【出会いはいつも運命の気まぐれ】 第二章 小鳥が朝靄の中囀っている。 「ヨシ、朝ご飯出来た!」 味噌汁の味を見ると、はニッコリ微笑み、火を止めた。 ご飯と味噌汁をよそうだけにして、はエプロン姿のまま、外に出た。 ゴソゴソとポケットをまさぐってキーホルダーを取り出し、かぼちゃの付いている鍵を手に、隣の部屋に向かう。 ノックもせずにドアの鍵を開け、中に入っていった。 とてとて、と奥に入っていく。 奥の部屋を開けると、ゲンマがトレーニングしていた。 「ゲンマさん、おはよ〜v やっぱり朝修行してたねっ。朝ご飯出来たから、食べに来てv」 かぼちゃの煮物美味しくできたよ、とはゲンマの前でしゃがんだ。 「おぅ。今行く」 ゲンマは流れる汗を拭き、ポン、との頭に触れた。 上半身裸だったゲンマは、クローゼットを開けてインナーを取り出した。 「先に戻ってるね」 着替えてるゲンマを横目に、は小走りで出て行った。 ゲンマがの部屋に行くと、台所では2人分の朝食がすっかり整っていた。 ご飯も味噌汁もよそってあり、湯気を上げている。 は何やら調理に夢中だった。 栄養バランスを考えた食卓で、健康管理に気を遣うゲンマは、の料理が好きだった。 だが、ゲンマはある物が目に入ると食卓から目線を上げ、を見つめる。 の躍動的な肢体が、眩しかった。 陽が射し込み、思わず目を細める。 暫く眺めていると、ダイニングの椅子には腰掛けず、の背後に回る。 「ゲンマさん、先に食べててい〜よ。もうすぐ終わるか・・・」 が言い終わるかどうかと言う所で、ゲンマは背後からを抱き締めた。 「? ゲンマさ・・・?」 は何事か、と一瞬手を止めたが、すぐに調理の続きに戻った。 「ご飯冷めちゃうよ? ゲンマさん」 ゲンマは抱き締めたまま、ふぃ、との耳に舌を這わせた。 「ひゃっ」 ぴくん、とが身体を震わせる。 ゲンマは構わず、の耳をはみ、ぺろりと舐め、耳の裏から耳朶、首筋に舌を這わせた。 「ちょ・・・ゲンマさん、くすぐったいよ〜」 「気にすんな」 「なるよ〜」 ゲンマが舌を這わせるのに合わせて、の身体がピクリと反応する。 小さく声を漏らすので、ゲンマは愛撫を繰り返した。 「ゲンマさん、ご飯食べてよ〜。冷めちゃうよ〜」 「朝飯よりが食いてぇ」 カカシがいないのをいいことに、ゲンマの行為はエスカレートしていく。 「カカシせんせぇみたいなコト言わないでよ〜。朝ご飯は一日の始まりの大切な原動力だよ〜」 「オマエを先に食ってからな」 の身体を撫で回し、愛撫を繰り返す。 身体の奥が段々火照っていく。 「私食べても美味しくないよ〜」 「んなことねぇよ」 「え? 私って美味しいの?」 「あぁ」 「どう美味しいの?」 「オマエの一番好きな食いモンは何だ?」 「ん〜と〜、クリームあんみつかな」 「そんな感じだ」 「よく分かんない。それより朝ご飯食べてよ〜」 「オマエ食ってからっつってるだろ」 ゲンマはエプロンの隙間から手を入れ、豊かな胸を掴んだ。 が、途端に眉を寄せる。 「・・・、何で鎖帷子着込んでんだよ」 「え〜? 忍び装束の下は鎖帷子でしょ〜?」 ゲンマさんだってその下に着てるじゃない、と何でそんなことを言うのか、不思議がる。 「オマエ今日は休みなんだろ。私服着れよ」 「私はもう忍びだよ! いつでもこのカッコなの!」 ゲンマはおもむろに膨れるを抱え上げ、寝室に向かった。 「ちょっ、ゲンマさん?!」 バタバタと足掻くが、ゲンマはお構いなしにをベッドに下ろし、馬乗りになった。 「ご飯が冷めちゃ・・・」 ゲンマはの肩を掴んで、唇を塞いだ。 「ん・・・っ」 啄むように、角度を変えて何度も求め、の身体をベッドに押し付けた。 「ん・・・っ、ふ・・・っ」 エプロンを取り外し、慣れた手つきで忍び装束を解いていく。 鎖帷子の中に手を潜り込ませようとする。 はゲンマの求愛から逃れ、プク、と膨れた。 忍び装束を直し、エプロンをつけ、寝室を出て行った。 ベッドの上で、落ちてくる前髪を煩そうに掻き上げながら、ゲンマは息を吐く。 「ったく・・・飯作ってる時のは頑固だよな・・・オレの言うことも聞きゃしねぇ」 まだいくらでもチャンスはある、とゲンマは気持ちを切り替え、ベッドから下りた。 今日はは休み。 色々仕込もう、と台所に向かった。 は先程のことなどもう忘れたかのように、鼻歌交じりに何やら調理している。 「オレには早く飯食えって言っといて、オマエは何してんだよ」 後ろ頭をこりこりと掻きながら、ダイニングの椅子に腰掛ける。 「おべんとだよ〜。もうすぐ出来るから〜」 「まだ時間早ぇだろ。食ってからにしろよ」 「ん〜うん。もういっかな・・・じゃ、私も食べる〜」 くる、と振り向いても向かいに腰掛けた。 「いただきま〜す」 うん、美味しい、とニコニコとは食べた。 食べ進めていくうちに、は気が付いた。 「アレ? ゲンマさん、ほうれん草のおひたし食べてないでしょ。栄養あるんだから、おかず全部食べてよ」 ちゃんと栄養バランス考えてるんだから、とはおひたしを摘み、口に放り込む。 「ちゃんと食ってるよ」 とうとう気付かれたか、とゲンマは心の中で舌打ちする。 「嘘だ〜。全然減ってないよ。・・・ん? あ、そう言えば、ゲンマさんとご飯食べてると、いっつもほうれん草残ってたよね。いっぱい茹ですぎたかなぁ、って思ってたんだけど、そう言えばゲンマさんがほうれん草食べてるトコ見たこと無いよ。炒め物とかも食べないよね。何で?」 「食ってるっつってるだろ」 「もしかして、ほうれん草嫌いとかなの?」 ゲンマは黙ったまま、かぼちゃを口に放り込む。 ムグムグ噛み砕きながら、目を横に流した。 「ゲンマさん?」 じ〜っ、とはゲンマを見据えている。 「男らしくな〜い! 嘘ついちゃダメだよ〜。ねぇ、何で? 嫌いなの?」 「・・・あんなモン、草だ。家畜じゃねぇんだ、草なんか食えるか」 ゲンマは吐き捨て、味噌汁を啜る。 「美味しいのに〜。普通の草とは違うよ? 食わず嫌いじゃないの? 食べてみて」 「食感が嫌なんだよ。何とも言えねぇ気持ち悪さが・・・」 「変なの〜。カボチャと同じ緑黄色野菜なのに。栄養バランスいつも気を付けてるのに、何で栄養価のあるほうれん草食べないの? 鉄分不足したら、貧血になるよ」 「ほっとけ。草なんか食わなくたって死にゃしねぇよ」 白米をかっ込んで味噌汁を飲み干すと、ご馳走さん、とゲンマは立ち上がった。 流しに行って、食器を洗う。 「バターで炒めたりしたのも美味しいのに。好き嫌いしてたら大きくなれないよ」 も食べ終わって立ち上がると、ゲンマは食器を受け取り、一緒に洗った。 「もうすぐ三十路だ、これ以上デカくなるか」 ガキに言うような言い方すんな、と吐き捨てる。 「ゲンマさんってお子様〜」 「オマエに言われたくねぇな」 作った物を捨てられた、とはうりゅうりゅ口を尖らせる。 「草以外なら何でも食う。それでチャラにしろ」 洗い物を済ませると、ゲンマはの頬を撫でて、ちゅ、と唇に触れ、お茶を煎れた。 「え〜でも〜・・・」 は膨れながら、弁当を詰め始める。 「オレの女って何? どういうの?」 「意味が分からねぇんなら、食わねぇよ」 こんなコト言うようじゃ、オレもオシマイだな、と自嘲する。 「え〜い、ほうれん草いっぱい詰めちゃえ〜。今度捨てたらもうご飯作んない!」 「じゃ〜オレはオマエの兄貴を辞める」 っていうか辞めてぇ、と心の中で思う。 「え、それは嫌〜。も〜、しょうがないな〜」 ゲンマは茶を含みながら、の作業を眺めた。 「なぁ、それってオレとオマエの昼飯だろ? 量多くねぇか?」 「あ、コレ? えへへ、あのね、今日カカシせんせぇとデートなのv」 カカシせんせぇの分だよ、とは途端に嬉しそうに微笑む。 ゲンマは眉を寄せた。 「カカシ上忍は任務があるだろうが。忍びの休みは貴重なんだ。もっと有意義に使えよ」 「斡旋所に行けば何か受けるだろうけど、今はまだ特に入ってないって言ってたモン。カカシせんせぇとのデートは有意義でしょ? それでまた明日から任務頑張れるし」 カカシのことを忘れさせる筈が、そう簡単には忘れねぇか、とゲンマはに気付かれないように舌打ちした。 「昨日会ったのか?」 「うん。任務から帰ってきたら、アンコさんに誘われて、酒酒屋に行ったらカカシせんせぇ達がいて、一緒に呑んできたの。楽しかったv」 昨日、が帰ってきているとは知らなかったゲンマは、カカシを避けていたので、アンコの誘いを断ったのだった。 だが、今はまだカカシと顔を合わせたくはない。 2人の蜜月は見たくないから、しょうがなかったのだ、と思うことにした。 「・・・カカシ上忍の家に寄ったのか?」 「ううん。寄っちゃったら、帰りたくなくなるでしょ。ゲンマさんに言われたように、自立しようって。任務以外で外泊はしないって決めてるから、チューだけして帰ってきたの」 カカシせんせぇには寄ってってと言われたけど、と弁当を詰め終わってバスケットに入れた。 「キスだけか?」 「うん。ホントはもっといっぱい仲良ししたかったけど、我慢したの。甘えちゃうのヤだから」 「それならいい。自分でしっかりしてきたと思うまで、我慢しろよ」 何とか丸め込もうと、ゲンマは言い含めた。 「つまんないな。仲良しした〜い」 「オレが気持ち良くさせてやるから、我慢しろ」 「気持ちいいってどんなの? カカシせんせぇがしてくれるのとは違うの?」 「今からしてやるよ」 ゲンマは立ち上がり、を抱き上げた。 「でもゲンマさん、この時間は林で修行でしょ? いいの?」 私も付き合うよ〜、とは飛び降りた。 「カカシ上忍とデートはしないってコトか?」 「ううん。カカシせんせぇ、遅くなるでしょ? それまでゲンマさんと修行したい」 慰霊碑行くから、とは額当てを持ってきて巻いた。 ま、いいか、とゲンマは取り敢えずの所朝のことは諦め、自分の部屋に戻って、忍服を整えてきた。 慰霊碑から戻ってきたカカシは、何やら鳥かごらしきモノを持っていた。 「、ウチで待ってるのかなぁ。待ち合わせの約束してなかったけど・・・人生色々に行ったら任務受けちゃうから行けないし、オレん家には来てなかったし・・・ま、行ってみよう」 アパート前まで来て、すたすた歩く。 「此処がゲンマ君の部屋だから、こっちの奥がの部屋だよね。いるかな?」 コンコン、とノックする。 「いないか・・・何処にいる? やっぱゲンマ君トコかな・・・」 オマエは此処にいてね、とカカシは鳥かごをの部屋のドアの脇に置き、アカデミーに向かった。 特別上忍執務室の奥のゲンマの個室の前で、カカシはドアをノックした。 が、返事はない。 「アレ? 留守か? 任務に行ってるのかな・・・」 カカシは隣の部屋に向かった。 「もしも〜し・・・」 そっと顔を覗かせ、中を伺う。 中にいた忍びに尋ねた。 「ね、ゲンマ君いないの? 任務?」 「ゲンマなら、5代目に呼び出されて火影邸に行ってるよ。あぁ、一緒にいたから伝言だ。アカデミーの基本忍術の手本役やってるから、もしカカシが来たらグラウンドに来てくれって」 あっち、と窓の外を指す。 つられて外を見たら、が忍術を披露していた。 グラウンドに出て、を眺める。 躍動的で、とても綺麗だった。 とても生き生きとしていて、輝いて見えた。 「へぇ・・・随分上手くなってるな・・・当たり前か・・・」 カカシに気付いたは、わ〜い、とぴょんぴょん跳びはねて手を振った。 「あぁ、もうすぐチャイム鳴りますね。さん、有り難う御座いました」 教師のイルカが礼を言い、カカシに向かって会釈する。 「い〜え〜。お役に立てたんなら良かったです〜」 「姉ちゃん、頑張れよ!」 「ありがと、木の葉丸君も頑張って早く忍びになってね」 ペコ、とイルカに頭を下げ、生徒達に手を振りながら、カカシの元に向かった。 「わ〜い!」 ぴょ〜ん、とアタックをかます。 「とと・・・」 「カカシせんせぇ、よろけないでよ〜。ゲンマさんはどっしりしてるのに〜」 「無理言わないでよ。それより今日は、何処に行く? 何する? 何だったら、オレん家でイチャパ・・・」 カカシは鼓動を逸らせながら、腕に絡み付くと歩き出した。 「あのね、私、戻ってきてからまだナルト君に会ってないよ! 入院してるんでしょ? 御見舞行きた〜い」 職員室の脇におべんと置いてるから中入ろ、と促す。 「え? ナルト? デートは?」 カカシは拍子抜けで、気を削がれた。 「御見舞は果物かごが定番だよねっ。買っていこ〜」 は聞いておらず、るんるん気分で弁当の入ったバスケットを手に、外に出た。 カカシは引き摺られるように、バタバタと付いていった。 病院に来て受付で名前を書くと、はカカシの案内でナルトの病室に向かった。 まだ昼前だしいくらでもチャンスはある、とカカシは一旦めくるめくイチャパラは諦め、小さく息を吐く。 「此処だよ」 カカシに案内されてきたドアの前でノックして、そっとドアを開ける。 「ゴメンクダサ〜イ・・・」 退屈を紛らわせようとラーメン特集のタウン誌を読んでいたナルトは、ドアが開いたので、顔を上げた。 「あ、ナルト君v やっほ〜」 「姉ちゃん?! アレ? 戻ってたのか?」 雑誌を閉じて起き上がると、は室内へと入った。 続けてカカシも入ってくる。 「うん。ちょっと前にね。ナルト君、ミイラ男みたいじゃない。大丈夫なの?」 コレ御見舞、食べてね、とベッド脇に果物かごを置いた。 「平気だってばよ。もう殆ど治ってんだ。綱手のバァちゃんの言いつけで、3ヶ月絶対安静とかで、暇で退屈してんだってばよ」 サンキュー、とカゴからバナナを1本取って、剥いて食べ始めた。 「姉ちゃん、それって額当て? 中忍試験の時の本戦の審判の兄ちゃんと同じ巻き方だな。姉ちゃん、忍びになったのか?」 の頭部を見て、まじまじと見回す。 「あ、うん。ゲンマさんはね、私のお兄ちゃん代わりの人なの。下忍認定試験に合格して、ちゃんと忍びになったんだ。任務いっぱいしてて、今日はお休み貰ったから、戻ってから会ってない人とか、色々会いたいなって思って」 色々って、まさか今日一日それで終わらせる気か、とカカシは愕然とする。 「どういう任務してるんだってば? 猫探しとか芋掘り?」 つまんない任務だよな〜、とリンゴを手に取る。 「ん〜、潜入捜査とか諜報活動って言うのかな」 リンゴ剥くよ、と果物ナイフを取り出して受け取る。 「それって何ランク?」 「がやってるのは多分殆どBランクだよ。場合によっては、Aランクに近い」 の隣に腰掛けたカカシが、息を吐きながら答えた。 「えぇっ?! ずるいってばよ! 姉ちゃん、下忍成り立てだろ?! 最初っからそういうのって、ずっこいってばよ!」 ぶ〜ぶ〜、と膨れてナルトは皮を剥いただけでこれから切り分けようとしてるリンゴを鷲掴みにして、齧り付いた。 「仕方ないだろ? のチームは、仲間は熟練した中忍2人だし、担当上官は特殊任務を主とする特別上忍だ。は能力的にはもう上忍レベルだし、必然的に難易度の高い任務ばかりになるんだよ」 「でも〜」 ナルトは納得いかないらしく、膨れた。 「ナルト、里がどういう状況か分かってるだろ? 下忍のオマエだって、Aランク任務やってるんだから。という逸材を見逃す程、木の葉に余裕はないよ。分かってやれ」 「ん〜、しょうがないってばよ。分かった。オレも怪我治ったら修行の旅に出るしな! 姉ちゃんがあっと驚くくらいの凄い術身に付けて・・・あっ!」 シャクシャクとリンゴを囓りながら、ナルトは思い出した。 「どうしたの?」 「オレ、姉ちゃんに見せたい術があるんだってばよ。スッゴイの覚えたんだ! ラセンガンって言って・・・」 「コラナルト、忍びが他人に術見せびらかすな。それにオマエはまだ安静で・・・」 「ナルト君、修行の旅に出るの? 行く前に見せて。ナルト君、こうしていても、チャクラが凄く強くなってるのが分かるよ。修行に出たら、きっと凄く強くなって戻ってくるんだね」 「勿論だってばよ。何たって、火影を超すんだからな!」 「頑張ってv 私も頑張るv」 ナルトはに訊かれるままに、自来也から教わった螺旋丸がどういう術か、身振り手振りで説明した。 「う〜んと。カカシせんせぇは出来るの?」 よく分かんない、とはカカシを振り返る。 「こういうのでしょ?」 カカシは掌の中で、渦を作って見せた。 そしてナルトの説明では分からなかった、どういう風に術を繰り出し、どうなるのかをに教えた。 「へ〜っ、今度演習場で教えてv やってみたい」 「はチャクラコントロール上手いからすぐ出来るよ。医療術は針を通すようなコントロールが必要だから、には簡単だよ」 「何でカカシ先生出来るんだってばよ。その術は4代目の遺した術で・・・」 面白くなさそうに、ナルトは膨れる。 「カカシせんせぇは4代目の教え子だよ。4代目はガマ仙人さんの教え子だったから、孫弟子なんだよ。4代目の術色々教わってるって言ってたよね?」 「そうなの? カカシ先生のガキの頃なんて想像付かないってばよ」 「可愛いんだよ〜v 写真が飾ってあってね、その写真がモガ」 「、余計なこと言わないで」 カカシは照れくさそうに、会話を遮った。 「どんな写真?」 「あのね、ナルト君のウチには第7班の写真ある?」 「あるってば」 「あ〜ゆ〜感じでね、カカシせんせぇのトコに4代目がいらっしゃって、下にカカシせんせぇとチームメイトが並んでるの。ちっちゃいカカシせんせぇ、すっごく可愛くって、食べちゃいたいくらいで・・・」 の口を塞ごうとするカカシから逃れながら、はハートマークを飛ばした。 「へ〜。カカシ先生、今度見して」 「ヤだよ」 「ケチ〜」 「カカシせんせぇ、10年以上前からずっと飾ってるんだもんね。ナルト君もその写真大切にしてね」 「勿論だってばよ。オレの原点だからな。今はバラバラだけど、第7班が元に戻るように・・・」 ナルトの言葉で、は目を伏せた。 「・・・サスケ君も、戻ってこないかな・・・忍びになった姿、見て欲しかったのに・・・」 一気に場が暗くなる。 「だ、大丈夫だってばよ! オレ修行して強くなって、ぜって〜サスケを取り戻す! 大蛇丸なんかにやらないってばよ!」 「私も手伝う! それまで任務頑張るよ」 私ももっと強くなる、と決意すると、ナルトの腹が鳴った。 「あ、もうお昼か。おべんと食べよ、カカシせんせぇ。ナルト君も食べようよ。いっぱい作ってきたから」 「いいのか? やった〜!」 「ナルトは入院食があるでしょ」 「あれっぽっちじゃ足りないってばよ。オレってば成長期だからな」 「いっぱい食べて大きくなろうねv」 「ダメダメ。食管理されてるんだから。オレ達はもう帰ろう。じゃ、ナルト。無茶すんなよ」 渋るを引き摺って、カカシは病室を出て行った。 「ちぇ。カカシ先生の素顔見れるチャンスだったのに・・・」 口を尖らせていると、食事が運ばれてきた。 「、何処でお昼食べようか。何ならオレん家に行って、そのままイチャパ・・・」 名残惜しそうにしているを引き摺りながら、廊下を歩く。 「良い天気だね。屋上で食べようよ。高い空の下で食べた方が美味しいよ」 またしてもくじかれ、カカシは項垂れる。 階段を上っていって、屋上に出る。 「流石にもう直ってるか・・・」 給水タンクを見上げ、カカシは呟いた。 「え? 何が?」 「イヤイヤ。もう冬も近いね。この国はそんなに寒くないけど、空っ風が身に染みるなぁ」 はピクニックシートを広げ、弁当箱を開けていった。 「美味しそうだね。の手料理、久し振りだな」 「いっぱい食べてねv カカシせんせぇ、ゲンマさんと同じくらいの身長なのに、ゲンマさんより細い感じだから。だからよろけるんだよ。ど〜んって私を受け止めてv」 ベッドでかな、と欲求の溜まっているカカシはあらぬ想像をする。 いただきます、と食べ始める。 「、任務嫌じゃない?」 「? 何で? 面白いよ」 「だって、知らない男に身体触られるでしょ? 気持ち悪くない?」 「触られると気持ち悪いの? 何で?」 「何でって・・・あ、幻術でごまかしてるのか。でもな・・・、襲われたりしないの?」 「襲われるって? 敵が来てもちゃんと戦ってるよ」 「その襲うじゃなくて、身体を触られたり脱がされたり、を食べようとされてないのかって」 「ん〜、アケビせんせぇに言われた通りにしてるから、大丈夫だと思うけど」 「どういう風に言われてるの?」 「内緒。誰にも言っちゃダメって言われてるから」 「それもそっか・・・」 任務のことを訊いても答える筈がないのだ。 なりの方法で上手くやっているというのなら、恐らく大丈夫なのだろう、と思うことにした。 満腹になり、茶を含みながら空を見上げる。 「、これからどうする? 何なら、オレん家に行って、イチャパ・・・」 弁当を片付けているを見遣り、鼓動を逸らせる。 「取り敢えずウチに戻っておべんと置いてくるよ。邪魔だから。折角のデートだから、色んなトコに行きたいし」 立ち上がったは、ニッコリ微笑んでカカシの腕に絡み付く。 の家に行くというなら、そこでイチャパラは出来る。 まだ陽は高いし、ゲンマが帰ってくる心配もない。 よし、とカカシは燃えた。 アパートまで戻ってくると、何やら鳥の鳴き声がした。 「何だろ? 口寄せの鳥さんかなぁ」 「あ、オレが置いてったヤツだ。に渡そうと思って」 ドアの脇で、鳥かごの中の鳥が鳴いていた。 「コレ、九官鳥のはたけ君ね。口寄せの鳥みたいには喋れないけど、会話は出来るよ」 カカシは鳥かごを持ち上げ、に見せる。 「わ〜、可愛いv お家広いから、何か飼いたいなって思ってたの。ありがと〜」 は鍵を開け、室内に入った。 カカシもそれに続く。 は台所にバスケットを置くと、寝室に向かった。 「その鳥かご、上につるせる? でも取り敢えず、机の上に置くよ。引っ掛けるトコ無いし」 鳥かごは窓辺の机の端に置かれた。 陽も射し込むので、日光浴には良いだろう。 「色々言葉仕込んであるから。口寄せの鳥に慣れてると違和感あるかも知れないけど、普通に動物と考えれば、会話が成り立つのって面白いと思うよ」 「へ〜、何喋るの?」 はたけ君喋って、と興味深そうに覗き込む。 「チャン、チャン、ダイスキ。ダイスキダヨ」 「わ〜、喋ったv 他には?」 「、アイシテル。、アイシテル」 「カカシせんせぇが教えたの?」 瞳を輝かせて、背後のカカシを振り返る。 「うん。色々、状況に応じて喋るから。も色々喋らせてみて」 「、アイシテルヨ。ハオレノコトアイシテル?」 「え、はたけ君のこと?」 「違うよ。オレのことだよ」 きゅ、とカカシはを抱き締めた。 「、好きだよ。愛してる。はオレのこと、どう思ってる?」 「キライダー! キライダー!」 「コラ! そんなこと教えてない! ヤなこと言うな!」 「私もカカシせんせぇのこと大好きv」 にぱ、とカカシに身を預ける。 「・・・大好きだけ? 愛してるとは言ってくれないの?」 「アイシテナイ。オマエナンカキライダ」 「ウルサイ! 焼き鳥にするぞ!」 「ギャー、オーボー、オーボー!」 「餌ってコレ? お腹空いてるのかな。食べる?」 「ハラヘッター。ミズモクレ、ミズ」 「分かった、待ってて」 は餌を受け皿に入れ、水を入れた容器をカゴの中に置いた。 暫く眺めていると、思い出したようには顔を上げた。 「ねぇ、カカシせんせぇ。人間って食べられるものなの?」 「ん? 何、イキナリ。ま〜、野生動物とか妖怪とかは、食べるんじゃないの。それがどしたの」 「そじゃなくて〜。人間が人間を食べるのかって」 「フツ〜食べないでしょ。共食い種族はいるかも知れないけど」 「美味しいのかな」 「さぁ、食べたこと無いし、食べたいとも思わないし」 「え、カカシせんせぇ、よく言ってたじゃない。ご飯よりが食べたいって」 「あ、そっちの食べるか。うんまぁ、美味しいと思うよ。好きな女の身体は何より甘美なモノだしね」 「へ〜、美味しいのかぁ」 「それがどしたの? 食べていいって事?」 ゴクリ、とカカシは喉を鳴らす。 「ん〜あのね、今朝ゲンマさんに言われたから」 「え・・・」 胸の奥がざわりとして、鼓動が逸る。 「私って食べたら甘いのかな」 味しないよ、とは自分の腕を舐める。 「ど、どして?」 「ゲンマさんにもね、カカシせんせぇみたいに、朝ご飯よりが食べたいって言われて、どう美味しいのか訊いたら、クリームあんみつみたいなんだって。よく分かんないんだけど、そうなの?」 「い、言われただけなの? 何か・・・されたの?」 「うんと〜、カカシせんせぇの時と同じ。私はご飯の方が大事だと思うのに、私の方が先に食べたいって言うんだもん。ご飯はちゃんと食べないとダメだよねぇ?」 の言葉から、ゲンマは明らかに、に対してセックスアピールをしだしてきたのだと分かった。 兄代わりとして一歩引いてきた立場から、一変して、積極的にを求めだしたのだと。 1人の男として。 ゲンマがカカシに会うことを極力避けているのは、それ故だ、と。 「た、食べられたの?」 「ううん。ほうれん草も食べないし。私、やっぱり人間が美味しいとか、食べたいとかって、よく分かんないよ」 はベッドに腰掛け、枕元のカカシ人形を抱き締めた。 「カ〜君、教えて?」 カカシ人形の腕を動かして、問いかける。 ふとカカシは気付いた。 「、よく弟のこと、可愛くって食べちゃいたいって言ってただろ? それと同じだよ」 「あ、そっか。そういう意味か。やっと分かったよ〜」 人形を高い高いして、抱き締め、ニッコリ微笑む。 「でもホントに食べようとは思わないよ。カカシせんせぇ達が私を食べるのって、どういうコトするの? モグモグパクッて食べるんじゃないよね?」 「え〜、要は、セックスのことを言ってるんだけど・・・」 「仲良しすることを食べるって言うの? じゃあ私は食べられるだけ? カカシせんせぇを食べることは出来ないの?」 「イヤ、出来るよ。どっちが攻め手・受け手になるかってことで」 「気持ち良くさせてもらった時が食べられたで、気持ち良くさせるのが食べる、ってこと?」 「大まかに言えば、そうかな」 カカシはの脇に腰掛け、を押し倒した。 「オレは今が食べたい。食べられるのでもいいけど、が食べたい」 人形を引き剥がして脇に置き、に覆い被さって迫った。 「さっきおべんと食べたばっかりだよ。胃もたれするよ。って、あ! おべんと箱洗ってない! 乾いたら取れなくなっちゃう!」 はするりとベッドから下りて、とてとてと台所に向かった。 「え、ちょっと、・・・!」 カカシは慌てて追い掛ける。 は流しで弁当箱を洗っていた。 「ね、、気持ち良くなろ? いっぱい仲良ししよ?」 洗い終わったを抱き上げ、寝室に戻っていく。 をベッドに下ろすと、黒く長い絹糸と一緒に、金茶色の髪の毛がシーツに散らばって落ちているのが目に付いた。 「・・・もしかして、ゲンマ君に此処で押し倒されたりしたの?」 「今朝のこと? 私が食べたいって言って・・・」 「ダメでしょ! ゲンマ君にそういうことされちゃ。脱がされたり胸揉まれたりしてないだろうね?」 「されてないけど。何でダメなの?」 「オレ以外の男にそういうことされちゃダメ!」 「え〜でも〜、そんなこと言ったら、任務出来ないよ」 「う、任務はいいから。嫌だけど、しょうがないしね。ゲンマ君はダメ! キスもダメだよ!」 「え〜、何でぇ? チューくらいいいでしょ?」 「ダ・メ! 抱き合うのもダメ! 兄妹は、そんなコトしないんだよ。怪しいビデオじゃないんだから・・・」 「カカシせんせぇって〜、心狭いね。アレもダメこれもダメって、私を縛らないでよ」 プク、とは膨れる。 「だ、だって・・・」 「カカシセンセ、キライ、キライ」 九官鳥がとどめを刺した。 「〜〜〜っ、オレ以外目に入らなくする!」 カカシはをベッドに押さえつけ、口布を下げて唇を塞ごうとした。 だがは、するりと逃れる。 「何か、今のカカシせんせぇ、何かヤだ。嫌いとか言わないけど、ヤだ」 プク、と膨れて口を尖らせる。 「〜〜〜オレッ、が好きなんだよ! 愛してるんだ! 好きな女が他の男を見てるなんて嫌なんだ! オレのことを見てよ! オレだけを!」 「私もカカシせんせぇのこと好きだよ。ちゃんと見てる。でも、もっと色んなモノや色んな人を見たいの。カカシせんせぇだけなんて無理だよ」 「ずっとなんて言わないから! 2人で居る時は、オレだけを・・・」 「私、カカシせんせぇと色んなモノ見たいの。感動を分かち合いたいの。それじゃダメ?」 の大人の意見に、カカシは、自分が酷く幼稚に思えてきた。 恥ずかしくなって、言葉が詰まる。 「ゴ、ゴメン・・・オレ・・・」 と通じ合うことに、焦りすぎているのかも知れない。 腕の中に取り込んで、安心したいのかも知れない。 初めて人を愛したカカシには、心の余裕がなかった。 暫し沈黙が部屋を包む。 「デートシタイ。キスシタイ。オデカケ、タノシミ」 九官鳥が沈黙を破った。 「折角のデートなんだから、もっと色んなトコ行こうよ、カカシせんせぇ。そうだ、私、サクラちゃんに会いたい。任務が忙しくって、女同士の秘密話とかの時間もないから」 はベッドの脇でカカシの腕を引っ張った。 「あ、あぁ。オレ、ちょっと焦ってるみたいだ。はずっとこの里に居るんだし、いつでも会おうと思えば会えるんだから・・・」 に引っ張られ、ベッドから立ち上がる。 「でしょ? アンコさんとかは、カカシせんせぇと一緒の時間を大切にしていっぱい仲良ししろって言ってたけど、仲良しもしたいけど、まずは立派な忍びになりたいの。私は木の葉のモノになったんだから、里の為に、任務第一で、チームワークを大切に、頑張りたいの。カカシせんせぇなら、分かるよね?」 「うん。そだね。いつか一緒に任務するんだろ? 楽しみだな」 「はたけ君、出掛けてくるねv ご飯一杯入れておいたから、お腹空いたら食べてね」 「イッテラッシャイ、ラブラブガンバレ」 九官鳥の見送りに、は手を振って、カカシにべったりしがみついて、家を出た。 |