【南瓜−煮物編−】







 生まれた時代が悪かった。

 育ってきた環境も悪かった。

 戦乱の時代。

 オレは、幼いうちから、自分で自分の身を守る術を身に付けていた。

 常に武器を身に付けることで、身を守った。

 他人を傍に寄せ付けず、警戒心が強かった。

 家族以外、誰も信用してこなかった。

 失って以来、仲間ですら、心を許さずに来た。

 時代がそうさせたのだ、と、それで良いと思っていた。

 誰も信用しない。

 寄せ付けない。

 それで何が困る訳でもなかった。

 動物に例えるなら、オレはハリネズミ。

 それで良かった。

 アイツに会うまでは。









 思えば、アイツに初めて会ったのは、戦乱を平定するのに飛び回っていた、9年前のことだった。

 暗部に属して4年経つオレは、カカシを隊長に、平和の為に暗躍し続けていた。

 オレのこの性格は、掟やルールに厳しいカカシとは、何故かウマが合った。

 カカシの悲しくも重い過去を知るオレは、口にこそ出さなかったが、オレには共鳴するものを感じていたのだった。

 アカデミー時代、常に長楊枝をくわえていたオレに、千本をくれたのはカカシだった。

 あれから10数年。

 カカシには、オレが千本を加えているのは、常に警戒心が強くて、誰も傍に寄せ付けようとしない、自己防衛からだ、と言われた。

 確かにそうだ。

 敵に急襲されても、咄嗟の武器になる。

 口寂しいのか、とからかう同僚達とは、カカシは違った。

 いつの間にか追い抜いていった上司。

 この人なら信用できる。

 そう思って今まで来て、カカシ以上に心を許せる人間が出来るとは、このころのオレはまだ分からなかった。









 任務の合間に家に帰り、食事をして、眠る。

 それだけの家なのに、妹・エルナと住んでいたアパートは、独り身には広すぎた。

 エルナの部屋は封印し、埃を被ったら掃除をする程度だった。

 可愛かった妹。

 血気盛んで、先陣切って敵の陣地に切り込み、真っ先に攻撃を受け、殉死するようなヤツだった。

 家族写真は、全てしまい込んだ。

 里の為に、粉骨砕身の思いで任務に就く。

 そう思っていた、9年前のあの日。

 桜の舞う、朗らかな陽気の日だったことを、今でも忘れない。

「いらっしゃいませー。どれにしますか?」

 10いくつかの、あどけない少女。

 切り揃った前髪に、活発さを象徴するポニーテール。

 黒い艶やかさが、幼さを伝えた。

 あどけなさの象徴の、くるんと動く、大きな焦げ茶色の瞳。

 年相応より背が低く、アカデミー1年生と見まごうような子リスのような動きが、愛らしかった。

 元気が良くて、明るい笑顔に、殺伐とした任務を忘れ、オレは癒された。

 家の近所の八百屋。

 この春から店番を始めた少女。

 この店の娘だと思った。

 だが。

「ね〜、おじさ〜ん! この大根、しなびてきたよ! マケてあげてもいい?」

 何だ、娘じゃないのか。

 まぁ、この里は九尾の事件があって以来、子供の働くのはそう珍しいことではなかったから、さして気にも留めなかった。

「このかぼちゃが美味しそうだよ?」

 ニコッと微笑む少女は、オレがいつもかぼちゃを買っていくことを覚えているらしい。

「看板娘が言うんなら、間違いねぇな」

 いつしか、オレはこの八百屋でこの少女の笑顔を見て癒されるのを、楽しみにしていた。











 それから間もなくして、オレは暗部から、特別上忍の職に戻った。

 オレには、不知火家特有の職務がある。

 両親が殉死した中忍の時、仮に引き継いだ。

 15で特別上忍に上がって、正式に火影様から請け負った。

 火影様と不知火家の者しか知らない、機密文書の管理。

 隠密行動もある。

 張りつめた緊迫の毎日に、息抜きを許されたのは、買い物の時。

 エルナが生きてたら、こんな風に笑っていたんだろうな。

 八百屋の少女を、妹に重ね見ていた。

 元気ハツラツで、少々お転婆なのか、買い物に付いてきた子供と、やり合ってたりもした。

 でも店番はシッカリしていたので、子供なのに大したモンだ、と感心していた。





 日は巡り、季節は移りゆく。

 子供から思春期のお年頃に変わっていく様子を、兄のつもりで見守ってきた。

 背は余り伸びずに小粒だったが、膨らんでいく胸が標準より大きくて、思わず照れもした。

 顔には出さなかったが、兄気分で、悪い虫から守っているつもりだった。

 色恋などという、華やいだ噂は耳にしなかったが、少女から女性へ変わっていくのを見守ってきて、自分の目が変わってきていることに、この時のオレはまだ気が付いていなかった。























 思えば、その時からもう、それは恋だったのかも知れない。

 幼い頃から見てきすぎていて、気が付けなかっただけなんだ。

























 アイツは、すっかり綺麗になっていた。

 どんどん綺麗になっていくアイツを見ていて、それが恋だと気が付かないオレは、ずっと兄のつもりでいた。

 もしくは、父親。

 それくらいの、気持ち的に年が離れている筈だった。

 ずっと見守っていきたいと思っていた。

 幸い、アイツはオレに対して、愛想が良い。

 嫌われてはいないようだ。

 名前も知らないアイツ。

 アイツもオレの名前は知らない。

 それで構わなかった。

 買い物客と店員。

 それ以上でも以下でもなく、オレが勝手に兄気分に浸っているだけだ。

 それなら罪にはならないだろう?

 お互い、深いことは追求しない。

 いつも行く常連の、店の店員と、買い物客。

 それだけだ。

 たまに世間話をする。

 活発で元気が良くて、清らかな瞳とその笑顔は、見ているだけで心が温まる。

 アイツはオレを癒してくれた。

 エルナがいたら、毎日こんな感じだったのかも知れない。

 喧嘩はしたこと無かったから、出来れば険悪にはなりたくない。

 嫌われたくはない。

 その気持ちがなんなのか、オレにはまだ分からない。











 アイツと出会って、9年の歳月が経とうとしている。

 オレも、いい加減に年食った。

 周りから、嫁き遅れんなとかってからかわれるけど、生憎、好きな女はいない。

 オレは昔からずっと周りを警戒してきたせいか、告白されたこともない。

 色事の訓練でも、アンタにだけは惚れない、と相手のくの一に言われたっけ。

 諜報活動での潜入捜査でも、相手の妓に、惚れたら火傷しそうだ、と、気に入られても、本気になられたことはなかった。

 別に結婚なんてしなくても、恋人なんていなくても構わない。

 そう粋がってみせる。

 本音は、一生添い遂げられる、可愛い女を傍に置きたい。

 運命の女を捜している、なんて、恥ずかしくて口が裂けても言えない。

 粋がって周りを警戒して千本をくわえ突き放し、他人とは違う額当ての巻き方をして、飄々と生きてきた。

 それで構わなかった。

 アイツの名前を知りたくなるまでは。

 すっかり綺麗になったアイツは、客受けも良く、看板娘として有名になっていた。

 兄気分のオレは、妹が綺麗になっていくのを、喜ばしく思っていた。

 いつもの他愛ない世間話をしている時、オレと同じく、天涯孤独の身だと知った。

 益々兄気分の強くなったオレは、守り続けたい一念で、名を訊いた。

・・・です」

 か。

 いい名だ。

 9年も顔を突き合わせ続けて、今更やっと名前を知ったなんてのもおかしな話だが、オレも不知火ゲンマ、と名前を告げ、今以上に親しくなったつもりだった。

 ただ名前を知り合っただけなのにな。

 オレって結構図々しいのかもなぁ。

 でも、名を知った以上、今までよりも親身になりたいと思い、仕事が休みで街中を彷徨いていたを見つけた時は、思わず昼飯に誘っていた。

 不審がるだろうか、嫌がられるかも、と不安だったが、は喜んでくれたので、良かった。

 21だと知った時には、驚いた。

 いや、若いとは思っていたが、オレと8つも違うなんて。

 エルナより2つも下かよ。

 もしかして、一緒に歩いてたら、犯罪か?

 途端にオレは、自分の年が後ろめたくなった。

 今年でもう29、来年には三十路だ。

 兄っつ〜より、父親気分になっちまいそうだ。

 は、童顔で背がとても低く、見ようによっては、お子様にも見えるヤツはいるだろう。

 オレは小さい頃からずっと見てきたから、を子供だとは思わなかったし、受け答えもシッカリしているからちゃんとした大人の女性だと思ってはいるが、年齢差は激しくのし掛かった。

 それが余計に、自分の気持ちに気付かせなかったのかも知れなかった。











 それでもオレは、の休みの度に待ち合わせて昼飯を一緒に食い、時間まで、買い物に付き合った。

 オレは服を見るのが好きだったから、いつも店で世話になっている礼のつもりで、何着かプレゼントした。

 似合っていたので、嬉しかった。

 男の甲斐性、のつもりで、には絶対払わせなかった。

 オレにだってメンツがある。

 若いに払わせられるか。

 幸い、はオレと出歩くのを、嫌がらずに喜んでくれていた。

 オレがいつも払うのを恐縮がってはいるが、こっちにも体裁があるんだよ。

 任務で里を離れる時は、が元気でやっているか、心配で溜まらなかった。

 それを恋しいというのだと、オレは気が付かない。

 肉親への情愛みたいなモンだ、とオレは思っていたんだ。











 ある日、任務で帰りが遅くなったオレは、仕事帰りのにばったり会い、たまには違う付き合いを、と思い、酒に誘った。

 は成人しているんだから、こういう付き合い方も良いよな、と思ったんだ。

 いつも、昼飯一緒に食って、ちっと買い物して、その繰り返しだけだったから、もう少し、膝を交わらせて話したかったのもある。

 オレはどうやら、里で一番酒に強いらしく、酔ったことが一度もない。

 飲み比べをして、この時だけはカカシに勝てたが、そんなんで勝っても別に嬉しくはなかった。

 仲間は酒好きが多く、自然とガバガバ飲む癖が付いている。

 加減というものを知らなかった。

 は成人したばかりの、一般女性だというのに、つい調子に乗って飲ませすぎてしまった。

 カナリ呂律も回らなくなっていったが、まぁオレが酔いつぶれることはないから、大丈夫、送っていける、と、特に制したりもしなかったオレへの罰かな。

 に、彼女はいないのか、と訊かれた時に、そういうにはいないのか、と訊き返した。

 好きなタイプは? と。

「ゲンマさんみたいな人!」

 はにぱっと笑って、そう答えた。

 オレ“みたいな人”で、“オレ”じゃないのか。

 そう思ったら、何故か胸がちくんとした。

 それが何なのかは分からない。

 ま、オレはより8つも上だ。

 若い頃なら誰しも抱く、大人への憧れ。

 は、そういうもんだろう、そう思った。

 の言う、“大人でカッコイイゲンマさん”である為に、オレは、まだ未熟なくせに、大人のフリをした。

 酔いつぶれたがオレにしがみついて、豊満な胸を押し付けられて“ゲンマさん、ダ〜イスキv”と言われても、平常心を保った。

 まぁ、何だ。

 オレだってまだ若い男だ。

 妹としか思っていなくても、こんな酩酊状態の女を前にしたら、動揺もする訳で。

 何するなって言う方が酷だ。

 でも、オレは自制した。

 しがみついたままオレから離れないを抱き締めて、眠れない夜を過ごした。

 艶やかな髪の毛から、爽やかな甘い匂いが誘ってくる。

 次第にうとうとしたオレは、腕の中に抱くものの心地好さに、深く眠ってしまっていた。

 が目を覚ます朝まで、一度も起きずに眠り込んでいた。

 こんなに深く眠ったのは、いつ以来だろう。

 思い出せない程、オレは浅い眠りしか覚えがない。

 の傍は、居心地が良い。

 と共に過ごす時間が心地好いのは、の持つ空気なのだ、と今更気が付いた。

 が恐縮してテンパッている間に、男の朝の生理現象を元に戻しておいた。

 そして何でもない素振りをする。

 男のメンツは色々あるんだよ。

 ゆ、夢の中でを抱いていた、なんて口が裂けても言えるモノか。

 まさか、それが深層心理なのか?

 オレは、を女として見ているのか?

 妹じゃなく?

 オレは、と朝を共にして以来、色んな思考が頭の中を巡って、時折仕事が手に付かなくなった。











「ゲ〜ンマ、くん♪」

 任務の報告書を提出に行くと、アンコがにたにたと話し掛けてきた。

「何だ。気持ち悪ィ呼び方すんな」

「つれないわねぇ。彼女が出来ると、男って変わるのね」

「はぁ? 彼女? 何言ってんだ、オマエ」

「見ったわよ〜v カッワイイ女のコ連れて、デートしてたトコv 真面目ゲンマ君も、年貢を納める時が来たのねぇ」

「あぁ・・・アイツのことか。バ〜カ、そんなんじゃねぇよ。妹みてぇなモンだ」

「妹ぉ? エルナの代わりってこと? アイツとか言っちゃって、身内気取り? へ〜ぇ・・・」

 ニヤニヤと、アンコは舐めるようにオレを見定め、面白そうに、出て行った。

「ったく・・・何なんだよ」

 でも、彼女か。

 そんなこと、考えもしなかった。

 ずっと、兄貴のつもりでいたから。

 だから、欲情しちまった時は、驚いた。

 まぁ、兄と妹のつもりでも、所詮はやっぱり他人同士だしな。

 人間の持つ当たり前の感情だ。

 生殖本能って言う。

 はウブで男を知らないんだ。

 オレの汚れた思いにまみれさせられない。

 オレは、“兄貴”なんだから・・・。











 とどんどん親しくなっていく度に、その“人間の本能”とやらは、益々大きくなっていった。

 このままじゃイカン、と思いつつ、から離れる気はなかった。

 だが、の様子が、段々おかしくなっていく。

 あれ程誇りに思っている仕事を休んだり。

 理由を訊きに行っても、話してはくれなかった。

 まぁ、だってお年頃だ。

 オレなんかみたいな他人には話せないことの一つや二つ、あったっておかしくはない。

 “他人”。

 そう思うと、無性に寂しくなった。

 何故だろう。

 乳離れする子供を思う親の心境か、と見当外れな事を思っていたモンだった。

 仕事に復帰したは、オレに対してよそよそしかった。

 オレの目を見ようとしない。

 オレは、目と目を合わせずに話すのは嫌いだ。

 苛々してきたオレは、つい、を抱き抱えて、屋根の上に上がった。

 の豹変の真意を訊きだそう、と。

 もう、オレなんかと飯食ったり出掛けたりは嫌だって事なんだろうな。

 彼氏でも出来たか。

 オレは、決別の言葉を覚悟した。

 が、から返ってきたのは、予想もしていなかった言葉で。

「私・・・ゲンマさんのことが好きなんです! ずっとずっと好きでした!」

 オレは事態が飲み込めず、間抜けにも訊き返してしまった。

 が、しっかりとオレの目を見て告白するは、とても綺麗な大人の女性だった。

 あぁ、そうか。

 オレのこの気持ちは、恋だったんだ。

 オレもを好きだったんだ。

 がオレの胸に飛び込んできて、やっと気が付いた。

 自分の、本当の気持ち。

 でも、いいのか?

 こんなに年が離れてて。

 が喜んでいるので、良いことにしよう。

 これでハッピーエンド。

 のつもりだったんだ、オレは。



















 から告白されて以来、オレは尚一層、を大事にするようになった。

 はウブで、男を知らない。

 汚れた性欲なんかで、をまみれさせたくなかった。

 大切に大切に、一歩一歩、進んでいこう、と思った。

 だから、お互いの家を行き来するようになっても、遅くならないうちに帰るようにしたし、を送ったら、寄らずに帰るようにしていた。

 背伸びしたいお年頃のは、もしかしたら、“先”を望んでいるのかも知れない。

 でも、夜が更けて手と手が触れでもしたら、は激しく動揺しちまうんだよ。

 これじゃ、何も出来ないだろう?





 ある日、とオレは休みが一緒になり、共に出掛けることにした。

 は、オレと一緒に映画を観たいと言う。

 でもなぁ、今やってるのって、イチャパラだぜ?

 もろR指定で、には刺激が強すぎる。

 だが、はオレと観れるなら何でも良い、って言うんだ。

 何なんだ? 一体。

 予想通り、にはきつかったようだ。

 何故か映画館にカカシがいて、バレないように、と気が気でなかったが、それより、一生懸命映画を見続けるを横目に見ながら、映画の展開に、思わずオレとを重ねて観ちまってた、なんて口が裂けても言えない。

 外面は平気なフリをして、悶々ととの熱いひとときを思い描いていた。

 この時ばかりは、自分の、感情を押し殺せる忍びという習性に感謝したモノだった。

 オレは、“カッコイイ大人のゲンマさん”であり続けなくてはならない。

 取り敢えず第一歩、と、初めての手を握った。

 柔らかくてすべすべしていて、小さい手。

 この手を離したくない。

 ずっとずっと傍にいたい。





 って、奥ゆかしすぎるから、オレからどんどん仕掛けないと、恥ずかしがってダメなんだよな。

 ずっとモーションかけてたのに、やっと気付いたんだぜ。

 “腕を組め”って。

 真っ赤になるを愛らしく思いながら、オレは悶々とした。

 だって・・・のデケェ胸が押し付けられるんだぜ?

 分かっててやったとはいえ、ちと我慢がきつい。

 大人のフリも楽じゃないぜ。























 オレは、に好かれている、と言うことに胡座を掻いていた。

 は絶対、オレから離れることはない、オレのモノだ、と。

 だから、調子づきすぎたかも知れない。

 オレ、に告白されたのに、まだ返事してないんだよな・・・。

 オレの気持ちは、態度で分かってくれていると思っていた。

 何よりもを大事にしてきたし、その態度で通じてると思ったんだ。

 でも、は恋愛ごとに疎い、経験の少ない、ウブなヤツなんだ、と、忘れかかっていたんだ。

 あれ程大事にしてきたのに。





 オレは言葉にならない。

 何では、カカシと付き合う、なんてイキナリ言い出すんだ?!

 カカシと手を繋いで、ニッコリ笑ってオレに報告をするが、遠い人間に見えてきた。

 その笑顔が、精一杯の作り笑顔だ、なんて気付かずに。

 いつものオレなら、一般人のの心の機微なんて、手に取るように分かった筈だ。

 でも、好きな女にだけは、どうやら違うらしい、と思い知らされた。

 仲睦まじく歩いていくとカカシを見送って、オレは呆然とした。

 その後の仕事なんて、殆ど手に付かなかったさ。

 夕方になって、の家まで追求しに飛んでいきたかったけど、必死になって考えた。

 の本当の幸せを。

 カカシなら、オレよりは若いし、とも釣り合う。

 何より優秀な、里一の忍びだ。

 時間にはルーズだが、基本的にカカシは真面目だ。

 一般女性には優しい。

 安心して預けられる。

 “兄”を卒業できるんだ・・・。





 でも。





 “兄”であるオレは納得しても、“男”としてのオレが、納得できずにいた。

 ずっとを見守ってきた。

 誰よりも愛しい。

 他の誰でもない、心から気を許せる女性。

 殺伐とした忍びの世界に存在する、オアシス。

 手放したくない。

 みっともなくても、カッコ悪くても、と共にいたいんだ。





 愛しているんだ・・・。





 忍びと一般人とか、年齢差とか、オレは気にしすぎていたのかも知れない。

 いつの間にか溝が出来ていたことに、気付かなかったんだ。

 に追求したら、案の定言われた。

 告白の返事を貰っていない、と。

 それで、どれだけ不安でいたか、ボロボロ泣かれた。

 ずっとすれ違っていたことに、ようやく気付いた。

 オレは、の気持ちに、胡座を掻いて、自分だけカッコ付けてたんだ。

 何てカッコ悪いんだろう。

 年下のをこんなにも不安にさせて、泣かせちまって、何処が大人だよ。

 情けねぇ。

 オレは、しっかりとを抱き締め、目を見つめて、言った。





「愛してる・・・」





 オレ達の恋の行く末は、まだこれからだ。

 やっと通じ合えた。

 オレはもっと素直になる。

 自分にも、にも、周りにも。

 千本は癖になっちまって手放せねぇが、もう少し心を開こう。

 違う明日が、見えてくるかも知れない。

 と共に歩む未来と、笑っているオレ達。

 もう絶対に離さない。

 オレが自分で大人になったと思えたら、、結婚しよう・・・。











 END.











 久し振りの南瓜シリーズの【煮物編】は、ゲンマ視点にしてみました。
 進展を期待してた方、すみません。
 連載化決定したので、その序章のつもりで。
 その名も、【南瓜の煮物をアナタと一緒に】
 ・・・寒。
 書き始めたら、何コレ? カカゲン小説? みたいな(汗
 カカシの下り、必要ないような・・・。
 もっと違う内容になる予定だったんですが、こうなっちまい。
 や、あのね、カッコ悪いゲンマを書いてみたかったんですよ。
 ウチのゲンマ、カッコ付けだから。
 でも、実はフリをしてるだけ、という。
 連載始まったら、甘々で行ってもらいましょう。
 カッコ悪いゲンマも好きだよv