【出会いはいつも偶然と必然】 第十九章









 カカシが家を空けてから、早2週間が経とうとしていた。

 中忍試験本戦に向けて修行を積んでいるナルトの成果が一向に上がらない中、は火影に会いに執務室を訪れた。

「自来也に世話になっとるそうじゃな。変なことはされとらんか、

 執務の手を止めた火影は、茶を啜りながらにこやかにを見遣った。

「変なことですか? え〜、どんなことだろ・・・別に、色々為になるお話しして下さるから、楽しいですよv」

 一緒に水遊びとかもしてます、とも茶を啜りながら、足をぶらつかせた。

 は自来也の、モロに好みだ、と火影は自来也の性格を熟知していたので、まぁ優しくされているのだろう、と、聞かずとも分かっていた。

「・・・でも・・・」

 ニコニコと微笑んでいたは、突然寂しそうに顔を曇らせる。

「でも? 何じゃ、

「カカシせんせぇに会いたいです・・・」

「そうじゃな・・・。一度も帰って来ぬのか、カカシは」

 ハヤテが殺されたことを知って修行を決意し、カカシが家を出たことを火影はゲンマから報告を受けていた。

 忍び達はそれぞれ、ゲンマをはじめ何かしら特別に修行を始めた者が多かったが、任務が優先だった為、サクラは予選落ち、ナルトは自来也に預かって貰っている、サスケは絶対安静、と本戦出場下忍を担当する上忍の中で唯一手の空くカカシ以外は、任務に就いているか、部下の修行を見ているかで、自身の修行に専念しているのは、カカシくらいだった。

「家を空けて何日かした時に一度帰ってきたきりです。時々帰ってくるって言ってたんですけど、全然・・・」

 うりゅ、とは瞳を潤ませた。

「仕方あるまい。あやつはもともとが忍びの世界しか知らぬ。一つのことに集中すると、とことん自分に納得がいくまで突き詰めるヤツなんじゃよ、昔から。子供の頃から変わってはおらぬ」

「分かってます。今が大変な時だって、承知してますから。寂しいけど、我慢です。私も修行頑張って、お役に立てるようになりたいです」

 寂しそうに、は微笑んだ。

「確かに、のチャクラは益々強くなったのぅ。カカシどころか、儂をも上回るようじゃ。大蛇丸に目を付けられぬと良いが・・・」

 の存在を、大蛇丸が既に知っていることは、カカシしか知らなかった。

 興味ないとその時は言っていたが、いつ矛先が向くとも知れない。

 カカシとて、安心はしていなかった。

「まぁ、大丈夫じゃろう。お主の能力の方が、大蛇丸を上回るやも知れぬ。おいそれと、手は出してこぬだろうて」

「大蛇丸さんって、サスケ君に呪印をして、何をしようとしているんですか?」

 こんなに厳戒態勢になる程怖いことなんですか? とは火影に尋ねた。

「うむ・・・サスケを、己の後継者にするつもりなんじゃろう。あやつは、血継限界を欲しているんじゃよ。木の葉に恨みも持っておる。お主が、儂が危ないと感じるというのは、それじゃよ」

「え・・・? それ・・・?」

 は、ことを理解できていなかった。

「木の葉を潰し、儂の命を取りたいというトコじゃろうて」

「えぇっ?! そんなぁっ!」

 は驚愕して、目を見開いた。

「火影様・・・」

「何・・・昔、ヤツを里から逃がした時から、腹は括っておるよ。お主が感じ取る前からの」

 心配そうに悲壮な目で火影を見つめるに、火影は柔らかく微笑んだ。

「火影様・・・死なないで下さいね」

「大丈夫じゃよ。ヤツのいいようにはせん。皆のことは、儂が守る」

 悟ったように微笑む火影を見て、は、火影が死を覚悟していることを感じ取った。

「死んだらダメです。私、泣いちゃいますよ」

「ほ・・・それは困ったのぅ。若いおなごを悲しませる訳には行かぬな。うむ。死にはせんよ。まだまだ、この里を見守りたいからのぅ」

「約束ですよ、火影様」

「うむうむ。お主が立派な医療忍者になるのを、見届けぬとな」

 書類は受理したぞ、と火影は微笑んだ。

「カカシせんせぇの足手まといにならないように、修行頑張ってますv 立派な医療忍者になれたら、カカシせんせぇとチーム組ませて下さいね、火影様v」

「ほほ、分かっとるよ」

 は、日頃のゲンマとの修行の成果を、火影に話して聞かせた。

「ゲンマは特殊任務の為に特別上忍じゃが、里でも随一の強さを持っておる。教え上手じゃし、良い兄代わりを持ったな、

「ハイv ゲンマさんのお陰で、カカシせんせぇに会えない寂しさも紛らわせられてます」

「カカシが嫉妬して戻ってきそうじゃな」

 以前からはゲンマと随分親しいと言うことは、自身からも聞かされていたし、ゲンマにも訊いて知っていた。

「嫉妬?」

にも居場所を知らせておらぬのか? カカシは」

「はい・・・何度か捜してみてるんですけど、全然見つかりません」

「そうか・・・カカシは姿をくらますのも昔から得意じゃったな・・・」

その時、急を要するように、執務室がノックされた。

「何じゃ、入れ」

 面を着けた暗部の青年が、息せき切って入ってきた。

「失礼します! 大変です、火影様! うちはサスケが、昨夜病院から姿をくらましたそうです!」

「何じゃと」

 火影は暗部の言葉に、目を見開いた。

、お主がサスケの治療をした時、暫く起きぬように施しておいたと言っておったな。その効力はどれくらいにしておいたのじゃ?」

「えっと・・・怪我が全快するまでだったんで、多分今くらいですね」

「では、目が覚めてすぐ抜け出したと・・・! 、何故そのまま拘束させておかなかったんだ!」

「え・・・そう言われても・・・」

 は、カカシが、サスケが目が覚めたら自分の所へ来るようにしているのを、黙っていた。

 にとっては、火影の言葉より、カカシの言葉の方が絶対だった。

 暗部の護衛を付けて隔離して拘束しておくより、修行を付けてより強くしてやりたい。

 その気持ちを理解していたからだ。

「恐らく、修行をしようと思っているのじゃろう。暫くの入院で日が経っていて、かなり焦っている筈じゃ。手ぐすね引いているであろう大蛇丸の手に落ちぬとも限らぬ。捜させておるのか?」

「あ、はい。我ら暗部数名で、各方向に散って捜しています。下忍の子供くらい、すぐ見つかるとは思うのですが・・・」

「大丈夫ですよぉ。サスケ君だってそう簡単に捕まる訳ないですよ」

「しかしな、病み上がりで、気も急いていれば、敵の手にも落ちやすい。いくら優秀なうちはの末裔とはいえ、まだ子供なんだぞ、新人下忍の」

「そっか・・・じゃ、私も捜すの手伝います」

 カカシの元に辿り着く前に捕まると大変だ、とは思った。

「どうやって見つけると言うんだ、この広い国を」

「えっと、最近契約した口寄せで、鳥さん呼んで捜してもらおうかなって。私よりは頼りになるでしょ?」

「成程・・・鳥って、ゲンマの忍鳥か?」

「あ、ハイv」

 は歯で指先を噛み切って血を流すと、矢継ぎ早に印を結んだ。

「口寄せの術!」

 大きな鷹と鷲が現れた。

「フジナさんとマリモさん、サスケ君を捜してくれますか?」

「分かった。まずは病院から、足跡を追おう」

 この間ナルト捜しをした際に里の事情を知ったらしい2羽は、詳しく聞かずとも、直ぐさま外に飛んでいった。

「では、私も捜索に出ます」

 暗部の青年は、そう言い残すと、執務室を出て行った。

「見つかると良いがな・・・」





 暫くして、鷹の方が舞い戻ってきた。

「あ、フジナさん。どうでした?」

 ふぁさふぁさと羽ばたきながら、火影の机に留まった。

「今マリモにもっと広範囲を飛んで貰っているが、オレの眼下には見つからなかった。近場ではな。それより、サスケの病室の傍で、気になるチャクラが残っていた」

「チャクラ? まさか、サスケは抜け出したのではなく、攫われたと申すのか?」

「いや、そうじゃない。あれは、忍犬だ。カカシの忍犬・・・恐らく、カマキリあたりだ。カカシに言われて、サスケを見張っていたと言うところだろう」

 フジナの言葉に、は、あちゃ〜、バレたかな、とチラと火影を見遣った。

「カカシの忍犬じゃと? 暗部の護衛は必要ないと解散させておきながら、自分では忍犬に見張らせておったのか」

「え〜、そうなんですか? 忍犬が・・・知らなかったなぁ」

も知らなかったのか。カカシの忍犬は優秀じゃが・・・では、その忍犬はサスケの抜け出しを手伝ったのか? それとも止めに入ったのをやられて消えたのか?」

 いや、後者は考えにくいか・・・と火影は思慮した。

「フジナさん、分かる?」

「いや、そこまでは分からねぇ。争ったような形跡はなかったがな」

 話を総合して、火影は、サスケはカカシを捜して抜け出したのだろう、と思い当たった。

 が何となく目を泳がせているので、確信した。

 カカシの合意の上なのだ、と。

「ならばそう心配せずとも良いか・・・」

「え?」

「いや、何でもない。どちらにせよ、居場所は把握しておかねばならぬ。フジナと言ったか、引き続き、捜索を続けてくれぬか」

「分かった」

 サスケが無事にカカシと合流しているかも、半信半疑だった。

 途中で攫われる可能性もある。

 カカシの元に必ず行くという保証もない。

 捜索は見つかるまで続けさせよう、と火影は指示を飛ばした。

『まぁ・・・カカシの元におるなら、そう簡単には見つからぬだろうがな・・・』

「火影様?」

よ、カカシはな、子供らしい遊びなどしたことはないが、かくれんぼは得意なんじゃよ。昔からな」

「はぁ・・・」

 フジナは再び飛び立とうとした。

「あっ、フジナさ〜ん、カカシせんせぇも見つかったら教えてね〜!」

「オマエにせがまれて何度も捜しに行ってるが、見つからんと言ってるだろう。今猿飛も言っただろ。カカシはかくれんぼが得意だって」

「何じゃ、、こやつらに捜させておったのか、カカシを」

「あ、えへへ」

 ほほ、と火影も微笑んだ。

「じゃ、サスケとカカシを捜そう」

「お願いしま〜す!」

 フジナを見届けると、は再度火影に死なないように懇願し、アカデミーに向かった。

















「うちはのガキ、抜け出したんだってな」

 アカデミーの授業を少し受けた後、テラスで昼休みを過ごしていたゲンマは、の弁当を頬張りながら、呟いた。

「アレ、ゲンマさんも知ってるの?」

「知らせが来た。うちはのガキは、今や重要人物だからな」

 茶を含みながら、空を仰ぐ。

「それにマリモも来た。捜索に手数が欲しいから、全部口寄せしてくれってな」

「え? 全部? 全部の鳥さん呼んだの?」

「いや、流石に捜索に不向きのデケェのも飛べねぇのもいるから、5羽くれぇ追加しただけだ」

 戦闘専門もいるからな、とゲンマは白米を頬張る。

「へ〜っ、見たかったなぁ」

 まだ全部見てないよ、今度見せて、とは茶をこくんと含んだ。

「うちはのガキがカカシ上忍の元に向かったことは、火影様には言ってあるのか?」

 テメェで呼び出せ、とゲンマは断る。

「ううん。内緒でって言われてるし。でも、火影様、言わなくても気付いたみたい」

「そりゃそうだろうな。うちはのガキの病室の傍にカカシ上忍の忍犬がいたと言われりゃ、普通分かるだろ」

「だよね。あ〜、カカシせんせぇも見つからないかなぁ」

 鳥さん達も暗部の人も優秀だから見つかるよね? とはこくこくと茶を含みながらゲンマを見つめた。

「どうだかな。あの人は、昔っから隠れるのが得意なんだ。アカデミー時代、捜索演習で、見つけたことがねぇ」

「火影様も仰ってたよ。かくれんぼが得意だって。私もね〜、カカシせんせぇのチャクラに辿り着かないか神経張り巡らせてるんだけど、何かのバリアがあるみたいなの」

「カカシ上忍は、結界忍術が得意なんだよ。、何か結界忍術教わってねぇのか?」

「え〜ううん。幻術は一杯教わったけど」

「ま、オマエ自身が歩く結界だからな。だから教えてねぇ訳だ」

「カカシせんせぇ、何でも均等に教えてくれてるって言ってたのになぁ」

「教える必要がないと思ったんだろ。無意識かも知れねぇが、今現在、オマエは結界を自分に張ってるんだからな」

「あ〜そっかぁ」

「それが今となっては仇になってるな。カカシ上忍、教えておかなくて良かった、とか思ってるんじゃねぇか? 今頃よ」

 弁当を全て食べ終わり、ゲンマは喉を茶で潤した。

「ちぇ。あ〜ぁ、会いたいよ〜〜〜」

 ムグムグ、とは残りを食べ続ける。

「そう嘆くな。あと2週間もすりゃ、本戦開始だ。それまでには戻ってくるんだから、もう少し我慢しとけ」

「本戦かぁ。ゲンマさんの晴れ舞台だよねっ」

 にぱっ、と笑ってはゲンマを見遣った。

「違うっつの」

 ったく、とゲンマは高楊枝で息を吐いた。

「早く本戦始まらないかなぁ」

「生き急いだって、ロクなコトねぇぞ。そうだ、オマエに言っとかねぇとな」

「え? 何を?」

 食べ終わったは、きょとんとゲンマを見つめた。

、オマエは本戦会場には来るなよ」

「え〜っ、何でぇ?!」

「危険だからに決まってるだろうが。火影様にも仰られたんだよ。を大蛇丸の目に留まらせる訳にはいかないって」

「カカシせんせぇも、家を出てく時、本戦には来ちゃダメって言ってたし〜。家でおとなしくしてなさいって。私も試合観たい〜〜〜!!」

「カカシ上忍もそう言ってるんなら、言うことを聞け。いいな」

「ヤだっ」

 プクッ、とは膨れてプン、と顔を背けた。

「オマエの身の危険の問題だぞ。カカシ上忍と任務出来なくなってもいいのか」

「え〜〜〜、それはヤだ〜〜〜」

「だろ? だから当日は、おとなしく家にいろ。いいな」

「は〜い・・・」

 は納得がいかないようだったが、取り敢えずは承諾した。

 ゲンマは、家にいても危険な場合もあるから、アカデミーの授業を受けさせていれば、イザという時に緊急避難が出来るだろう、とも思った。

 それは近くなったら言おう、と心に留め、弁当箱の片付けを手伝った。

「試合観たいなぁ・・・」

「ビデオ撮るから、それをあとで観ろよ」

「え〜、臨場感味わいたいの〜。実戦形式でしょ? 実戦経験無いから、お勉強したいのに」

「間が悪かったな。運がなかったと思って、諦めろ」

「ちぇ〜」

 テラスから屋内に入り、階段を下りていった。

「予選の試合なら、ビデオに撮ってあるから、アンコに言えば見せてもらえるぜ。それで我慢しろ」

 ゲンマの腕に絡み付いてくるに、相変わらず懲りねぇな、とゲンマは息を吐く。

「あっ、サクラちゃんの試合もあるんだよねっ」

 観たい観たい、とは花のような笑顔を向ける。

「さぁ、内容は知らん」

「え〜っ、ゲンマさん観てないの? 試験官なのに? じゃあ、今日借りてくるから、家で一緒に観よう?」

「オレは観てねぇんじゃなくて、観れねぇんだよ」

「? 何で?」

「本戦の審判だからな、オレは。公正を期す為に、余計な感情移入しないように、観ちゃいけねぇことになってんだよ。だからオレは、本戦直前まで携われねぇんだ」

「へ〜、成程」

「だから観るんなら、1人で観るか、カカシ上忍の家に戻って観てくれ」

「カカシせんせぇのお家、テレビ無いんだけど」

 だからビデオデッキもない、とはゲンマを見上げる。

「必要ないって処分したのか? イザって時に必要になるんだがな。じゃあ、誰かしらの家にでも行けよ。知り合い、いるだろ?」

「じゃ、サクラちゃんに頼んでみようかな。サスケ君のことで、話したいし・・・」

「そうしてくれ」

 階段を下りながら、ゲンマはポン、との頭を撫でた。

「これから水べりか?」

 執務室の鍵を開けながら、ゲンマはに尋ねた。

「うん。ガマ仙人さんが、色んなお話ししてくれるの」

「あの人の話なんて、ロクなもんじゃねぇだろう」

 ゲンマは持っていた弁当箱をに渡し、眉を寄せる。

「え〜っ、楽しいし面白いよ?」

「何聞かされてるんだよ」

「ゲンマさんには内緒って言われてるモン♪」

「つまりロクなことじゃねぇてことじゃねぇかよ・・・」

「カカシせんせぇが帰ってくる来たるべき日に備えてお勉強してるんだよっ」

「何のお勉強だやらな・・・」

 ヤレヤレ、とゲンマは息を吐いて、アンコの所に行く、というの後ろ姿を見送った。



















「あの〜、アンコさんいますか〜?」

 ゲンマの個室からさほど離れていない、特別上忍執務室には向かった。

 そっとドアを開け、中を覗く。

 何人かの忍び達が、午後からの執務を始めていた。

「あら、じゃない。ど〜したのよ、こんなトコに。何か用?」

 コテツとイズモを補佐に付けて執務を行っていたアンコは、の声に顔を上げ、ドアを見遣った。

「あ、アンコさんにお願いがあって」

「私に? な〜にぃ?」

 そんなトコに突っ立ってないで入っておいでよ、とアンコは手招きする。

 失礼しま〜す、とは辺りをきょろきょろと物珍しそうに見渡しながら、中に入っていった。

「えっと、ゲンマさんが言ってたんですけど、中忍試験の第三の試験の予選のビデオ、アンコさんに言えば貸してもらえるって・・・」

「この間のヤツね。私の許可があれば、貸し出せるわよ。出してやって」

「あ、はい」

 イズモは指示を受け、探した。

「えっと・・・どこだっけ」

「そこの棚よ。無いの?」

「アレ? 無いですよ、この間のは」

 それ以前のしかないです、と棚を眺める。

「あら〜? 誰か借りてんのかしらね」

 コテツが貸し出し簿を手に取り、捲った。

「昨日借りてった人がいますね」

「あらそう? 最近慌ただしいから、覚えてないわ」

「それに・・・そのあとも貸し出し待ちの人の予約の名前がずらずらとありますよ」

「そんなに? ダビングすべきだったわね。何せ、今回は色々な意味で注目されてるからねぇ」

っつったっけ? 当分観れそうにないぜ。ワリ〜けど」

「え〜っ。いつ頃になったら観れそうですか?」

「そうだな・・・今予約の名前書いといて、順番で行くと、本戦の終わる頃だな」

「そんなぁ〜。本戦観に行けないから、予選観たかったのに〜」

 は口を尖らせて、困った表情を見せた。

「アレ? 何で観に行けね〜の?」

 観たいんなら行きゃいいじゃん、とコテツはを見遣った。

 露出の多いの格好を改めて見て、思わず舐めるように凝視してしまう。

 イイ身体してるなぁ、と思わず本能が動きそうになった。

「あぁ、火影様からも言われてるのよ。は本戦会場に来ちゃいけないって」

「何でですか?」

 いけね、と不自然に顔を逸らしてアンコを見遣る。

「大蛇丸に目を付けられるかも知れないからよ。のチャクラを感じれば分かるでしょ」

「あぁ、成程・・・」

「確かに、危ねぇかもな〜」

 のチャクラの強大さを、ひしひしと感じた。

「大蛇丸さんのこと恨んじゃうよ〜も〜〜」

 ぷぅ、とは膨れた。

「大蛇丸にさんなんて付けなくていいわよ!」

 激しい剣幕で、アンコは怒鳴りつけた。

「あ、ハ〜イ・・・」

 そうだった、つい、とは頬を掻く。

「全く、アンタと話してると緊張感に欠けるわ」

 はぁ、とアンコは息を吐いた。

「よく言われます〜」

「カカシの大変さが何となく分かるわ」

「え・・・やっぱり私、カカシせんせぇに迷惑かけてるんですか?」

「そんなことないわよ。カカシはアンタに惚れてるんだから、迷惑も喜んでるでしょ」

「迷惑だから家出てっちゃったのかな・・・」

 うりゅ、とは瞳を潤ませた。

「お〜い。話聞いてる〜?」

「聞きしにまさる天然っぷりっすね」

「カカシせんせぇに会いたい・・・」

 今にも泣き出しそうなに、コテツとイズモはオロオロした。

「会いに行けばいいじゃん。嫌がられはしないだろ?」

「でも、何処にいるか分からないし・・・」

「捜してないのか? 会いたいんだったらさ〜」

「ゲンマさんの鳥さんに捜して貰ってるんですけど、全然見つからないんです」

「あ〜、カカシって結界忍術抜きん出てるからね〜。でも見つけられないんだ?」

「結界忍術、教わってないんです」

「ありゃ。カカシの使う結界忍術は、木の葉ではカカシ以外には火影様しかできないシロモノだからね〜。火影様に教わるって訳にもいかないしね。お忙しいし。しょうがないじゃない。あともうちょっと、辛抱してなよ」

「う・・・」

 わぁ〜ん、とは泣き出した。

「ちょっ、ッ!」

 何事か、と周りにいた他の忍び達の視線が集中する。

「会いたい〜〜〜!!」

「カカシに会えなくて情緒不安定なのね。コテツ、ゲンマ呼んできてよ」

 よしよし、とアンコはをあやす。

「ゲンマさんっすか? 何で?」

「いいから。このコを宥められるのは、カカシ以外には、ゲンマしかいないのよ」

 言われたとおり、コテツはゲンマを呼んできた。

「何だ? 一体。アンコ、何泣かしてんだよ」

 くわえ楊枝で頭を掻きながら、ゲンマは室内に入ってきた。

「泣かした訳じゃないわよ。カカシに会えなくて、情緒不安定なのよ」

「だからってオレを呼ぶな。オレは便利屋じゃねぇんだぜ」

 ったく、と眉を寄せて息を吐いた。

の兄貴でしょ? 妹を慰めなさい」

 ほら、とアンコはをゲンマに向けた。

 ぴと、とはゲンマの胸にしがみつき、えぐえぐと泣いた。

 ゲンマは黙ってを腕の中に取り込み、優しく抱き締め、が泣きやむまで頭を撫でた。

 その時のゲンマがあまりにも柔らかく優しい表情をしていたので、コテツとイズモは驚いていた。

 ゲンマと言えば、目つき悪い、ガラ悪い、ぶっきらぼう、の代名詞だったから。

「全くもう、ゲンマ、今アンタと同棲してるんでしょ? が不安にならないように、さっさと自分のモノにしちゃいなさいよ」

 カカシに遠慮すること無いのよ、とアンコはけしかける。

「馬鹿言ってんじゃねぇよ。はカカシ上忍しか見てねぇんだ。くだらねぇこと言ってんじゃねぇ」

 それに同棲って言うな、下宿だ、とゲンマは言い換えた。

「アンタだってに惚れてんでしょ? 、ゲンマに慰めて貰いなさいよ」

「え・・・?」

「うるせぇな。オレは兄貴分だっつってるだろうが。余計なことに吹き込むんじゃねぇ」

 きゅ、としがみつくの目尻の涙を指で拭ってやると、ポン、と頭を撫で、ゲンマはを離した。

 が、口をきゅっと結んだはすぐにゲンマの腕にしがみついた。

がカカシしか見てない? そぉ? そんなに頼られて、まんざらでもないんでしょ? 今がチャンスじゃない」

「うるせ〜よ。、水べり行くんだろ? 外に顔洗いに行こうぜ」

 ゲンマはの肩を抱き、廊下を促した。

「ん〜・・・今日はゲンマさんのトコにいちゃダメ?」

「遊ぶ気になれねぇか? 別に構わねぇが・・・」

 じゃ、オレ達は戻る、とゲンマはを伴って執務室を出て行った。

「はぁ〜〜〜。端から見てると、何かあてられる感じっすね〜。ゲンマさんがを女として見てないなんて、有り得ない感じだよ」

「らぶらぶ〜って感じだよな。カカシと一緒のトコ見たことねぇから、違いが分かんねぇけど・・・」

「私もカカシと一緒のって見たこと無いのよね〜。ゲンマとならしょっちゅう見てるけど。だから、私的には、はゲンマとくっついて欲しいんだけど」

 カカシとらぶらぶとか言われても、それが何? とか思っちゃうもん、とアンコは2人の消えた先を見遣る。

「あ、オレもそう思う」

「あれ? アンコさん、この前のカカシ達上忍同士の飲み会で、カカシとが上手くいくようにけしかけたって言ってませんでしたっけ?」

「あの時はね。でも2人でいるのを見ない限り、ピンと来ないのも事実なのよ。ゲンマとなら、随分前からいつも見てるからさ」

「でも、カカシに会えなくてあんなに情緒不安定になるんなら、オレはカカシと上手くいって欲しいかなぁ」

「ま、それも本音にあるんだけどね。この三角関係、今がこんな時期じゃなきゃ、滅法楽しいネタなのにねぇ。じゃないけど、大蛇丸を恨むわよ」

 散々噂されているゲンマは、執務室に戻った時にくしゃみをして眉を寄せていた。



















 ゲンマの膝枕で暫し昼寝をしたは、一旦ゲンマの家に戻って弁当箱を洗って片付けて、再び外出した。

 カカシに会いたくてたまらないは、胸元の小さなマスコットカカシをぎゅっと握りしめ、あてもなく歩いていた。

『ガマ仙人さん・・・寂しがってるかな・・・でも・・・何か遊ぶ気分じゃないや・・・』

 ぽてぽてと歩きながら、空を見上げる。

 忍鳥達は見当たらない。

「見つからないかぁ・・・お花でもお部屋に飾って、気分転換しようかな」

 は、花屋に向かった。

 その時、水仙を一輪持ったサクラと、赤いバラを一輪持ったいのの連れ添って歩く2人に、ばったり会った。

 2人とも、元気がない。

「サクラちゃん・・・」

「あ、さん!」

 の姿が目に留まったサクラは、血相を変えて声を上げた。

「サスケ君が、サスケ君が・・・!」

 途端に涙が溢れてくる。

「あ、うん。聞いてる。昨夜、病室を抜け出したんでしょ?」

 もつられて泣きたくなったのを堪えた。

「・・・知ってたの? さん」

「うん。その知らせを聞いた時、火影様に会ってたの」

「ホント、何処行っちゃったんだろ、サスケ君。えっと・・・さん・・・だっけ? 行方知らない?」

 いのも息を吐いて、初めて会話するに尋ねる。

「暗部の人達が、捜してくれてるよ。私も、口寄せの鳥さん使って、捜して貰ってるんだ」

 そう言って空を見上げる。

「そう・・・それでも見つからないの?」

 つられて2人も空を見上げた。

「うん・・・まだ知らせは来ない。ゴメンね、サクラちゃん。目が覚めたらサスケ君に会えるって言ってたのに、まさかそんなすぐにいなくなるとは思わなかったから」

さんのせいじゃないわ。男の人って、本当に理解できない・・・」

「そうだよね。男の人には、女には分からないものが沢山あるって言うらしいけど」

「私達女にだって、男には分からないこと、てんこ盛りよ」

「異性同士って、相容れないのかなぁ・・・」

 難しいなぁ、とは呟いた。

 自来也の受け売りを、そのまま言っているようなものだった。

「それにしてもさん、何でこんなトコ歩いてたの? ナルトのトコに行ってるんじゃなかったの?」

「あ、うん・・・いつもはそうなんだけど、今日は水遊びに行く気分じゃなくて。ナルト君が一生懸命頑張っているのに沈んだ顔を見せに行くのは嫌だし。カカシせんせぇに会えなくって寂しいから、気持ちがユラユラしてるの。何か落ち着かないし。だから気分転換に綺麗なお花買って、お部屋に飾ろうかなって思って、お花屋さんに行くトコだったの」

「あら、じゃあウチに来るトコだったの? ウチ、花屋よ。こんなトコで立ち話もなんだから、家に寄ってってよ。色々話してみたいしさ」

 いのがの腕を引っ張り、先を促した。

「えと・・・?」

「私、いの。山中いのよ。ヨロシクね」

「あ、アスマせんせぇの部下のコだ? アスマせんせぇから聞いたことあるよ〜。今年のくの一では抜きん出て優秀だって。サクラちゃんとライバルなんでしょ?」

「図らずもね」

「むっ。何よ、その言い方〜! 引き分けたでしょ?!」

「次は勝つわよ!」

「私の台詞よ!」

 先程までの沈んだ顔は何処へやら、一気に賑やかになって、山中花屋に入っていった。

「わぁ〜、お花一杯v キレ〜v」

「どれがイイ? さん。私、花言葉にも花占いにも詳しいわよ」

 だてに花屋の看板娘じゃないわよ、といのは店内を案内する。

「元気になりたいんなら、ひまわりなんてどう? 夏の象徴じゃない。太陽の動く方向へ、太陽に向かって顔を向ける健気な感じって、カカシ先生とさんにぴったりって感じよ」

 大きいのも小さいのも可愛いよね、とサクラも加わる。

「そうだね〜、ひまわりキレ〜v そうしよっかな」

「花言葉は、愛慕ね。暗黒星雲の中から生まれて、光り輝く星となるのがその人の運命よ。人々の尊敬を受け、社会に貢献するの。まぁその為に恋愛から結婚に至るまでは長い年月かかるけど、2人の愛は変わらないのよ」

さんにぴったりじゃない、それ」

「じゃあ、ひまわりにするよ。いのちゃん、アレンジメントしてくれる?」

「オッケー。さんって顔立ちもはっきりしてるから、こういう派手な花似合うわね」

 待ってて、といのはセンス良くひまわりをまとめていく。

 代金を支払うと、はサクラと共にいのの部屋に通された。

 間もなくして、アップルティーを入れたいのも戻ってくる。

「さ、熱いうちにどうぞ」

「ありがと〜v 良い香りv」

「私が来た時には番茶のくせに、何気取ってんのよ」

「アラ、アンタに似合いと思うけど?」

「何ですってぇ〜!」

 2人のやりとりを見て、はくすくすと笑った。

「喧嘩する程仲がイイって、ホントだね」

「「仲良くなんか無いわよ!!」」

 ハモる2人に、はけたけたと笑う。

「全く、こんなコトしてる場合じゃないのよ。サスケ君のコトよ、もう」

 そうだった、とサクラもしゅんとする。

「カカシ先生もいないんでしょ? もしかして、サスケ君カカシ先生のトコに向かったのかなぁ」

 さん知ってる? とサクラはアップルティーに口を付けながらを見遣った。

「う〜ん、分かんない。カカシせんせぇの居場所も分からないし・・・」

 は、サクラ達にも本当のことは言わなかった。

 その場に居合わせたゲンマ以外(当事者の自来也は当然含む)、誰にも言ってはいけない、とカカシに言い含められていたからだ。

さんにも見つけられないんだ? じゃあ寂しいでしょ、さん」

 を見ていて、情緒不安定なのが、ありありとサクラには分かった。

「うん。会いたい・・・」

 じわ、とは涙ぐむ。

「私達も泣きたいわよ。全く、ホントに男って勝手よね! こんなにその身を心配してるいい女達が泣いてるのにさ!」

 強がっているいのも、じわりと涙がにじんでくる。

「でも・・・強くなる為には、何かの犠牲無くしては、叶わないのかもね・・・。忍びは、一個の人間である前に、忍びでなくてはならないって言うけど・・・」

「理屈では分かるわよ。でも、女心は押し殺せないわ。波の国の任務で学んだのよ。カカシ先生も言ってた。忍びは自分の存在理由を求めちゃいけない、ただ国の道具として存在することが大事・・・でも、皆知らず知らずそのことに悩んで生きている、って」

「つまり、忍びは忍びである前に、一個の人間であることも大事です、ってこと?」

「どれが正しい、なんて神様が決めることなのよね。理屈と本音が同居して葛藤するものなのよ、忍者ってのは」

「難しいね・・・」

 アップルティーは、すっかり冷めていた。







「何か湿っぽくなっちゃってゴメンね。辛いだろうけど、信じて、明日からまた元気にガンバロ?」

「うん。今度は、もっと楽しくお話ししようね、恋愛談義」

 店の前まで降りてきたは、サクラと共に帰路につき、カカシとサスケを信じ、元気に振る舞うことを約束し、別れた。

























 それから一週間余りが経った。

 相変わらず、サスケが見つかったという知らせは来ない。

 カカシも見つかっていない。

 暗部は忙しなく、捜し回っていた。

 忍鳥達も、時折休む他、空を飛び回っていた。

 サスケがカカシの元にいると言うことは、暗部は知らない。

 警邏隊にも、サスケは普通に“行方不明”としてリストに上がっていた。

 同じように行方をくらましているカカシのことは、別に行方不明者にはされていなかった。

 が、カカシの能力で捜して貰おう、と考え出す者も出始め、カカシも捜索対象になってはいたが。

 しかし、カカシの結界忍術は超一流スペシャリスト。

 火影をもってしても見抜けないと噂される。

 暗部にも忍鳥にも、捜しようがなかった。









 一方、その行方不明者達、カカシとサスケ。

 陽が暮れ、サスケの修行が切り上げられ、カカシが始めた自分の修行を見て絶句して目眩を覚えるサスケは、夜が更けて、今日こそはカカシよりあとに寝てやる、と気力で起きていた。

 カカシの修行を見ていると、昼間自分が上達したように感じても、まるでお子様のような気分になってきた。

 厳しい体術修行にも、大分慣れてきた。

 すぐに果てて眠っていたのが、起きていられるようになった。

 故に上達している筈なのだが、だがまぁ、こういうカカシだからこそ、信頼して素直に学んでいるのかも知れなかった。

「鳥がよく来るな・・・オレ達を捜してるのか? 何で見つからないんだ?」

 サスケは夜空を見上げ、呟く。

「結界張ってるからね〜。しかも結界を張ってることを感じさせない結界を更に張っているという、ダブルの結界v だからどうやっても見つけられないんだよ」

 修行を終えたらしいカカシがやってきて、傍に腰を下ろした。

「その割には、この近くによく来るじゃね〜か。こんな広い土地の、こんな限られた場所に」

「それだけ優秀なんだろうね。捜させてるのはだろうし、もしかしたらになら分かるかも知れないからね」

 そう言って、カカシはふと思うところあるように、顎に手をやった。

「・・・ねぇサスケ、って、この間、ホントに来てないのかな?」

「知らねぇよ。だから、夢でも見てたんだろ」

「やっぱ夢なのかぁ〜。あ〜ぁ・・・」

「どんな夢だったんだ?」

「え・・・いやその・・・」

 カカシは目を泳がせ、頬を掻いた。

 が泣きながらやってきて、情事を交わした夢だった、などとは言えない。

「あの夢が本当だったとしたら、は自分の力で此処を探し当てたことになるんだよね・・・。どんな力使ったのか、気になるなぁ」

「だから、夢なんだろ? いつまでも気にしてんなよ」

「はは・・・そうなんだよね〜。はぁ〜・・・」

 カカシは大きく息を吐き、木の幹にもたれ掛かって夜空を見上げた。

「そんなに気になるんなら、何でマメに帰って会ってやらねぇんだ?」

「オレがここから離れたら、結界も解けるよ。サスケ見つかっちゃって、連れ戻されちゃうよ」

「それは困る。何か見つからずにアイツの様子見に行く方法はねぇのか?」

「無いことはないけど、短時間だよ」

「それでいい。そわそわするアンタに教わっても、足しになってるか分からねぇしな。ちょっとだけ様子見て来いよ。オレは寝てるから」

「そう? じゃ、気を楽〜にしてオレの目を見て?」

「?」

 カカシはおもむろに、写輪眼を露わにした。

 サスケは無防備だった為、こてんと眠り込む。

 矢継ぎ早に印を結んでサスケに触れると、カカシは岩陰にサスケを隠した。

 念の為に忍犬を一匹置いて。

 そして木の葉の里に向かって夜空を駆けていく。





 草木も眠る丑三つ時。

が無事の様子を見てくるだけでいい・・・起こさないようにして・・・』

 真相はちゃんと戻ってからでもいい。

 ただ、の顔が見たかった。

 幻術を使って誰にも見つからないようにしているカカシは、用心に用心を重ね、こっそりと里に入った。

『オレの家にいるかな・・・

 カカシは、暫く空けていた自分の家に向かった。

 窓辺に立ち、そっと寝室を覗く。

「あれ・・・いない」

 いないどころか、暫く人が侵入した形跡すら感じられない程無人だった。

『ゲンマ君のこと怖がってたのに・・・ゲンマ君の家か?』

 カカシは面白くなさそうに、口を尖らせる。

『ゲンマ君家って何処だっけ・・・お誕生日会に呼ばれたガキの頃の家は九尾の事件で壊れたんだよね・・・引っ越し先・・・何処だ?』

 カカシは目を閉じて神経を研ぎ澄まし、のチャクラを探した。

「あ・・・あった。これだ、のチャクラ・・・オレのチャクラも感じる・・・ゲンマ君も・・・」

 目を見開くと、あっちだ、とカカシは屋根の上を無音で駆けていった。

『何だよ・・・結局ゲンマ君家にいるのか・・・やっぱりアレは夢だったのか・・・ちぇ』

 夢が本当だったら、ゲンマの元にいる訳がない。

 カカシはそう思った。

 チャクラの元に辿り着くと、カカシはそっと軒にぶら下がり、逆さになって窓を覗いた。

『こっちの部屋は無人だな・・・エルナちゃんの部屋かな?』

 じゃあ隣か、とカカシは軒を逆さに歩いていく。

『当然、ゲンマ君がソファでがベッド、って感じだよね? でも同じ部屋で寝てるのかなぁ・・・』

 それは面白くない。

『どれ・・・なっ?!』

 そっと覗いたカカシは、思わず声に上げそうになった。

 はベッド、ゲンマもベッド。

 はネグリジェでゲンマの胸に抱きつき、ゲンマもを抱き締め、足と足を絡ませあい、絡み付いてあられもない状態で眠っていた。

「ななっ、なななっ・・・」

 初めて2人の親密さを目の当たりにし、わなわなとカカシは震えている。

 ピクリと身体を震わせたは、むにゅむにゅと、ゲンマにより強くしがみついた。

 それに応えるように、ゲンマは眠ったまま、優しく、柔らかくを抱き締め、身体をさすり、頭を撫でた。

 2人とも、とても気持ちよさそうな寝顔だ。

 新婚家庭の寝室を覗いている気分だった。

『どういうつもりなんだよ、もゲンマ君も! ここは一つ、しっかり言っておかないと・・・』

 カカシは窓に手を掛けた。

 その時。

 術が解ける瞬間を感じた。

『ヤバッ・・・、サスケのトコに戻らなくっちゃ・・・っ』

 今見つかってサスケを連れ戻される訳にはいかない。

 もう少しでサスケに教えているカカシのオリジナル技“雷切”、つまり“千鳥”が出来そうなのだ。

 これだけは教えておきたい。

 満足行くまでに。

 幼い頃の自分を見ているように感じるサスケに、カカシは自分と同じ過ちを犯して欲しくない、とサスケを見ることに決めた。

 それをないがしろには出来ない。

 未練たらたら、後ろ髪引かれる思いでカカシは即座にその場を離れ、サスケの元に戻っていった。

『ま、しょうがないか・・・を大事に思ってくれてるんだし・・・』

 その実は納得が出来てはいなかったが、修行モードに思考を切り替えることにした。











 本戦開始まで、あと数日。

 にも、もうすぐちゃんと会える。





のことは・・・オレが守るからね・・・』