【出会いはいつも運命の気まぐれ】 第七章 甘栗甘の店先、といのとチョウジがやってくると、向こうから砂の3兄弟が歩いてきた。 いのとチョウジは、ゴクリと喉を鳴らし、身を強張らせた。 我愛羅は無表情、テマリとカンクロウは視線に気付いたがさほど気にも留めず、通り過ぎようと、歩を緩めることもなく、歩いていた。 が、の嬌声で、思わずビクリと立ち止まってしまった。 「あ〜〜〜っ!!! 砂の3兄弟! 中忍試験に出るんだ〜っ?!」 「ちょ・・・さん・・・っ;」 いのは目を輝かせているの手を引っ張ったが、は、ワ〜イ、と近付いていった。 「な、何だオマエ」 の迫力に、テマリは思わず後退った。 「コンニチワv 初めましてv 我愛羅君と、テマリちゃんと、カンクロウ君だよねv」 ニコニコと、は3兄弟を順に見つめた。 背の高いが背を屈めると、長い黒髪がさらりと揺れた。 「夏の本戦観に行ってて〜、予選のビデオもこの間観たのv すっごく勉強になったよ〜v 3人とも凄かった〜」 「誰だオマエは。馴れ馴れしい」 我愛羅が低く呟いた。 「あっ、ゴメンナサイ。名乗ってなかった。って言いますv いのちゃんとチョウジ君と仮のスリーマンセルで中忍試験に出るのv ヨロシクねv」 にぱ、と満面の笑みで自己紹介をした。 「後ろの2人は見たことあるじゃん。でもアンタは見てねぇ。夏は脱落したのか?」 「あ、ううん。えっとね、私はまだ下忍なりたてなの。規定の8任務やっとクリアして、出られることになったんだv 頑張って、早くカカシせんせぇと一緒に任務するのが目標なのv」 「カカシ? あぁ、コピー忍者の・・・」 「ねぇねぇ、折角こうやって会えたんだし、試験始まったらそれどころじゃないから、お茶しようよv お話した〜いv」 はきゃっきゃと甘栗甘の店内を指した。 「馬鹿か? オマエ。ライバルと呑気に茶ァ啜って和んでどうするんだ」 テマリは呆れたように、吐き捨てる。 「え〜っ。砂と木の葉は同盟結んでるんでしょ? お友達になりたかったのに〜」 「何がお友達だ。馬鹿馬鹿しい。行くぞ、我愛羅、カンクロウ」 テマリは先を促すが、我愛羅が腕組みをしたままを見据えていた。 「我愛羅? どうし・・・」 「・・・茶ぐらい、いいだろう。オマエ達に訊きたいこともある」 喜んだは、嬉しそうに我愛羅の腕を引っ張って、店内に入っていった。 「お、おい・・・!」 テマリとカンクロウ、いのとチョウジも呆気に取られていたが、顔を見合わせると、咳払いをして、後を付いていって、向かい合わせで席に着いた。 「いのちゃん、テマリちゃん、クリーム白玉あんみつと栗ぜんざい、どっちがいいと思う? 悩んじゃうよね〜」 どっちも美味しいよね〜、と早速は悩んでいた。 「どっちって言われても・・・」 「両方食べれば?」 チョウジがさらりと言いはなった。 「え〜、太っちゃうよ〜。う〜ん・・・」 「明日にはもう試験始まるんだし、思い残すことは無い方がいいと思うな」 「思い残すも何も、これが最後じゃあるまいし、5日くらい食べなくたって・・・」 いのは呆れて息を吐く。 「ん〜・・・じゃあ、クリーム白玉あんみつ頼んで、まだ食べたかったら栗ぜんざいも!」 「私はダイエット中だから、葛切りにしとくわ」 乗り気ではなかった筈のテマリは、真剣に悩んでいた。 「テマリは甘いもの好きじゃん。此処に来る道中でも団子3串・・・」 「煩い!」 頬を染め、よし、と決め、思い思いに注文した。 茶を含みながら、と我愛羅以外はどうにも落ち着かなかった。 「我愛羅君、訊きたいコトって何?」 大きな黒玉が、きょろんと我愛羅を見つめた。 「・・・うずまきナルトも・・・出るのか・・・?」 「あ、ナルト君? 残念ながら、この間修行の旅に出ちゃったの。3年くらい戻らないんだって」 「修行・・・? そうか・・・」 「うちはサスケは、里抜けしたって聞いて助っ人に行ったけど、その後どうなったんだ? 戻らないままなのか?」 あぁそうか、とテマリも尋ねた。 「・・・うん。大蛇丸さんのトコに行っちゃって、行方不明なの。任務しながら、情報収集もしてるんだけどね」 切なそうに、は呟く。 「サクラちゃんも、医療忍者の修行中だから出ないし、ちょっとつまんない」 我愛羅はまだ何か訊きたそうで、を見遣った。 「あ、リー君のことかな? すっかり元気になって、修行してるよv ガイせんせぇもビックリするくらい、頑張ってるみたい。多分出ると思うよ」 「そうか・・・」 注文した品が順にやってきて、は喜々として食べ始めた。 「ねぇさん、中忍試験の流れって、夏と同じ? 違う?」 「ん〜とね、基本的には同じっぽいよ。第1の試験で筆記やって、通過者で第2の試験がサバイバルで巻物争奪って。でも筆記の10問目は違うらしいけど」 「あ〜・・・夏受けた人は分かるモンねぇ・・・」 「でも、まるっきり同じじゃないって言うから、前回と同じつもりでいたら、脱落するって」 だから前回は忘れた方がイイと思うよ、と白玉を口に放り込む。 「ま、そりゃそうよね。でもさんがいれば楽勝よね〜v」 「何で下忍なりたての初受験者が分かるんだ? そういうこと」 テマリの疑問は、もっともだった。 「ん〜、それぞれの試験官の人が言ってたから」 「試験官って、夏と同じなの?」 「うん。イビキさんとアンコさんとゲンマさん。第3の試験の予選の試験官は知らないけど」 は切なそうに、語った。 ハヤテは、もういないのだ。 「一介の下忍如きが何でそんなに情報通なんだ? 贔屓とかされてるんじゃないだろうな」 「それはないよぉ。実際のトコは訊いてないモン。私の配属されてる小隊が特殊任務だから、特別上忍の人とちょっと親しいからなだけ。ゲンマさんとも、特別視しないように、修行見てもらったりもしてないし」 「ゲンマ?」 「3人とも知ってるでしょ〜? 第3の試験の審判やってた人。不知火ゲンマって言って、目付きが鋭くて、こう千本くわえてて、こうゆう額当ての巻き方してる人」 は楊枝をくわえ、自分の頭部を指した。 「あ〜・・・あのえっらそうな口悪いオッサンか」 「む〜。オッサンじゃないよ! まだ29だよ! 私のお兄ちゃんなんだから!」 ぷく、とは膨れた。 「29なんてオレらからしたらオッサンじゃん」 「けど年離れすぎてないか? 苗字も違う。オマエさっき、って・・・」 「ホントのお兄ちゃんじゃないよ。お兄ちゃん代わりの人。私の保護者って言うか、後見人なの。で、任務の上司。年って、そんなに離れてないよねぇ?」 普通だよね? とは呟く。 「あ〜、さんって童顔だから」 「? オマエ、見たトコ私と同じくらいだろう?」 「テマリさんって、15くらいだっけ? さんって、16くらいに見えるもんね」 「私は23だよ。6つしか離れてないよ」 「23〜? 何でそんな年で下忍なりたてなんだ? 結構強そうに見えるけど・・・」 「あ、私ね、外国人で、半年ちょっと前に、木の葉に来たの。ココで忍びになる為に帰化して」 言われれば確かに、この辺りの人間とは顔立ちが違うことに気付いた。 「さんは強いわよ〜? 上忍レベルの能力あるし、医療忍者としても5代目火影の綱手様と互角くらいの能力持ってるんだから」 ニコニコとあんみつを食べていたは、栗ぜんざいを追加注文していた。 「中忍になれるのはほぼ確定だよね〜」 「頑張って中忍になって、それでゲンマさんのお仕事の後継者になるんだ〜v ゲンマさんって、何で私が不知火になりたいって言うの、ダメって言うのかなぁ?」 「不知火になるより、はたけになるんじゃないの?」 「え、何で?」 「何でって・・・」 は左手の薬指の指輪の意味を分かっていないのか、といのは呆れた。 「はたけって・・・はたけカカシのことか?」 「さんは、カカシ先生とお付き合いしてるのよ」 「へぇ・・・それで何で、一緒に任務が夢なんだ?」 「私は、カカシせんせぇと任務したくて、忍びになったの。でも何か、考えてたのと違う方向に行っちゃって、夢は遠いみたいで、ちょっとツマンナイ」 ぷく、と口を尖らせたが、栗ぜんざいが運ばれてきて、すぐに忘れ、嬉しそうに食べ始めた。 「ねぇねぇ、我愛羅君のその瓢箪の中の砂って、普通の砂じゃないんでしょ? 見てみたいな〜。うにょ〜んって自在に操れるんでしょ?」 「うにょ〜んって、その表現はどうかと思うけど・・・;」 「中覗いてみていい?」 食べかけのぜんざいを置いて、は立ち上がって我愛羅の背後に回った。 「栓抜いていい?」 我愛羅の許諾を待たず、んしょ、とはグニグニ抜いた。 「おい我愛羅、されるままになってないで、いいとかやめろとか・・・」 我愛羅は無表情のまま、拒むことなく、を眺めていた。 それどころか、瓢箪から砂を少し出して、動かして見せた。 「わ〜、スゴ〜イ」 パシ、と手に取って、は楽しんでいた。 「お客さん、店内で困ります」 店員が渋い顔で、止めに来た。 「飲食店で砂ちらばせちゃマズイでしょ」 「あ、じゃ、外に出よっか」 はぜんざいの残りを慌てて食べ、お茶を飲み干し、レジに会計に行き、全員の分を払うと、我愛羅の腕を掴んで出て行った。 「ね〜我愛羅君、何処かで砂漠ナントカとかの砂の術見せてv 近くで見たいv」 は我愛羅の腕に縋って、おねだりした。 「試験の何処かで見せてやる・・・それまで待て」 「え〜っ。試合まで待てってコト?」 「忍びが術見せびらかすのはどうかと思うわよ」 「あ、そっか」 「それよりさん、お金払うから」 「い〜よ〜。私が誘ったんだもん。ランクの高い任務ばっかりやってきたから、お財布ゆとりあるからv」 「そぉ? じゃ、ご馳走様v」 「って、そうじゃないだろう!」 「え?」 テマリの叫び声に、はキョトンとした。 まだ我愛羅の腕を掴んだままだった。 「我愛羅・・・」 テマリとカンクロウは、戸惑いを隠せない。 「何かおかしいじゃん。我愛羅、砂が・・・」 我愛羅は無表情のまま、を見上げた。 「・・・オマエは、何者だ・・・」 「?」 はニコニコと我愛羅を見つめていた。 「私は〜、木の葉の里の下忍ルーキーの、23歳ですv 医療忍者で、諜報部隊の第2小隊に所属していますv 他には?」 「そういうことを訊きたいんじゃない・・・。オマエは何者かと訊いている」 「え〜? だから〜、・・・」 「さんがどうかしたの? あ、我愛羅・・・君に馴れ馴れしいからヤメロって?」 「そういうことじゃない。オマエ達も、我愛羅のことを多少知っているなら、おかしいと思わないのか?」 「え? 何が?」 「だから、我愛羅の砂が・・・」 「砂? がどうし・・・」 「外敵から身を守っている守鶴の砂が、全然反応していないだろう?!」 「我愛羅に近付く脅威は愚か、どんなヤツだって近付けば、砂が弾いて拒絶するじゃん。それなのに、最初からずっと、我愛羅にべったりくっついても、何ともないって、変じゃん」 「あ、そう言われれば・・・」 「と言ったな、オマエ、我愛羅に何かおかしな術でも使っているのか?」 テマリは警戒を露わにした。 「術? って何の?」 「あの〜、その砂って、我愛羅・・・君の身を守るんでしょ? 危険とかから」 ひょこ、といのが呟いた。 「・・・砂が全く警戒していない・・・オマエは何者なんだ・・・」 「あ〜、そりゃ当たり前だよね〜、いの」 「そうよね。さんは悪しき輩じゃないもの」 「そうじゃない。この砂は、何者からもガードするんだ。悪意が無かろうと、近付けば即座に阻む。それなのに・・・」 「信じられないでしょうけど、そういうのとは、もう格が違うのよね」 「悪意だ、何者だ、って次元の話じゃないんだよね〜」 「どういう意味だ?」 「コレ言っても、嘘くさ〜いって思うでしょうけど、聞いて驚いて? さんはね、この世の全てを司る、神様なのよ」 「はぁ?」 「今は違うよ〜。私はただの忍び〜」 「神様って・・・どういうコトだ?」 テマリもカンクロウも受け入れられず、いのは、サクラから伝え聞いている、の正体を話して聞かせた。 予想もしていなかったスケールの話で、すぐには飲み込めなかった。 「・・・だから、その砂の守鶴より、万物を愛せよ、の森羅万象全てを司る神様の方が上なのは当たり前でしょ? それが分かってるから、砂が反応しないのよ」 呆気に取られているテマリらを他所に、我愛羅は無表情でを見つめていた。 「そっか・・・神様やめて忍びになっても、そういうトコは変わらないのか・・・何か、結局は逃れられない運命なのかな・・・」 切なそうな表情をするを見て、我愛羅は、の背負う重さを、感じ取っていた。 ナルトとはまた違った、共感を覚えた。 「さん、結構暗くなってきたし、そろそろ解散して、今日はゆっくり休まない? 明日から大変なんだし」 「え〜、まだ全然お話してないよ。もうちょっと・・・」 「本戦まで残れば、時間はあるでしょ。今日は解散!」 渋るの腕を引っ張って、いのは声をあげた。 「じゃ、砂の皆さん、お手柔らかにね〜」 「あ〜ん、またね〜〜〜!」 引っ張られながら、甘い声が間延びして残された。 「・・・アレが神様だったって・・・そんなんアリか?」 「世の中分かんないモンじゃん」 「・・・捨てたものではないと・・・言うことさ・・・」 我愛羅はテマリらと反応が違うようで、我愛羅の立場で考えると、あぁそうか、と納得できたのだった。 すっかり真夜中になった闇の中を、ゲンマは駆けていた。 明日から始まる中忍試験の準備で追われ、本戦まで出番がない故に、ゲンマは解放され、他の連中より早く帰ることが出来た。 アパートまで戻ると、の部屋は真っ暗だった。 「流石に明日から試験始まるし、備えてもう寝てるか・・・」 顔ぐらい見ていこう、とゲンマはの部屋に入っていった。 玄関で靴を脱いでると、良い匂いが鼻をついた。 台所の食卓に、ラップをかけられた食事があった。 「オレの分か・・・? こんな日までやらなくてもいいのに・・・」 だがその気遣いが嬉しくて、かぼちゃの煮物を一口摘んで口に放り込み、指を舐めながら寝室に向かった。 月明かりに照らされるは、すっかり寝入っているようだった。 目に付く所に人形がいなくて、もしや、と掛け布団をそっと捲った。 はカカシ人形とゲンマ人形を抱き締めて、幸せそうな顔で眠っていた。 楽しそうな夢を見ているようだった。 「ったく・・・一緒にくっつけんなっつってんのに・・・」 と密着しているのがカカシの方で、ゲンマの方が離れていることが、本人には面白くなかった。 「せめて両脇に抱えろっつの」 ゲンマは、そ、とカカシ人形を引き抜いた。 ふにゅ、とが動いてドキリとしたが、もぞもぞと動くと、きゅ、とゲンマ人形を抱き締め、起きることはなかった。 ほ、とゲンマは小さく息を吐くと、カカシ人形を寝ている九官鳥の鳥かごの前に置いた。 あどけない顔で眠るを見つめ、千本を口から引き抜くと、ちゅ、と頬にキスを落とし、寝室を出た。 の用意してくれた食事を平らげると、静かに食器洗いをし、ふむ、と何やら考えた。 薄い陽光が差し込む中、の部屋の目覚まし時計は鳴らなかった。 九官鳥の鳴き声で、はうっすらと目を開ける。 「ふにゅ・・・?」 眠そうに目を擦りながら起き上がり、時計を見る。 「や〜ん、もう8時?! 何で〜? 目覚ましセットしたのに〜」 「、オハヨ、オハヨ」 「あ、はたけ君オハヨ〜v って・・・アレ?」 抱き締めて寝た筈のカカシ人形が、鳥かごの隣にあった。 は自分の腕の中に目を落とすが、やはりゲンマ人形しかいなかった。 「何で? お人形さんまで、一緒にいるのイヤなの? 困ったな〜」 ぷく、と口を尖らせたが、気を取り直して、ゲンマ人形をベッドに寝かせ、ベッドを降りてカカシ人形を撫で、きゅ、と抱き締め、うん、と気合いを入れて、忍び装束に着替えた。 台所に行くと、何やら置いてあった。 「?」 ひょこ、と覗き込むと、それは食事だった。 ゲンマに用意していた夕食ではない。 一緒にメモが置いてある。 “昨夜は夕飯サンキュー。試験頑張れ。ゲンマ” 「ゲンマさんがご飯作ってってくれたの? 起こしてくれればいいのに〜」 ゲンマのレシピは自分の知らないものが多いので、は食べていると嬉しくなって、頑張ろう、と気合い充分だった。 「カカシせんせぇどうしてるかなぁ。怪我しないでね・・・」 は首にカカシマスコットとゲンママスコットを提げ、指輪を外してカカシ人形のベストのポケットに入れ、試験に備えて、忍具を点検した。 夕方、はいのとチョウジと共に、アカデミーに向かった。 「今回も受験者多いのかしら」 「教室行けば分かるよ」 301教室に着くと、多くの忍びでごった返していた。 「夏があんなことになったから、少ないかと思ったけど、変わらないじゃない」 見知った忍びがいるか、いのは見渡した。 「よ〜、何だその組み合わせ? シカマルの穴埋めはさんなのか?」 頭に赤丸を乗せたキバがやってきた。 「そうだよ〜v 初受験ですv ヨロシクねv」 にぱ、とは笑った。 「キバとシノとヒナタも受験かぁ。まぁ当然よね。リーさん達もいるの?」 奥の方に、リーとネジとテンテンがいた。 我愛羅達と話していた。 「目を付けとくトコはこれくらいか。後はどうなのかしら」 「どうってことねぇだろ? 筆記ってやっぱまたメンドクサイヤツで、うまくカンニングしろって感じか?」 「どの人が中忍かしらね? さん、分かる?」 「ん〜、変化してるけど、チャクラで分かるよ。知ってる人だし」 「教えて?」 「ヘーキだよ、私解けるから」 「あ、そっか。でも、どうやって答え・・・」 「あのね、夏の本戦の時、シカマル君の影真似の術見て、覚えたんだ。だから、いのちゃんとチョウジ君を影で操って、同時に書いてもらえばいいかなって」 「はぁ? 影真似は、奈良家秘伝の術よ。何でさんが出来るの?」 「ん〜と、私は、大体の術は、見れば覚えられるから。試しにやってみようか?」 は印を結んで影を伸ばし、いのとチョウジを動かした。 「わ・・・マジでぇ? すご〜い」 「他にも方法はあるけど、座る場所次第で変えるから、私に任せといてv」 「い〜な〜オマエら。なぁシノ、オレらどうする? 夏と同じでいっかな」 「大丈夫だろう・・・」 ふと、視線を感じたので辺りを見渡すと、テマリが此方を伺っていた。 つかつか、と歩み寄ってくる。 「オマエ、影真似まで出来るのか? はたけカカシと付き合っていると、術のコピーまで出来るようになるのか?」 「違うよ〜。私もね、写輪眼みたいに、見た術は大抵出来るんだ。私がまだ国にいた頃、うちは一族の人が迷い込んで、その人から仕組みを覚えたの」 「あはは。カカシ先生と付き合ったらそういう特典があるなら、私も付き合ってみたいわ。無いんならあんな胡散臭い人ご勘弁だけど」 「も〜、胡散臭くないよ! 何でいつもカカシせんせぇいじめるのぉ?」 ぷく、と膨れる。 「さんに訊きたいわよ。何処がいいの?」 「ん〜と〜・・・」 は珍しく悩んでいた。 「今は試験のことだけ考えるから、カカシせんせぇはお休み! 本戦に残ったら、カカシせんせぇに修行見てもらうんだ〜」 ワイワイ話していると、試験官達がやってきた。 「今頃筆記か・・・まぁの頭ならどんな難問だろうと解けるし、諜報部隊だから、この手の技術は備わっているしな。第1の試験は何ら問題はないだろう」 第2の試験の準備に他の連中が飛び回っている中、まだ携われないゲンマは、1人で通常執務を全てこなしていた。 ヒナタは白眼でを透視しようとしたが、TVの砂画面のように、何も見えなかった。 いのとチョウジも同様だった。 それは、らをターゲットにしようとしていた連中は、全て空振りに終わっていた。 これが仲良しグループではないと言うことを、まざまざと感じた。 の性格なら、他のチームの連中にも教えてくれそうだったが、これらの試験は任務と同一なので、例え仲の良い連中であろうと、自分の小隊の得た秘密を漏らすことを決してしない、それが出来ているは、流石だと思った。 それは試験官らも気付いていた。 コテツやイズモは、がべそべそ泣いていた頃が懐かしいな、と思いながら、今のに頼もしさを感じ、丸を付けた。 前回も受験していた者は、バレないカンニングの方法を覚えてきたのか、思っていた以上に通過し、第2の試験に進んだ。 演習場にやってきて、巻物を受け取り、それぞれの入口に向かう。 「今日中に塔に着いてベッドで寝ようねv」 にぱ、とは微笑む。 「今日中って・・・そんなにすぐ見つかるかしら」 「開始の合図と同時にダッシュしてターゲット見つけて、私が影真似で動き縛るから、巻物探してv」 「早く見つけて、ちゃんとしたご飯食べたいな、ボク」 フェンスが開くと、3人は駆けた。 達は、中央の塔までやってきた。 「一番乗りかな?」 「前回は砂の3兄弟が一番乗りだったのよね、確か」 「まだ始まって30分くらいだよ? 流石にまだ誰も来てないと思うよ」 天と地の巻物を1組ずつ、3人共が持っていた。 「じゃ〜入ろっか」 ギィ、とドアを開ける。 「ココに着いたら、巻物開けて良いんでしょ?」 「どれ開ける? 全部開ける?」 せ〜の、と巻物を開けると、煙に巻かれて、誰かが現れた。 アスマとアケビだった。 「ったくオマエら、いくらが一緒とはいえ、あっさり記録更新するな。しかも巻物3組も持ってきやがって」 「ちょっとはサバイバルしたらどうなの」 「任務でしてるんだからいいじゃな〜い。終了の日まで、好きに過ごして良いんでしょ?」 「だからってぐ〜たらはダメよ」 「まっさかぁ。ちゃんと修行してますよ〜。遊びに来てるんじゃないもの、信用して下さいよ〜」 「それならいいけどな。ま、じゃあ終了の時にまた来る。取り敢えず腹ごしらえしてこい」 アスマとアケビが消えると、らは与えられた部屋で落ち着き、食事を摂った。 食事を終えて部屋に戻ると、隣の部屋に人の気配がして、はひょこ、と覗いた。 砂の3兄弟が休んでいた。 「あ、我愛羅君達v いつ着いたの?」 「バキ先生が言うには、オマエ達の10分後だ。前回より早く来たってのに、まさかよりによってオマエらに先を越されてるとはな」 テマリが毒づいた。 「ご飯まだ? 美味しかったよv」 「あぁ、木の葉は食事が美味しいな。砂漠料理とだいぶ違うから、つい食べ過ぎる」 「ねぇねぇ、食べ終わったら、またお話しようよv もっとお話した〜いv」 「試験中だ。馴れ合う気はない」 「え〜っ。我愛羅君、ダメ? まだ残り4日もあるのに、折角なんだからいいよね?」 我愛羅の腕を引っ張り、哀願する。 「・・・少しくらいなら・・・構わん・・・」 「我愛羅!」 「ワ〜イv 待ってるねv」 笑顔を残し、はとてとてと部屋に戻った。 「エライのに気に入られたな、我愛羅」 ふぅ、とテマリは呆れる。 「・・・悪い気分じゃないから・・・別にいいさ・・・」 「え?!」 もしや弟に春が?! と、テマリとカンクロウは顔を見合わせ、絶句した。 3番手はネジ・リー・テンテンで、4番手はシノ・キバ・ヒナタだった。 有力チームは1日目に全て到着し、これ以降に、まだ残るチームが到着しなければ、予選はない、と言うことだった。 全員で広間に集まり、歓談していた。 「オマエら巻物3組獲ってきたってマジか?」 いのやチョウジと話していたキバが、驚いて声をあげた。 「30分で到着されたんですよね? それなのに3組も、凄いです」 リーも感嘆する。 「ヒナタ達はどうな訳?」 「え・・・天地1組と、天1本・・・」 「リーさん達は?」 「ウチも天地1組と、天1本です」 「我愛羅君達は?」 「天地2組と、天1本だ」 「ちょっと〜、天ばっかり集まってない?」 「結局何がどれだけあるんだ?」 「ん〜と、天地7組と、天のみ3本かな」 「第2の試験受験してるのって、何チームだっけ?」 「確か22チーム・・・」 「今此処に4チームいるから、森の中には18チームでしょ? 天地で11組あったのを、私達のトコに7組あって、天だけが3本あるから、つまり森で巻物を持っているチームは、天が1つと地が4つ?」 「ってコトは、来れるとしたら1チームだけね」 「18チームもいるのにね〜」 「何か他人事だけど、途方に暮れそうね」 「もし来たら、予選ってあるのか?」 「5チーム、15人だな。微妙な所だろう」 「思ったんだけどさ、また森に戻って、巻物奪ってくるってアリかな」 「え〜、メンドクサ〜イ。ゆっくり修行してましょうよ。残りなんて、大したこと無いでしょ」 「だってよ、もう不可能、ってなれば、すぐに終了して、うちに帰れるじゃん? ほっとくのは効率悪いじゃんか」 「さんはどう思う?」 「ん〜? 合宿してるみたいで、私は楽しいよv これで終了したら、また皆本戦までバラバラでしょ? 折角友好を深めるチャンスなんだし〜」 「友好って、さん、中忍試験の本当の意味分かってるの?」 「他国間の戦争の縮図でしょ? 試合では本気出して恨みっこ無しで戦うけど、だからって仲良くなっちゃいけない訳じゃないでしょ? 馴れ合いすぎて試合がお粗末になったらダメだと思うけど、そういう線引きは皆出来ると思うし〜」 「まぁ、そうだろうけど・・・」 「それに、私、いのちゃん以外とは殆どお話したこと無いから、コレをキッカケに色々お話して、お友達になりたいなって。ダメかな」 は皆を伺った。 「いや・・・まぁ別に構わねぇけど・・・」 「後に対戦相手になるとしても、膝を交えて話し合うことは、悪いことではない。話し合うことで、情報収集も出来るのだからな」 キバとシノは同意し、ヒナタもおずおずと頷いた。 「ネジ、アンタ、馴れ合うなんてゴメンだ、とか言わないわよね?」 「断る。・・・と言いたい所だが、それはかつてのオレだ。今のオレは、それも悪くないと思う」 「ならいいけど。私も構わないわよ。ニコニコ話すように見せかけて、相手を探るから」 不敵な顔で、テンテンはテマリを見遣った。 「ふん、お互い様だ」 「ボクも賛成です。さんとも、一度ゆっくりお話してみたいと思っていました」 「ワ〜イv いっぱいお話しようねv」 「・・・さんといると、遠足に来てる気がしてくるわ・・・」 夜遅くまで歓談していて、アンコに咎められたのだった。 「アンコさ〜ん、残りのチーム、来れそうなの?」 お喋りをしたり修行したりして過ごしながら、到着の声を聞かず、はアンコに伺いに行った。 「どうかしらね。アンタらがごっそり巻物持ってきたから、1チームしか可能性はないんだっけね。ま、終了の時間まで、待っていな」 部下に持ってこさせた団子を食べながら、アンコは言い放った。 「来たら予選はあるの?」 は団子をジ〜ッと見つめていた。 「そうね、前回とは違う形式で、行う予定よ。もっとも、来なければ、予選はないけどね」 食べる? とアンコは1串に差し出した。 「早く終わらないかな〜。カカシせんせぇに修行つけてもらいた〜い」 ワ〜イv とは喜んで受け取り、パク、と齧り付いた。 「此処での修行の成果は出ているの?」 お汁粉を啜りながら、を見遣る。 「ん〜と〜、皆の修行見てて、色々な術覚えましたv」 ニコニコと団子を食べ、ぎゅ、と拳を握った。 「アンタのその能力便利よね〜。何かずるい気もするけど」 「ずるい? あ、試合の時、ゲンマさんに変化して、攪乱させたらずるい?」 串をくわえて、ゲンマに変化する。 「ん〜・・・」 「試合楽しみだな〜♪」 ゲンマの姿のままで動き喋っていたので、気持ち悪いからやめて、とアンコに突っ込まれた。 あ、とは変化を解く。 「って諜報潜入任務ばっかりだったけど、敵と対峙するケースは経験あるの? 戦うような」 「ん〜、カカシせんせぇとかがやってそうな感じなのはないです」 「それで第3の試験大丈夫なの?」 「カカシせんせぇやゲンマさんと修行してた時は、対戦形式だったから、大丈夫ですv 最近では、アケビせんせぇ達との時や、サクラちゃんやいのちゃんとの修行の時も、対戦形式でやってたから、出来ますよv」 「それもそうね。アンタの戦いっぷり、観るの楽しみだわ。今回の試験の最有力候補だものね。泣き虫が成長したトコ、見せて頂戴よ?」 「えへ、頑張りますv」 ペコ、と頭を下げると、はとてとてと退室した。 試験終了時刻まで後数時間、らは揃って食事を摂っていた。 「日常生活から離れて修行するだけって言うのも、結構楽しかったわね」 「皆のこと観察して、攻略法とか考えるのも、楽しかったしな」 いのとキバが、ふと言い放った。 「ほう。では全員の攻略法が解析できているというのか?」 ネジが不敵に尋ねる。 「う・・・全員は・・・その・・・」 「試験の対戦を観るのも、勉強になるよね?」 ご機嫌で食べていたが、呟いた。 「あぁ、こうすればいいのか、とか、自分ならこうだ、とかだな」 テマリが反応した。 同時に、全員の目がに向けられた。 それぞれ、修行をしながらも、他の連中の攻略方法も観察していた。 大体は突破口が見つけられたが、だけは、どうシミュレーションしても、攻略法が見つからなかった。 は見た術を覚えることに長けているだけではなく、攻撃を受けた時の返し技がうまかった。 何もには通用しないのでは、と絶望の淵に立たされた。 試験の重要な点は勝敗ではなく、戦術なので、試合の運び方を研究しよう、と皆が思ったのだった。 「? どしたの? 皆。あ、ごはん付いてる?」 視線を感じたはぺろりと口の周りを舐めた。 元々が既に上忍レベルの能力を持っている。 お手本が此処にいるのだ、と気付いた。 結局、終了時刻になっても、他のチームは来なかった。 綱手、イビキ、アンコ、アスマ、アケビ、紅、ガイ、バキ、他試験官が揃い、第2の試験通過者12人は並んだ。 この12人で、1ヶ月後の第3の試験のトーナメントを戦っていく。 綱手の説明を聞き、トーナメントのくじを引き、解散になった。 「1ヶ月後が楽しみじゃないか・・・」 確実に力を付けてきている12人が、頼もしく思えた。 「我愛羅く〜ん、甘栗甘であんみつ食べよ〜v」 森を駆けながら、は我愛羅に寄ってきた。 「あっ、そうそう。テマリちゃんもカンクロウ君も、我愛羅君と一緒に、いつでもウチにご飯食べに来てねv」 他国間の戦争の縮図という言葉が何処かに飛んでいきそうなあっけらかんとしたの明るさに、我愛羅は胸が痛むことが殆ど無くなっていることに、気が付いた。 孤独だった日々、神など存在しないと思っていた。 いたとしても、自分を見てくれることはないと思っていた。 考え方を改めた途端、に出会った。 世の中、捨てたものではない。 一条の光を感じ、我愛羅は風影になる決意を、改めて胸に誓ったのだった。 中忍選抜試験、本戦まで、後1ヶ月。 旋風に観客が度肝を抜かれるのには、まだ時間があった。 |