【南瓜―収穫編(2)―】 「あ〜ぁ。やっぱり気が重いなぁ・・・」 ドレッサーの前でお洒落をしながらも、私は息を吐く。 はたけさんとの待ち合わせ時間はとうに過ぎている。 暫く逡巡した挙げ句、思い切って覚悟を決めて、ゲンマさんの昼休み時間より少し前に家を出た。 「はたけさん、待ってるよね、きっと・・・悪いことしちゃったな。協力してくれてるのに」 が、待ち合わせ場所に着いても、はたけさんはいなかった。 「あれ・・・? あんまり遅いから、帰っちゃったのかな・・・」 私の家は知らないし、と辺りを見渡す。 「や〜、お待たせ〜♪」 待った? とはたけさんが軽やかにやってきた。 「いえ・・・私も今来たところで・・・」 「あはは〜。ホントにデートみたいだね」 ホントだ。 デートの定番だよね。 待った? ううん、今来たトコ、って。 ぷ、と私は気が楽になった。 「じゃ、行こうか。恋人らしく、仲良く見えるようにしてね?」 そう言ってはたけさんはポケットに突っ込んでいた手を差し出した。 私は照れながらそっと手を差し出すと、はたけさんは優しく握り締めた。 「さ、行こ。ゲンマ君もそろそろ来るでしょ。移動しよ」 打ち合わせをしながら、食事処通りに移動する。 あ、どうしよ。 ドキドキしてきた。 上手くできるかな。 そんな私を見て、はたけさんは私の緊張を解そうと、ゲンマさんの話をしてくれた。 私の知らないゲンマさんの一面とか。 色々教えてもらえて、嬉しくなった。 その時、人混みの中に、人を探している風の背の高い忍びの人を見つけた。 勿論それは、ゲンマさん。 私を捜してる。 昨日行かなかったから、気を悪くしてないといいけど。 そんな機微を悟ってか、はたけさんはニコッと優しく微笑んで、きゅっと私の手を握り直した。 「平常心だよ?」 そっと囁く。 うん、と決意して、恋人同士っぽく振る舞って歩いた。 ゲンマさんにも程なく見付かる。 「・・・! ?! カカシ上忍?! 何で・・・」 ゲンマさんは驚いた様子で、怪訝そうに私とはたけさんを見ている。 「あれ〜? ゲンマ君じゃない。これから昼飯? 1人?」 殊更軽やかに、はたけさんはにこやかに言い放った。 「え・・・いや・・・」 ゲンマさんは私をチラリと見る。 私はドキドキを抑え込んで、なるべく自然に見えるように視線を逸らした。 「あ、ちょうどいいや。このコ、昨日言ってた彼女v ちゃんって言うんだ。可愛いでしょ?」 飄々としているはたけさんを見て、凄いなぁ、と思った。 さっき、はたけさんはゲンマさんより年下って言ってたよね? 「え・・・彼女? 何言って・・・彼女はオ・・・」 途中まで言いかけて、ゲンマさんは言い淀んだ。 え? 何々? ゲンマさん、何て言おうとしたの? “オ”・・・何? もしかして、“レの”とか“レと”とか続いたりする? だったら嬉しいんだけどな。 「・・・」 ゲンマさんは呆気に取られて、私の名を呟いた。 はたけさんがぎゅっと私の手を握り締めたので、ハッと我に返った私は、明るいフリを努めて、ゲンマさんを見遣った。 打ち合わせたとおりに言わなくっちゃ。 「私、はたけさんとお付き合いすることになったんです。ゲンマさんにも報告しなきゃって思ってて。やっと彼氏ができました!」 ニッコリと、自分に今できる精一杯の笑顔をゲンマさんに向けた。 ゲンマさん、どんな反応するんだろ。 怒って奪い返してくれたり・・・しないかな。 「そっ・・・か。良かったな、」 ゲンマさんはいつもと変わらない、悠然とした表情で微笑む。 え? そんな。 それだけ? 他に言うこと無いの? 心がユラユラしてきちゃう。 「アレ? 2人、知り合いだったの?」 わざとらしく、しれっとはたけさんが尋ねる。 「あぁ・・・オレ、コイツの働いてる八百屋の常連客で・・・」 「そっかぁ。じゃ、オレ達デートの途中だから。またね、ゲンマ君」 「え・・・ちょっ・・・」 困惑しているゲンマさんを尻目に、私達は去っていく。 私は後ろ髪引かれる思いで、はたけさんと歩いていった。 「ゲンマ君から見えなくなるまで、恋人らしく振る舞ってね」 はたけさんはそっと私に耳打ちする。 「何だよ・・・どうなってんだ? 一体・・・ったく・・・」 ゲンマは眉を寄せて吐き捨てると、2人の姿が見えなくなるまでその場に立ち尽くし、思うところあるような表情をすると、1人で昼食を摂りに定食屋に入った。 「ハァ・・・」 ゲンマさんが入った店から程遠く離れた食事処。 私はどんよりと、深くため息をつく。 「ちゃん、何食べる〜?」 はたけさんは相変わらず飄々として、メニューを見ている。 食欲なんて無いよ。 やっぱりゲンマさん、私のこと何とも思ってなかったんだ。 じわりと涙ぐんでしまう。 はたけさんは、店員を呼んで注文していた。 「・・・ゲンマ君のことなら、安心していいよ」 はたけさんは、柔らかくそう言った。 「どこがですか?! あんなに平然としてて、“良かったな”なんて・・・。やっぱり私のことなんて・・・」 堪えていた涙が一気に溢れてきた。 ボロボロと泣き崩れる私を、はたけさんは優しく見つめていた。 「ダイジョブだって。ゲンマ君、思いっ切り動揺してたから」 ポン、とはたけさんは優しく肩に触れる。 手甲越しでも、温もりが伝わってきた。 「え・・・嘘・・・」 「パッと見には冷静を振る舞ってたけどね、ゲンマ君って感情を表に出さないから分かり難いかも知れないけど、オレにはバレバレ。多分、夜になったらキミの家に乗り込んでいくんじゃないかな。どういうことか説明しろ、って」 「まさか・・・」 「そしたら、あくまでキミはオレと付き合ってるって言い通すんだ。それでゲンマ君が自分とのことを追求してきたら、思いの丈を全てゲンマ君に吐き出すといいよ」 食事が運ばれてきたので、はたけさんは、食べよ、と微笑む。 私は涙を拭って、食事を見る。 かぼちゃの煮物。 はたけさんの心遣いが、嬉しかった。 今ははたけさんの言葉を信じよう。 そして、今度こそ、必ずゲンマさんの真意を訊き出すんだ。 茄子の味噌汁の熱さがくすぶっていた心を覚ます。 かぼちゃの甘さが、優しく私を包んでくれていた。 はたけさんと別れて、私は家に帰った。 気持ちを入れ替えて、食事を作り始める。 今夜乗り込んでくるという、ゲンマさんの為に。 ゲンマさんが美味しいと言ってくれた料理ばかりを。 ドキドキして私は待つ。 ゲンマさん、何て言ってくるだろう。 私、ちゃんと訊けるかな。 でも、待てど暮らせど、ゲンマさんは来なかった。 次第に夜も更けていく。 「はたけさんの嘘つき・・・」 食卓に突っ伏して、私は声を押し殺して泣き続けた。 「失恋・・・か・・・」 翌日、泣き腫らした目で、私は仕事に入った。 私の様子をおじさん達は心配してくれたけど、何にもない、と殊更元気に振る舞った。 仕事の忙しい間は、そのことも忘れていられた。 でも、夕方が近づくにつれて鼓動が早くなる。 「おぅ、かぼちゃくれ」 私の心臓は飛び跳ねた。 恐る恐る振り返ると、機嫌の悪そうなゲンマさんがくわえ楊枝で立っている。 「い、いらっしゃいませ・・・っ」 客として買うものをあげていくゲンマさんに、私はぎこちなく袋に詰めていった。 他に会話はない。 客と店員としての会話だけ。 ゲンマさんは何も訊いてこない。 何も言わない。 私も、何も言えなかった。 何か言わなきゃ。 喉まで言葉が出かかって、詰まってしまう。 ゲンマさんは帰ろうとする。 「・・・夜、オマエん家行くからな」 「え・・・っ」 それだけ言い残し、ゲンマさんは終始低い声で吐き捨てて帰って行った。 「ゲ・・・!」 店を飛び出て、ゲンマさんの姿を追う。 でも、もういなかった。 私の心臓は破裂しそうだった。 仕事帰り、鼓動を逸らせながら家路に着き、アパートの前まで来ると、心臓が飛び出そうだった。 ゲンマさんが腕を組んで、私の部屋のドアの前で寄り掛かっていたから。 私の気配に気が付いたゲンマさんは、チラと一瞥をくれると、寄り掛かっていたドアから離れた。 何も言ってこない。 私も何も言えず、鍵を開けると、中へ入った。 ゲンマさんは黙って私の後に続き、入ってくる。 「ご、ご飯、すぐ作るね。待ってて」 声を上擦らせて、エプロンを手に取る。 「飯なんかいい」 ヤだ・・・ゲンマさんの声、怒ってる。 「どういうつもりなんだよ」 鋭い眼光が、私をきつく射抜く。 捕らわれて、動けなくなる。 「ど・・・どうって?」 「カカシ上忍と付き合うって・・・どういうことなんだよ」 はたけさんに言われたことを思い出して、冷静に振る舞えるように、小さく深呼吸した。 「だから、告白されたんです。付き合おうって。はたけさんって格好いいし、私彼氏いなかったから、付き合うことにしたんです」 「何でだよ」 「え?」 「今までロクに知りもしなかったヤツと、何でオマエが付き合おうなんて思えるんだよ。オレ、オマエが分かんねぇよ」 「ゲンマさんが任務でいない間に、一杯お話しする機会があって、意気投合したんです。私が誰とお付き合いしようと、ゲンマさんには関係ないじゃないですか。彼氏でも何でもないのに」 これは、絶対言えってはたけさんに言われた。 “ゲンマさんには関係ない”、“彼氏じゃない”、って。 ゲンマさんは、目を見開いていた。 「そうか・・・」 暫し、気まずい沈黙が流れた。 何か言って! ゲンマさん! 「そうだよな・・・オレがどうこう言うことじゃねぇよな・・・悪かった」 そういってゲンマさんは帰ろうとする。 そんな。 「今まで、楽しかったよ。じゃ、幸せにな」 「待って!」 去っていくゲンマさんの背中を呼び止めた。 ゲンマさんが振り返った時、私はボロボロ泣いていた。 「何だ? 何故泣く?」 優しいゲンマさんは、私の元まで戻ってきて、指で私の流れる涙を拭った。 それでも涙は止まらない。 「・・・?」 ゲンマさんの大きな手が、私の頬を包んだ。 「どうして・・・どうして何も言ってくれないんですか?」 「あ?」 まっすぐにゲンマさんを見上げると、ゲンマさんも私の瞳を見つめ返した。 「カカシ上忍と付き合うんだろ? あの人は時間にルーズだが、優秀な忍びだ。オレが口を挟む理由はねぇ。オマエがあの人をいいと思ったんなら、オレは祝福する」 「違・・・っ」 もうこれ以上騙せないよ。 耐えられない。 「ん?」 「はたけさんとお付き合いするなんて・・・っ、嘘なの・・・っ!」 「嘘? 何でそんな・・・」 「だって・・・っ、ゲンマさん、何も言ってくれないんだもん・・・っ」 私はゲンマさんの胸にしがみつく。 「何もって・・・何をだ?」 ゲンマさんは優しく、私の両肩に手を置いた。 「私・・・っ、ゲンマさんに告白したのに・・・! ゲンマさん、返事、くれないし・・・っ」 ゲンマさんは言葉を詰まらせていた。 「ゲンマさんは私のことなんか恋愛の対象外なんだって思って、悲しくって・・・」 「そんなこと・・・ねぇよ・・・」 「じゃあ、何で何も言ってくれないの?!」 「それは・・・」 ゲンマさんは言い淀んでいる。 「私みたいな年の離れたお子様じゃ、相手にしないんでしょ?」 「そうじゃねぇよ・・・。だって、オマエ、言ってたじゃねぇか」 「? 何を?」 「初めて一緒に呑んだ時、好みのタイプ訊いたら、“オレみたいな人”って」 「そう、だよ。その通りだもん」 「それはつまり、オレ“みたいな”人で、“オレ”じゃねぇんだろ? そう思ったから、オマエはオレのことは大人の男に憧れてるだけで、本当の恋じゃないって思ったんだよ。だから・・・」 「違う・・・! 本当はゲンマさんって言いたかったのに、恥ずかしかっただけなの!」 「でも、オマエには、もっと年相応のいいヤツがいくらでもいるだろう? オレみたいなヤツ相手にするよりは・・・」 「私はゲンマさんが好きなの! ゲンマさんじゃなきゃ嫌なの! ゲンマさん以外の人なんて好きになれないよ!」 潤む瞳で、ゲンマさんを見つめた。 ゲンマさんが困惑しているのが分かった。 「私・・・こんなにゲンマさんのこと好きなのに、ゲンマさんは一向に返事はくれないし、私のことそういう目で見てくれないし、何もしようとしないし・・・。私ってそんなに魅力無い? 恋愛対象外?」 「そんな・・・ことは・・・」 ゲンマさんの胸で泣きじゃくる私に、ゲンマさんはどうしていいか分からないみたいだった。 「言っただろ・・・オレの好きなタイプ。明るくて元気で笑顔が似合うヤツって。当てはまる人物は、1人しかいねぇんだがな」 「でも、そういう対象じゃないって・・・」 「だって、有り得ねぇだろ。オレなんかにゃ勿体ねぇよ」 「え・・・それって・・・」 「でも・・・誰かにやるのもムカつくな」 その瞬間、私の唇は塞がれていた。 金属が床に落ちる音がした。 ビックリして目を見開く私のすぐ目の前に、瞳を閉じたゲンマさんの顔がある。 優しく、しかし熱く、ゲンマさんは私の唇を啄んだ。 唇を割ってゲンマさんの舌が私の口内に侵入してきた。 私の肩を掴んで離さないゲンマさんは、口腔内を優しく蹂躙し、舌を絡めてくる。 いきなりの熱い口づけに、私は溶けそうだった。 ゆっくりとゲンマさんは唇を離した。 私は溶けそうな瞳でゲンマさんを見つめた。 腰が砕けてふらふらしてくる。 ゲンマさんも熱く私を見つめ返した。 「オマエを誰かにやるなんて・・・考えられねぇ」 「だ・・・だってゲンマさん、昨日は良かったなって・・・」 「オマエが望むならその方がいいと思ったんだよ。オレは身を引こうって。でもダメだ。オマエがオレ以外のヤツと一緒にいるのは、見たくねぇ。一晩考えたけど、オマエのトコにすっ飛んでいって問い質したかったのを我慢して考えたけど、やっぱダメだ」 ぎゅう、と私は抱き締められた。 「嘘・・・何でもっと早く言ってくれなかったの・・・? 私、ずっと悩んでたのに・・・」 「悪ィ・・・」 ゲンマさんは再び口づけをしてくれた。 今度は、触れるだけの優しいキス。 背の低い私に合わせて、ゲンマさんはかなり腰を折って屈めている。 大変だと思って、背伸びしようと思った。 でも、ゲンマさんはそのまま、私の首筋に顔を埋めた。 耳朶から耳の裏から、首筋をゲンマさんの舌が這う。 あんまりにもそこが熱くて、私は放心しかけた。 ゲンマさんの行為は止まらない。 抱き締められて、求められているのがはっきりと分かった。 ゲンマさんはそのまま私をベッドに腰掛けさせる。 ベッドに片膝付いているゲンマさんは、ゆっくりと顔を上げた。 「ゲンマさ・・・」 「オレはオマエと違って、もういい大人だぜ? 好きな女前にして邪な思いするなって方が無理なんだ。でもオマエはそういうのに慣れてねぇから、オレみたいな汚れた大人の邪な気持ちにまみれさせたくなかったんだよ。オマエが大事だったから・・・」 「私に・・・魅力がなかったからじゃないの・・・? そういう風には思えないのかと・・・」 「あ? んな訳ねぇだろ」 「だって・・・お互いの家にいたって、夜も更ければゲンマさんとはすぐにお別れだったし、平気で貸座敷とか言って、何もしないとか言うし・・・私みたいなお子様には何も感じないんだと思って・・・」 「言っただろ、オマエを大事にしたかったんだよ。オマエが憧れるって言う“大人のゲンマさん”である手前、平気なフリしてたんだよ、惚れた女の手前、カッコつけてただけだ」 「嘘・・・」 「腐っても、一応忍者だからな。気持ちを押し殺す訓練はしている」 「何で・・・? だったら、忍者なら私の思ってることも察してよ・・・私、ずっとゲンマさんとって思ってたのに・・・」 きゅう、と私はゲンマさんにしがみつく。 「ほら・・・ゲンマさん、私がくっついても平然としてるし、何も変わらないじゃない」 「大の男が女を前におたおたできるか。みっともねぇ」 「私・・・ずっと待ってたんだよ・・・?」 潤む瞳で、ゲンマさんを見つめる。 栗色の淡い瞳が、私を捉えている。 「いいのか・・・?」 「うん」 見つめ合うと、私は瞳を閉じた。 ゲンマさんは再び私と唇を重ね合わせる。 ゆっくりと、ゲンマさんは私をベッドに押し倒した。 私の上に馬乗りになるゲンマさんは、私の首筋に顔を埋め、舌を這わせた。 痕を付けないように、優しく、しかし熱くなぞっていく。 ゲンマさんに触れられているところ全てがとても熱くて、高鳴る鼓動を抑えきれない。 ピクリ、と感じてしまうのが恥ずかしかった。 愛撫を繰り返しながら、ゲンマさんの手はゆっくりと私の豊かな膨らみに手を伸ばした。 もう片方の手は衣服の中に侵入してくる。 優しくまさぐられると、私は思わず身を硬直させた。 ゲンマさんの全てを受け入れる心の準備をした。 けど。 その時、ゲンマさんは手を離し、顔を上げた。 そっと私の上から降りる。 「ゲンマさん・・・?」 私もゆっくり上体を起こす。 「やっぱまだやめとこう」 ベッドの縁に腰掛け、そう言った。 「え、何で? いいよ、私」 「無理強いさせる気はねぇんだ。そんなに固くなられちゃ、犯してる気分だからな。ゆっくり慣れろ」 「え・・・でも、男の人って大変なんじゃ・・・」 「バ〜カ。いつも言ってるだろ、余計な気ィ遣うなって。大丈夫だよ。オマエの方を大事にしたいからな」 気にすんな、とゲンマさんは優しく微笑んで私の頭を撫でる。 ゲンマさんとなら、どんなことだって頑張れるのにな。 待ちに待った時なのに。 でも、そんなゲンマさんの優しさが嬉しい。 気遣うなって言うゲンマさんの方が、よっぽど私を気遣ってくれてる。 「ゲンマさん・・・」 「ん?」 ゲンマさんの声がいつもよりずっと優しい。 「私、まだ聞いてないよ」 「え?」 「返事。ちゃんと聞きたい」 「あぁ、そっか・・・そうだな・・・」 珍しくゲンマさんは視線を泳がせた。 でも、しっかりと私の目を見据えた。 「好きだ・・・。愛してる」 私はボロボロと涙を流して、ゲンマさんの胸に飛び込んだ。 ゲンマさんは優しく抱き締めてくれる。 「オマエと出会えて良かった。オマエに会うのがいつも楽しみだった。元気なオマエを見ているだけで、オレまで元気になれた。これからもずっと一緒にいてくれるか?」 「うん・・・!」 その言葉が聞けただけで、今までの不安や葛藤なんて、全て吹き飛んだよ。 ありがとう、ゲンマさん。 大好きだよ。 愛してる。 2人はようやく、心が結ばれた。 身体が結ばれるのも、そう遠くないことであろう。 END. や〜・・・長ぇ。 回を追うごとにどんどん長くなって、 連載にすれば良かったと今更後悔。 これ、シリーズ化したいんだよね。 本当は、最初から連載で書き直したいくらいなんだけど。 単発モノだと、まとめるのが大変。 ヒロインの一人称にしたら、名前が殆ど出てこないし。 でも、ヒロインの葛藤を書きたかったので、こうなりました。 うまくまとまりませんでしたが、ようやくハッピーです。 エンドではありません(笑 またいつか機会があったら、続きを書きたいです。 夢らしく、幸せなモノを。 つか、カカシが大人ですねぇ。 どうしたんだ。 それよりも、どうしてウチのヒロイン達は、 「カカシ」とか「カカシさん」って言う普通の呼び方しないんだろう? 此処までくると、頑なに貫きそうです(笑 |