2人の未来に、幸多からん事を。









END.







 8888番、仙野ひじり様のキリリクです。
 年下で一般人のヒロインで、羨まれる恋人同士、
 初めての遠出デート、一泊二日の旅行。
 ほのぼの甘々で、旅先でヒロインがナンパされてカカシが撃退、
 と初のキリリクなので、詳細に設定決めてもらいました(汗
 だって、想像力枯渇してて・・・(言い訳
 ご満足いただけるか不安ですが、ひじり様に捧げます。
 煮るなり焼くなりお好きにどうぞ。
 
普段書かないタイプのお話だったので、新鮮でした。
 有り難う御座いました。
 そして、トンと旅行に縁がなくネタが浮かばない私に
 色んな萌えネタを提供してくれた、
 dead leafのゆかりさんとおぼろさん、
 心より感謝します!!