【焼餅―親睦編―】 それから、アカデミーの見学に前後して、はゲンマの執務室に寄り、執務の邪魔にならない程度に、小一時間程話をして過ごした。 「でね、やっぱりカカシせんせぇ、一緒に寝るのダメって言うんですよ。私、一緒に寝たいのに。カカシせんせぇ、私のこと迷惑なのかなぁ」 イキナリ現れた居候だもんね、邪魔なんだ、とはしゅんとする。 「邪魔とか迷惑とかじゃねぇだろう。そうだな・・・お前が余りにも美しくて眩しいから、照れてるだけだろ。カカシ上忍はもてる割に女慣れしてないからな、オマエのことをどう扱っていいか悩んでるんだろうよ」 書類にペンを走らせながら、ゲンマはを慮りつつ、言葉を選んで諭した。 「照れる? 何で照れるの? 一緒に寝るのって恥ずかしいことなの? 悩む程」 キョトンとしては口を尖らせる。 「恥ずかしがり屋なんだろ。根気よくねだればいいさ」 「そっかぁ。頑張ろうっと」 「じゃあ逆に訊くが、何でそんなにカカシ上忍と寝たいんだ? そんなに寝心地良かったのか、腕の中が」 「うんv すっごく気持ちいいの。あったかくって、カカシせんせぇの温もりを感じると、ぐっすり眠れるの。無いと眠れないんだもん」 とても幸せそうに話すので、は随分とカカシに懐いてるんだな、とゲンマは思った。 「、オマエは他人を警戒するって言葉は知ってるか?」 カカシ上忍といいオレといい、出会ったばかりなのに随分気を許してくれてるようだが、とゲンマはを見据えた。 「警戒? うん。カカシせんせぇが、悪い人には付いていっちゃダメだよって言ってました」 「まるで幼稚園児に言い聞かせる言葉だな・・・悪い人かどうかは判断付くのか?」 「それくらい付きますよぉ。子供じゃないもん。カカシせんせぇもゲンマさんも、優しくてあったかいし。安心できるなぁって思います」 微笑むの顔が、聖母のように思えた。 の言葉ではないが、といると温かくて柔らかくて、醸し出す空気が心地好くて癒される。 気を許してるのはむしろオレか、とゲンマは思う。 だから、同じようにカカシもに気を許しているから、がそれを感じ取り、同じように慕ってくるのだろう、と。 それからもは、嬉しそうにカカシのことばかりを話し、訊いてきた。 それに対し、ゲンマは相槌を返し、分かる範囲で、差し障り無いようにカカシのことを話した。 は目を輝かせて聞いている。 『よっぽど好かれてるな、こりゃ・・・』 昼は火影の所に行っているようだが、夕方になると必ず商店街の本屋でばったり会った。 「ゲンマさんって本が好きなんですね。カカシせんせぇも趣味は読書だって言ってるけど」 毎日買ってないですか? とは微笑む。 「あぁ、家に帰っても1人だから、暇潰しにな。オマエは何を探してる?」 「ん〜、探してるのが無いです。医学関係の本で、カカシせんせぇのお家に無いのを探してるんですけど・・・」 「専門書はそうねぇだろう。図書館は行ったか?」 「図書館?」 「そこなら、いくらでも本がある。オマエも本が好きなようだし、退屈しないぜ」 いつものようにゲンマの執務室に来たは、ゲンマとカカシのことについて話しながら、心地好い一時を過ごした。 「図書館はどうだった? 木の葉の図書館の蔵書量は、かなりだろう」 「ハイ。一杯本があって、楽しかったです。これからは図書館に行きます」 退屈しなくって、楽しいです、とは微笑んだ。 「ゲンマさんって、どういう本が好きなんですか?」 「オレか? そうだな・・・時代物とか、歴史物・・・同じか。リラックスして読めるモンが多いな」 「カカシせんせぇが読んでる本って、私には読ませてくれないんですよ。読んじゃダメな本だから、とか言って」 「あぁ、イチャパラか・・・オマエが読むにはまだ早いな」 「何で?」 「理解できないからだ。精神未発達のオマエには発育上良くないだろ」 「も〜っ、ゲンマさんまで私のこと子供扱いするのぉ? 子供じゃないよぉ」 プク、とは膨れた。 「フッ、充分お子様だよ。男女の理も理解できねぇで、いっぱしぶるな」 「ダンジョノコトワリって何?」 「ホラ、分かんねぇじゃねぇか。医学書も結構だが、恋愛小説でも読んで勉強したらどうだ?」 「どういうの?」 「自分で探せ」 むぅ、とは口を尖らせる。 暫し、心地好い空気が執務室を流れた。 ウトウトと、は眠そうだった。 「眠いんだったら一眠りしていけよ。オレは仕事してるから」 「ふに・・・」 ゲンマの机の脇に突っ伏して眠りに落ちたに、ゲンマは忍服のベストを脱いでかけてやった。 が眠ったことで、溢れるような柔らかなチャクラが執務室を覆っていった。 「か・・・」 その強大さに驚きつつ、漲る力が湧いてくる癒しの心地好さに身を委ね、ゲンマの仕事はテンポよく進んでいった。 「眠ることによって封印している力が僅かに解放されるのか・・・成程・・・」 幼い頃から血と殺戮の道を歩んで来たカカシも、きっと日々に癒されている。 の話を聞いていると、カカシが段々柔和にに打ち解けていっているのが分かった。 オレがその良い例だ、とゲンマは思う。 ゲンマもまた、孤独を生き、修羅の中に身を投じてきた。 カカシには及ぶべくも無いが、カカシより長く生きている分、多くのものを見てきた。 失うことの辛さ、孤独、絶望。 それをこのは、浄化するように癒してくれる。 「にはカカシ上忍が必要だと思ったが、カカシ上忍にもは必要だな・・・」 知らない者が傍で聞けば、ノロケにしか聞こえない、とカカシの生活。 「あの噂も案外本物になるんじゃねぇか・・・?」 そうなればいい、とゲンマは思った。 「ん・・・ふに・・・」 目を覚ましたが、目を擦りながら上体を起こした。 「おぅ、起きたか」 「うわっ、もうこんな時間だ。イルカせんせぇの授業聞きに行く筈だったのに・・・もう終わっちゃうよぉ」 しまったぁ、とは時計を見遣って声を張り上げた。 「授業なんてこれからいつでも聞ける。寝不足か?」 「ん〜。いつも夜遅くまでカカシせんせぇとお話ししてて、朝もカカシせんせぇ早起きだから、ちょっと睡眠足りないかも。カカシせんせぇが一緒に寝てくれたら、もっと気持ちよくぐっすり眠れるのにな」 ふとは、己を包む暖かさを感じた。 「あれ・・・ベスト・・・ゲンマさんが掛けてくれたの?」 ゲンマさんの匂いがする、とは握り締めて微笑んだ。 「あぁ、もう夏とは言えまだ肌寒いし、その薄なりじゃ、風邪引くからな」 「ありがと〜。ゲンマさんのチャクラもあったかいね」 はゲンマのベストに腕を通して、忍者になったみたい、と喜んでいた。 「カカシせんせぇのチャクラもね、とってもあったかいの。ホラ、この首飾りにチャクラ練り込んでもらってるでしょ? これがとっても気持ち良くって、カカシせんせぇにギュッてされてるみたいで、ホンワカしてくるんだ」 はベストを着たまま、椅子の下の足をブラブラさせた。 「あ〜、早く夜にならないかなぁ。カカシせんせぇに会いたいよぉ」 コッソリ会いに行っちゃおうかな、と口を尖らせる。 「よっぽど好きなんだな、カカシ上忍のこと」 「うんvv 大好きvv」 極上の笑みで、は言いきった。 『あてられるね、ど〜も・・・』 しかし、ゲンマはそれを喜ばしく思った。 癒す存在であるが、カカシを守ってくれる。 カカシも守りたいものができれば、一層強くなる。 木の葉の将来の為にも、カカシの為にも、にはずっと里にいて欲しい、ゲンマはそう思った。 ある日、昼食の為に街を歩いてると、ゲンマは道前を彷徨いているを見つけた。 「どうした。今日は火影様の所じゃないのか?」 「あ、ゲンマさん。午前中に火影様のところに相談に行って聞いていただいたんですけど、火影様、お忙しいみたいだから、今日はお昼は1人で食べようと思って、で、何処にしようかなぁって悩んでて・・・」 「じゃあ一緒するか? オレもこれから昼飯だ。は何が食いたい?」 「何でもいいです」 好き嫌いないし、とぴと、とゲンマの忍服の袖を掴んだ。 適当に入った店で、メニューを前に唸る。 「決まったか?」 「う〜ん・・・何が美味しいですか?」 どれがいいのか分からない、と悩んでいる。 「火影様と食べてる時はどうしてたんだ?」 「火影様にお任せしてました。これが美味いぞ、とかって勧めて下さって」 「じゃあ、オレと同じでいいか?」 「あ、ハイ」 注文して運ばれて来たのは、焼き魚定食とかぼちゃの煮物だった。 「今日も里の探検か? それとも図書館か?」 「あ、病院に行こうと思って。ゲンマさんとカカシせんせぇが勧めてくれたから、力試しに行こうかと」 「あぁ、行くのか。カカシ上忍、話したんだな、昨日オレが言ったこと」 「? ゲンマさんの考えだったの? カカシせんせぇも考えてたって言ったけど」 「あぁ・・・成程ね・・・」 ゲンマは味噌汁を啜りながら、鼻で笑う。 面白くないからって、焼き餅焼いたんだな、と。 「医療忍者って人に会えたらいいなぁ」 このかぼちゃ美味しい、と口に頬張りながら、は呟いた。 「忍医とかの医療班ならいくらでも会えるだろうが、医療忍者は需要が足りてないのが現実だからな。大抵重要任務に就いて飛び回っているから、そう簡単に会えるかは分からねぇな」 骨を綺麗に取って魚の身を摘むゲンマは、併せてかぼちゃも頬張り、白米もかっ込んでモリモリと食べた。 はその様子を見て、男の人の食べっぷりって見ていて気持ちいいなぁ、と微笑む。 「そっかぁ」 「まぁ、偶然誰かしら帰ってるかも知れねぇがな。運が良けりゃ会えるぜ」 「医療忍者ってやっぱり特殊なの?」 白米を頬張りながら、はゲンマに尋ねる。 「そうだな。特異能力を持つ者は、この里では重宝される。潜在能力を認められたら、育成に手を掛けてもらえる。自ら志願してなりたいと思う者が殆どだが、のように元から能力を持っているのは、貴重だな」 食べ終わったゲンマは、茶を啜りながら答えた。 「大抵の人は学んで能力を身に付けるの?」 「あぁ。忍術や幻術と同じことだ」 根本は変わらねぇ、とゲンマは付け加える。 「特殊って言えば、特別上忍って、特殊任務に就くから特別って言うんでしょ?」 「ま、そうだな」 「ゲンマさんはどういう任務なの?」 「機密を他人にバラせるか」 「あ、そっか。そうだよね。ごめんなさい」 も食べ終わり、ゲンマに勧められた茶を啜る。 「別に言うくれぇ構わねぇがな。機密文書の管理だ」 「・・・それって、もしかして凄く重要なんじゃないの?」 「ま、ある意味そうではあるな」 「ゲンマさんって、凄く偉い人なの?」 「別に偉くなんかねぇよ。火影様にオレって人物を信頼されて任されてるだけだ。カカシ上忍の方がよっぽど偉いって言葉が合うさ。里一のエリートだからな。それに、偉いってのは、火影様のことを言うんだよ。オレは単なる管理人だ」 「でも、火影様の信頼が厚いって、凄いことだよね。火影様も、ゲンマさんのことは、優秀な忍びだって仰ってたよ」 「ま、長く忍びやってるからな・・・この世界しか知らないってだけだよ」 さ、出よう、とゲンマは席を立つ。 勘定をの分と併せて出した。 「あ、ゲンマさん、私の分は自分で払うよ」 「いいって。男が女に奢るって言ってんだ。格好つけさせろ」 女と飯食ってワリカンじゃカッコ悪ィだろ、と高楊枝でゲンマはの頭を優しく撫でた。 「えへ。ありがと〜」 ぴと、と嬉しそうにはゲンマの腕に絡みついた。 「まだ時間がある。病院まで送ってってやるよ」 ゲンマはポケットに手を突っ込み、と連れ立って病院への道を歩いた。 それから時折、はゲンマと昼食を食べに行った。 火影とも約束しているので、毎日ではなかったが、火影が忙しい時は、大抵アカデミーのゲンマの執務室に入り浸り、会話を楽しんだ。 ゲンマの言葉尻はぶっきらぼうだったが、根底にある優しさが、を嬉しくさせ、一層ゲンマを慕っていった。 「ゲンマさんも独り暮らしなんでしょ? 夜って何してるの?」 はゲンマの淹れてくれる茶が好きで、いつも飲んでいた。 「任務が煩雑だから、大抵いつも遅くなるから、大して時間はねぇよ。時間があれば、暇潰しに本読んでるくれぇだな」 詰め所に行くことも稀だし、とゲンマも茶を啜る。 「ご飯は自分で作るの?」 「あぁ。独り暮らし歴も長いからな。一通りのことは出来るぜ」 味はどうか知らんが、とシニカルに笑う。 「明日は久し振りの非番だし、詰め所に行く前に掃除でもすっかな・・・」 「明日お休みなの? じゃあ、私いっつもゲンマさんに奢ってもらってるから、お礼にお掃除してご飯作るよ。お家に行ってもいい?」 ぱぁっと花が咲いたように、はゲンマに笑みを向けた。 「あ? 別に構わねぇが・・・面白いモンなんて何もないぜ、男の独り暮らしの部屋なんて」 「この執務室も居心地いいし、きっとゲンマさんのお家もゲンマさんの持つ空気と同じで、居心地良さそうだと思うんだけどな」 「そうかねぇ・・・?」 翌日、詰め所前で待ち合わせ、はゲンマの家に連れていってもらった。 「わぁ、広〜い。やっぱりカカシせんせぇのお家とは感じが違うね。お部屋全部見ていい?」 「書類とかには触るなよ」 「分かってるよぉ。カカシせんせぇのトコで慣れてるもん。そういうことは分かってます〜」 興味津々で、はさながら探検ごっこでも楽しむかのように、寝室からトイレまで、全て見て回った。 「ゲンマさんの匂いだね。あったかくて落ち着くよ」 そしてゲンマと共に、家全部の掃除をした。 布団を干したり、室内を水拭きしたり。 書類の片付けは、ゲンマがやった。 全部と言っても、所詮男の独り暮らしなので、2人がかりだとあっと言う間に終わってしまった。 が布団を取り込んでベッドに戻していると、台所から良い匂いがしてきた。 「ゲンマさん、何してるの?」 ひょこ、とは台所に顔を覗かせる。 「何って、昼飯だよ。腹減っただろ? もう昼過ぎだしな。待ってろ、もうできるから」 手慣れてる感じでゲンマは調理を進め、器に盛っていく。 「わぁ、ゲンマさんの手料理? 美味しそ〜」 私が作る筈だったのに、とは遅れを取ってしまった。 「さ、食おう」 いただきま〜す、と揃って食べ始める。 「美味し〜いv ゲンマさん上手だね」 「そっか? 口に合うなら良かった。どんどん食ってくれ」 ぱくぱく、と美味しそうに食べていく。 「ゲンマさんって、いつもかぼちゃの煮物食べてるよね」 昨日の残り物、と言って出されていたかぼちゃの煮物に口を付けながら、は微笑んだ。 「あぁ、好物でな。つい、外じゃ必ず注文するし、家でもいつも作ってる」 「美味しいねv 私も作ってみようっと」 食べ終わって片付けを済ませると、詰め所に向かうべく家を後にした。 ゲンマの家の近所の商店街を歩きながら、はゲンマの腕に絡みついていた。 ゲンマは別段気にする風でもなく、自然にと会話を交わしていた。 「これからどうする? 今日のアカデミーサボっちまったな、悪ィ」 「ちょっと覗きに行こうかなぁ。病院に行こうかなぁ。どうしよ・・・」 図書館で調べものもしたいしなぁ、とはあれこれ考える。 ふと、ゲンマは視界に入った店を見て、を見遣った。 「、オマエいつも似たような服ばっかり着てるだろ? たまには違うタイプの服も着てみねぇか?」 「え? あぁ、カカシせんせぇにも、新しい服買わないかって言われてるんですけど、勿体ない気がして・・・」 「年頃の女が洒落っ気出さねぇでどうするよ。だがカカシ上忍に任せてたんじゃ、また似たような服になるしな。オレが選んでやるよ」 掃除してもらった礼に見立てる、とゲンマはを連れて衣料品店に入っていった。 「はそういう服が好みなのか?」 適当に服を見て取りながら、ゲンマは尋ねた。 「好みとかは特にないですよ。カカシせんせぇに好きに選んでもらってるんで。カカシせんせぇってセンスいいと思うし、気に入ってますよ」 着れれば何でもいいんですけど、とはゲンマの手に取る服を覗き込む。 「オレの見立てでいいか?」 「あ、ハイ。お任せします。やっぱりよく分からないから」 「オマエな・・・その優柔不断、直せ」 「え?」 「何かって〜と、よく分からない、分からない、って、選ぶ時いつもそればっかりだろ。最初の頃はしょうがねぇと思っていたが、いい加減に自立しろ。自分の考えを持て」 「ん〜・・・頑張ります・・・」 やっぱりそうだよね、とははにかんだ。 「・・・ま、こんなモンか」 何点か手に取って決めると、ゲンマは会計に向かった。 「オラ。持って帰れ」 「え・・・?」 ゲンマは袋をに持たせると、腰を抱いて店を出た。 「あ、あの、お金払います」 「いらねぇよ。掃除してもらった礼だって言っただろ」 「そんな、お掃除はいつもお昼奢ってもらってるお礼だったのに〜」 「いいから。気にするな」 「でもぉ・・・」 申し訳なさそうにしていると連れ立って歩いていく。 「あ、じゃあ、お礼にご飯作りますよ。ゲンマさん独り暮らしで大変でしょ? 任務で疲れて帰ってきてご飯作るの。私で良ければご飯作る」 毎日でも、とはゲンマを見上げた。 「そりゃ有り難ぇが、オマエはカカシ上忍の飯も作らなきゃならねぇだろ? そっちの方が大変だろうが」 「大丈夫ですよ〜。あ、でも一緒に食べられないんだ・・・」 いい案が浮かんだ、と思ったのも束の間、はしゅんとする。 「・・・作ってくれるってんなら、ホレ。これ預ける」 ゲンマはに向かって手を差し出した。 も促されるまま、手を出す。 掌に載ったのは、鍵だった。 「これ・・・?」 「オレん家の合鍵。気が向いた時に行って作ってってくれれば、有り難く食うよ」 1人でも構わねぇから気にするな、とゲンマはキーホルダーに2つ付けていた家の鍵をひとつ外してに渡し、マスターキーはポケットにしまった。 「え・・・こんなの私に預けていいの?」 「取り敢えず、オマエは危険人物じゃねぇからな。これでも、信用してる」 ポン、と優しくの頭を撫でる。 「えへ、嬉しいな。有り難う、ゲンマさん」 きゅっとしがみつくに、噂が広まっていったのにゲンマはまだ気が付いていなかった。 |