【出会いはいつも偶然と必然】 第十一章









 カカシはから昼の弁当を受け取って外に出ると、今日の任務の集合場所には向かわず、アカデミーへ足を向けた。

 ゲンマに会う為に。

 どうしても訊かねばならないことが、訊きたいことが、山程あった。

 あんな姿を見られた昨日の今日でゲンマと顔を会わせるのは気恥ずかしかったが、ゲンマには何もかもお見通しのようなので、カカシはこの際開き直ることにした。





 もう陽は大分高い。

 アカデミーは既に授業中だったので、廊下は静かだった。

 カカシは奥の特別上忍執務室に向かい、一つ咳払いをして気持ちを整え、ゲンマの部屋をノックした。

「どうぞ。開いてますよ」

 中からゲンマの声がしたので、カカシはそっと扉を開けた。

「こんにちは〜」

 ゲンマは机に向かい、書類にペンを走らせている。

「や、ゲンマ君。お仕事ご苦労様」

 殊更軽やかに、カカシはゲンマの元まで歩み寄った。

「どうしたんですか、カカシ上忍。こんな時間に。アナタだって任務がおありでしょう」

 ペンを走らせる手を止めずに、チラとゲンマはカカシを見遣って、仕事を続けた。

「や〜、ゲンマ君と話がしたくってね。仕事の邪魔はしないよ。話が済んだらすぐ帰るから」

 チラと目配せでゲンマはカカシに傍らの椅子を勧めたので、カカシは腰掛けた。

「昨夜はすみませんでしたね、夜遅くにお邪魔して。続きは楽しみましたか」

 無粋ですみませんでした、とニヤリと笑う。

「そ、そのことなんだけどね・・・」

「あぁ、別に心配しなくっても、口外はしませんよ。にも言い聞かせておきますから」

「そっ、そうしてもらえると助かるけど・・・って、そうじゃなくて!」

 赤面しながら、カカシは慌てた。

「・・・何です?」

 ゲンマは走らせていたペンを止め、高楊枝でカカシを見遣った。

「変なことを訊くようだけど・・・ゲンマ君は、とはどういう関係なの?」

 心をざわつかせながら、カカシは目を泳がせて問うた。

「どういうって・・・どういう意味ですか?」

 やっぱり来たか、とゲンマは思った。

「え・・・あの・・・実は深い関係・・・なのかな・・・とか・・・」

 沈着冷静を売りにしているカカシが狼狽えまくっている姿が、滑稽に思えた。

「別に深くもないですよ。最初に話した通り、話を聞いてやったり、相談に乗ったり、アドバイスしたり、修業を見てやったりしてはいますが。それ以上の、カカシ上忍が邪推しているようなことは一切ありませんよ」

 まぁ、傍から見たらそれを深いとも取れるかもしれませんが、カカシ上忍の思うようなことは無いですよ、とゲンマは椅子の背もたれに寄り掛かる。

「ホントに・・・?」

「えぇ」

「じゃあ何で、そんなにに親切なの?」

 人がよすぎるよ、とカカシは追求した。

「そうですかね。頼ってこられれば、応えてやりたくなるのが、人情じゃないですかね」

 はふわふわして落ち着きがないし、重りになってやっているだけですよ、と不敵に笑う。

「カカシ上忍だって、を見ていると、守ってやりたいって思うでしょう? それと同じことですよ。大抵誰もが、そう思うんですよ。は危なっかしいから、つい支えてやりたくなる。純粋だから、引き寄せられる。理屈じゃないですよ」

 の人柄です、とゲンマは付け加えた。

「それはそうだけど・・・ゲンマ君は、のことを好きなんじゃないの?」

 躊躇っていた割に、カカシは核心をズバッと尋ねた。

「嫌いではないですよ」

 ゲンマは腕を組んで、すらっと答えた。

「・・・え?」

「そうですね、好きか嫌いかと問われれば、好きの部類でしょうね。でも、妹のようなものですよ。オレは妹を戦で早くに亡くしているから、その分余計に、妹にしてやりたかったことを代わりににして疑似兄妹気分を味わっているんですよ。もオレのことは兄のように思ってくれているし、カカシ上忍の思うような恋愛感情でを見たことは無いですから。安心して下さい」

 全てゲンマに見抜かれていたので、カカシはかぁっと赤くなった。

「でも、それにしてはオレに対抗意識持ってない?」

「は? 何です、対抗意識って」

 カカシ上忍に何を対抗するんです? とゲンマは流し目でカカシを見遣る。

「服とかさ。オレが選んでいるのとは全然タイプが違うの選んだりしてるじゃない。あぁいうのがゲンマ君の好みなのかと」

「あぁ。それは単に、偏りすぎているから違うタイプの服も着てみた方がいいと思っただけですよ」

 別に女性の服に好みとかは持ってないですよ、と付け加えた。

「お嬢様風が好きなんじゃないの? ゲンマ君って清楚でおしとやかなお嬢様が好みなのかと思ってた」

「別にそういう訳ではないですよ」

「妹がそうだったとか?」

「いや、妹も活発でしたよ。男勝りで。向こうっ気が強いから、先陣切って敵の攻撃を受けるようなヤツでしたがね」

 ゲンマの見せる寂しそうな微笑は、カカシには痛い程よく分かった。

「ゲンマ君・・・」

「ま、忘れて下さい、今のは」

「・・・でも、の格好見てて変な気起こしたりしない?」

「しませんよ。アナタじゃあるまいし。たわわな果実が服着て歩いているようなもんでしょう。布の面積が多い少ないなんて、オレは気にしませんよ」

「・・・随分ストイックなんだね・・・」

 尊敬しちゃいそう、とカカシは頬を掻いた。

「まぁ、何でも公平に、ですよ。じゃなきゃ服が可哀想です」

 それだけの理由です、とゲンマは話題を戻した。

「ネグリジェも? お嬢様風が好みだと思ったから、アレにはびっくりしたよ」

「どんなのを着てるのか訊いたら、普段着とは正反対だったんで意外でしたよ。だから服と同じように、公平にって言う理由で」

「どうやって選んだの? あんなセクシーなの」

 恥ずかしくなかった? とカカシは尋ねた。

と一緒に店に行って、この女性に似合う物を、って店員に言ったらアレになったんですよ。まぁ、カカシ上忍を驚かせたかったんで、一番派手なのを選びましたがね」

 ニヤニヤと、不敵な笑みでカカシを流し見る。

「そのせいでこっちは大変だよもう!」

 何を考えてるんだよ、とカカシは身を乗り出す。

「フッ、何だかモタモタしているようだったから、きっかけを作って差し上げただけですよ。いい加減辛かったでしょう。発散出来て良かったじゃないですか」

 喜んで戴けたようで良かったですよ、とシニカルに笑う。

「出来てないよ! はあのまま寝ちまったんだから。お陰で消化不良で不発・・・って、そうじゃなくって! ハッパかけるようなことはやめてくれよ、頼むから」

「何でですか?」

との仲は、ゆっくり、時間をかけて一歩一歩深めていきたいんだよ。ゲンマ君がを煽るから、すっ飛ばしまくりだよ」

 照れて目を逸らしながら、ブツブツと呟く。

「いいじゃないですか。は嫌がってないんでしょう?」

「それはそうなんだけど・・・人としてのモラルを疑われちゃうじゃない」

「別に双方が合意の上なら、関係ないじゃないですか。には、度を過ぎているくらいが丁度いいと思いますよ」

 にモラルがどうのは通用しないですよ、とゲンマは付け加えた。

はそういう行為のことを一切分かってないんだよ。純真な子供を悪戯して弄んでいるみたいで、オレはそれを見て興奮して楽しむ変質者みたいじゃないか」

 その通りのことをしてしまったばかりなので、カカシは顔を赤らめた。

「だからですよ。アナタがに、年頃の愛し合う男女の本来あるべき行為を教えてやればいいんですよ。は頭がいいからのみ込みも早いし、教えれば何でもすぐに吸収する。を年相応にするんなら、荒療治も必要だと思いますがね」

 ゲンマは、紅達と同じことを言った。

「愛し合うって・・・オレ達は別に・・・っ」

「愛してるんでしょう? のこと」

「え・・・いや・・・それは・・・」

 ゲンマはカカシが狼狽えるのを分かっていて、敢えて直球で尋ねた。

「身体だけが目的なんですか? 欲求を満たす為の道具ですか? は」

「な・・・っ、違・・・っ」

「・・・オレはに対して、オレが出来ることは何でもしてやるつもりです。年相応の人間として欠けている部分を補ってやります。でも、男女の営みはカカシ上忍、アナタにしか教えられないんですよ。それとも何ですか? オレが教えてもいいんですか?」

 カカシが煮えきらないので、ゲンマはカカシを挑発した。

「な・・・ゲンマ君、何を言って・・・」

 カカシは心がざわめくのを感じた。

はオレを慕ってくれてます。その気になれば、オレが教えてやることも出来ます。オレはアナタと違って、うじうじと躊躇ったりしないで、素直に愛してやりますよ」

「なっ、ゲンマ君、のことは妹みたいなものだっていったじゃないかっ」

「でも、本当の妹じゃない。誰よりも美しい、魅力的な女性ですよ。今度がオレの家に来たら、帰しませんから。アナタがモタモタしているんなら、オレが貰います」

 意志の強い瞳で、ゲンマはカカシを見据えた。

 カカシはゴクリと喉を鳴らした。

「ダメッ! はオレのなんだから、ゲンマ君にはあげられない! だってゲンマ君よりオレを選ぶよ。何たってはオレがいないと生きていけないんだから!」

 勢いよく、カカシは吐き捨てた。

「障壁と睡眠・・・ですか。まぁそうですね。でも、をオレに夢中にさせれば、どうとでもできますよ。火影様と研究院に、障壁のメカニズムを解明してもらっているし、他の方法でを自由にしてやることも出来るかも知れない。それにはオレの傍でもよく昼寝してますよ」

 別にアナタだけが特別とは限らないんですよ、とゲンマは不敵に笑う。

「え・・・嘘・・・」

「その障壁とやらは、恐らくの意志によって働いている。をオレのモノにできれば、はオレだけを見るようになり、障壁も解除される。オレはそう思ってますよ」

 誕生したばかりの雛鳥が生まれて初めて見たモノを親と思い込むのと同じことで、カカシ上忍はまさしくそれであって、それ以上の存在が現れれば雛は一人立ちして飛び立つものですよ、とゲンマはカカシを見据える。

「な・・・っ、出来っこない! がオレよりゲンマ君を選ぶなんてこともあり得ない! はオレを何より好いてくれているし、オレもを好きだ! 誰よりも愛してる! ゲンマ君には渡せない!」

 鼻息荒く、勢いでカカシは言いきった。

「あ・・・」

 言った途端、カカシは我に返り、かぁっと赤くなる。

「フッ。その言葉が聞きたかったんですよ。今言ったのは全て冗談です。オレはのことは、妹以上の目では見ていません。カカシ上忍の本音が聞きたくて、カマをかけたんですよ」

「え・・・? な・・・」

 里一のエリートである上忍のカカシが、特別上忍のゲンマにいいように弄ばれたのが分かって、カカシは所在なげに目を泳がせる。

「本音を聞かせてもらえたので、お教えしますよ。は、さっきも言ったように、オレのことは兄として見ています。ただ、あぁいう性格と言うか、天然でもあるから、純粋に慕ってくるのが度を過ぎることもありますがね。でも、あくまでオレは、兄以上の存在ではありません。は、アナタのことしか見ていませんよ、カカシ上忍。どうやったらアナタが喜んでくれるか、自分の思いに応えてくれるか、そればっかり考えていますよ」

 あてられるようですよ、とゲンマは含み笑いをする。

「え・・・自分の思い・・・?」

 カカシはドキリと、鼓動が高鳴った。

「何か色々と請われてるんじゃないんですか? 一緒にお風呂に入ってくれな〜い、一緒に寝てくれな〜い、っていつも膨れてますから」

「あ、何だそういうこと・・・」

 毒気を抜かれたように、カカシは項垂れた。

「あ・・・あのさ、ゲンマ君。は、ゲンマ君にそういうことは言わないの?」

「言いませんよ。冗談で言ったら、“カカシせんせぇとがいいの”ってプクッて口を尖らせてましたからね。ご安心を」

「そ、そう・・・」

 何だかカカシは安心して、一気に身体の力が抜けた。

の気持ちは、オレが言うべきことじゃないですから、本人に訊いて下さい。優しく抱いて愛の言葉を囁いて、訊いてみて下さいよ」

「ゲンマ君っ!」

「だって、オレの口で“カカシせんせぇ大好きv”とか言ったって、気持ち悪いでしょうが。のあの甘い声で言ってもらった方が、嬉しいでしょ」

 オレだって言いたかないですよ、言っちまったけど、と高楊枝で椅子の背もたれを軋ませる。

「からかわないでよ、もう・・・」

「まぁ、アナタは多くの修羅場をくぐり抜けてきて、人生経験も豊富ですが、一応はオレの方がアナタより3年長く生きてますからね。忍びとしてはオレの方がアナタに学ぶところ多し、でしょうが、人生については、先輩のつもりですよ」

「だったらさ、その敬語やめてくんない? 年上なんだから、タメ口でいいよ」

「それはダメです。ケジメですから」

 キッパリとゲンマは撥ね付けた。

 ゲンマが立ち上がって茶を淹れてくれたので、カカシは受け取り、口布をずらして口を付けた。

「このお茶美味しいね。お茶っ葉どこで買ってるの?」

「近所の商店街ですよ。専門店があるんで、そこでいつも買ってます。も美味しいと言ってたから、今度買いに行ってもらうといいですよ」

 もうすぐ昼休みになろうとしている。

 カカシはもっと訊きたかったことがあったような気がしたが、大体のことは訊けたし、自分の気持ちもすっきりしたので、まぁいいか、と思いながら、2杯目のお茶に口を付ける。

 の言う通り、確かにここは居心地がいい。

 ゲンマの持つ空気がそうさせているんだ、と思うと、同じように孤独を生き、血にまみれてきている筈なのに、こんなにも穏やかな空気を持つゲンマを、カカシは尊敬さえした。

「腐っても年の功なのかなぁ・・・」

「何ですか、薮から棒に。人を年寄り呼ばわりせんで下さい」

「・・・ねぇ。もういっこ訊いていい?」

「何です」

「昨夜ゲンマ君が持ってきた、の財布に付けてた鈴のことだけど・・・」

「あぁ、随分大切にしていましたからね、。かなりお気に入りのようですよ。すぐに見つけてやれなくって、悪かったと思ってます」

「それ・・・何でゲンマ君の寝室にあったの? ・・・寝室に入るようなこと、してるの?」

 昨夜聞いて、ずっと心がざわめいていたのだ。

「あぁ、部屋全部入ったことありますから。興味津々で、探検ごっこでもする感覚ですよ。掃除をしてもらったこともありますしね。だからいつ落としたのか、オレにも分かりません」

 だから何度も言いますけど、邪推されるようなことはしてませんから安心して下さいよ、とゲンマは息を吐く。

「でも、ゲンマ君だって独身の若い男なのに、年頃の女性を寝室に入れるのはどうかと・・・」

「兄が妹に部屋を掃除してもらっちゃ悪いですか?」

 しれっとゲンマは言い放つ。

「合鍵持たせてるのも?」

 その方がもっと問題だよ、とカカシは口を尖らせる。

「深い意味はありませんよ。オレがまだ任務中に家に行ってもらうことが多いから、必然的に渡したんです」

「・・・合鍵を渡すって事は、よっぽどに気を許してるって証拠だよね・・・忍びの家なんて、どんな重要機密が置いてあるのか分からないのに・・・」

「アナタだってに部屋を明け渡してるんでしょう。機密だらけの部屋を。は聡い子です。いけないと分かっていることは絶対にしません。信用できるからこそ、気も許せる。アナタと同じですよ」

 そう言われても、やっぱりカカシは、がゲンマの家の合鍵を持っているのは面白くなかった。

「まぁとにかく、オレはがもっと自覚するように促しますから、カカシ上忍も腹を括って、を女にしてやって下さい」

「女にって・・・」

 カカシは含んでいたお茶を吹き出した。

「・・・ゲンマ君さ、何か壮大なスケールでオレとを操って、楽しんでない?」

「別に。楽しんでいるつもりはないですよ。アカデミーの頃からずっとアナタの背中を見てきましたからね。2人には上手く行って欲しいし、幸せになって欲しいと願っていますよ」

 真摯な瞳で、ゲンマはカカシの瞳を見つめた。

「ゲンマ君・・・」

「式には呼んで下さいね。披露宴の司会くらいならオレやりますから」

 再びカカシは咳き込んだ。

「早すぎるよっ! もうっ、ゲンマ君って真面目なのかふざけてるのか分かんないよ!」

 カカシは真っ赤になって、ゴクゴクとお茶を飲み干した。

「だからふざけてませんって」

 その時、執務室の扉がノックされた。

 ドキリとして、カカシは口布を元に戻す。

 スッと開いた扉から顔を覗かせているのは、愛らしい

・・・!」

「ゲンマさ〜ん、お昼ご飯食べよ〜ッ♪」

 室内に入り、とてとてと歩いてくる。

「あ〜っ、カカシせんせぇだ〜! 何でいるのぉ? 任務はぁ?」

 ぱぁっと花が咲いたような満面の笑みで、ちょこんとカカシの傍らに立つ。

「あ、あぁ、ちょっと、ゲンマ君に用事があってね。もう終わったから、帰ろうと思ってたトコ」

「そうなの? ゲンマさん、お昼にしよ?」

 キョトンとした後、ゲンマに向き直り、にぱ、と笑ってゲンマを誘う。

「あぁ、そうだな。今日は何処に行く?」

 時計を見遣り、もうこんな時間か、随分話し込んでいたな、とゲンマは呟く。

「えへへ。お弁当作ってきたの。ここで食べても大丈夫? 出来ればテラスとかに行きたいんだけど」

「どこでも構わねぇよ。テラスに行くか」

 今日も天気がいいからな、とゲンマは優しくの頭を撫でた。

 焼き餅でカカシはゲンマをじっと見据えた。

、オレも一緒していい?」

「え〜カカシせんせぇも? 任務はぁ? ダメだよ、サボッちゃ」

 当然、来て来てv と言われると思っていたカカシは、の台詞に、がっくりと項垂れた。

「ガキ共怒り心頭で待ってますよ。ったく、たまには早く行ってやって下さいよ。その遅刻癖、何とかして下さい」

「カカシせんせぇ寝不足? 怪我しないでね」

 がっくりと肩を落として眺めていると、が顔を覗き込んできた。

「え、いや・・・あぁ・・・」

 お構いなしに、ゲンマはに問う。

、昨日はどうだった?」

「えへへ。カカシせんせぇがね、すっごくすっごく、いっぱいいっぱぁい優しくしてくれたのvv 嬉しかったなぁ」

「そうか。もっとして欲しいか?」

「もっと? うんvv もっと優しくしてくれたら、私ももっと嬉しいvv」

 ホンワカした気分になって、幸せ一杯で気持ちい〜の、と満面の笑みを見せる。

「だそうですよ、カカシ上忍?」

 カカシは思わず赤面して目を泳がせた。

「カカシせんせぇはゲンマさんに何の用事だったの?」

 はきょろんと大きな瞳をより大きく見開く。

「あぁ、オレとオマエの仲を疑って来たらしい」

「ゲ、ゲンマ君!」

「仲・・・? どうゆうこと?」

「オレ達があんまり仲良くしてるから、嫉妬してるんだよ、カカシ上忍は。だから、を獲るな〜、って釘差しに来たんだ」

「ちょ・・・ゲンマ君っ」

「変なのぉ。獲るも何も、私はカカシせんせぇのものだよ? カカシせんせぇがいないと生きていけないもん。ゲンマさんは私のお兄さんみたいに、色々教えてくれてるんだよ。変なこと言っちゃダメだよ」

 プク、とは膨れる。

、カカシ上忍のこと好きか?」

「ゲンマ君ってばっ!」

「うんvv 大好きvv」

「・・・満足しましたか?」

 今まで聞く耳を待たずに無視してと会話していたゲンマは、カカシを振り返った。

「う・・・うん・・・」

 照れて真っ赤になるカカシ。

 しかしゲンマは、美味しい思いだけはさせないつもりだった。

「ちなみに、オレのことは好きか?」

「うんv 大好きだよv」

 ニコ、と微笑むを見て、カカシは愕然とする。

「早くお昼に行こ? 時間無くなっちゃうよ」

「あぁ、そうだな。てことでカカシ上忍、オレ達上に行きますから。この部屋には機密書類だらけなんで鍵掛けますんで、出てもらえます?」

 とぼとぼとカカシは、促されるまま執務室を出た。

「飴と鞭が主義なんでね、オレは」

 ぼそっと呟くと、ゲンマはを伴って歩いていった。

「カカシせんせぇ〜! 任務気を付けてね〜!」

 振り返ってにこやかに手を振ると、はゲンマに向き直り、楽しそうに歩いていく。

 呆気に取られて茫然と2人を見送るカカシ。

 大きな弁当箱は、ゲンマが手に取って持っていた。

 は両手が空いている。

 隣にいるのがカカシだったら、間違いなくは腕を絡ませてしがみついていた。

 が、ゲンマにはしていない。

 後ろ手を組んで歩いている。

 それに密かに気をよくしたカカシは、気を取り直して、待ちぼうけを食らわせているナルト達の元へと向かった。





「・・・何でしがみついちゃいけないの? ゲンマさん」

「カカシ上忍が帰るまでな」

 そんな会話がゲンマとの間に交わされていたことを、カカシは知る由もなかった。

















 それから数日は、平穏に過ごした。

 にはなるべくネグリジェは着るな、と言い渡し、いつものパジャマを着させ、夜も、なるべくスキンシップを避けようと、食後は修業に誘って演習場に向かった。

 夜遅くまで修業を続けるので、帰るのは随分遅くなり、風呂に入ればもう寝る時間なので、変な気は起こさずに済んだ。

 当然は不満がったが、修業が楽しいようなので、取り敢えず満足しているようだった。

 ある日の食後、は嬉しそうに、カカシを見遣った。

「カカシせんせぇ、私の忍者服出来たんだよ。着てくるから、見て?」

「あぁ、そう言えばそうだったな。どんなのだ? 一体」

 茶を飲みながら、寝室に駆けていくを見届ける。

「えへへ。見てのお楽しみ〜♪」

 数分後、着替えたが威風堂々と登場した。

「じゃ〜ん! どぉ?」

「へぇ・・・似合うじゃないか。いいよ、凄く」

 それがゲンマの見立てたものだという点が面白くなかったが、それを除けば、とても良く似合っていて申し分なかった。

 の魅力を最大限に活かし、一見忍びには見えない魅惑的な見た目だが、機能性を併せ持った、が着るには申し分のない忍者服だった。

「今日から特訓の時はこれ着るね♪」

「そうだね。じゃ、行こうか」









 との修業は、最近はもっぱら体術に重点を置き、新しい術を教えるのは後回しにしていた。

 今までには、偏り無くかなり多くの術を教えてきた。

 それだけで、もはや上忍レベルだ。

 体術を強化すれば、今まで教えた中で未完成な術も、実戦でも使えるようになる。

 は、もはやとてもアカデミーすら卒業していない一般人には思えない程、その辺にごろごろしている大勢の忍びにも引けを取らない、立派な“忍び”だった。

『これならもう普通に下忍の中でチームを組んで任務をこなせるな・・・』

 相変わらず片手での相手をしていたカカシだったが、時折、うっかり両手を使いそうになる。

 それ程には上達が早かった。

『このまま本気でアカデミーで学ばせて卒業させれば、半年もすれば中忍選抜試験にも出られそうだ・・・』

 が自分にどんどん近付いてきているというのに、何だか遠くなっているような気もして、やや寂寥感を覚える。

が一人前になる。

 イコール、自立する、つまり、自分を必要としなくなる。

 そう思うと、このままでいて欲しい、そんな気さえした。

・・・ずっとオレの傍にいてくれ・・・』

 背中を見せたに、カカシは思わず抱きつこうとする。

 修業も忘れ、カカシはきつくを抱き締めた。

「え?!」

 が、抱き締めたものは無数の木の葉で出来た分身。

 はらはらと崩れ落ちていく感触。

「ゃあっ!」

 カカシの背後で屈んでいたが、跳び上がって後ろ回し蹴りを食らわせる。

 隙を見せていたカカシの頭部に、見事に決まった。

「くっ・・・」

「やったぁ! 一発〜♪」

 ピョンピョンと飛び跳ねて喜ぶ

「思えば長い道のりだったぁ。やっと一発入れられたよぉ」

「くっそ〜、油断しちゃったよ」

 こりこり、と頭を掻きながらカカシは息を吐いた。

「カカシせんせぇ、約束の賭け守ってね?」

 ニッコリと満面の笑みでカカシの顔を覗き込む。

「いいけど・・・一緒に寝たいっての以外なら何でもいいよ」

 あとお風呂もダメ、と禁止事項をあげる。

「え〜っ。やっと一緒に寝てくれると思ったのにぃ」

 明らかに残念そうに、は膨れた。

「蹴りが浅すぎた。致命傷になるくらいもっと強くできるようになったら全面解禁してあげよう」

 ふふん、とカカシは鼻で笑う。

「ちぇ。できないと思ってぇ。う〜ん、じゃあ何にしようかなぁ・・・」

 腕を組んで、は考え込んだ。

「非番の日に一日デートしようか」

 カカシの方から提案をする。

「え〜、どうせ、アレはダメ、コレもダメ、って制限付きでしょ?」

「ははは。バレバレ?」

「ん〜、じゃあね、また呑みに行きたいなぁ」

「呑みに? そんなんでいいの?」

「だって楽しかったもん。それもデートでしょ?」

「まぁそうだけど・・・また酒酒屋?」

「あのね、ゲンマさんが、最近出来たっていうお勧めのお店教えてくれたの。お酒もお料理も美味しいんだって。そこに行こうよ」

 散らばったクナイや手裏剣を拾い集めながら、は声を上げた。

「・・・それって、ゲンマ君も一緒にって事?」

 につられてカカシも手裏剣とクナイを抜き取りながら、拗ねたような表情で尋ねる。

「ううん。一緒に行こうよって誘ったら、“オレはいい。カカシ上忍と2人で行って来いよ”って言われちゃった」

 ゲンマの声色を真似て、は言い放った。

「あはは。、ゲンマ君の真似上手いね。そっか。2人でか。ならいいよ。いつ行く?」

 明らかにほっとした表情で、カカシは軽やかに問う。

「カカシせんせぇの都合がいい日ならいつでもいいよ」

 片付けも終わり、2人は帰路に着いた。

「じゃあ明日にでも行こうか」

 カカシは殊更ゆっくり駆けていたが、以前に比べて、は随分とカカシに付いてこられるようになった。

「わ〜い♪ 楽しみ〜〜♪」

















翌日の夜、カカシの任務明けに詰め所から離れた場所で待ち合わせをして、カカシとは店に向かった。

 評判がいいというのは本当らしく、それなりに客が溢れ、賑わっていた。

「結構混んでるな・・・席空いてるかな?」

「2人くらい大丈夫でしょ?」

 店内を縫って歩き、カカシとはカウンターの端に座った。

「テーブル席の方がよかったかな?」

「どこでもいいですよぉ。何が美味しいかなぁ」

 は早速メニューに目を通した。

 うぬぬ、と考え込んでいる。

「あっ、お料理のお任せコースがある。私これにする! やっぱり何がいいか分かんないし」

「じゃ、オレもそうしよう。飲み物はどうする? オレが適当に頼んでいい?」

「お願いしま〜すvv」

 カカシが注文をし、酒がまず運ばれて来ると、2人は乾杯をした。

「へ〜。この間呑んだのとちょっと味わいが違うけど、すっごく美味しい!」

 飲み口爽やかな甘口の酒を前に、グビグビと呑んでいく

「こらこら。いっくらがザルだからって、いつ酔いが回ってきておかしくなるか分からないんだから、控えめに呑みなさいよ」

 まぁ確かに美味いな、とカカシもハイペースであおる。

「また呑み比べしようよ。んで勝った方の言うことを何でも聞くのvv」

「今日はダ〜メ。酒は自粛してるの。程々になら呑むけど、思考が麻痺するまでは呑まないようにしてるから」

 料理が順に運ばれてきて、口を付けた。

「何でぇ? カカシせんせぇ、結構強いのに。意志を強く持てば酔わないよ。チャクラでコントロールすれば?」

 わ〜、料理美味し〜、とはパクパクと口に運んだ。

「酒は経絡系も麻痺させちゃうからね〜。はどうして酔わないの?」

「ん〜? 体内で素早く分解して中和させてるの。ゲンマさんに教わったんだ、お酒の飲み方」

「ゲンマ君ってそんな事出来るの?」

 だから強いのか? 確かに酔っ払った姿は見たことないなぁ、と思いながらカカシも次々と料理を口に運んだ。

「そうじゃなくて、医療系の能力があるんなら、出来る筈だって。今ね、体内の仕組みを調べてるから、そういう風に普段から体内コントロールできるように、訓練も兼ねてるんだ」

「成程」

 ペースの早い2人は、2杯目の酒を注文した。

「ね? 呑み比べしよ? カカシせんせぇが潰れたらちゃんと介抱するからぁ」

 ぴと、とは隣に座るカカシの腕に絡みついた。

「オレに悪戯しない?」

 グィ、とカカシは酒をあおる。

「悪戯? って何?」

 口一杯に頬張り、キョトンとしてカカシを見遣る。

「するのはオレか・・・」

「何するの?」

「・・・ゲンマ君が夜中に尋ねてきた時にやってたようなコトしてもいいの? 

 確かに料理は美味いが、の手料理の方がよっぽど美味い、と思いながらカカシはを見遣った。

「え? いいよ」

 カカシは含んだ酒を吹き出した。

「い、いいの?!」

「だってあの時のカカシせんせぇ、すっごく優しくしてくれて、嬉しかったもん」

 ニコ、と満面の笑みでカカシに微笑む。

「オレ、もう自分を止められないからそれ以上のコトしちゃうよ? だから自粛するって言ってんのに」

「それ以上ってどんなコト? もっと嬉しくなれる? お酒を自粛しなきゃならないような悪いことなの? それって」

「そうだよ。だから今日の呑み比べはダメ。また今度ね」

 今日こそはと決意の固いカカシはクィッと飲み干すと、のものと合わせて次の酒を注文した。

「ちぇ。ゲンマさんは、もっとって言うのは、凄く幸せなことで、天国に上るみたいなことだから、今日はどんどんカカシせんせぇを呑ませろって言ってたのに。つまんないの」

 プク、と膨れながらも、は料理を口に運び、あ、これも美味しい、と食べ続けた。

『ゲンマ君め・・・をたぶらかすなよな・・・』

運ばれてきた酒を、カカシは勢いよく食らった。

はゲンマ君とも一緒に呑みたかった?」

「ん〜? そうだけど、ゲンマさんに、いずれなって断られちゃったし。カカシせんせぇともっと仲良くなったら、付き合ってくれるって」

「ぶっ・・・仲良く?」

 カカシは再び吹き出した。

「うん。今はカカシせんせぇのことだけ考えろって。この間ゲンマさんとは私の手料理一緒に食べたし、美味しいって言ってくれたから、いいかな」

 は美味しそうに、こくこくと酒を呑んでいる。

「手料理? いつ?」

「ホラ、カカシせんせぇがアカデミーに来た日。お昼ご飯のお弁当」

 あれからお弁当にしてるんだ、火影様にも召し上がっていただいたよ、と微笑む。

「あぁ、そっか。そうだったな」

 ふとカカシは思い出す。

「そう言えば、よくゲンマ君のトコで昼寝してるって聞いたけど・・・オレがいなくても寝れるんじゃないか」

 カカシは面白くなさそうに、酒をあおった。

「あぁ、うん。だって、お昼って、まだこの首飾りに一杯カカシせんせぇのチャクラが満ちているでしょ? だからカカシせんせぇにぎゅ〜って抱き締められてるみたいで、心地好くってウトウトしちゃうの」

 ふにゃ、とは微笑んだ。

「え・・・オレ?」

「そうだよ? だって、カカシせんせぇの温もりがないと私、眠れないもん」

 ぴと、と再びはカカシの腕にしがみついた。

 心の靄が晴れたように、カカシは胸の奥がホンワカと温かくなった。

 背後の気配に気を配るのすら忘れていた。

「あら、カカシじゃない」

 聞き慣れた声。

「あん? カカシだって?」

 もう一方も聞き慣れている、耳に馴染んだ同胞の声。

 ハッと我に返ったカカシは、恐る恐る、背後を振り返った。

「アスマ・・・紅・・・何でこんなトコに・・・」

「珍しいわね。カカシが1人で店で呑んでるなんて・・・って、あら、連れがいるの?」

 カカシの腕に絡みついたままのは、見知らぬ2人連れに、大きな瞳をきょろんとさせてまじまじと見つめた。

「カカシせんせぇ、誰? お知り合い?」

「何だ、この間連れてた女じゃねぇか。って言ったっけ? こんなトコでデートか?」

「何? もしかしてこのコが例の彼女?」

 カカシは頭を抱えて、カウンターに項垂れた。

「貴女が?」

「あ、ハイ。初めまして。カカシせんせぇのお家で厄介になってます。お2人はカカシせんせぇの仲間ってゆ〜人ですか?」

「そうよ。私は夕日紅。カカシと同じく、今年の新人下忍を指導しているわ」

「オレは猿飛アスマ。右に同じだ」

「わぁ〜。お話し聞いていて、お会いしたいってずっと思ってました! お会いできて嬉しいですぅ」

 ニコ、とは微笑んだ。

 その愛らしさに、アスマは頬を染める。

「何でこんなトコ来てるんだよ、2人共・・・」

 げんなりした表情で、カカシは2人を見上げた。

「そういうアンタ達こそ何で此処に?」

「ゲンマさんのお勧めなんですvv 昨日の修業でカカシせんせぇに一発入れられたから、ご褒美で来たんです」

「あら、ゲンマ? 私達もゲンマに勧められて来たのよ。最近良い店が出来たって。今日行けばいいモノが見れるからって言われて来たんだけど」

「成程確かに、いいモノだぜ」

 ニヤニヤと、くわえ煙草でアスマは笑う。

 それを聞いて、カカシは、ゲンマに嵌められた、と頭を抱えた。

『ゲンマめ・・・』

 丁度近くの4人掛けのテーブルが空いたので、渋るカカシを引っ張って、席を移った。

 無言で酒を食らうカカシを他所に、紅とアスマはと歓談した。

 興味津々のアスマと紅は根掘り葉掘りに訊き、は丁寧に答えていった。

 賑やかな雰囲気が好きらしいは、殊更楽しそうに、会話を交わして、酒をあおり、料理を食べた。

 元来、は“友達”を増やしたがっている。

 指導員とは言え、カカシの知り合いと親しくなれ、はとても喜んでいた。

「何よカカシ、一般常識が欠落したコだって言うから、どんなとんでもないコかと思ったら、受け答えもしっかりしてるしキチンとした言葉遣い出来るし、普通じゃないの」

 確かに天然ではあるみたいだけど、と紅はかなり強い酒を食らっている。

「・・・ここ最近ね。も日々進歩してるんだ。人前に出しても恥ずかしくない程度に常識も覚えたし、後はくの一クラスにでも行かせて、女性を武器にする方法を覚えてもらおうかと思ってるんだ」

 がとんでもない発言を赤裸々にしはしないかとハラハラしていたが、それ程あからさまなことは言わなかったが、付き合いに関してに話が及ぶと、カカシはの口を塞いでごまかすので大変だった。

「くの一クラス? そうゆうのあるの?」

「あぁ、やっぱり知らなかったか。今度イルカ先生に話して、案内してもらうといいよ。女性としてのたしなみとかも教えてくれるから、にとってもいい勉強になる筈だよ」

「うん。行ってみようっと」

 とカカシのやり取りは実に自然で、もう何年も前からずっと連れ添っているかのようで、カカシもまたを見つめる目や話し掛ける様子が殊更優しくて、アスマと紅は少々驚きもしていた。

 これがS級の手配帳に重要人物として名を連ねる里一のエリートか、と。

 が、カカシの過去をこれまでずっと見てきた2人にとって、今のカカシを見て、嬉しくもあった。

 血と殺戮の世界しか知らないカカシを癒してくれる存在が出来たことが、何より嬉しかった。

 カカシを見ていれば、をとても大切にし、愛しているのが分かったのだ。

 愛する存在、守るべき存在、帰るべき場所の出来たカカシは、より一層強くなっていくであろう、と。

「カカシ・・・良かったわね」

「何が?」

 酒をあおりながら、次第にカカシは目が虚ろになって座ってくる。

「ま、いいわ。、カカシのこと好き?」

「紅っ! オマエまで何を言うんだっ!」

「うんvv 大好きvv」

 極上の笑顔で、隣のカカシに絡みつく。

「傍にいてあげてね?」

「ずっと一緒にいたいですvv」

・・・っ」

「立派な忍者になって、カカシせんせぇと一緒の任務が出来るようになるのが今の目標ですvv」

「はぁ? 任務だ? 連れ合いになるんじゃなくてか?」

「連れ合い? だって立派な医療忍者になって、一緒のチーム組めれば、カカシせんせぇを守れますから。一杯お勉強、一杯修業ですvv」

 ニコ、と汚れのない瞳の決意は揺るぎないものだった。

「・・・まぁ、どっちでもいいけどね・・・支えるという点では同じだし・・・」

 の天然さを、ありありと感じた2人だった。





、今日はもう帰ろう」

 ポケットの時計を見て、カカシはを見遣る。

「え〜っ。もっとお話ししたい〜!」

「かなり呑んだだろ。オレも結構ヤバイし、オレ達は打ち止め」

 最後の一口を飲み干したカカシは、ポン、との頭を撫でた。

「まだ大丈夫だよぉ。もっとお話ししてたいよぉ」

 グラスを握り締めて、は膨れた。

ってザルねぇ。さっきからずっと、結構呑んでるのに、全然酔ってないじゃない」

「オマエといい勝負かもな、紅」

 オレ負けそうだぜ、とアスマは煙草を燻らせながら酒をあおった。

「腐っても医療忍者の卵なんでね。そういうのは得意らしい」

「あぁ、成程。身体の中で分解して中和させてるのね」

「話す機会なんてこの先いくらでも作ってあげるから。今日も沢山話したでしょ。充分じゃない。さ、帰ろう」

「え〜〜〜〜っ」

 カカシはの肩を抱いて、無理矢理立たせた。

 テーブルの端の伝票を手に取る。

「ここまでの会計はオレがもつから。この先は自分で払ってね」

「あら、いいの? 悪いわね」

「その代わり、次はもってよね?」

「いいぜ、それくらい。アンコ達との飲み会もまだやってねぇしな。その時はオマエの分も出してやらぁ」

「サンキュ。じゃな。ごゆっくり、お2人さん」

「紅せんせぇ、アスマせんせぇ、またね〜。オヤスミナサ〜イ」

「おぅ。オマエ達は帰ってから存分に楽しんでくれや」

 存分に可愛がってもらえ、、とアスマは笑う。

「楽しまないってば! 変な誤解すんな!」

 じゃね、とカカシはの肩を抱き、そそくさとレジに向かった。

「何だぁ? まだヤッてねぇのかよ」

 仲良さげに歩いていく2人を見届けながら、アスマは呟いた。

「相変わらず下世話ね、アスマ」

 紅は度数の強い酒を食らいながら、キッ、とアスマを睨む。

「だってオマエもそう思うだろうがよ。あんなにべったり仲良さそうなのによ、カカシも相当惚れ込んでるみてぇだし、聞きしに勝る程もカカシを慕ってるし、何で一線を超えようとしないかねぇ?」

「確かにね。最初にカカシに聞いてたよりはしっかりしたコだし、てっきりもう深い仲だと思ってたのに、まだだなんて・・・よっぽど大切にしてるのかしら」

「べた惚れだな。今度ゆっくり、また尋問してやろうじゃねぇか。なぁ」

「趣味悪いわね・・・でも賛成。早いトコ機会作りましょ」

 帰り道、カカシはくしゃみをして悪寒が走ったのを感じた。











 夜更け、の誘惑に負けずにカカシはを寝室に押し込み、1人居間で精神統一して眠ったのだった。