【出会いはいつも偶然と必然】 最終章 が木の葉を離れて、3ヶ月近くが経とうとしていた。 カカシは任務の合間に、慰霊碑を訪れる。 サスケはあの後、大蛇丸の元へと去ってしまった。 ナルト達の追尾も説得も、聞き入れられなかった。 カカシも追い掛けたが、間に合わなかった。 サスケと話した時、もっとちゃんと話し合えていれば。 後悔ばかりがつきまとう。 人生、失ってばかりだった。 得るものも確かに多いが、失うものもまた多い。 親友を失い、師を失い、仲間を失い、そして愛する者を失い、部下をも失った。 「これ以上・・・何を奪っていくんだよ・・・」 我知らず呟く。 「・・・忍びをやっている限り、失ってばかりなのかも知れませんね」 カカシの背後から、低い声がした。 歩み寄ってきて慰霊碑に向かったのは、ゲンマだった。 「ゲンマ君・・・どうしたの?」 「今日は・・・エルナの命日でしてね。両親のと共に、この日だけは忘れられません」 そう言って、花を一輪、慰霊碑に供える。 「あぁ、そっか・・・」 「そう言えば、10年前の戦争の頃の例の件も、今頃でしたね。結局手掛かりはないままですか」 例の少女のこと、とゲンマは尋ねる。 「あぁ、うん・・・。の国に、もしかしたらいるのかなぁ、ってちょっと思ったけど、ホラ、顔が似てる訳だからさ。従者とかって連中も、似た顔立ちだったじゃない。でも、あれはやっぱり夢だったのかなぁ、とも思うんだ。もう記憶もあやふやだしね・・・」 「会えるなら、とその炎色の少女と、どちらに会いたいですか?」 ゲンマの問いかけに、カカシは考え込んだ。 「・・・どちらにも会いたいし会ってみたいけど、やっぱりかな。10年前の少女は、オレに人として生きることの大切さを教えてくれたけど、は、オレに人を愛するという気持ちを与えてくれたからね。初恋が10年前なのかなのかって訊かれたら迷う所だけど、今愛してるのは、だから」 「初恋は実らないって言いますよね」 「も〜、ゲンマ君まで傷口に塩擦り込まないでよね! まだ望みは捨ててないよ! だってね・・・」 ぷく、と膨れてカカシは空を仰ぐ。 遙か東の果てを。 ゲンマも空を仰いだ。 冬の到来を告げる、突き抜ける、薄い青。 南国故さして寒くはない国だが、空っ風が身に染みる。 「・・・カカシ上忍」 「ん〜?」 「、帰る間際に、アナタに抱きついて、何か囁いていましたよね。何て言ってたんですか?」 カカシは一瞬黙る。 「・・・って言ったんだ」 「え?」 「必ず帰ってくるから、待っててね、って。確かにそう言った。後で聞き間違いかとも思ったけど、オレはそれを信じてるよ」 「本当に・・・?」 「うん。だからは、必ずまた此処に来るよ。オレ達の所にね」 服の下の首元の宝玉に触れ、柔らかく微笑む。 その時、招集を告げる鳥が2羽、空を旋回していた。 「オレもゲンマ君も任務か。行こう」 この3ヶ月。 最初あれ程不安定だったカカシも、決意とともに、揺らぐことなく任務を遂行していた。 とともに、世界の平和を守る。 の手助けをする。 そうすることで、が再び戻ってくる、それを信じて。 カカシは今日も、戦場に向かった。 あれから一週間、相変わらずカカシは任務に飛び交っていた。 Sランクの危険任務。 大多数の敵の上忍との交戦中。 カカシチームは4人。 敵は優に10倍はいた。 「カカシ、せめてもう1小隊援護呼んだ方が・・・」 「ダイジョ〜ブ。4代目の得意忍術、時空間忍術を披露するよ。オマエ達はこのクナイを敵目掛けて投げて」 数十もの術式クナイが並べられる。 「木の葉の白い閃光とでも行きますか・・・」 雷切を発動させ、敵目掛けて投げつけられるクナイと共に、カカシは飛び回る。 敵はどんどん蹴散らされていく。 屍が積み重ねられる。 いくらカカシといえども、数十人を1人で倒すのには、限界があった。 度重なる交戦で、写輪眼を多用し、チャクラを大分消費している為だ。 息を切らしながら、次の敵へと向かう。 撃ち漏らした敵が、最後の足掻きに出た。 「カカシ! 危ない!」 仲間の援護も届きそうになかった。 疲労で動きが一瞬鈍るカカシに、敵の一斉攻撃が浴びせられる。 その時だった。 目映い程の光が弾けたかと思うと、カカシを目掛けていた敵は、皆光に弾き飛ばされていた。 起き上がろうにも、身動きが取れない。 カカシは何が起こったのか事態が飲み込めず、辺りを見渡した。 「間一髪間に合ったぁ〜。危なかったね〜」 聞き慣れた、柔らかく甘い声。 懐かしいチャクラ。 「良かったv カカシせんせぇが無事で」 光が発せられている中心に、人物がいた。 カカシは呆然とする。 身体が震えてくる。 「・・・え・・・?」 光に目が慣れてきて、その人物がハッキリと目視できた。 すらりと伸びた手足。 動きやすそうな機能的な装束にマント。 そして。 「キミは・・・」 カカシは震えが止まらない。 愛して止まない、その人物によく似た風貌。 大きな紅玉の瞳。 長い絹糸のような、艶やかな炎色の髪。 10年前の、あの少女か・・・? 少女はカカシを見つめて、ニッコリ微笑んだ。 「ただいま、カカシせんせぇv 遅くなってゴメンネ」 「え・・・?」 カカシは状況が飲み込めない。 だが、発せられたその声は、間違いなく、待ちわびた人物のそれだった。 「アレ? 私のこと忘れちゃった? そんなぁ。って、あ! そっか、髪の色と瞳の色が違うから、分かんなかった? だよ、カカシせんせぇv」 無邪気に微笑み、くるん、と回転した。 「・・・なのか・・・? 本当に・・・?」 「そだよ〜。10年前、私言ったよね。縁があったらまた会いましょう、って。確かに10年前の出会いは偶然だったけど、次の出会いは、必然だったんだよ。出会うべくして、出会ったの。ちゃんとカカシせんせぇに会えて良かったv」 「え・・・10年前のあの少女は、だったのか・・・?」 「うん。これが本当の私の姿なの。でも、このままでいられないんだ〜。首飾り、返してね」 そう言ってはカカシの首元に手をかざし、すっとチョーカーを手に取った。 そのまま自分の首に嵌めると、の髪の色と瞳の色は、カカシのよく知っている、黒玉と黒の絹糸に戻ったのだった。 強大なチャクラも、元に収まる。 「敵は全部やっつけたの?」 そう言われて、カカシは周囲を見渡した。 「あ、あぁ」 カカシの仲間達が事後処理をしているのを見遣る。 「じゃ、任務完了? 木の葉に帰れる? 皆にも早く会いた〜い」 「ちょ、ちょっと待って。頭がついていかない。、確かに戻ってくるって言ってたけど、国はいいの? 自分の役割をこなすって言ってたじゃないか。今のままじゃ、木の葉に戻っても不便だって・・・」 「ダイジョブなの。カ〜君がね、代わってくれたの」 「カ〜君? オレの人形?」 「あ、違う違う。私の弟なのv 可愛いんだよ〜v カイトって言ってね、もうすっごく可愛くって、食べちゃいたいくらいなの〜vv」 きゃ〜、との周りにハートが飛び交っていた。 「弟が代わってくれたって、どういうこと?」 「あ、あのね・・・」 は、カイトに話を持ちかけられた時のことから話し始めた。 「、話がある」 寝所のベッドに潜り込んでいたに、ベッドの脇に立つカイトは、真摯な瞳でを見据えた。 「ナ〜ニ? カ〜君。改まって」 紅玉と紅玉が、見つめ合う。 「、向こうに戻りたいんだろ? 戻っちまえよ」 「だから〜、出来ないって。その話はもうオシマイにしたでしょ」 切なくなるからやめて、とは膨れる。 炎色の絹糸が、さらりと流れた。 「言ったでしょ? 神としての能力を失わない限り、望むようにはなれないって。私にはやるべきことが、私の役割が、沢山あるの。それを放棄は出来ないよ」 「放棄じゃなくて、譲渡すればいい」 「え? どゆこと?」 「オレはずっと自分の存在の意味を考えてた。神の血を引きながら、何が出来る訳でもない。だったら、居なくても良いんじゃないかって」 「・・・私と逆だね・・・」 「オレにと対等の力があれば、助けることが出来るのに、っていつも思ってた。二人三脚でやっていけないのか、ってずっと思ってた」 「あ、それいいね! カ〜君と一緒なら、私頑張る! 出来ないの? そ〜ゆ〜風に」 「オレにそんな力はねぇよ。の立場は、唯一無二なんだ。同じ力を持つ者は、同時に存在は出来ない。だから、。オレに、のその神としての力を譲ってくれ」 「え・・・どうゆうこと? 譲るって・・・?」 「神の地上代行者としての能力をオレに継承すれば、は自由になれる。何一つ気兼ねなく、好きな所で、好きなように生きられる」 「それって・・・カ〜君が、私の代わりをするってこと・・・?」 「そうだよ。ずっと考えてたんだ。は、神としての立場を好まなかった。オレは逆に、と対等でありたかった。オレに出来ることであれば、オレが全て背負いたい。それこそが、オレがこの世に生まれてきた意味だと思う。が自由になる為に、オレは生を受けたんだよ。そう思ってる」 「でも・・・カ〜君に重荷を全部背負わせるなんて・・・自分だけ好きなことをするなんて・・・」 「それは違う。オレは、オレがやりたいと思うから、代わりたいんだ。今まで甘えて好き放題してきた。その恩返しをしたいんだ。だから、はオレにその力を継承させて、何処にでも行けばいい」 「でも・・・! 私は確かに、カカシせんせぇの所に戻りたいよ。でも、カカシせんせぇとカ〜君を秤に掛けたら、どちらかなんて選べない。2人とも大切だもん。もっとカ〜君とも一緒にいたい」 「どっちも、なんて贅沢言うんじゃねぇよ。よく考えてみろよ。自分がどうしたいか」 は暫く考え込んだ。 ゆっくりと時が過ぎる。 一生懸命、思慮する。 カイトが先に口を開いた。 「好きな男と一緒にいるのが、普通の女の幸せだろ? 普通の人間になりたかったんだろ? 決めちまえよ」 「・・・カカシせんせぇと・・・一緒にいたい・・・」 「じゃ、決まりな。明日から引き継ぎ始めようぜ。色々教えてくれよな」 「ホントに良いの?」 「オレはとは逆に、自分に存在意義を求めてたんだよ。こんなオレでも世界の役に立つなら、甘んじてこの身に受けるよ」 「有り難う・・・!」 きゅう、とはカイトを抱き締める。 「・・・でくれてサンキュー・・・」 「え?」 「何でもねぇ。寝ようぜ。一日でも早く戻りたいだろ?」 カイトはもぞもぞと、ベッドに潜り込む。 「明日から忙しいな。オヤスミ」 あどけない顔で眠る、小さな弟。 は母性本能がくすぐられた。 カイトを見つめていると、沸き立ってくるこの気持ちは何だろう。 その意味を、はまだ気が付かないでいた。 翌日、従者達に、継承のことを告げると、神殿から国から、大パニックになった。 だが、カイトは必死に説き伏せる。 10歳の少年とは思えない程、大人びた表情で。 それに折れていく従者達。 国の民・クレハが代表して、後押しした。 そして、継承の儀式を控え、日々、役割を学んでいく。 儀式の日は着々と近付いている。 祭壇に立つ。 もう着ることはないであろう、正装姿。 そしてもう見ることは叶わぬのであろう、神の申し子としてのの姿を、この目に焼き付けておこう、と人々は見守る。 水鏡を挟んで向かいに膝をつくカイトを見遣り、は天に向かって祈りを捧げた。 の強大なチャクラが、辺りを覆っていく。 全体に染み渡ると、今度は水鏡に向かって集約されていった。 光が弾ける。 「カ〜く・・・カイト。水鏡に映る錫杖を、手に掴み取りなさい。掴むことが出来れば、天の神々は貴方を認めたことになります」 「・・・もし取れなかったら?」 「貴方にはその資格無し、と言うことになります。大丈夫。自信を持って、落ち着いて」 カイトは立ち上がり、深呼吸して水鏡を見つめた。 ゆっくりと手を伸ばす。 その手には、しっかりと錫杖が握られていた。 ホゥ、とカイトは安堵する。 「おめでとう。その錫杖は、貴方が神の申し子という証、象徴です」 はゆっくりと、頭に嵌められている、オリーブを象徴した細い銀冠を外した。 誰もが、その冠に宿る強い力を感じた。 「この銀冠が神である御印です。冠に拒絶されたら、その力は継承されません。・・・いいですか?」 「・・・はい」 はゆっくりと、カイトに歩み寄る。 カイトは覚悟を決めて、ゴクリと唾を飲み込んだ。 銀冠が近付いてくる。 思わずカイトは、目を瞑ってしまった。 が、心配など飛んでいったかのように、銀冠はカイトの頭に収まっていた。 銀髪によく映えている。 それと同時に、急速に力がカイトに流れ込んでいった。 「く・・・」 「負けないで。しっかりと受け止めて」 からカイトへ、急流のように、流れていく。 パァ〜ンと光が弾けた。 見守る人々は、余りの目映さに、目が眩んだ。 光に慣れてくると、カイトが全身輝いているのが分かった。 「新しい神の誕生です」 そう言って、はカイトに向かって、跪く。 「カイト様、おめでとう御座います」 宮司が祝詞を唱えた。 人々は一斉にカイトを祝う。 「カ〜君、有り難う。私の我が儘を聞いてくれて、有り難う。皆さんも、本当に有り難う」 ぺこり、とは皆に対し頭を下げる。 「様、必ず幸せになって下さいね」 見守っていた1人、クレハが微笑む。 「たまには戻ってくるよ。カ〜君も、時間あったら遊びに来てね」 「あぁ」 そして2人は、別離の時まで、名残を惜しんで、共に過ごしたのだった。 「で、今はカ〜君が国で神様やってるの。可愛いんだよ〜v 一生懸命で、食べちゃいたい☆」 きゃ〜、とはまたハートマークを飛ばしまくった。 「な、成程・・・。は、人間になったの?」 里への帰り道、駆けながら、カカシは尋ねた。 「やだな〜、元から人間だよ〜。神の化身だっただけ! 今はね、ちょっと特殊能力を持った、普通の人なの。っていうか、木の葉の忍びなの」 医療忍者目指してま〜す、と駆けながら手をグーにして微笑む。 「忍び候補生でしょ?」 木の葉の出入り口の門まで戻ってきて、里内に入った。 「もう忍びだも〜ん」 てくてく歩きながら、えっへん、と胸を張った。 「え? ホントに?」 「そだよ〜。だってね・・・」 中心地まで戻ると、アカデミーの授業を終えたイルカがいた。 「あっ、イルカせんせぇ〜! ただいま〜v」 「え? あ! さん?!」 イルカは振り返って、ビックリして口をぽかんと開けた。 「戻ってきたんですか? 国はいいんですか?」 「うん。万事解決v」 「ねぇ、話の続きが・・・」 「ね〜ね〜イルカせんせぇ、ちゃんと私のあります?」 割り込もうとするカカシを無視して、はイルカを見上げた。 「あ、ちゃんと用意してありますよ。いつでも渡せるようにってあの時からずっと、ベストの内ポケットに入れっぱなしでした」 ごそごそ、とイルカはベストを漁る。 「? 何のこと? イルカ先生」 「あ、カカシ先生。実は、さんが帰ることになるちょっと前、正式に入学手続きして、アカデミーを卒業したんですよ、さん。卒業試験をクリアして、下忍認定試験をゲンマさんの了承の元で行いまして、合格したんです。だからさんは、晴れて下忍の仲間入り、木の葉の忍びになってたんです」 イルカの説明に、は再び、えっへん、と胸を張った。 「イルカせんせぇ、額当てv」 「あ、ハイ。どうぞ」 「わ〜い♪」 「ゲンマ君了承の元ってどういうこと?」 オレ何も聞かされてないよ、と何だか除け者扱いで、面白くない。 「あのね、ゲンマさんに身元引受人になってもらったの。書類上もしっかり、忍びなんだよ〜」 「いつの話? オレ全然・・・」 「カカシせんせぇがお家出てた時だよ〜」 喜々としては額当てを巻いた。 ゲンマと同じように。 「これでいつでもカカシせんせぇと任務出来るよ〜v」 「・・・分かったけど、額当てはちゃんと額にしようよ・・・ゲンマ君みたいに世の中斜めに見ちゃダメだって」 「私はゲンマさんの妹だも〜ん」 ヨシ、とは自分に向かって頷いた。 「さんのこと、5代目にご報告してきますね」 「あ、後でご挨拶に伺いますって言っておいて下さ〜い」 「木の葉丸達にも会ってやって下さいね」 イルカを見送ると、は瞳を輝かせてカカシを見つめた。 カカシ小隊はもう解散していたので、2人っきりだった。 「あのね〜、さっきからずっと我慢してるんだけど」 「え? ナニ?」 「カカシせんせぇ、ぎゅってしていい?」 「あ・・・うん。いいよ」 カカシはドキリとして、鼓動が早くなった。 「わ〜い♪」 ぴょ〜ん、とはカカシに飛びついてしがみついた。 「っと・・・」 反動でカカシはよろける。 「改めて、ただいまv 会いたかったよ〜v」 きゅう、と強く抱きつく。 「おかえり。オレも会いたかったよ・・・戻ってきてくれて有り難う」 愛しい温もり。 もう、離しはしない。 深く口づける。 時が止まったかのように、長く長く、口づけを交わした。 最初の出会いは、偶然だった。 でも、その出会いは、必然だった。 出会うべくして出会い、それは、運命だった。 10年間の隔たりが、口づけで埋められていく。 長かった。 でも、あっという間だった。 「オレ達の家に帰ろう。続きは帰ってからね」 官能的な口づけに溺れかかっていたカカシは、往来ということを思い出した。 慌てて口布を戻す。 はカカシの腕に絡み付いて、ごろにゃん、と猫のようにカカシから離れなかった。 カカシは心がほくほくして、幸せ一杯だった。 満ち足りた気持ちだった。 「でね、弟のカ〜君がね、とっても可愛いの。食べちゃいたいくらいで〜・・・」 「、それもう何度も聞いたよ。そんなに可愛いの?」 「うんv カカシせんせぇがちっちゃくなったみたいなのv」 「は?」 「あ〜、カカシせんせぇにも会って欲しいなぁ。今度私の育った国を見に行かない?」 「って、簡単に行けるの?」 「ひゅ〜んって行けるよ。それくらいの力は残ってるよぉ。カ〜君にも木の葉を見に来て欲しいしな〜。お手紙書こうっと」 「どうやって渡すの?」 「あ」 蜜月しながら2人は歩いていく。 カカシは幸せというものを初めて味わっていた。 これからもずっと続くだろう幸せを噛み締めた。 いつか2人で家庭を持って、里の繁栄に尽くしていこう。 カカシは、ポケットに指輪を入れっぱなしだった。 に渡そうと思っていたもの。 末を誓い合おう、と。 「・・・いつかオレと結こ・・・」 「あ〜っ! ゲンマさんだ〜っ!!」 の左手を取ってポケットの指輪を取り出して薬指に嵌めようとしたその時。 人生色々から出てきたゲンマに出くわし、は喜色満面で叫んだ。 「何だ、じゃねぇか。戻ってきたのか」 最初は驚いた顔を見せたゲンマ、すぐに安堵の表情になり、悠然と微笑む。 「ちょ、・・・」 はカカシの元を離れ、ゲンマに向かって駆けていった。 「ってば!!」 手が泳ぎ、指輪が虚しく空を切る。 「ゲンマさ〜ん、会いたかったよぉ〜v」 ぴょ〜ん、とはゲンマに飛びつく。 ゲンマはしっかりと抱き留めた。 「ちょっと、?!」 カカシは愕然としている。 は、ごろにゃん、とカカシの時と変わらない風にゲンマに抱きついていた。 「おかえり、」 「ただいま、ゲンマさんv」 そのまま、キスでもして蜜月しそうな勢いだった。 「ってば!」 「ゲンマさ〜ん、お腹空いた〜。ご飯食べに行こ〜v」 「何が食いたい?」 「かぼちゃ〜! てんこ盛りで〜!」 「じゃあオレが作ってやるよ。ウチに来い」 「わ〜い、やったぁ♪」 「ってば! 待ってよ!」 カカシの縋る声も届かず、はゲンマと先へと歩いていく。 「も〜〜〜、ってばぁ〜〜〜!!!」 慌ててカカシは追い掛ける。 カカシ・ゲンマ・。 どうやらこの三角関係は、当分カカシを悩ませそうだった。 【出会いはいつも偶然と必然】第1部・完 ここまでお付き合い頂き、有り難う御座いました。 |