【争奪】 「じゃ、今日の授業はこれで終わりね。今日やったトコ、お家に帰ってちゃんと復習するのよ。分かった?」 「「「は〜い!」」」 終業のベルが鳴り、アカデミーは放課後を迎えた。 今年度から教職に就いている中忍のは、教科書を揃えると、声を張り上げる。 「センセー、分かんないトコ教えてくれってばよ。センセーのウチ行っていい?」 金髪碧眼のヤンチャ坊主、うずまきナルトは目を輝かせてに駆け寄る。 「え〜? う〜ん、そうだな〜・・・でもそういうことだったらキミの担任のイルカ先生に頼んだ方が良いわよ。私は副担任だもの」 ストレートの長い黒髪が、さらりと揺れる。 「え〜っ、イルカ先生はラーメン奢ってくれるけど、オレってば、センセーに教わりたいんだってばよ」 ね? ね? とナルトは上目遣いで甘えた声を出す。 「う〜ん、でもねぇ・・・」 「コラ、ナルト! テメーばっか抜け駆けしてんじゃねぇよ。先生、オレも分からねぇトコ教えて?」 ひっつめ髪の奈良シカマルが口を尖らせて教壇に歩み寄る。 「あ〜、じゃあボクも教えて欲しいな〜」 お菓子の袋を片手に、バリバリと食べながら秋道チョウジもやってくる。 「何だ何だ、オマエら。センセーの授業の時ばっかちゃんと教室にいる癖に、ちゃんと授業聞いてねぇのか?」 赤丸を頭に乗せた犬塚キバが最前列の机の上にしゃがみ込んでニタニタ笑う。 「うっせーってばよ! 自分だって同じ癖に! ねね、センセー、キバはほっといて、教えてくれってばよ」 「う〜ん・・・」 「先生が迷惑しているのが分からないのか。授業をちゃんと聞きさえしていれば、分からないことなど無い筈だ。心此処にあらずでは、先生に失礼だぞ」 油女シノが、淡々と呟きながら寄ってくる。 「うっせーな! 勉強熱心になってんだから、色々知りてーの!」 「どうだか」 「何だとぉ?!」 憤慨したナルトはシノに掴み掛かろうとした。 「コラ、待ちなさい! 教室で喧嘩はダメ! 元気なのは良いことだけど、喧嘩はしちゃダメよ。分からないことがあったら、職員室においで。特定のコ達を贔屓する訳にはいかないから、お家はちょっとね。お昼休みとかに、職員室においでよ。そしたら、分からないトコも教えてあげるから」 ね? とは微笑んで優しくナルトの肩を叩き、皆を見渡した。 「え〜〜〜。センセーのウチでご飯食べたいのに・・・」 「あっテメ、ナルト! やっぱそっちが目的か! 珍しく勉強なんて言うから・・・ったく・・・」 「何だよ、シカマル。オメーだって同じだろ?」 「う。オレは真面目にだな・・・」 「嘘つけ! いつも寝てばっかいる癖に!」 「しょっちゅう抜け出すテメーに言われたくねーな、キバ」 背後から突っ込むキバに、シカマルは吐き捨てる。 「フン・・・聞いてて呆れるぜ。勝手にやってろ」 やり取りを聞き流していたうちはサスケは、クールに吐き捨てると、教室を出て行った。 「ったくアイツは、協調性ねーよな。成績いいからって、ツンケンしやがってよ。でもさ、アイツもセンセーの授業の時は、いつもより熱心に聞いてるよな。普段は、もう知ってますーみてーな感じで小馬鹿にしてる癖によ」 出て行くサスケを見送るキバは、面白くなさそうにブツブツ愚痴る。 「ホントにな」 「コラ! クラスメイトの悪口言わないの! キミ達はもうすぐ卒業でしょ? 誰とチーム組んでやることになるか分からないんだから、皆仲良くしなきゃ。ね?」 「げ〜っ、オレぜってーサスケと一緒のチーム嫌!」 ナルトは膨れる。 「サスケ君は優秀だから、皆にもいいお手本になるでしょ? お互いに切磋琢磨して、向上しなきゃダメよ?」 「セッサタクマって何?」 「バカナルト」 「何ぉ〜?!」 「コラコラ、喧嘩はダメって言ったでしょ。もう下校の時間よ。また明日ね」 そう言っては出て行く。 「ちぇ〜。折角センセーのウチに行ける手だと思ったのにな〜っ」 「抜け駆けはナシだぜ、ナルト。正々堂々勝負だ」 「っへ〜んだ。じゃ、オレが抜け駆けしよっと」 ぴょんっと床に下り、キバは鼻歌交じりに教室を出て行く。 「てめ〜、キバ! ずっこいことすんなっ!」 待ちやがれ、と追い掛けてシカマルとナルトも出て行く。 「キバも加わるの・・・? でもボクも先生のご飯食べたいしな〜・・・」 待ってよ〜、とチョウジも慌てて後を追う。 「全く・・・低俗な連中だ。先生に迷惑だというのに・・・」 そう言いながらも、シノも続いて出て行ったのだった。 「ふぅ」 職員室の自分の机で、椅子の背もたれに身を預けると、は息を吐いた。 「ハハ、悪ガキ共の相手も大変でしょう、先生。アイツらパワー有り余ってますから。でも、教職に就いてもうすぐ1年ですね。大分慣れてきたでしょう。先生の授業、評判良いですから」 そう言ってイルカはに茶を差し出した。 「そうですか? まだまだ、無我夢中で・・・」 有り難う御座います、と湯飲みを受け取って茶を含む。 「集中力のない、ナルトやシカマルやチョウジやキバが、抜け出さずにちゃんと授業聞いてるんですから。秘訣を教わりたいモンです」 「そんな、とんでもない。私の方こそ、イルカ先生に教わりたいこと、沢山あるんですから」 ワイワイと、授業について話し合っていると、いくつもの視線を感じた。 ドアの隙間から、目が10個。 ナルト、シカマル、チョウジ、キバ、そして、低俗だと呆れていたシノもいる。 「アイツら・・・っ」 「センセー、ご飯食べさせてーv」 「オレも!」 「ボクも!」 「オレもっ!」 「・・・オレも・・・」 ドアがもう少し開き、目を輝かせていた。 「もう・・・困ったな・・・」 苦笑混じりに、は小さく息を吐く。 「オマエら〜ッ! 下校時刻は過ぎたぞ! サッサと帰りなさい!」 イルカは怒声を上げ、シッシッと手を振る。 「ヤだ〜ッ! ゴハン〜ッ! センセーの手料理〜ッ!」 「先生が困ってるのが分からんのか! これ以上駄々こねると、先生から副担任を降りてもらうぞ!」 「げ〜っ、オーボー! ショッケンランヨー!」 「オマエ意味わかって使ってるか? ナルト。カタカナで聞こえんぞ」 「ホラホラ、帰った帰った」 イルカはずんずんと歩いていき、ナルト達を玄関まで追いだした。 「また明日な。遅刻すんなよ」 「ちぇ〜。ケチ〜」 渋々帰って行くナルト達を見送ると、イルカは職員室に戻った。 「ったく・・・って、あ!」 窓の外から、サスケが中を伺っていたのを見つける。 サスケは舌打ちをして、逃げるように駆けていった。 「先生、人気者だから」 他の教師達も、笑っていた。 「熱心に授業聞いてくれるのは嬉しいんだけど・・・ちゃんと身に付いてないと困るわ」 「明日抜き打ちテストしてやりますよ」 問題作りましょう、とイルカはの隣の席に腰を下ろした。 毎日珍騒動を繰り広げながら、なかなかナルト達は目的を達せずにいた。 中忍にしてはかなり優秀なは、後をつけてくるナルト達を、いつもまいていた。 木枯らしの舞う中、取り残される彼らは、懲りることを知らなかった。 2月に入り、卒業テストまで後一ヶ月少々となったナルト達は、何としてもの手料理を、と、あの手この手を、各自考えていたのだった。 「ハヨ〜ッス」 ある日の始業前、シカマルとチョウジが教室に入ってくると、ナルトとキバがワイワイ色めき立っていた。 「マジで?!」 「おい、キバ、何の話だ?」 「ボクらも混ぜて〜」 「オッス、シカマル、チョウジ。いいから聞けよ? あのな、昨日の夕方、センセーが、チョコの材料買ってたんだよ、帰りに!」 「チョコの材料ってことは・・・」 「そ! 決まってんだろ。もうすぐ、バレンタイン!」 「オレ達、貰えるのかなぁ」 「結構一杯買ってたぜ。手作りの練習すんじゃねぇ?」 「ちょっと待て。先生、誰にあげるつもりで買ってんだ?」 「先生、優しいから、皆に配るのかな」 「義理チョコを手作りか? でもまさか、本命・・・居るのか?」 考えたくねぇ、と皆頭を振る。 「センセーの本命チョコを貰うのは・・・」 「「「「このオレ(ボク)だ!!」」」」 「全く、朝から騒々しい・・・」 そう言いつつも、シノも参戦する気満々だった。 「ったく、馬鹿馬鹿しい」 吐き捨てながらも、サスケも内心燃えていた。 それからというもの、ナルト達は毎日そわそわして、から漂ってくる甘い匂いが、闘争心をかき立てた。 の後をついて回り、率先して手伝ったり、掃除を頑張って心証良くしようとしたり、授業を熱心に聞いて質問に勢いよく手を挙げ、あれこれ手を尽くした。 が優しく微笑んでくれると、心がほんわかした。 そして、とうとうバレンタイン当日がやってきた。 ナルト達は、珍しくいつもより早く登校してきた。 そっと職員室を覗く。 は、大きな紙袋の中から、教師仲間達にチョコを配っていた。 イルカを始め、皆顔を赤らめて嬉しそうに頭を掻く。 「い〜な〜」 「バカ、あんなの義理じゃん。オレ達の目的は、あくまで本命だ」 一通り配り終えたは、紙袋を抱えて、ナルト達のいる扉とは反対の扉から、出て行った。 こっそり後をつけていくと、火影の執務室に行き、そして任務斡旋所の仲間達にも配っていた。 「よし、大体配ったよね。後は、上忍の人達には、放課後かな」 鼻歌交じりに、は職員室に戻っていく。 「なぁ・・・あんなに配ってて、オレ達にはナシなのか?」 「贔屓しちゃダメだからって、家に呼んでくれねぇだろ? やっぱ無いんじゃねぇ?」 「そ、そんな〜」 「あの感じじゃ、みんな義理だってばよ。絶対いっこくらい余る筈だから、オレぜってーそれ貰うってばよ!」 「チクショー、何で今日に限ってセンセーの授業ねぇんだ! 直球で、チョコ頂戴、って言おうと思ったのによ〜!」 廊下をたらたら歩いていたら、教室の前でイルカが怒鳴っていた。 「い〜よな〜、イルカ先生ってば。もう貰ったもんな」 心此処にあらずで授業を受けるナルト達は、頻繁にイルカに怒鳴られて、挙げ句に廊下に立たされてしまった。 「センセー、今どっかのクラスで授業かな?」 「職員室覗きに行ってみるか」 こっそり、ナルト達は職員室に向かった。 そっと中を伺う。 「あ、いるってばよ」 書き物をしているがいた。 「テスト作ってんのかな」 手を止めて、天井を仰ぐ。 何か考え事をしているようだった。 そして目を落とすと、そっと引き出しを開ける。 中に入れていた物を手に取り、頬を染めて柔らかい表情をする。 暫く浸って、慌てては、誰かに見られてはいないかと辺りを見渡し、真っ赤になってブツをしまった。 そしてまたニッコリ微笑み、仕事に戻る。 「・・・・・・っ!!!」 ナルト達は顔を高揚させて廊下を駆けていった。 「あ・・・っ、アレ! アレッ! イルカ先生達に配ってたのよりおっきくて包みもキラキラしてて綺麗だったってばよ!」 「ほ・・・本命チョコだ!」 先の方に、仁王立ちで眉間にしわを寄せているイルカがいた。 順番にげんこつで殴られ、2人ずつ首根っこを掴まれ、教室に戻された。 昼休み、ナルト達はその話題で盛り上がっていた。 「ぜってーオレが貰うの!」 「オレだって!」 「ボクだよ!」 「オレだっつの!」 喧々囂々、昼食を頬張りながら牽制し合っている。 「その話・・・詳しく聞かせてもらおうか」 少し離れて食べていたシノが、淡々と呟く。 「だから〜、センセー、本命チョコがあるんだってばよ! イルカ先生とかに配ってたのとは別に! オレぜってー貰うんだ!」 「だから、そりゃオレだって言ってんだろ」 「ボクだって!」 「オレだっての!」 「いや・・・それはオレが貰う」 離れた所で、サスケも聞き耳を立てている。 皆、考えていることは同じだった。 「勝負は・・・放課後だ!」 終業のベルが鳴る。 ナルト達は、グラウンドで体術の授業をしていた。 お互い、目と目で牽制し合っている。 「オレが一番乗りだってばよ!」 ナルトが真っ先に駆けだした。 「あっ、テメ、待ちやがれ!」 シカマルの影が曲線的に伸びていく。 「影真似の術!」 ナルトを捉え、動きを止めた。 「ぐぎ・・・ずっこいってばよ」 「じゃ、オレがお先にっ」 キバが横を駆け抜けていこうとする。 「あめーよ!」 シカマルの影はキバをも捉えた。 「くっそ〜!」 「倍化の術!」 膨らんだチョウジが、重戦車のように転がっていこうとした。 「チョウジッ! オレを潰す気かっ!」 シカマルの影真似が僅かに弛んだ。 「ぐぎ・・・くそ・・・っ、お色気の術!」 「へっ、分身も変化もまともに出来ねぇ癖に、変な術ばっか覚えやがって。そんなのに引っ掛かるのは馬鹿な大人だけだっつ〜の!」 だが影真似を使っている以上、シカマルも他の術が使えない。 後ろから、さわさわと何かが迫ってくるのを感じた。 「わ〜、虫はヤメロバカシノ〜ッ!」 術が解けて自由になって、皆虫から逃げ回った。 「うちはサスケ。抜け駆けは許されんぞ」 「ちっ」 先に行こうとしたサスケは立ち止まり、矢継ぎ早に虎の印を結んだ。 「火遁・豪火球の術!」 炎が襲いかかる。 「火遁はずっこいってばよ〜っ!」 出し抜き出し抜かれ、ぎゃあぎゃあと争いながら、校舎とは反対方向へと、喧噪の輪は離れていった。 は教室で、最後の1人が出て行くのを見送った。 「おかしいなぁ、ナルト君達、帰っちゃったのかしら。でも、鞄あるよねぇ。一体何処・・・?」 暫く待ったが、誰も戻ってこないので、は紙袋を抱えて、職員室に戻った。 アカデミーからどんどん離れていくナルト達。 持てる限りの術や手段を駆使して、出し抜こうとするが、まだアカデミー生の彼ら、それ程多くの手がある訳でもない。 「・・・だっから! 何っでサスケまで居るんだってばよ! 甘いモン嫌いって言ってなかったか?!」 「それとこれとは別だ」 とっくみあいをしながらも、ハタとシカマルが気付く。 「ちょっと待て。オレら、アカデミーからどんどん離れてねぇ?」 「まじ〜よ、センセー帰っちまう!」 我に返ったナルト達は、慌ててアカデミーに戻った。 しかし、既にの姿はなかった。 「ど〜するよ? センセー、何処行っちまったんだ?」 「世話になった上忍とかにも配るんじゃねぇ? だったら、人生色々だ。行くぞ」 6人は、我先に、と道を譲ろうとせずに駆けていった。 ナルト達の争いなど微塵も知らないは、ドキドキしながら、人生色々への階段を上った。 そっとドアを開け、中を伺う。 「失礼しま〜す・・・」 見知った忍びがおらず、がっくり項垂れる。 「やっぱり任務かぁ・・・ちぇ」 「アレ? ちゃん。どしたの? こんなトコに」 背後で甘い声が頭上に響いた。 小柄なは、心臓が飛び出そうな程に驚いた。 その声は、捜していた主だったからだ。 「カカ・・・カカカ・・・」 声を震わせながら、は振り返る。 「蚊? 夏じゃないから今はいないよ。って、あ、そうだ。先生って言わないとね。どう? アカデミーの先生頑張ってる?」 ニッコリ微笑んでいる、銀髪の忍び。 「はは、はい!」 「先生の授業は評判良いって聞いてるよ。来年度からは担任も持てるんじゃない?」 「そそ、そんな・・・っ」 はしどろもどろで、パニくっていた。 「此処には何の用で来たの? もうすぐアカデミーも卒業の時期だよね。先生の教えたヤツらが、オレの部下になるかも知れないんだ。どんな連中がいるっけ?」 手応えのあるヤツらが良いなぁ、とカカシは微笑む。 「えと・・・あの・・・っ、カカシ先輩!」 「ん〜?」 「任務お疲れ様です! これ! 受け取って下さい!」 は真っ赤になって、包みをカカシに差し出す。 「え・・・何?」 「バ、バレンタインのチョコです!」 「あ、今日バレンタインかぁ。長期任務から帰ってきたばかりだから、日にちの感覚薄れてたよ」 包みを受け取ったカカシは、頬を染めて頭を掻いた。 そこへ、威勢良く入ってくるくの一。 「お〜っす、任務完了よ〜っ。あ〜疲れた〜っ」 「アンコ! お疲れさん」 「アンコさん、任務ご苦労様です」 「アレ? カカシにじゃない。ナニ入口に突っ立ってるのよ。邪魔よ、ホラ中入って!」 「あ、すみません」 ちろ、とアンコはカカシの手を見遣る。 「はっは〜ん。そう言えば今日バレンタインかぁ。カカシィ、アンタにチョコ渡すってオンナノコ達が、これからわらわら群がってくるわよ。毎年騒ぎに巻き込まれるのはゴメンだわ。サッサと帰ってちょ〜だい」 「う・・・っ。でもまだ時間が・・・」 「が言いたいことがあるみたいよ? どっかに逃げ込んで、聞いてあげたら?」 「え?」 「ア、アンコさんっ!」 は真っ赤になって、アンコの口を塞ごうとする。 「ナニよ〜、良い機会じゃない。サッサと言っちゃいなさいよ。あ、そうそ、アンタマメだから、一杯作ってるんでしょ? 余ってるのちょ〜だいv」 ニッコリと、アンコは手を差し出す。 「え・・・でもこれは・・・っ」 「先生、オレに言いたい事って?」 「え・・・あの・・・」 「ズバッと言っちゃいな!」 は顔を真っ赤にさせて、目を泳がせる。 が、意を決して、キッ、とカカシを見上げた。 「あの・・・っ、私、カカシ先輩のことが、ずっと好きでした!」 「え・・・っ」 カカシは頬を染めたまま、呆気に取られる。 「過去形・・・なの?」 「あっ、いえ! 今でも好きです! 大好きです!!」 言ってしまった後で、は一層真っ赤になって、パニくってアンコの後ろに隠れた。 「ホラカカシ、返事は?」 「え・・・えと・・・」 「確かカカシ言ってたわよね〜っ! ストレートの黒髪が綺麗な小柄の中忍の何処ぞのくの一が好きだって!」 「えっ・・・」 「待て! 皆まで言うな! オレにちゃんと言わせろ!」 「ホラ、アタシの後ろに隠れてないで、カカシの返事聞く!」 「えぇっ、はい!」 とカカシ、向かい合って照れ合う。 「あの・・・実は、オレも先生のことが好きだったんだ。アカデミーで教師になる前から。笑顔が可愛くて元気が良くて、こっちまで元気になれたよ。その・・・こんなオレだけど、お付き合い・・・してくれるかな」 「嬉しい・・・!」 「はいは〜い、じゃ、サッサと何処ぞにしけ込んでよね。当てられてアッツイって〜の!」 アンコはカカシとを外に追い出す。 「お・・・おいっ!」 「カカシ、ガンバレよ〜!」 「何をだ!」 真っ赤になって、カカシは叫ぶ。 照れが強くて、目が泳ぐ2人。 「あ・・・じゃ、何処に行こっか。オレん家でいいかな?」 「は、はい!」 ぎこちなく、階段を下りていく。 「歩いて帰ったら、誰かに掴まりそうだよね。上駆けていこう」 街路まで下りると、カカシは手を差し出した。 喧々囂々、傷だらけになって駆けてくるナルト達。 満身創痍だった。 でも、のチョコを貰おうと、懸命に駆ける。 「あっ、先生!」 人生色々の間近まで来て、通りの先にを見つける。 「間に合ったか?」 「追いつけ・・・っ! って・・・え?!」 は1人ではなかった。 見知らぬ怪しい風体の忍びと寄り添っている。 は顔を真っ赤に赤らめ、相手の男の差し出した手に添え、手を握り合って2人は上に跳び上がり、駆けていった。 呆然と見送るナルト達。 暫くその場に立ち尽くす。 煌びやかに飾り立てた女性がわらわらと人生色々に集まってきて、ようやく我に返った。 「チクショーッ、先生盗ったの誰だーっ!!!」 叫びが虚しく響き渡った。 翌朝。 意気消沈で、ナルト達は教室に入ってくる。 が、クラスメイト達の話に、ぐるんと首が動いた。 「美味かったよな〜、先生のチョコ! サイコー」 注意してみると、全員がその話題で盛り上がっている。 「そ、その話何だってばよ?!」 ナルト達は、近くの連中に問いつめた。 「アレ? オマエら貰ってねぇの? 先生からのバレンタインのチョコ」 「えっ?!」 「昨日の放課後にさ、先生教室に来て、クラス全員に配ったんだよ。美味かったぜー。木の葉マークの手作りチョコ!」 「なっ、ななな・・・っ」 「「「「「「何だそりゃ〜っ!!!」」」」」」 絶叫が響き渡ると、教室のドアが開いて、が入ってきた。 「ホラ、ベル鳴ったわよ。席に着いて」 ナルトはに駆け寄った。 「センセー、チョコ頂戴!」 「オレも!」 「ボクも!」 「オレもくれ!」 「オレにも・・・」 「オレも貰ってねぇ・・・」 昨日争い合った6人が、を見つめる。 「あ・・・キミ達、私ずっと教室で待ってたのよ? 全然来ないから・・・」 「いいから、頂戴!」 「それなんだけど・・・ゴメン! 昨日、帰りに甘い物大好きな先輩くの一に掴まって、キミ達の分持って行かれちゃったのよ。ホントにゴメン! また来年も作るから・・・」 「そ、そんなぁ〜〜〜っ!!!」 嘆きの声が響き渡り、6人は打ちのめされたのだった。 「今日はテストよ。いつもの頑張りを見せてね」 テスト中、しょっちゅうは心此処にあらずと言った感じで物思いに耽り、何やら余韻に浸っていた。 昨日の争いから身も心もボロボロのナルト達は、優秀なサスケやシノまで、テストの結果が散々だったのは言うまでもない。 卒業の時期が来て、皆何とか卒業した。 スリーマンセルに分かれ、サスケと同じチームになってしまったナルトは、ブツブツ文句を言っていた。 サスケも面白くなさそうにしている。 そんな様子を、ハラハラとサクラは見守っていた。 そもそも、担当上忍がいつまでも来ないから場が気まずいのだ。 数時間待ち、待ちくたびれた頃、やってきた上忍を見て、ナルトとサスケは声を揃えて叫んだ。 「「あ〜〜〜っ! あの時の怪しい上忍!!」」 「はい?」 テラスに移動して、自己紹介をし合っている中、ナルトはそわそわと、カカシを見遣る。 「あのさ、あのさ、カカシ先生!」 「ん〜?」 「訊きたいことがあるんだってばよ!」 「何だ〜?」 「バレンタインにセンセーからチョコ貰っただろ?!」 「あぁ、オマエら先生の教え子か。って、何で知ってる?」 「いいから! どんなチョコだったの?!」 「どんなって・・・大きなハート型の手作りチョコだったケド?」 あんまり甘くなくて美味しかったよ、とカカシはしれっと言う。 「やっぱりぃ〜〜〜〜〜!!!」 カカシが下忍ルーキー達の標的にされたのは、余談である。 END. 裏夢コンテンツ11111番、朝倉快斗様のキリリクでした。 |