【出会いはいつも偶然と必然】 第二十五章 自来也とナルトが旅立って、早一ヶ月。 ナルトは、修行の末に、4代目火影の残した忍術、螺旋丸を未完成ながらも会得し、大蛇丸との、伝説の三忍三すくみの死闘の末、綱手を木の葉に連れ帰ることが出来た。 綱手は見晴らしの良い屋上の広場から里を見渡し、決意を固める。 この里を治める、5代目火影になるのだ、と。 よく説得できたものだ、とご意見番・ホムラは感心する。 「男前の儂が一言言えばイチコロだのォ!」 得意げに、自来也は高らかに笑う。 毒を盛られてイチコロになりそうだったのはどっちだ、とナルトは呆れる。 「では、早急に大名を呼び、5代目火影の就任祝いをしなくてはな」 もう1人のご意見番・コハルは控えているゲンマとアオバを呼ぶ。 「ゲンマ、アオバ。里の者々にもふれを出すようにな」 「「は!」」 直ぐさま2人は、就任祝いと、里へのふれの準備に消えた。 『5代目がカカシやサスケを治してくれるか・・・』 はまだ戻らない。 戻ってくるかも分からない。 が、何故だかゲンマは、もうすぐに会えるような、そんな気がしていた。 心が逸る。 多分、今のはゲンマのことなど考えてはいない。 カカシで一杯の筈だ。 カカシに会いたくてたまらないだろう。 ゲンマではなく。 それでも、ゲンマは良かった。 が里に戻ってくれるなら。 ご意見番達も綱手も、就任祝いの準備に掛かろうとした。 が、ナルトが待ったをし、先にやることがある、と引き留めた。 「あぁ・・・何だっけ? 自来也。誰だったっけ?」 「帰り途中に言ったばかりだろ! カカシの小僧とうちはのガキ、それにリーって名のガイの教え子だ」 「あぁ、そうそう」 ったく、と自来也は息を吐く。 綱手はナルト・シズネ・自来也を引き連れ、病院に向かった。 サスケの病室では、サクラが相変わらず、浮かぬ表情で座っている。 一向に目が覚めないサスケ。 もう一ヶ月が経つ。 が戻ってきたという知らせもない。 不安と焦燥にかられた。 胸が押しつぶされそうだ。 ふと、入ってきた綺麗な女性に気が付く。 「サクラちゃん、もう大丈夫だってばよ!」 ナルトがサクラを励ますように、元気よく笑った。 「ナルト・・・!」 幾分、サクラは心が和らいだ。 綱手は、花瓶の花が同じ日の物でないことに気が付く。 自分がいかに必要とされていたか、思い知らされる。 それなのに、つい先日まで躊躇っていたことに恥じる。 「ガイ先生から伺ってます。サスケ君を助けてあげて下さい!」 ペコ、と頭を下げ、必死にサクラは声を振り絞った。 「あぁ、任せときな」 綱手はサスケの額に手をかざし、治癒のチャクラを流し込んだ。 この一ヶ月、誰もサスケを治せなかった。 お手上げだった。 が、ようやくサスケは悪夢から解放されるのだ。 木の葉の医療スペシャリスト・綱手によって。 そう思うと、サクラは緊張が弛み、思わず涙が頬を伝った。 暫くすると、サスケがゆっくりと目蓋を開いた。 朦朧とした意識のまま、上体を起こす。 サクラは感情が一気に溢れ、ボロボロ涙を流しながら、サスケに抱きついた。 ナルトは、サスケに一言声を掛けようとした。 でも、サクラの様子を見て、思いとどまる。 寂寥感を覚えつつも、病室を出た。 自分が行くのは無粋だ、と。 ナルトの気遣いに、綱手は感心する。 自分の役目は終わった、と、病院を出て、無性に誰かに会って話をしたくなったナルトは、イルカを思い出し、アカデミーに寄った。 当然、2人の行く先は一楽。 久し振りの一楽のラーメンは、五臓六腑に染み渡る程、美味だった。 先程何故妙な場所でシカマルに会ったのか疑問に思ったナルトは、イルカに尋ねた。 すると、シカマルが今回の中忍選抜試験で、中忍に昇格したことを知り、驚く。 上がったのはシカマルだけで、サスケは上がってないことを知ると、安堵する。 そして今回の旅の成果をイルカに話して聞かせた。 その頃、綱手はカカシの家に向かっていた。 「何で病院にいないんだい? あっち行ったりこっち行ったり、面倒だねぇ」 「仕方なかろう。リーってガキが無断外出して見つからんのだから。ガイが捜しとる。見つけたら此処に知らせに来るだろ」 自来也とシズネを連れ、綱手はカカシのアパートまでやってきた。 「で? 鍵は何処だい?」 「あ」 「あのねぇ・・・泥棒のマネして鍵を開けろってのかい? ちゃんと鍵開けて入りたいものだよ」 カカシだっていい気はしないだろ、と自来也を仰ぐ。 「確か、ゲンマが持っとる筈だ。シズネよ、ゲンマはコイツの就任祝いの準備をしとるから、行って借りてこい」 「あ、はい!」 瞬真の術でシズネは消え、綱手は息を吐く。 「もまだ戻ってはおらんようだし、がおったらカカシもサスケも、とっくに診てもらえたものを・・・」 運が悪いというか、間が悪いというか、と自来也はため息をつく。 「そう言えば、ナルトもオマエも、帰ってくる時、がどうたら言ってたね。何者だい、ソイツ」 「あぁ、言っとらんかったな。カカシの恋人だよ。一緒に暮らしとった。オマエ顔負けの医療術を持っとる」 「へぇ。カカシに恋人ねぇ・・・朴念仁が服着て歩いていたようなヤツだったのに、春が来たって訳か。医療忍者なのか」 「いや。記憶喪失の異国人でな。治癒能力に長けておって、オマエに勝るとも劣らん。オマエを里に連れ帰れたら、オマエの元で正式に医療を学ばせてやりたいと思っとったんだよ」 自来也は、自分が知ってる限りの、のこと、カカシとのこと、ゲンマとのこと、などを綱手に話して聞かせた。 「成程ね・・・カカシに見合う女なんてそうはいないと思っていたけど、ソイツなら似合いそうだな。しかもゲンマと三角関係か。面白いじゃないか」 会ってみたいね、と綱手はの素性にも興味を持った。 そうしているうちに、シズネが戻ってくる。 鍵を開け、中に入った。 すると、不思議な感覚に包まれたことに綱手は気付いた。 「何だい・・・このチャクラは・・・」 「まるで、母親の子宮の中にいるみたいな感じですね・・・」 温かく包まれてる、とシズネも感じ取った。 「のチャクラだよ。さっき話しただろ。障壁のこと」 「あぁ、成程ね。かなり強大だな・・・神々しい感じだ」 「しかし、こうして此処にチャクラが残っていて感じると言うことは、は無事という証拠か・・・」 その時、アパートの外を、駆けている音がした。 「綱手様! リーを見つけました! 病室に待たせています! 早く・・・!」 ガイが勢いよく駆け込んできた。 「まぁ待ちなって。今からカカシを治すトコだからさ」 寝室を開け、カカシを見遣り、中に入る。 「甘い匂い・・・これもそのとやらの残り香か」 綱手は、そこにはいないという者が、カカシを守るようにチャクラで覆っている、と言うことに気が付いた。 す、とカカシの額に手をかざす。 暫く待つと、カカシはゆっくりと目を覚ました。 虚ろな目で、辺りを伺う。 見知った顔が数人、目に入った。 朦朧とした意識のまま、カカシは上体を起こす。 「たかだか2人の賊にやられるとは、オマエも人の子だねぇ。天才だと思ってたけど」 「すみません・・・」 掠れるようなか細い声で、カカシは言葉をやっと紡ぎ出した。 まだ状況が上手く飲み込めなかった。 ずっと行方知れずだった綱手が目の前にいることの不思議にも、治してくれたのが綱手だと言うことにも、気が回らない。 「まだ朦朧としとるようだのォ」 「こんなヤツのことより、次は我が弟子・リーを診てやって下さい! 早く!!」 綱手はまだカカシに言いたいことや聞きたいことがあったが、ガイにせっつかれ、その場を後にした。 病院に向かう道中、イタチらとの接触について、ガイに詳しく聞いた。 再び病院に舞い戻った綱手は、ガイと共に、リーの病室を訪れた。 リーはドキドキしながら、上体を脱ぎ、背を向けた。 リーを診察する綱手は、驚愕する。 余りにもボロボロの身体。 そして言い淀む。 ガイもそれに気が付き、焦燥が胸を走った。 綱手は、忍びは辞めろ、とリーに告げた。 そして詳しく、リーの状態を説明する。 手術を出来るのは綱手だけ。 だが、その手術も、成功する確率は五分五分。 失敗すれば死ぬ。 成功したとしても、長いリハビリが待っている。 綱手が淡々と喋っているのを聞きながら、リーは段々鼓動が早くなっていった。 絶望、焦燥。 リーは黙ったまま衣服を着直し、松葉杖を持って、黙したまま、病室を出て行った。 「綱手様・・・」 ガイも胸が押しつぶされそうだった。 可愛い教え子。 自分と似た、大切な部下。 「気持ちは痛い程分かるけどね。ハッキリと言った方が良い」 「こんな事なら・・・アナタに診せるんじゃなかった・・・」 「あのコの願いがどうであれ、忍びは諦めた方がいい。どうせ遅かれ早かれ分かることだ。長引かせれば、余計に辛い思いをさせる」 ガイが項垂れるのを見て、神妙な面持ちで思案する。 思い出したように、綱手は声を上げた。 「自来也!」 病室の外で待っていた自来也は、リーを見送ると、真摯な顔付きで病室に入ってきた。 「何かのォ」 「さっき言ってたカカシの恋人・・・って言ったっけ? ソイツ、本当に私とタメを張る程の医療能力があるのか」 「恐らくな。は本来の自分を封印しとるから、実際どれくらいの能力かは分からんよ。オマエを凌駕するだけのモノを持っとるかも知れんしのォ」 「綱手様・・・一体?」 「アイツの手術は・・・私以外には無理だろう。それに時間がかなりかかる。大きなリスクも伴うし・・・」 「成程な。儂も、ヤツのことは、に診てもらう予定だった。が行方を眩ませたその日、本来ならリーを診に行く予定だった。・・・綱手、オマエ、と一緒にリーの手術を出来ないかと思っとるんだろう?」 「何ですと?!」 「あぁ。だが、肝心の奴さんは行方知れずだから、どうしようもない。カカシにもう少し詳しく話を聞きたい。ゲンマにもな。シズネ!」 「はい!」 同じく廊下で待っていたシズネが、中に入ってくる。 「ゲンマを呼んできとくれ。カカシの家にな」 「分かりました」 カカシのアパートの前でゲンマを待ち、シズネと共にやってくると、再びカカシの部屋に入っていった。 「お邪魔するよ」 カカシは憔悴しきった表情で、ベッドに腰掛けていた。 「具合はどうだい?」 「大分良くなってきました・・・あの・・・アナタがオレを?」 先程よりは幾分声にも力がこもり、綱手に尋ねる。 「あぁ。イタチの月読にやられて、意識不明だったのは覚えているな?」 「・・・えぇ。悪夢から覚めたような気分です」 まだ意識がスッキリしませんけど、と言葉を漏らす。 「私は月読なんてやられたことないから分からんが、オマエがやられるくらいだから、相当な瞳術らしいな」 「イタチは、万華鏡写輪眼に開眼しとるからのォ・・・それを持つ者は、そういないと聞く。ある条件下の元で開眼すると言うことだが・・・」 「ある条件下?」 「儂の調べが正しければ、もっとも親しい者を殺すことだそうだ」 「・・・!」 シズネは絶句する。 カカシは知っていた。 ゲンマも、仕事柄、朧気には知っていた。 「じゃあ、5年前のシスイの自殺事件って、自殺じゃなくて、イタチが・・・」 「そうらしいな。イタチは、シスイを兄のように慕っとった。その件は、生き残ったサスケが知っとるだろう」 「それは今はいい。カカシ、ゲンマ。とやらのことを訊きたいんだが・・・」 その時、カカシは気が付く。 が居ないことに。 そう言えば、悪夢を彷徨っている間、の悲痛な叫びを聞いたような気がする。 「あの・・・は・・・? 一体何処に・・・」 「オマエは知らんかったな。は、オマエが意識不明になったのと時を同じくして、行方をくらませとる」 「え・・・っ」 「ゲンマ、カカシに詳しく話してくれ」 「は・・・」 焦燥の走るカカシに、ゲンマは自分が知りうる限りの、行方不明の顛末、その経過を詳細に話して聞かせた。 「意識を失う寸前・・・の叫び声を聞いた気がするんです・・・行方不明だなんて・・・」 カカシは手を合わせて組み、額に当てて目を瞑り、吐き出した。 「・・・あ」 その時、ゲンマがふと言葉を漏らした。 「? 何だ、ゲンマ」 「窓際に置いてある鉱石・・・人工物なんですけど・・・それが、今一瞬光ったような気が・・・」 「これか。例のモノは。成程ね、不思議なシロモノだ。何だかあったかい・・・って、熱ッ!」 鉱石を手に取った綱手がしげしげと見つめていると、急に鉱石が熱くなり、持っていられなくなって放り投げると、鉱石は小爆発を起こして消滅した。 「5年前のモノと同じだ・・・研究員に聞いたんですが、同じようなモノを、5年前に見つけてるんです。それについてはまた改めてお話ししますが、それも、今のと同じように、暫くすると消滅したらしいんです。証拠隠滅、ってことかも知れません」 「何てこった・・・が戻ってくる目印だったんだろう? が戻れなくな・・・」 「いえ、もしかしたら、が戻ってくる合図かも知れません」 「あの・・・綱手様・・・そろそろ、就任式に行かなくては・・・」 準備に時間が掛かりますから、とシズネが思い出したように言葉を掛けた。 「そうだったな。堅苦しいのはイヤだねぇ。ま、しょうがない。カカシ、が戻ってきたら、知らせとくれ」 じゃ、行こうか、と皆を連れて部屋を出ようとしたその時。 全員が、柔らかなチャクラが近付いてくるのを感じた。 ひゅんっ、と何かが現れた音がする。 綱手達が振り向くと、カカシのいる頭上に、丸まった人間が浮いていた。 「な・・・?!」 “それ”はカカシの上に落ちてくる。 驚いて受け止めたカカシ。 しかしその表情は、途端に明るくなる。 「・・・!」 カカシに抱き留められたものは、皆が待ちわびた、の姿だった。 「一体どうい・・・」 は瞑っていた目を開けると、そこにはカカシの顔があった。 「あっ! カカシせんせぇ! うわぁ〜ん、会いたかったよぉ〜〜〜っ!!」 え〜ん、とはカカシに抱きついた。 「カカシせんせぇ〜〜〜っ!!!」 えぐえぐ、とは泣きじゃくる。 「無事だったんだね〜〜っ。良かった〜〜っ」 ぎゅ、と強くしがみつき、は泣き続けた。 「良かったのォ」 自来也の声に我に返ったカカシは、の顔をしっかり見ようと引き剥がそうとしたが、はべったりくっついて、離れたがらない。 ゲンマは、ちくんと痛む胸を隠し、それでも戻ってきてくれたことに安堵する。 「感動の再会を邪魔して悪いけど、アンタがかい?」 綱手が歩み寄り、の肩に手を掛けた。 「え・・・」 えぐえぐ泣きながら、は顔を上げる。 見慣れない人物に、きょとんと見つめる。 成程、神の顔に酷似してる、と綱手は思う。 「、ソイツが儂の言っとった、綱手だよ」 「綱手様・・・?」 「あぁ。戻って来れて良かったな。いきさつを詳しく聞きたいが、時間がない。それはまたの機会にして、オマエに頼みたいことがある。私の就任式が終わったら、執務室に来てくれるか」 「就任式・・・?」 「、カカシ。今日から、この綱手が木の葉の里の、5代目火影になるんだのォ」 「えぇ? そうですか・・・それはおめでとうございます」 カカシは冷静に受け止めたが、はまだ気が昂ぶっていて、状況を理解できていない。 カカシにしっかりしがみつき、綱手を見つめていた。 「これから就任式だ。支度をして、出席してくれ」 「分かりました。、離れて。支度しよ?」 「ヤだ。離れたくない」 ぴと、とくっつき、カカシの首筋に顔を埋めた。 「オレは先に行ってますよ。準備の途中なんで」 カカシとの蜜月を見ていたくないゲンマは、顔を背け、出て行った。 「じゃ、私達も行こうか」 「ゲンマ、オマエも大変だねぇ。よりによってカカシの女に横恋慕とは、実りのない恋をしてるねぇ」 会場に向かいながら、綱手はゲンマの後を追って、見上げた。 「変なこと仰らんで下さい。は妹ですよ。戻ってきてくれて、私は心底嬉しいですから」 じゃ、お先失礼します、と居づらいゲンマは消えた。 「妹ねぇ・・・さっきのを見ていたゲンマの目、あれはどう見ても恋する男の目だったけどねぇ」 「ゲンマの体面も考えてやれぃ。妹と言うことにしてやるんだのォ」 「何言ってる。オマエだってさっき、面白おかしく話してたくせに」 「ほ? そうだったかのォ?」 下品に笑いながら、自来也は綱手とシズネと共に、式典会場に向かった。 「? 支度しようって。オレ、昏睡状態で一ヶ月眠ってたらしいから、シャワー浴びてきたいんだよ。も一緒に入ろ? ね?」 カカシは優しく語りかけるが、はぴったりくっついたまま、離れようとしない。 ふぅ、と一つ息を吐くと、カカシは改めて、を抱き締めた。 物凄く久し振りな気がする。 の感触、抱き心地。 以前にも一ヶ月近く家を空けていてと離ればなれだったが、その時以上に長く離れていた気がする。 愛しくてたまらない。 は何もしていないのに、抱き締めているだけで力がみなぎってきた。 「・・・」 「カカシせんせぇ・・会いたかった・・・会えて良かった・・・」 「オレもに会いたかった。会えて良かったよ」 口布越しに、の耳朶をくわえた。 キスの代わりに。 すると、はカカシをベッドに押し倒した。 「ちょ・・・」 は泣き腫らした顔で、カカシの顔を見つめた。 泣き顔も愛らしいに、カカシは胸が熱くなる。 はおもむろにカカシの口布を下げ、唇を塞いだ。 「?!」 カカシは驚く。 は啄むようにカカシの唇を求め、唇を割って舌を侵入させた。 カカシとて、を欲して止まなかった。 すぐにを受け入れ、舌と舌を絡め合う。 濃厚な口づけを交わし、離れるのが寂しそうに、は顔を上げた。 「カカシせんせぇ・・・!」 再びはカカシに抱きついた。 「・・・シャワー浴びてこよ? 5代目の就任式に間に合わなくなるよ」 「・・・うん」 カカシはを抱いたまま上体を起こし、そのまま抱え上げ、浴室に向かった。 シャワーを浴びながら、抱き合う2人。 はシャワーに打たれながら、カカシを見上げる。 濡れそぼって、色っぽい。 むくむくと男の自分が沸き立つ。 瞳を閉じて顎を突き出すの唇を塞いだ。 再び濃厚に求め合う。 求めても求め足りない。 欲望は益々強まり、カカシは口づけを交わしながら、の身体を撫で回した。 「あ」 「どした? 」 理性が飛びかかっていたカカシは、の尻を撫で回しながら、次第に屈んで愛撫を降下させていった。 「私もずっとお風呂入ってなかった。ちゃんとあわあわ洗ってからがいい」 その言葉に、カカシはクス、と微笑んだ。 「今は時間無いんだっけね。ちゃんと洗って、就任式に行こう」 「うん」 身綺麗になった2人は、脱衣所で身体を拭いていると、カカシはふと思った。 「、忍び装束の替えって持ってる?」 「あ、無い。ずっと着っぱなしだったから、洗いたいな・・・」 「オレは幾つも持ってるけど、も換えを用意した方が良いね。取り敢えず、今日は私服で行こう」 洗濯機を回し、髪を乾かして新しい忍服に着替えたカカシは、素っ裸で寝室に駆け込むを見届け、ようやく訪れた日常を感じ、心が和んだ。 『もう離さないからね・・・・・・』 は一番お気に入りのキャミソールのミニスカワンピに身を包み、やってきた。 たわわな胸が揺れながらやってくる。 久し振りに見たが、可愛くて仕方がない。 「さ、行こうか」 玄関を出たカカシが、中のに手を差し伸べる。 「は〜い・・・って・・・あれ・・・出れない・・・」 カカシは、と初めて出会った時のことを思い出した。 「そっか。印の効力が切れて元に戻ったんだっけ。じゃ、いつも通り・・・」 カカシは印を結び、チャクラを込め手首の宝玉に触れた。 「え〜。いつものって、ちゅ〜ってやるんじゃないの?」 は不満そうだ。 「ハハ。アレは時間掛かるからね。今は急いでるし、また明日ね?」 「ちぇ〜」 仕方なく我慢し、はカカシの腕にしがみつき、べったりと離れずに会場に向かった。 道中、攫われていた間の出来事を話して聞かせる。 「そっか・・・西の島国って、いい噂聞かないもんね。オレの予想も当たってたな。やっぱり、は隠れてるんだよ、そういうのから。オレ達も、敵に捕まった時に幻術とかで情報探られたり、正体探られたりしないように、記憶を封じることがあるんだ。記憶がなければ、何も知らないことになるから、余計なことは言わないし、正体もばれないからね」 カカシの言葉に、は黙り込む。 何やら、言いたいことがあるようだった。 「・・・? ? どした?」 「ん? ううん。何でもない。何でもないよ・・・」 何か他に・・・と視線を泳がせ、は考え込む。 「あ。あのね、カカシせんせぇ。悪い人達の仲間の中に、うちは一族の人がいたの」 「えぇ?! ホントに? 何で分かったの? 」 「写輪眼持ってたしね、後ね、偉い人かな、その人が、私を攫った所と同じ場所から、5年前に攫った男だな、って言ってたから」 「5年前・・・? あぁ、そういえば、イタチの事件のちょい前に、行方不明になってたヤツが2人くらいいたな。それかな」 「ん〜多分。でも、1人だったよ」 洗脳されてたみたいだよ、とは付け加える。 「1人・・・? じゃあ、もう1人はもう死んだって事か・・・?」 散々使って捨てられたか、とカカシは考え込む。 「ん〜でも、2人攫ったようなことは言ってなかったよ」 「ふ〜ん・・・そっか・・・じゃ、そのことも一応、後で5代目に言ってみようか。うちはの人間が生きていたなんて、ちょっとした事件だよ」 「サスケ君にも言った方が良いかな?」 「う〜ん・・・難しいなぁ・・・洗脳されて、自分が無くなってるんだろ? 吉報ならすぐにでもって思うけど、あんまりなぁ・・・。ま! よく考えてみて、オレから言っておくよ。詳しく聞かせて、」 はカカシに話しながら、里の人間達が集まってきている会場に到着した。 「嘘?! 姉ちゃん?! 戻ってきたのか?! いつの間に」 「ちゃん?! 本物?!」 「うわ〜〜」 モエギやウドンと連れ立っていた木の葉丸は、進められる就任祝いの式典の中、カカシと連れ添っているを見つけ、驚愕した。 「あ、木の葉丸君、皆。うん、ついさっきね、戻って来れたの。悪い人に攫われて、檻の中に閉じ込められてて、やっと出てこれたんだ」 必死で逃げてきたよ、と微笑む。 「良かったな〜〜。心配してたんだぞ」 安堵の顔で、を取り囲む。 「ゴメンネ、心配かけて」 「姉ちゃん、まだあの花見てないよな? 終わったら見に行こう」 「って・・・里の外れ?」 はきゅ、とカカシに強くしがみついた。 「ダメダメ。危ないのに」 カカシは、またがいなくなったら大変だ、と止める。 「あ〜そっか〜〜。じゃ、コイツらと採ってくるから、そしたら見てくれよ」 「でも〜、木の葉丸君達だけじゃ危ないよ? 誰か大人がついてた方が・・・」 「じゃ、イルカ先生に付き合ってもらうコレ。それならいいか?」 「うん。私達、この後綱手様にご用があるから、そこに来てくれる?」 「分かったコレ」 木の葉丸はイルカを捜しに、人混みを掻き分けていった。 「お〜い、姉ちゃん!」 何処からか、ナルトの声がした。 きょろきょろと辺りを伺うと、前方から、人混みを掻き分けてナルトがやってくる。 「ナルト君! 久し振り〜」 「エロ仙人に聞いたってばよ。さっき戻ってきたって。良かったな」 「うん。ありがと〜。ナルト君はガマ仙人さんと修行の旅に出てたってさっきガマ仙人さんに聞いたけど、成果はどうなの?」 「バッチリだってばよ! 今度見せてやるってば」 凄いんだぜ〜、とナルトは意気揚々としてる。 「忍者が術見せびらかすなって・・・」 カカシは呆れ、息を吐く。 「い〜じゃんッ! ホントに凄いんだぞ。何てったっ・・・」 「シッ。5代目の口上だ。ちゃんと聞いてろ」 滞りなく祝いの済んだ綱手は、皆の前に姿を見せ、5代目火影に就任したことを告げた。 「里が活気づいてきた感じで、良かったね。一ヶ月見なかったら、里の様子も大分復興してきてたし。このまま、日常に戻るといいね」 式典が終わって解散し、綱手が大名達から解放されるまでの間、アカデミーで時間を潰しているカカシとは、里が大分落ち着いてきているのを見て、安堵する。 「そうだね。でも、大変なのはこれからだよ。今回のことで、3代目を始め、多くの優秀な忍びを失った。大国としての木の葉は、今や半分にまで力が落ちてる。それでも、依頼は今まで通り、数多く舞い込んでくる。限られた人数の中で、それらをこなしていかなきゃならない。圧倒的な力で近隣諸国とのパワーバランスを保ってきた木の葉だから、任務がこなしていけないようなら、里が弱ってるって敵に知らせるようなモンだ。アカデミーもこの通り、休校状態だしね。イルカ先生だって、教職じゃなく、任務をこなしてると思うよ。オレにも、今すぐにでも任務の依頼が来るよ」 教壇に立つカカシは黒板をコンと叩き、席に着いていたは成程、と考え込んだ。 「私にも何かできないかなぁ? 任務って、フォーマンセルじゃないと出来ないの?」 「イヤ、個人任務も、ツーマンセルも、色々あるよ、任務によってね。も任務したい?」 「うん。私は木の葉の忍びだよ! 役に立ちたい!」 「アハハ。もう忍びなんだ?」 「うん、だっ・・・」 その時、ガラリ、と教室の扉が開く。 「何やら騒がしいと思ったら」 「あ、ゲンマさんだ!」 わ〜い、とは席を立ち、ゲンマの元へ駆けていく。 「久し振り〜v」 くるん、とはゲンマの腕に絡み付いた。 む、と面白くないカカシは、を引っ張って抱き寄せる。 「あ〜ん」 「ちゃんとオレの傍にいなさいって。ゲンマ君、5代目もう大丈夫?」 「えぇ。執務室だと肩凝るから、さっきの見晴台になさるそうですよ」 もう既にお待ちです、とゲンマは外を促した。 「お話って何だろ?」 廊下に出て歩き始めると、の隣をゲンマが歩いたので、当然のようにはゲンマの腕にも絡み付く。 カカシは面白くながったが、ゲンマが勝ち誇ったような笑みでチラとカカシを見遣ったので、益々面白くなかった。 「オレも5代目に進言したことあるしね。のこととか」 「・・・一緒になりたい、とかですか?」 「・・・っ、ちっがうよ! もう。出来ればそうしたいけど・・・って、そうじゃなくて!」 カカシは真っ赤になって、言葉を濁す。 「あ、ゲンマさん。さっきガマ仙人さんからお聞きしたよ〜。私がいない間、一生懸命捜してくれてたって。ありがと〜v」 ニコ、とは微笑む。 「礼を言われることじゃねぇよ。結局何もしてねぇんだからな」 「でも〜、捕まってる間、ゲンマさんや木の葉丸君達の声とかも聞こえてたよ。早く戻ってきて〜って。すっごい励まされたモン。嬉しかったv」 「そりゃ骨折ったかいがあったってモンだ。オマエのことを調べている間に、色々と推測が出てるんだ。それも全て、5代目にお話しした。オマエの意見も訊きたいから、聞いてくれ」 「? うん。あ、そうだ。今日って何日?」 「今日か? 14日だ。9月のな」 「良かった〜、まだ過ぎてないんだ」 「何だ?」 「何、」 「カカシせんせぇのお誕生日! お祝いしよ?」 にぱ、とは花のように笑う。 「あ〜・・・。そっか、オレもうすぐ誕生日か」 「ゲンマさんの時にやり方覚えたから、楽しみにしててね、カカシせんせぇv」 「カカシ上忍・・・心の準備しといた方が良いですよ」 「一体何されたの、ゲンマ君」 「さてね。さ、行きましょう」 カカシは気になって、何だか落ち着かなかった。 火影の執務室の脇の階段を上っていき、見晴台に出た。 「風が気持ちいい〜。夏ももう終わって秋なんだね〜」 茄子と秋刀魚とかぼちゃが美味しい季節なんだよね、とは突き抜ける空を仰いだ。 「来たね」 櫓で綱手が座って待っていた。 向かいの場所を勧められ、腰掛ける。 カカシとゲンマは、の両脇で片膝をついて控えた。 「さて。アンタのいきさつは、カカシとの出会いから、自来也に殆ど聞いたから、分かったつもりだ。捕まっていた時のことを聞かせてくれないか。ゲンマは、さっき聞かせてくれたこの一ヶ月の調査のいきさつを、に聞かせておやり」 は先程カカシに話したことを、うちはのことまで、全て綱手に話した。 「成程・・・ね。面白いじゃないか。の素性が、浮かび上がってきた。アンタは、かなりの高位の人物だ。ま、それは取り敢えずオシマイにして、私からの依頼なんだが」 「? 何でしょう」 「リーってガキ、分かるか?」 「あ、はい。カナリの大怪我を負っているコですよね。ガマ仙人さんに診てくれって頼まれてたし、捕まる前に、カカシせんせぇとも約束してて、診に行く予定だったんです」 「どうだい? 。アンタには治せそうかい?」 「う〜ん、1人でだと、リスクが大きいです。手伝ってくれる人がいれば、何とかなると思います」 「私と一緒に、手術をやってくれないか? それなら大丈夫だろう?」 「そうですね。1人より2人、ですよね。私も任務とかやって、役に立ちたいと思ってましたし」 「あぁ、そうだったな」 綱手の頷きが、カカシには分からなかった。 「それについては、明日にでも正式に・・・」 ゲンマの言葉を遮って、カカシは進言しようとした。 「5代目、なんですが、木の葉に住民登録をさせたいと思っているのですが」 「あぁ、そうだね。それが先か」 「はこのまま木の葉にいたいと申しておりますし、いつまでも異国人の旅行者扱いではなく、正式に里の人間になってもらいましょう。・・・それでいいよね? 」 「うん。じゃなかった、ハイv」 「善は急げだな。このまま、今ここで認めよう。アオバ! 帰化申請書類と、住民登録の書類、持ってきとくれ!」 「はっ」 控えていたアオバは、綱手の言葉を受けてスッと消えた。 暫くしてアオバが書類を持って戻ってきて、に渡される。 台の上に広げ、ゲンマからペンを受け取る。 「えっと・・・フルネーム・・・私の苗字って何?」 「昔の人間は苗字なんてないし、いいんじゃないかい?」 私も無いし、と綱手は言い放つ。 ゲンマが進言する。 「?」 「捕まっていた時、の聖地の申し子って言われてたんでしょう? 最初に苗字を持った者は、土地や気候、風物などから苗字を作っています。ですから、、がフルネームかと」 「不知火じゃダメなの?」 は不服そうで、口を尖らせていた。 「何でオレの苗字なんだよ」 ゲンマは嫌そうに、眉を寄せていた。 「だって〜、妹でしょ? 不知火になりたい」 「ちょっとちょっと、なるんなら、はたけでしょ!」 カカシが加わってくる。 「何で〜? 私はゲンマさんの妹だよ〜? はたけじゃおかしいでしょ?」 何では分かってくれないんだ、とカカシは項垂れる。 「まぁ待て。、まずその帰化申請の書類は、現在の名前と、これからなる名前を書くんだ。取り敢えず、両方と書いておけ。苗字変更は、いつでも出来る」 綱手が割って入って、言い含めた。 「は〜い・・・。生年月日は?」 「あ〜・・・。じゃ、カカシが見つけた日を書いておきな。もしかしたらそれより以前に来ていたかも知れんが、分からないからね」 「本籍地って?」 「あ〜・・・分からないことだらけだねぇ。まぁいい。受理するのは私だ。適当に神の国とでも書いておけ」 「現住所は、カカシせんせぇのお家でいいの?」 「あぁ。そんなに難しくない書類だろう? 書けたら私に寄越しな。すぐに受理のはんこ押してやるから」 「えっと・・・。帰化目的はぁ、木の葉の里で忍びになる、と。ん! 書けました」 は書類を揃え、綱手に差し出す。 「どれ・・・」 綱手ははんこを持って、判を押そうとした。 「その儀式、待って頂きたい」 その時、頭上から何者かの声がし、光が射し込んできた。 「何だ・・・?」 振り返ると、光の筋の先に、数人の、祭礼服のようなものをまとった者が立っていた。 「何やつ?!」 「そのお方を、此方に引き渡し願いたい」 「な・・・っ?!」 嫌な予感がカカシの脳裏をよぎる。 一瞬にして、空気が張りつめた。 |